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Intelが300MHz版のMMX Pentiumをモバイル向けに投入か?



●売春婦をはべらすゲイツ氏?

 '91年のある日、ビル・ゲイツ氏が、売春婦をはべらせながら、頭の中に思い描いていたことは?

 それを知りたければ、先週米国で発売になった、Microsoftの暴露本「The Microsoft File」を買えばいい。この本の中には、ゲイツ氏とMicrosoftの企てた、さまざまな“悪事”が赤裸々に描かれているのだ。ただし、内容を信用することができればの話だが。

 米国を代表するビジネス誌Business Weekが、「MICROSOFT UNDER THE MICROSCOPE」(Business Week,09/14号、有料、http://www.businessweek.com/参照)で指摘しているのは、まさにその点だ。この書評では、話題のこの本について、面白い部分もあるけれど、「本に新しい秘密はない」上に、「猥褻で信用できなくて古くさい本」だと切り捨てている。

 Business WeekはMicrosoft擁護派? いや、そういうことではない。この書評は、ジャーナリズムの常識から、本のおかしな点を指摘しているのだ。

 例えば、冒頭のシーンでは、著者はどうやっても知り得ないゲイツ氏の心理描写をしているという。また、通常は必ず掲載する、情報の出典リストがこの本にはないという。もちろん、興味深い部分、たとえば、MicrosoftがいかにしてDR-DOSの脅威を回避したかとか、IBMのPC部隊のチーフだったキャナビーノ氏のホテルの部屋に盗聴器が3つ仕掛けられていたといった部分もある。しかし、その多くはFTCなどが集めた資料をベースにしているようだとBusiness Weekは指摘している。そして、The Microsoft Fileの著者が自身を、調査して書くインベスティゲイティブレポーターだと評していることに対して、これはインベスティゲイティブフィクションだと、ばっさり切っている。

 要はジャーナリズムの手法からは外れた、いささかイエロージャーナリズムがかった本であり、フィクションが混ざってしまっていると言っているわけだ。この暴露本に関しては、先々週から話題になっており、ニュースなどで目にした人も多いだろう。ところが、いざ発売されるとさほど話題にならないのも、このあたりが原因だろう。もっとも、クリントン大統領の赤裸々なセックススキャンダルの暴露で影が薄れてしまったのかも知れないが。

 ただし、いかにジャーナリズムの本筋を外れていようと、いかに老舗ビジネス誌に酷評されようと、Microsoftにとってはこの本は問題だ。それは、こうした本が出てきて、それが書店に並んで、人の目を引いてしまうこと自体が問題なのだ。ともかく、パブリックイメージを取り繕うという技法に欠けるMicrosoftにとって、これ以上、イメージが悪くなる要因は願い下げだろう。


●ふたりのビルは同病あい哀れむ?

 もっともいくらイメージが悪くなっても、クリントン大統領は、Microsoftを情報技術規制やインターネットに関する政策づくりから遠ざけるつもりはないらしい。「Magaziner Says Microsoft Not Excluded From Policy Process」(Dow Jones Newswires,9/9、有料、 http://www.dowjones.com/ 参照)によると、マガジナー大統領顧問はMicrosoftの協力は続くと言ったという。ビル・ゲイツ氏とビル・クリントン氏。この2人のビルは、考えようによっては、司法省によって痛いところをつつかれ、また、イメージを傷つけられて世間から後ろ指を指される同士というわけなのかも知れない。


●Intelのモバイル戦略が今週明らかに!?

 さて、今週の技術ネタは、直前に迫ったIntelの開発者向けカンファレンス「Intel Developers Forum」に関する話題。このフォーラムで概要が見えてくるというIntelのモバイル戦略についての2つの記事が目を引いた。「New Intel chips to drive notebook prices down in 1999」(InfoWorld,9/12)と「Intel to spell out 1999 notebook plans」(PC Week,9/11)だ。

 これらの記事によると、Intelは低コストノートPC「Basic Mobile PC」について、いよいよ明らかにするらしい。このセグメント向けに、Intelは来年早々にも「Mobile Celeron」を投入するという。これは、128KBの2次キャッシュを統合した「Mendocino(コード名:メンドシノ)」タイプで、動作周波数は233MHzと266MHzだそうだ。またローコストチップセット「Banister(コード名:バニスター)」も出すが、このチップセットでは、モデムとオーディオのソフト処理が容易になるという。

 これは予想された展開だ。先週、Intelはモバイル向けのドーターカード規格「The Mobile Audio/Modem Daughter Card (MDC)」を発表している。これは、Intelが推進してきた、「AC '97」規格をベースとしており、ドーターカードにアナログ処理部分だけを載せて、オーディオ/モデムのディジタル部分の処理はソフトウェア化を推進しようというしろものだ。この規格でのソフトウェア処理は、チップセット側に「AC-LINK」と呼ばれる、コーデック接続用のインターフェイスを搭載することが前提となっている。

 また、Intelはハイエンド向けには、0.18ミクロンで製造する「Coppermine(コード名:カッパーマイン)」のモバイル版を投入するが、これは「Geyserville(コード名:ゲイサービル)」という省電力機構を搭載すると言う。

 これは以前からウワサされていた機能だ。今のモバイル向けMPUの動作周波数が低く抑えられているのは、発熱の問題だ。この問題を解決するために、これまでモバイルMPUは供給電圧を下げて来なければならなかった。ところが、電圧を下げると、動作周波数を上げるのは難しくなる。

 Geyservilleは、この問題に対するIntelなりの最善の解決策だ。Intelが、Katmai世代のMPUでは、AC電源接続時とバッテリ駆動時では動作周波数が変わるようにするという予測は、今年3月のWinHEC 98でも、MPU業界の有名アナリスト、マイケル・スレイター氏が言及していた。PC Weekの記事は、もっと具体的に解説しており、それによるとAC電源では14ワット、バッテリ駆動では8ワットに熱設計の目安の消費電力が変わるという。この場合、当然、MPUコアへの供給電圧自体を変えていると思われる。8ワットというのは、ノートPCメーカーにとって対応できるほぼ上限に近い。では、14ワットの時はどうするかというと、専用のドッキングベイに装着して、ベイについたファンで冷却するのだという。

 もっとも、Geyservilleの話より驚きなのは、Intelが新しいMMX Pentiumを出すというニュースかも知れない。これらの記事によると、Intelはミニノートなどのために、300MHzのMMX Pentiumを出すつもりだという。MMX Pentiumをもし今のMobile Pentium IIと同じ1.6ボルトで動かすことができれば、300MHz版の消費電力は計算上5.5ワット程度になる。なるほど、Mobile Pentium IIでは到達できない5.5ワット(MMX Pentium 233MHzと同程度)をMMX Pentiumで実現するという手もある。

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('98年9月14日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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