短期集中連載

矢作晃の iMacと暮らす5つのツボ

Part 4:ISDN回線利用のツボ


■ 内蔵モデムを使ったインターネット接続 その2

 探しあぐねていたiMac内蔵モデムのATコマンド一覧は、読者の方の協力で見つけることができた。と、いうか単純にワタシの探し方がヘタだっただけで、教えていただくと、なんのこたぁない場所にあったのである。在処はiMacに付属するCD-ROMのうちの一枚「ソフトウェアインストール」内で、「Mac OS特別付録」というフォルダにPDF形式で収録されている。前回の記事の掲載直後、数通のメールを読者の方々から頂戴し、この在処についてご教授いただいた。なかには、すでに同様の対策をご自分のページに掲載されている方もいらして、URLが書き添えられていたりもした。改めてこの場をかりて、ご連絡いただいた方々に御礼いたします。

 さて、資料が揃ったところで対策である。詳細については前回を参照していただきたいが、ざっと紹介しておくと、iMacに内蔵されているモデムは、V.90/K56flexを利用した接続の際に、ややリスクを伴った速い回線速度で接続を行なうことがままある。これによって、接続中の回線断が起きやすくなっているというものだ。現状で米Apple社がとっている対策は、V.34(最大33.6kbps)で接続するCCLを配布するというものだが、ちょっと後ろ向きすぎるので、ある程度回線速度を制限した状態でK56flexを利用しようと、これから試みるわけである。

 前回すでに述べたが、V.90 → K56flex → V.34とネゴシエーションを試みる現在のCCLは、V.90対応のプロバイダが国内ではまだ少ない現状では無駄が多い。接続先がK56flexだけの対応であるなら、K56flexからネゴシエーションしていったほうが効率的なのである。今回の試みは回線速度の制限と、この変更がミソだ。

 モデム設定ファイルであるCCLファイルは、「機能拡張」フォルダ内の「Modem Scripts」フォルダに収録されている。iMac内蔵モデムの場合「iMac Internal 56k」がそれにあたる。CCLファイルはその中身をみるとテキスト形式になっているので、例えばJeditなどのテキストエディタを使って変更することができるのだ。とはいえ、CCLファイルはテキスト属性ではないので、そのままファイルを開くことはできない。Jeditでは、『option』キーを押しながら、「ファイル」メニューから「開く」を選択すると、ダイアログボックスでバイナリ形式のファイルも編集が選択できるようになる。他のエディタでも手順はほぼ同一であるが、細かい部分が異なる可能性があるのでそれぞれ確認して欲しい(SimpleTextでこの作業はできない)。また「iMacInternal 56k」を編集する前にコピーを取っておき、常にオリジナルを保存しておくことを心がけよう。

 さて「ATコマンドガイド」によれば、通信プロトコル、速度(可変/固定)、最低接続速度と最高接続速度など、今回の試みで必要な変更点は『+MS (プロトコルと速度の設定)』コマンドで管理されている。コマンドの詳細やそれぞれのパラメータは、実際にこのガイドを参照していただくものとし、ここでは変更点についてのみ紹介する。

 前述の方法で「iMac Internal 56k」を編集すると、50行目(すべてCRによる改行の場合)に以下の文字列が存在する。手を加えるのはここだ。

write "AT&FE0Q0V1X4&C1&K3S95=1S7=75S0=0\13"

(1)K56flexによる接続を試みるが、最高速度を48,000bpsに制限する場合。
write "AT&FE0Q0V1X4&C1&K3S95=1S7=75S0=0+MS=56,1,32000,48000\13"

(2)K56flexによる接続を試みるが、最高速度を44,000bpsに制限する場合。
write "AT&FE0Q0V1X4&C1&K3S95=1S7=75S0=0+MS=56,1,32000,44000\13"

(3)K56flexによる接続を試みるが、最高速度を40,000bpsに制限する場合。
write "AT&FE0Q0V1X4&C1&K3S95=1S7=75S0=0+MS=56,1,32000,40000\13"

(4)K56flexによる接続を試みるが、最高速度を36,000bpsに制限する場合。
write "AT&FE0Q0V1X4&C1&K3S95=1S7=75S0=0+MS=56,1,32000,36000\13"

(5)V.34による接続を試みる場合(米AppleComputerの対策と同様)。
write "AT&FE0Q0V1X4&C1&K3S95=1S7=75S0=0+MS=11\13"

 以上のように書き換えればいい。最高速度は回線品質にもよるが、これぐらいが無難だろうと思われるものを例示してある。K56flexの場合は56,000bpsから32,000bpsまで2,000bpsきざみで設定できるので、これ以外の速度へ変更することも可能だ。

 上記のように変更を加えたらCCLファイルを保存する。このとき、変更がわかりやすいようにCCLファイル名を「iMac Internal 56k(48k)」などとしておくのがいい。あとは、「モデム」コントロールパネルで設定を変更すれば完了だ。ただし、個々の環境でどの速度が適切なのかは試行錯誤しかないので、順に試してもらうしかないと思う(ここで下から行くか、上から行くかで性格がわかります)。

「機能拡張」フォルダ内に「Modem Scripts」フォルダがある オリジナルの「iMac Internal 56k」CCLファイル 変更を加えたCCLファイルを「モデム」コントロールパネルで選択する

 ユーザーの便宜を考えれば、こうして変更を加えたファイルをwebページなどで配布できればいいのだが、この手順自体がアップルコンピュータの著作物を改変する行為でもあり、再配布するというわけにはいかない。興味のある方は、自分自身の手で作業を行なって欲しい。もちろん、この変更によってなんらかの不具合が生じた場合でも、アップルコンピュータ、インプレスPC Watch編集部、およびワタシは責任を取ることができないので、あくまで、ユーザー個人が自分のリスクで試していただきたい。また、ほかに何か効果的な方法があったり、内容についてお気づきの点があればご連絡いただきたいと思う。


■ トランスルーセントのこだわり その2


エレコム製の10Base-Tケーブル。フル結線なのでISDNのSケーブルとしても利用できる
 前回はモデムケーブルにこだわってみたが、今回は Ethernetケーブルにこだわりたい。やはりiMacに繋がっているケーブルはトランスルーセントがいいっすよ。というわけで、探し出してきたのがこのケーブルだ。パソコンのサプライ製品では大手のエレコムのネットワーク関連ブランドLaneedのなかの一品である。ワタシは池袋のビックパソコン館で購入した。購入価格は1mのもので350円(税別)、2mだと450円(税別)だった。実は同社は、スケルトンデザインの10Base-T対応4ポートハブ「LD-DHB4SBU」(http://www2.elecom.co.jp/shohin/LD-DHB4SBU.html)も販売している。残念ながら、必要なハブをすでに所有しているワタシはこの製品を購入していないが、製品の写真はwebページに掲載されているので、興味のある方はのぞいてみるといいかも知れない。



■ ダイヤルアップルータのススメ

ダイヤルアップルータを接続したときのiMacにおける「TCP/IP」コントロールパネルの設定。経由先をEthernetにしてIPアドレスはダイヤルアップルータの持つDHCPサーバ機能を利用して取得する
 快適にインターネットを利用する手段のひとつとして、ISDN回線の利用はすでにポピュラーなものとなった。やはりiMacにおいてもISDN回線は利用したいものである。前述のように内蔵モデムによる接続にトラブルが散見するからというわけではないが、アナログ接続に比べてデジタル接続は圧倒的にトラブルが少ない。接続シーケンスに要する時間もほんの一瞬なので、接続速度の向上に加えて使い勝手の良さでも有利なのである。

 一般的にISDNによるインターネット接続で、現在もっとも普及していると考えられるのは、DSUを内蔵したTAを利用する方法だが、シリアルポートを持たないiMacにおいてはこの限りではない。確かにUSBポートに対応したTAも、NECのAtermIT65EX(http://aterm.cplaza.ne.jp/)をはじめとして数社から発売されているが、現時点ではiMacへの対応が発表されている製品はない。近日中に発売される予定のシリアルポートとUSBポートの変換アダプタ「uConnect」を利用する手もあるが、まだ試用をしていないので、これまた保証の限りではない。では、どうするか? ISDN対応のダイヤルアップルータを使うのである。

 '97年夏頃から個人向けの低価格製品が出始めたことで、普及が始まったダイヤルアップルータ。プロバイダなどへのダイヤルアップ機能を搭載し、パソコンとはEthernet経由で接続する。そう、iMacとの接続は、iMacのもつ10Base-T/100Base-TXのポートが利用できるのである。売れ筋の製品はシリアルポートによる接続も可能なうえ、アナログポートも搭載しているのでTAとしても機能する。また、数ポートの10Base-Tに対応したハブ機能をもつものがほとんどなので、数台のパソコンを接続してインターネットへの同時アクセスを実現するなど、家庭内LANの構築では中心的な役割を果たす。価格的にも秋葉原における実売価格で5万円弱からと、前述のDSU内蔵TAに比べて1万円から2万円ほどのアップに過ぎないので、コストパフォーマンスは決して悪くない。

 売れ筋製品のひとつで、普及の先駆けとなったNTT-TE東京が発売するMN128-SOHOシリーズ(http://www.bug.co.jp/mn128/index.html)は、機器の設定方法などもわかりやすく、またユーザーも多いためオススメ製品のひとつ。現状ではワタシも、この製品の初代モデルをiMacをはじめとしたパソコン数台と接続している。しかしiMacを中心に考えた場合、もっとも注目しているのがテレコムデバイスが発売した新製品「NetCruz」(http://www.tcd.co.jp/seihin/NC/index.html)だ。基本的な機能は他社製品と大きく異なるわけではないが、後発なだけに細かい点がチューンナップされている。そしてなによりiMacとの接続で有利と思えるのが、Ethernetのポートがモジュール化されている点だ。


8月末に出荷開始したテレコムデバイスの「NetCruz」。 米Momentum社から間もなく出荷される見込みの「uConnect」。USBポートとシリアルポートの変換アダプタである。

 「NetCruz」には10Base-T対応のEthernetモジュールが内蔵されているが、同社では今後100Base-TX対応モジュールの発売を予定している。このモジュールは100Baseと10Baseとのブリッジとしても機能する見通しで、10/100混在環境の構築にも利用できるはずである。もちろん、ダイヤルアップ接続の通信速度を考えればパソコンとダイヤルアップルータの接続は10Base-Tの速度があれば十分なわけだが、パソコン同士の接続であれば100Base-TXが使えるのにこしたことはない。また10Base-T対応のハブはいまや数千円から購入できるが、100Base-TX対応のハブは数万円、10/100対応のスイッチングハブはそのまた倍以上する。iMacをはじめとして100Base-TXに対応した製品は、100Base-TXのネットワークを構築し、10Base-Tのグループとは「NetCruz」のEthernetモジュールをブリッジとして接続した方が、スイッチングハブやブリッジハブを導入するよりもリーズナブルでもある。

 個人ユーザーで何台もパソコンを所有するケースは、市場全体から見れば少ないとは思うが、iMacクラスの製品が100Base-TXを搭載したことで、個人ユーザーにも100Base-TXを利用する機会が増えたのは事実だ。今後、Macintosh、PC/AT互換機を問わず普及価格帯のパソコンでも100Base-TXの採用が増えるものと思われる。ダイヤルアップルータの導入時には、この点も一考されるのがいいだろう。


[[Reported by 矢作 晃(akira-y@st.rim.or.jp)]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当pc-watch-info@impress.co.jp