一ヶ谷兼乃の「PCパーツ天国」

中・上級者向けパーツレビュー

一ヶ谷兼乃の「PCパーツ天国」 第6回

速報:新Celeron、その実力や如何に!?

~ 待ちに待った「Mendocino」使用レポート ~



■この夏はIntelの新CPUラッシュ!

 あなたは、この夏Intelから発売になった新しいCPUをいくつ思い浮かべることができるだろうか? 正式に発表になったものだけでもXeonや450MHz版Pentium IIなどがあるが、そのほかにもIntelの正式発表こそなかったが、8月中旬になるとPentium II 266/300MHz版の0.25ミクロンルールで製造されたロットがPCショップの店頭に並び始めた。こういったものも含めれば、Slot 1のCPUはこの夏だけで世代交代したといえるだろう。

 0.25ミクロンルールで製造された新Pentium II 266/300MHzは、マニアの間で爆発的な人気を得ている。それというのも、クロックアップ耐性が極めて優れているからで、266/300MHz版よりも正規の動作クロックが高い製品より高価で販売されるという逆転現象さえ生んでいる。ただし、この新しいPentium IIもこれまでと同じ価格帯のリテール版が登場し始めているので、この状況は沈静化の方向に向かうと思われる。

Celeron 300A MHz  この新CPUラッシュはCeleron系列も例外ではない。それが、コードネーム「Mendocino」、新しいCeleronだ。この第2世代のCeleronには300MHz、333MHz版が用意され、300MHz版については従来のCeleronと区別するために、300A MHz版と表記される。先週あたりからバルク版が店頭で並び始め、リテール版の発売は9月中旬と言われている。

 新Celeronと従来のCeleronの違いは、2次キャッシュを搭載している点だ。容量は128KBとPentium IIの1/4だが、動作クロックはコアクロックと同期しており、2次キャッシュに関してはPentium IIより2倍速いことになる。



■待ちに待った「Mendocino」

 筆者は、インターネットや口コミでMendocinoの噂を耳にするたびに、気になってしょうがなかった。秋葉原では、0.25ミクロンプロセスのPentium II 266/300MHzが話題になっているときでも、気持ちはMendocino一筋。新Celeronが店頭に並び始めたという情報を聞きつけるとすぐに、Celeronはリテール品が良いという俗説があるにもかかわらず、発売されて間もないバルク版の新Celeronを購入した。

sSpec Number
【sSpec Number】
 新Celeronには300MHz版と333MHz版があるが、今回はあえて300MHz版の300Aを選択した。どちらも規定ベースクロックが66MHzで、Celeron 300Aは内部4.5倍速動作、Celeron 333が内部5倍速動作となる。Slot 1対応CPUは、500MHz動作が一つの山と言われており、簡単な装備では500MHzを超えることが難しい。500MHz(100MHz×5)動作は難しいかもしれないが、450MHz(400MHz×4.5)動作は可能ではないかという単純な予測に基づく購入だ。なお、今回購入したCeleron 300AはsSpec NumberがSL2WM、マレーシア産であった。

 まず、新Celeronを見て新しくなったことを実感できるのがそのチップサイズ。チップの金属部分が大きくなっており、2次キャッシュを内蔵したことによるダイサイズの拡大が肉眼で確認できる。

旧Celeron
【旧Celeron】
新Celeron
【新Celeron】


■クロックアップに最適なマザーボードABIT BH6

ABIT BH6  また、Celeron 300Aの購入に合わせてマザーボードも、CPUのコア電圧をBIOSセットアップで変更できるABIT BH6に新調した。

 今回は、Celeron 300Aのレポートなので、詳細は割愛するが概要だけお伝えしておく。

 ABIT BH6は440BXを使ったSlot 1対応ATXマザーボード。1つのAGPスロット、4つのPCIスロット、1つのISAスロット、1つのPCI/ISA兼用スロットを持つ。DIMMスロットは3つで、I/Oコネクタは2段式、Wake on LANやSB-Linkのコネクタも装備する。大きさは最近よく見られるコンパクトなATXサイズ。

 特徴はBIOSセットアップでベースクロック、動作倍率、コア電圧までもがコントロールできる点だ。さらに、ベースクロックとして124MHzが設定できたり、B21ピンの信号のHigh/Lowまでコントロールできるなど、クロックアップ目的のPCユーザーにもってこいの仕様になっている。また、ABIT BX6にあった、クロックアップ時の障害になっていたDIMMソケット付近のメモリバッファがBH6になって取り除かれるという、ありがたい仕様変更も行なわれている。

 これらの仕様から、現在手軽にクロックアップを楽しむためには、最も適したマザーボードといえるだろう。


■Celeron 300A、その実力は?

 早速、ABIT BH6をケースに組み込み、Celeron 300Aを装着。BH6が正しく組み込まれているのかのチェックも兼ねて、規定の66MHz×4.5倍にセットする。起動すると画面には「CELERON-MMX」と表示され、BIOSが認識したことを確認できた。

 ここで注意したいのは、BH6は新しいマザーボードなのでそのままで新Celeronを認識することができたが、一部の440BXのマザーボードでは新Celeronは認識すらされず起動もしないことがあることだ。その場合は、少なくとも最新のバージョンにBIOSをバージョンアップする必要がある。

 こういった状況があるので、新Celeronを搭載するのであれば、自分のマザーボードが新Celeronに対応しているか、または最新BIOSで新Celeronに対応しているのを確認してから購入した方がいい。

 BIOSの起動を確認したところでWindows 98をインストール。とりあえず規定値の300MHzでの動作を確認した。さて、これからが期待のクロックアップ実験だ。まず、BH6で内部倍速をいろいろ変更してみたが、どの設定でも4.5倍速で動作することがわかった。つまり、Celeron 300Aは内部倍速が4.5倍固定で、クロックアップを楽しむには、ベースクロックをクロックアップするしかないということになる。

 そこで、ベースクロックをいろいろ変更してみた。まずは、いきなり100MHzに設定、Celeron 300Aは450MHz動作となる。この設定でもすんなり動作し、さまざまなアプリケーションを操作しても、まったく問題ない。また、旧Celeron 300MHz版を450MHz駆動させた場合と比較しても、体感でわかるほどシステム全体のパフォーマンスが向上している。

 次にベースクロックを103MHzに設定、463MHz動作となる。この設定ではOSが起動はするものの、動作に怪しい部分が随所に見られた。そのため、コア電圧を2.0Vから2.2Vに昇圧。それだけでシステムはピタッと安定した。いろいろなアプリケーションも問題なく動作する。常用するシステムとしても、問題ないレベルになった。

 さらにベースクロックを112MHzに設定。これで憧れの500MHz Overの504MHzになる。しかし、この設定ではOSは起動するもののあらゆる動作が不安定になる。アプリケーションを起動しても、いつのまにか終了してしまったり、アイコンをダブルクリックしても起動しなかったりするなど、さすがに使いものにならない。そこで、BH6にCeleron 300Aを搭載した場合に設定できる最も高いコア電圧2.3Vに昇圧する。この設定だと、たまにおかしな挙動をすることがあるものの、そこに目をつぶれば使えないわけではない。ちょっと、はらはらするものの、仕事で使わないのであれば、チャレンジしてもいいかなというレベルだ。

クロックアップ結果
コア電圧2.0Vコア電圧2.2Vコア電圧2.3V
450MHz(100MHz×4.5)
463MHz(103MHz×4.5)
504MHz(112MHz×4.5)
◎=完全動作、○=一部不安定、△=動作不安定

 504MHzで挙動不審ながら動作が可能なことを確認したところで、同じ0.25ミクロンルールで製造されたPentium II、Celeron 300、Celeron 300Aの3製品でベンチマークをとって比較してみた。まず、コア自身の性能を比較するため、ベースクロック66MHzで、内部動作4.5倍速で動作させたWindows 98環境で測定。HDBENCHでは、どのCPUでもほとんど差がなく、これはCPUの演算能力自体は同一であることを示している。しかしSuper PIでは、Celeron 300Aが最も良い結果を出している。Super PIが、2次キャッシュの容量よりも速度が結果に影響しやすいプログラムであるとしても、この結果は興味深い。

HDBENCH 測定結果
浮動小数点整数演算Memory
300MHz(66MHz×4.5)
Celeron 300242581925415544
Pentium II 300242571925115487
Celeron 300A242651927015604
450MHz(100MHz×4.5)
Celeron 300364512892423433
Celeron 300A364812893623476
504MHz(112MHz×4.5)
Celeron 300A408203238426300
Super PI(104万桁)測定結果
所要時間
300MHz(66MHz×4.5)
Celeron 3008分 4秒
Pentium II 3007分51秒
Celeron 300A7分12秒
450MHz(100MHz×4.5)
Celeron 3005分22秒
Celeron 300A4分44秒
504MHz(112MHz×4.5)
Celeron 300A3分57秒




■新Celeron 300Aは買い!!

 以上の通り、Celeron 300Aは期待どおりの結果を残してくれた。2次キャッシュがない旧Celeronは、確かに速いものの、アプリケーションによっては、そのパワーが実感できないことがあった。しかし、このCeleron 300Aでは、常に極めて快適である。クロックアップ耐性は、当然CPUのロットや、それを動作させる環境によって左右されるが、今回使ってみた限りでは新Celeronの素性が良いことは間違いないだろう。

 また、今月半ばには、新Celeronのリテール版が店頭に並ぶことが予想され、しばらくすれば価格もリテール版Celeron 300Aが2万円台前半に落ち着いてくるはずだ。この低価格で、一般的なPCの使い方であれば、十分な性能を提供してくれるのだ。まさに、K6-2のようなSocket 7互換CPUにとって驚異的な存在になる。

 筆者は、Windows 98やAGPといった最新テクノロジを安心して使うには、やはりインテルCPU、インテルチップセットを使うのが近道であると思っている。もちろん、これまで低価格でパワーの得られるSocket 7互換チップ、CPUも気になっていた。しかし、新Celeronがここまでのパフォーマンスを提供してくれるのであれば、Pentium IIを含む他のCPUは、筆者にとってあまり気にならなくなってしまった。

 いずれにせよ、Celeron 300Aはコストパフォーマンスが極めて高いCPUであり、現在一番「買い」なCPUであることは間違いない。

[Text by 一ヶ谷兼乃]


■■ 注意(編集部)■■

・CPUのメーカー規定周波数以上の動作(クロックアップ)は、CPUや関連機器を破損したり、寿命を縮める可能性があります。その損害について、筆者およびPC Watch編集部、またCPUメーカー、購入したショップもその責を負いません。クロックアップは自己の責任において行なってください。

・この記事中の内容は筆者の環境でテストした結果であり、記事中の結果を筆者およびPC Watch編集部が保証するものではありません。

・PC Watch編集部では、クロックアップについての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。


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