【新連載】
塩田紳二のソフトウェアレビュー

 9月より、塩田紳二氏によるソフトウェアレビューを月1回の予定でお送りします。メールソフト、ブラウザなどインターネットソフトを中心に取り上げていきます。操作画面などをなるべく盛り込むため、基本的に2日にわたって前後編でお送りする予定です。(編集部)


第1回:EudoraPro4.0-J 【前編】

EudoraPro 4.0-J
価格:オープンプライス
問い合わせ先:クニリサーチインターナショナル
       Tel.06-411-0234
(写真はWindows版、Mac版も発売中)

 Eudoraは、老舗の部類に入る電子メールソフトである。もともとはMacintosh用として開発され、また、Lite版が無料だったこともあり、ユーザーにより日本語化され、国内のMacintoshユーザーの多くが利用していた。

 ウィンドウズ版も、Lite版が無料でQualcommのサーバーに上がっていたのだが、日本語対応していないため、日本語版の発売元であるクニリサーチによる日本語化まで、国内での利用はほとんどなかった。もっとも、Macintoshユーザーで平気でWindowsユーザーにBinHexフォーマットの添付ファイル(しかもそれがMacDrawのファイルだったりする)を送ってくる人もいたので、BinHexメール対策に利用されたこともある(Windows版のメールソフトでBinHexに対応しているソフトはそう多くない)。

 その最新版がEudoraPro4.0-Jである。今回は、このEudoraPro 4.0 Windows版(以下Eudora40と略す)の評価レポートを2日に渡ってお届けする。



■概要

画面1
画面 1:EudoraPro4.0-JのGUIインターフェイス
 Eudora(画面 1)の特徴といえば、やはりこなれたユーザーインターフェイスである。さすがに長い歴史を持つソフトといった感じだ。Ver.2.0の頃は、フォルダのツリー表示がない代わりにメニューがフォルダと同じ階層構造になっていた。このメニューは、単にフォルダ表示だけでなく、メッセージの移動先の指定でも同じように利用できた。640×480程度の解像度では、ツリー表示に狭い画面を占有されず、意外に使いやすかった。しかも、この項目の中に「新規作成」が含まれていたため、移動先のフォルダを探しているときに、新しくフォルダを作り、そこに直接移動させることができた。

 マシンのスペックが上がり、高解像度の画面が使えるようになると、ツリー表示など常に出していてもメッセージ表示領域が圧迫されることもない。こうして、ここ何回かのバージョンアップで、フォルダのツリー表示やプレビュープレーンといった機能も追加され、新興のメールソフトと見た目には違わないウィンドウスタイルとなったのである。

 また、今回のバージョンより、POPだけでなく、IMAP4にも対応した。IMAP4は、サーバー上に受信したメッセージを階層フォルダを使って格納できるプロトコルで、サーバーにアクセスさえできれば、どこからでも、過去のメールを参照することができる。このため、すべての受信メールをローカルディスクに管理しなければならないpopに比べて、複数箇所でのメール利用やモバイルでの利用に向いている。このIMAP4対応は、最近のメールソフトで流行りの機能で、国産メールソフトの老舗WinBiffや、Microsoft Outlook Express、Outlook 98、Netscape Messengerなどで利用可能だ。筆者は、日常的にIMAP4を使って受信メールを管理しており、今回は、IMAP4を使った場合についてもレポートしてみたい。



■GUIまわり

画面2
画面 2:EudoraPro4.0-Jのメールボックス
(メッセージリストウィンドウ)
 Eudora40は、MDI形式のメインウィンドウを持つ。メッセージはフォルダごとに1つのメッセージリストウィンドウ(画面 2、Eudoraではメールボックスと呼ぶ)を持ち、これとは別にフォルダツリーや署名、ファイル管理などができるウィンドウがある。このウィンドウは、ドッキング(メインウィンドウの四方に張り付く)、フローティング(メインウィンドウの外にも配置可能)、通常ウィンドウ形式を選択できるほか、表示させないことも可能だ。

 メインウィンドウには、メニューバーの下にツールバーがある。このツールバーは、ボタンのカスタマイズ(項目の追加や削除)ができるほか、フローティング形式もしくは非表示にすることが可能である。このツールバーは、標準ではIEやWindows 98などで採用されているCoolBar(ReBarとも呼ばれる)と同じくバーの左側に縦線の入る形式(画面 3)のものだが、ツールバーではバンド同士を重ねることはできない。また、設定により、スタイルを従来のツールバーのように通常のボタンとして表示(画面 4)させることも可能だ。こうした細かい配慮も、すでに根幹部分が安定している老舗ソフトならではのものかもしれない。

 メインウィンドウ下部には、ステータスバーがあり、その上にはEudora40メインウィンドウ内用のタスクバー(Windows 95、Windows 98と同じくウィンドウの短冊状アイコンが表示される)もある。このタスクバーは非表示にすると、最小化したメールボックスウィンドウは、ウィンドウ内に自由に配置できる短冊状アイコンとなり、表示させると、短冊状アイコンは、メインウィンドウ内に表示されない。

 これらの作りからわかるように、Windows用アプリケーションとしては、きわめて普通のスタイルである。

画面 3
画面3:EudoraPro4.0-Jのツールバー(標準の状態)
画面 4
画面4:ツールバーをボタンとして表示することもできる


 


■メールボックスウィンドウ

画面5
画面 5:メッセージリストの部分は、罫線の入った表形式
 各メールボックスに対応したメッセージリストを表示するウィンドウは、設定により、選択されているメッセージを表示するプレビューペーンを持つ。これは、メールボックスウィンドウを上下に分割するもので、境界線をマウスでドラッグすることで、大きさを変えることができる。

 このプレビュー領域を使う場合、設定により、一定時間以上表示したメッセージを「既読」とすることも可能である(既読となるまでの時間も設定可能)。

 このプレビュー領域は、最近では多くのメールソフトが採用しており、一定時間以上表示すると既読とする機能もOutlook Expressなどがすでに装備している。現在、インターネットでは、この無料のOutlook Expressを使うユーザーが増えているが、Eudora40がこうした機能を装備するのは、この無料のOutlookExpressなどへの対抗措置であろう。古くからあるソフトウェアであるにもかかわらず、いままでのスタイルにこだわらずにこうした機能を取り入れるあたり、「焦り」と見るか、「柔軟」と見るか? 真意の程はわからないが、少なくともOutlook Expressなどから乗り換えるユーザーには、違和感のないものになっている。

 もちろん、1つのメッセージを独立したウィンドウに表示させることも可能である。複数のメッセージを同時に表示させたいときなどには、便利である。
 メッセージリストの部分は、罫線の入った表形式(画面 5)で、ここは昔から変わらない部分といえる。前述のプレビュー領域を表示させないと昔のEudoraのウィンドウそのままの雰囲気である。この部分は、各フィールドをクリックすると、その項目で並び替えが行なわれるのはごく普通の機能だが、逆順に並べ替える場合には、シフトキーを押しながら項目名をクリックする。なお、この項目の表示順は変更不可能で、各項目の表示はオンオフのみが可能。

 メッセージには、7つのラベルを付け、色を付けて表示が可能。これは昔からEudoraにある機能で、色やラベル名を自分で設定できるのが特徴。また、ラベルは、振り分け機能で受信時に自動的に付けることもできる。これを使うと、最初から別メールボックスに振り分けてしまうほど、重要度は低くないが、急いで読まなくてもいいメールや、すぐに返事を出さねばならない、特定のユーザーからのメールを最初から色分けして表示することもできる。

 日付表示は指定により、3段階の表示ができる。今日来た最近のメールは時間を表示し、今週受け取ったもの(古いメール)は曜日を表示、それ以前(もっと古いメール)は日付の表示といった切り替えが可能だ。また、この切り替えの日にちや表示方法も設定できる。このときに表示される日時は、差出人のタイムゾーンで表示することも、Eudora40の動作環境のタイムゾーンに変換して表示することもできる。海外からのメールがあると、簡単に前後を判断できないが、すべてローカル時間に変換すると前後関係が判断しやすい(なお、Eudora40には俗にいうスレッド表示機能(注)はない)。

(注)スレッド表示機能:ヘッダの情報をもとに、メールの応答関係が分かるようにひとつながりでメールを表示する機能。メーリングリストを利用している際など、ひとつの話題の推移を追う時などに便利な機能だ。



■ツリー表示ウィンドウ

画面 6
画面 6:
ツリー表示ウィンドウ
(ファイルブラウザ)
 標準状態でウィンドウ左側にドッキングしているツリー表示ウィンドウ(フローティング表示も可能)は、複数の機能を持つウィンドウで、下部にあるタブで機能を切り替える。ここに表示可能なものは、メールボックスツリーの他に、以下のものがある。

・ファイルブラウザ(画面 6)
・定型文書リスト
・登録署名リスト
・パーソナリティリスト
 ファイルブラウザは、Explorerのようにファイル表示が可能なもので、ここからファイルをドラッグして添付ファイルにすることも可能だ。

 定型文書リストは、ファイルとして保存した定型文書(あらかじめ、内容を入れたり、書式指定を行なったメッセージの雛形)のタイトルを表示するもので、ここから定型文書をダブルクリックしてメッセージ作成状態にすることができる。

 パーソナリティとは、俗にいう「アカウント」で、ユーザー名やメールサーバー名などをひとまとめにしたメールアクセスの設定である。複数のプロバイダと契約している場合などに、この機能を使い、複数サーバーへのアクセスを行なう。



■メッセージ作成ウィンドウ

画面 6
画面 7:
メッセージ作成ウィンドウ
 メッセージ作成ウィンドウは、メニューバーがなく、タイトルバーの下にツールバーがならぶシンプルなもの。クライアント領域は上下に2分割されており、上側が宛先などを入れるヘッダ部分、下側が本文領域になっている。(画面 7)

 ツールバーには、優先度や署名、エンコード方法(MIMEとUUDECODEとBINHEX)の切り替えや、タブやワードラップ(76文字での自動改行)のオンオフなどの指定、および送信ボタンがある。

 また、HTMLメールの送信を行なう場合には、書式バーを表示させることもできる。
 以前のバージョンでは、MIMEで提案されたRich TEXT形式(マイクロソフトのRTFとは違い、タグで属性を表したのも)が使えたが、Eudora以外、ほとんどのソフトが対応していなかったため、HTMLメールの作成機能に変更になった(あるいはHTMLメールを送りつけてくるユーザーがあまりにも多いからか?)。書式を付けた場合には、TML形式のメールが送信されるが、設定により、常にテキストメールのみ発信させることも可能。

※8日に後編(メール機能、IMAP4対応、気になる点、製品評価)を掲載します。

[Text by 塩田紳二]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当pc-watch-info@impress.co.jp