当分は、レガシーインターフェイスとUSBの共存が続きそう(写真:新潟キヤノテックのパラレル/USB変換ケーブル) |
で、待ちに待ったWindows 98がリリースされてUSBが一気に盛りあがったかというと、残念ながらそうとは言いがたい。確かに、販売店に出かけると、USB対応周辺機器がかなり増えていることに気づく。USBハブ、ケーブル類、プリンタ、ディスプレイ、スピーカーなど様々なUSB対応周辺機器が登場しているが、中でも目につくのはマウスやキーボードといった入力デバイスだ。しかし、これらが良く売れているようには思えないのである。
その理由は簡単だ。マウスにしてもキーボードにしても、PCを買えば標準で(タダで)PS/2タイプのものがついてくる。それを捨てて、別途お金を払ってまで、USBのマウスやキーボードに買いかえる積極的な理由が見当たらない。USBだろうとPS/2だろうと、キーボードはキーボードであって、触ってすぐに体感できるようなメリットはないのである。他のデバイスも同様だ。スピーカーをUSBにしたからといって、必ず音が良くなるとは限らない。最終的な音質に最も決定的な影響を与えるのは、スピーカーそのものであり、インターフェイスは二の次である。プリンタの場合、USBネイティブ対応のプリンタは非常に少なく、「選ぶ」に至らない、というのが正直なところだ。
もちろん、USBにメリットがないわけではない。性能面でも、シリアルやパラレルといったレガシーインターフェイスに比べて高速で、対応デバイスの性能向上が期待できる。問題は、それが分かるデバイスがまだないということだ。入力デバイスの場合も、USBの方がCPUやバスに対する負荷が軽く、システム性能を阻害しないという利点がある。だが、それを体感できるかというと、話は別だ。システム性能の改善は分かりにくい。ましてや、低価格PCがブームになるプロセッサパワー余り時代?にあっては、重視される項目ではない。普及させるには、iMacのように、エイヤッとレガシーインターフェイスを切り捨て、USBしかないPCを作るよりないのかもしれない。
にもかかわらず、そういう筆者が使っているキーボードは、未だにATコネクタを備えたものだ。要するにUSBキーボードどころか、PS/2タイプですらない、大型の5ピンDINコネクタがつけられたキーボードを未だに愛用している。考えようによっては、キーボードは最もUSBへの移行が容易なデバイスである。ほとんどのシステムBIOSが、USBキーボードによるレガシーエミュレーションを可能にしているくらいで、互換性の問題をほとんど気にせずに済む。
これだけ条件が整っていながら、新しモノの好きの筆者が、古いビンテージもののキーボードにこだわるのは、USBに限らず、新しいキーボードに満足できないからだ。そして悪いことに、今後満足できるキーボードが出てくる可能性はほとんどない。筆者が好む打鍵感を持つメカニカルキースイッチは、もはやほとんど作られていないのである。キースイッチがない以上、それを使ったキーボードも作れない。PCからPS/2キーボードコネクタが消え、USBコネクタしかなくなる日まで、手持ちの古いキーボードを大事に使っていくしかないのである。願わくば、その日までにPS/2タイプのキーボードをUSBポートに接続するためのアダプタが製品化されて欲しい。これが可能なのは、初代PC98-NXのUSBキーボードに、PS/2マウスポートがついていたことでも明らか。誰か作ってくれないだろうか。
[Text by 元麻布春男]