短期集中連載

矢作晃の iMacと暮らす5つのツボ

Part5(最終回):Windowsと暮らすツボ


■ Windowsと仲良くしたい

 この連載の期間中、読者の方々からいろいろとメールを頂戴した。前回紹介したように、iMacの内蔵モデムに関して「ATコマンドガイド」の所在を教えていただいたり、記事内容に関してのご意見やご質問などもあった。今回の連載では、iMac本体のことはもちろん、使い方などについてもワタシの主観が多分に含まれている内容があって、読んでいただいている方々すべてが納得できる内容でないことは承知している。もちろん、記事の内容に不満がある方もいるだろう。わかりにくいところもあったかもしれない。それらについてご意見やご質問をいただくのは全然構わないし、それゆえメールアドレスも公開している。雑誌や書籍のようなペーパーメディアでも、そうした手紙をいただくことがあるが、即時性や積極性という意味で、このインターネットというデジタルメディアが勝る。

 でもね、『このMacintosh野郎が!』とか書かれたメールが届くと、読んでて悲しくなってしまうんですよ。まぁ、今回はiMacに関する連載をしているし、自室で稼働しているマシンもMacintoshが多いけど、WindowsだってVer.2の頃から使っていて、今はWindows 98を動かしているし、こないだ秋葉原を歩いていたら、『Indigo中古品15万円~』などというペン書きのビラが目に入って、思わず預金通帳の残高が頭に浮かんでしまったりもする(買いませんでしたが)。結局ありきたりだけど、WindowsでもMac OSでもUNIXでもその他のOSでも、それぞれにいいところも悪いところもあって、それをいろいろな人々が利用して、また使い分けているのは、会社などの組織による決まり事だったり、仕事に必要だったり、純粋に個人の好みだったりするわけなんだから、「このOSを使っているからコイツは○○」なんてことはありえないわけ。ワタシの原稿にご不満やご意見があるとしたら、それはワタシ自身への不満や意見であって、どんなOSを使っているからなんてのは本来、関係ないはずなんですよ。もちろん、Macintoshのユーザーのなかにも、そうしたモノ言いをする人がいることは否定しないし、Windwosのユーザーでも同じこと。つまるところ、言う方も言われる方もそのヒトの資質の話であって、OSとかマシンにはかこつけて欲しくないな、といつも思う。そしてもうそろそろ、そんな考え方はやめにしましょうよ、ね。

 そんなカミソリみたいなメールをもらったから、というわけではないですが(ちゃんと連載開始時から予定に入っていました)、最終回はWindowsと仲良くなる方法。もちろん、Windowsユーザーの方々には、iMacと仲良くする方法です。


■ そのままではコミュニケーションがとれない

 ご存じのように、iMacには10Base-T/100Base-TXのインターフェイスが搭載されているので、PC/AT互換機との接続にはこれを利用する。もちろん、接続する側のPC/AT互換機にも同様のインターフェイスが必要だ。それぞれ一台ずつなら、クロスケーブルを使って直接接続することも可能だが、使い勝手を考えたらやはりハブを介した方がいい。10Base-Tと100Base-TXのどちら(あるいは両対応)にするかは、PC/AT互換機側のインターフェイスにもよるが、10Base-Tのハブなら数千円から手に入る。前回紹介したようなハブ機能を持つダイヤルアップルーターを使っているなら、それだけで準備は完了だ。物理的にはこれだけで、iMacとPC/AT互換機は手を繋ぐことができる。

 で、ここから先はソフトウェアの設定になる。Mac OSとWindows 95/98という異なるOSでは、得意とする通信プロトコルもまた異なる。Mac OSではAppleTalkが基本だし、Windows 95/98ではNetBEUI/NetBIOSがそれにあたる。例えていうなら、日本人のしゃべる日本語と、フランス人のしゃべるフランス語のようなものだ(どっちがどっちだ、などということは考えない)。これでは会話にならないので、なんらかの方策を取るわけだ。手っ取り早いのは、お互いに歩み寄って事実上の公用語となっている英語で会話するという方法(本来の意味の国際語としてはエスペラントなどがあるけど)。つまり、まずはインターネットにおける標準プロトコルであるTCP/IPを使って、コミュニケーションを図ってみることにする。



■ Microsoft Personal Web Serverを利用する

 本来はここで、iMacとPC/AT互換機の各個にIPアドレスを設定する手順を詳しく説明したいところだが、ちょっとボリュームを割きすぎるので簡単に。IPアドレスの割り当ては動的に行なう方法と静的に行なう方法があって、前者はDHCPサーバー機能を利用するのが簡単だ。DHCPサーバー機能を持つソフトはMacintosh用もWindows用も販売されているが、パーソナルユースではこれまた前回紹介したダイヤルアップルータを利用するのが簡単かつ安価ですむ。後者の場合はコストは一切かからないものの、iMacとPC/AT互換機の接続を行なうときと、それぞれがダイヤルアップでインターネットに接続するときとで、いちいちTCP/IPの設定を変える必要がでてくるので、どちらを選択するかはユーザー次第ということになる。ちなみに、こういった閉鎖的なネットワーク内ではプライベートIPアドレスを利用するのが普通。小規模なものだと、クラスCに該当する192.168.0.0から192.168.255.255までが設定できる。たいていは、4番目の数値を、接続する台数に応じて1から順に割り振っていく。

iMacにおけるTCP/IPの設定。ダイヤルアップIPルーターのDHCPサーバ機能を利用してIPアドレスを自動的に設定する場合(左)と、IPアドレスを固定して利用する場合(右)
WindowsにおけるTCP/IPの設定。Macintoshと同様に、DHCPサーバを利用する場合は自動に(左)、IPアドレスを固定する場合は明示的に数値を入力する(右)

 さて、それぞれがTCP/IPを利用する準備ができたなら、ファイル共有を行なうソフトを準備しよう。TCP/IPを使った接続ではファイルの送受信に「ftp」を利用することになるので、iMacとPC/AT互換機の双方(あるいは一方)にftpサーバー機能を実現するソフトウェアをインストールすればいい。これまたオンラインソフトから市販の製品までいろいろとあるが、Mac OSとWindows 95/98の双方に同じものが用意されているということで、今回はMicrosoftの「Personal Web Server」をオススメしておこう。

 Macintosh用はInternet Explorer 4.01のコンポーネントとして配布されているので無償で利用できるが、残念ながらiMacにはプリインストールされていないし、付属のCD-ROMにも含まれていないのでマイクロソフト社のホームページなどから入手することになる。Windows用も同様にInternet Explorerのコンポーネントとして同社のホームページで無償配布されている。

□Microsoft Personal Web Serverの入手先
http://www.microsoft.com/ie_intl/ja/download/

 Personal Web Serverは、現在Macintosh版、Windows版ともに、4.0が最新版として配布されているが、Windows版の4.0をWindows 95/98で運用した場合、ftpサーバーの機能を持てない(NT上での運用なら大丈夫)。そこで、Windows 95/98をftpサーバーとして利用したい場合には、1.0を入手してインストールするようにする。Macintosh版は4.0でもftpサーバー機能が利用できる。

 それぞれに(あるいは片方だけでもいい)インストールしたら、オンラインマニュアルやオンラインヘルプを参照して、セットアップを行なう。セットアップの詳細な手順はここでは割愛するが、以下の画面イメージなどを参考にセットアップして欲しい。

iMac側にPersonal Web Serverをインストール。設定はコントロールパネルの「Personal Web Manager」から行なう。ftpサービスを利用するためには、あらかじめExtrasフォルダに含まれる「FTP Plug-in」をServer Plug-insフォルダにドラッグ&ドロップしておく。また、ftpサーバーで公開されるフォルダは、Mac OSのファイル共有機能に依存するので、あらかじめ公開するフォルダは共有しておく必要がある

Windows側の「Personal Web Manager」の設定もコントロールパネルから。サーバーの起動は「起動」のタブ、ftpサーバー機能の利用は「サービス」タブをクリックして設定する。ここではWindows版はバージョン1.0を利用しているので、Macintosh版のようなホームページの簡易作成機能は持たない

ftpサーバー機能の設定は、WWWブラウザを用いて管理者メニューにアクセスすることで可能となる。このメニューでftpサーバーを有効にしたり、公開するフォルダを指定したり、ユーザーのアクセス権を設定したりすることができる Windows側もWWWブラウザを用いてftpサーバーの機能が管理できる。Macintosh版もWindows版もデフォルトではファイルの『Get』のみ許可されていて『Put』は許可されていないので、相互の送受信を可能にするために設定を変更しておく必要がある

 設定を済ませると、両方(あるいは一方)がTCP/IPをプロトコルとしたftpサーバーとして機能し始めるので、それぞれに相手方をサーバーと見立ててファイルを送受信することができる。ファイル送受信の際の使い勝手は、どちらかといえばこのサーバーソフトよりも、利用するftpクライアントソフトに依存するので、いろいろと試してお気に入りのftpクライアントソフトを見つけるのがいいだろう。Macintoshでは「Fetch」が古くから使われているが、最近は「NetFinder」なども定番ソフトとなっている。Windowsには、「Ws_ftp」や「FTP Explorer」といったクライアントソフトがある。

 実際の接続は、ftpクライアントソフトを使って、接続先のIPアドレスを「192.168.0.2」などのように明示して接続する。DNSサーバーを利用したり、hostsファイルを用意することでそれぞれのサーバーに名称を付けることもできるが、数台のネットワークならそこまでする必要もないだろう。また、Personal Web Serverは基本的にWebサーバーとして機能しているので、WWWブラウザを使って「http://192.168.0.2/」などに接続すれば、デフォルトで用意されているホームページを参照することができる。

□Mac用FTPソフト入手先
・Fetch日本語版公式ホームページ
http://fetch.info.co.jp/
・NetFinder作者のページ(英文)
http://www.ozemail.com.au/~pli/netfinder/
・Vector Software PACK
 (「NetFinder」ダウンロード可能、ソフト名で検索できる)
http://www.vector.co.jp/

□Windows用FTPソフト入手先
・Ws_ftp日本語版の製品情報ページ(試用版ダウンロード可能)
http://www.pinnacle.co.jp/product/wsftp/
・窓の杜サイト内のWs_ftp情報&ダウンロードページ
http://www.forest.impress.co.jp/ftp.html#ws_ftp
・FTP Explorer作者のページ(英文、日本語対応モジュールもある)
http://www.ftpx.com/




■ PC MACLANあるいはDAVEを利用する

 TCP/IPを使ったPersonal Web Serverの利用を、英語という標準言語を使ったコミュニケーションに例えるなら、「PC MACLAN」や「DAVE」の利用は、一方のバイリンガル化によるどちらかの母国語を使ったコミュニケーションに例えることができるだろう。

 「PC MACLAN」は、Windows用のソフトウェアである。このソフトをPC/AT互換機にインストールすることで、WindowsがAppleTalkを利用することができるようになるわけだ。Macintosh側は特に設定の必要はない。つまり、Windows側のバイリンガル化である。そうすれば、AppleTalkを共通の言語としてネットワークが構築できる。つまり、MacintoshユーザーにはおなじみのAppleShareを利用してファイルの共有が行なえるのである。もちろん、PC/AT互換機側もAppleShareサーバーとして機能できるようになるので、相互にファイルの共有が可能だ。また、Postscriptプリンタに限ればプリンタの共有も可能になる。

AppleShareで公開しているiMacが、ネットワークの中に表示されるようになった。画面左の情報にも、AppleTalkを使っていると表示されている(左)。PC MACLANを使ったAppleShareの設定ウィンドウ(右)

 対して「DAVE」は、Macintosh用のソフトウェア。機能としては「PC MACLAN」を鏡に写したようなもので、MacintoshにインストールすることでMac OSがNetBIOSを利用することができるようになる。つまり、こちらはMac OSのバイリンガル化だ。もちろんPC/AT互換機側は何も設定をいじる必要はない。共通言語をNetBIOSとしてWindowsネットワークのなかにMacintoshを組み入れることができるようになるのである。これまたPostscriptプリンタの共有が可能。

コントロールパネルで、名称とWindowsネットワークのWorkgroup名を設定する。当初は3台だけのネットワークだったので、この名称でも良かったのだが……(左)。使い慣れたセレクタを使って、Windowsネットワークを選択することもできる(右)

 これらの選択はどちらかといえば、すでに一方のプラットホームで数台のネットワークを運用していて、そこに異機種を一台追加するような際に効果的といえるだろう。異機種を意識することなく、多数側に取り込んでしまうわけだ。もちろん取り込まれる側は、バイリンガル化が必要になるので、外国語学校に通う必要がでてくる。月謝、すなわちソフトウェアの購入が必要というわけだ。ちなみに「PC MACLAN」はディアイティが日本語版を販売している。1ユーザー向けの製品は36,000円が標準価格だが、実売価格では3万円を切る。また、同社のホームページから30分間だけ利用できるデモ版が入手できるので、試してみるのもいいだろう。一方の「DAVE」はウイニングランソフトウェアが販売している。現在提供されているのは英語版だが、10月上旬には日本語版が登場する予定だ。標準価格は22,800円で、同ホームページから英語版の使用期限付きデモバージョンを入手することもできる。



■ AppleShare IPあるいはWindows NT Serverを利用する

 ここまでは、数台程度のネットワークでiMacとPC/AT互換機を接続する方法を紹介したが、もう少しネットワークの規模が大きくなるようならサーバー製品の導入を考えるのがいいだろう。この場合もMacintosh中心のネットワークなのか、Windows中心のネットワークなのかで選択肢が異なり、前者なら「AppleShare IP」、後者なら「Windows NT Server」ということになる。

 サーバー製品の導入を、これまたコミュニケーションに例えれば、専任の通訳を雇い入れることにあたる。ファイルの共有や送受信は、必ず通訳さんを介して行なうというわけだ。こうすれば個々の負担は減り(Personal Web ServerやPC MACLAN、DAVEを使ったときのように個々がサーバーになる必要がないので、CPUの負担が減る)、それぞれも自分の得意な言葉(プロトコル)だけ利用すればいいから、ラクもできる。

 現在日本語版が発売されている「AppleShare IP 5.0」は、Macintoshからは当然のごとくAppleTalkを利用したAppleShareでファイルの共有を行なうことができる(プロトコル自体はTCP/IPも使うことができて、こちらのほうがより高速)。ftpサーバーとしての機能もあわせて持つので、Windows側からはftpクライアントソフトを使って、ファイルの送受信が行なえる。ftpサーバーとして公開するフォルダとAppleShareで公開するフォルダを同一にしておけば、双方のクライアント側からはプロトコルを意識することなく、ファイルの共有が行なえるというわけだ。ちなみに、先頃発売が開始された「AppleShare IP 6.0(英語版)」は、Windows側からNetBEUI/NetBIOSを使ったWindowsネットワークとしても接続できるようになったので、Windows側からの使い勝手が向上しており、日本語版の発売が待たれるところだ。

 一方の「Windows NT Server 4.0」には、「File Server for Macintosh」というサービスが用意されている。この機能を利用すればNTサーバーをAppleShareサーバーとしても運用できるので、MacintoshのクライアントからはAppleTalkで、WindowsのクライアントからはNetBEUI/NetBIOSで共通のボリュームにアクセスすることができるようになる。

 もちろん、サーバー製品の導入はServerとなるマシンを用意する必要があるうえ、ソフトウェア自体も高価なのでコスト的な負担が大きい。しかし、個々のマシンはServer的な役割から解放されるし、プリンタサーバーやメールサーバー、DNSサーバーなどその他の機能もサーバー製品は搭載しているので、コストとトータルな使い勝手を天秤にかけることになるだろう。

□「AppleShare IP 5.0」の製品情報
http://appleshareip.apple.co.jp/
□「AppleShare IP 6.0」の製品情報(英語版)
http://www.apple.com/appleshareip/
□「Windows NT Server 4.0」の製品情報
http://www.microsoft.com/japan/products/ntserver/



■ で、どれがいいか?

 予算と規模によりご相談、というのが結論。予算順なら、
 安価 → 高価
 Personal Web Server < PC MACLAN、DAVE < AppleShare IP、Windows NT Server

 総接続台数から考えるなら、
 少数 → 多数
 Personal Web Server < PC MACLAN、DAVE < AppleShare IP、Windows NT Server

 設定、管理のしやすさなら、
 容易 → 難解
 PC MACLAN、DAVE < Personal Web Server < AppleShare IP、Windows NT Server

 ファイル共有に限った使い勝手なら、
 良 → 不良
 AppleShare IP、WindowsNT Server < PC MACLAN、DAVE < Personal Web Server

 と(ワタシの主観ながら)思われるわけだ。サーバー製品の体験は条件面などで難しい部分もあるが、それ以外は時間と手間をかけさえすれば、あなた自身が実際にその手で試してみることができる。せっかく、iMacとPC/AT互換機が手元にあるのなら、別々に使わずに仲良くさせてあげましょうよ、というのが今回のマトメ。



■ トランスルーセントのこだわり 完結編

ここにお金が貯まる頃、メインマシンを買い換えます
 もちろん、これからもiMacの周辺機器を購入していけばトランスルーセントな製品は増えていくものと思われるものの、とりあえず収拾をつけようとこんなモノを紹介。実は、仕事で利用するメインマシンは1年半から2年程度のサイクルで買い換えようと、常に思っているわけ。スペック的にも、新製品で買ってからそれぐらい経過すると、周辺機器やソフトでも対応しきれないものが増え始める時期だと考えているから。で、今のメインマシンがPowerMacintosh 8500/180。1996年の9月頃に購入したので(正確には132MHzで購入して、翌3月に180MHzのCPUカードに変更)、そろそろその時期がやって来つつある。なのに、貯めてたお金でiMacを買ってしまったんすよ。この連載の第2回目でも書いてますが、iMacはメインマシンになってないんで…。もっとお金を貯めなくちゃいけないからねぇ。


[Reported by 矢作 晃(akira-y@st.rim.or.jp)]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当pc-watch-info@impress.co.jp