●オルチン上級副社長がWindows NT 5.0以降のバージョンについて言及
ハイテク産業では、2世代くらい将来の製品までの大風呂敷ビジョンを広げるのは当たり前。というわけで、Microsoftはいよいよ「Windows NT 6.0」について語り始めた。「PC World Today: Microsoft Plans Windows NT 6.0」(PC World,8/19)によると、シアトルで先週開催された技術ワークショップ「NT Reviewer's Workshop」で、Microsoftのジム・オルチン上級副社長は5.0以降のバージョンのWindows NTの方向性とフィーチャについて簡単に説明したという。それによると、リアルタイムのオーディオとビデオ機能や、より統合されたプログラミングと管理環境、それにWebとWin32 API(アプリケーションプログラミングインターフェイス)の統合、XML(Extensible Markup Language)のより進んだサポートや64ビットサポートなども将来のバージョンに含まれるという。
だが、Windows NT 5.0を待つユーザーには、こうした将来の話よりも、安定したWindows NT 5.0を出そうと注力しているという話の方が、きっと心地よく聞こえるだろう。もっとも、オルチン氏はそれも承知しているらしく、スピーチのトランスクリプト「NT Reviewer's Workshop」を読むと、テストを担当しているカスタマから「出荷してよい」という評価がでない限り出荷しないと宣言。また、Microsoft社内に2万のクライアントと1,000台以上のサーバーをWindows NT 5.0ベースで導入して評価もすると言っている。さて、これで出荷は2000年に間に合うのだろうか。
●Microsoft裁判の公判開始は9月23日に延期
さて、Microsoftを悩ます反トラスト法違反裁判だが、こちらの方は公判を前に混乱が続いている。最新の状況では、9月8日から始まる予定だった審理が2週間後ろへずれ込むことになった。この件は「Microsoft trial start is delayed」(San Jose Mercury News,8/20)などが報道しているが、Microsoftのビル・ゲイツ会長兼CEOを始めとしたMicrosoft幹部の証言聴取を公開にするか非公開にするかですったもんだもめて、日程が後ろへずれてしまったためだ。
この証言公開問題に関しては、The New York Times、Seattle Times、BloombergNews、Reuters Americaなどメディア各社が公開を要求していたが、19日に控訴裁判所によって公開の請求は退けられ、結局非公開になった。ここでも、Microsoftに厳しい連邦地方裁判所と、Microsoftに有利に動く控訴裁判所という構図が、繰り返されたわけだ。
この記事では、ゲイツ氏は明日にでも証言聴取に応じるというMicrosoftに対して、司法省側は、Microsoftはこれまでゲイツ氏はすぐには聴取に応じられないと言っていたくせに「おかしなことに、控訴裁判所の決定が出たら、翌朝から応対できるようになった」と皮肉っている。
●IntelがPentium IIにSlot 1用新パッケージを用意?
Intel関連記事で目を引いたのは、同社がPentium IIのパッケージを変更しようとしているという記事。「New package for Pentium II」(NEWS.COM,8/14)によると、Intelは現在のPentium IIパッケージ「SECC(Single Edge ContactCartridge)」のほかに、「SECC 2」と呼ばれるより簡略化した低コストパッケージを計画しているという。このSECC 2で重要なのは、パッケージ内のCPU本体は「Plastic Land Grid Array (PLGA)」ではなく、「Organic Land Grid Array(OLGA)」となることだ。なんのことやらと思うかも知れないが、これはIBMやAMDが「Controlled Collapse Chip Connection (C4)」と呼んでいる技術とほぼ同じもの。C4に対応して作られたチップは、ダイ(半導体本体)サイズを小さくし、より高クロック駆動ができるようになると言われている。他のMPUメーカーが次々にC4に移行するなか、Intelがいつデスクトップ用MPUでC4に移行するのかが注目されていたというわけ。Intel関係者は、これまでC4にメインストリームのMPUを移行させないのは、歩留まりやコストなどで問題が発生する可能性があるからだと言っていたが、それを解決できるメドが立ったということだろうか。
●Intelが9月にオーディオ/モデム処理のソフト化の具体像を明らかに?
このほか、Intel関連では9月中旬に開催されるIntelの開発者向けカンファレンス「Intel Developer Forum(IDF)」関連のニュースがいくつか出てきた。「Intel musters tiger team to stomp out the ISA bus」(Electronic Engineering Times,8/19)では、Intelによるオーディオ/モデム処理のソフトウェア化戦略について、新事実を伝えている。Intelはこれまで、ローコストPCやノートPCでは、オーディオとモデムの処理を現在の専用LSIからMPUベースに移してしまう計画を徐々に明らかにし、そのためにAC '97という規格を提唱してきた。そして、9月のIDFでは、それを実現する「audio/modem riser (AMR)」カードのデザインについてアナウンスするらしい。これは、'99年に登場するチップセット「Whitney」と「Camino」でサポートされるインターフェイス「AC '97 signaling link」のコネクタに挿すコーデック用ライザーカードだという。記事によると、これによって2001年までに米国市場のPCの半分はオーディオ処理がMPUに移行するという予測があるという。さて、Creative Labsはどう対抗するのか。
●IntelがサーバーにRambus DRAMを推進する計画を明らかに?
もうひとつの記事は、Intelが次世代DRAMとして推進するRambus DRAMに関する話題。「Intel pushes Direct Rambus into PC servers」(Electronic EngineeringTimes,8/17)によると、Intelはいよいよワークステーション/サーバー分野での「Direct Rambus DRAM(Direct RDRAM)」への移行計画を明らかにするらしい。Intelは、これまでデスクトップPCでは'99年からDirect RDRAMへの移行を始めるが、サーバー/ワークステーションやモバイル分野ではもう少しあとから移行を始める計画を明らかにしてきた。これは、Direct RDRAMでは、当初大容量構成や省電力化に疑問があると見られているためだ。
この記事によると、IntelはDirect RDRAM用のメモリモジュール規格「RIMM(Rambus in-line memory module)」でSDRAMをサポートするためのASIC(特定用途向けIC)を開発しており、それをサーバーやワークステーション向けにも提供するとしている。記事によると、Intelが'99年後半に提供するミッドレンジまでのサーバー/ワークステーション向けのチップセット「Carmel」は、Direct RDRAMインターフェイスを搭載するという。Intelとしては、このASICを移行時のステップとして、Direct RDRAMに移行させようということだろうが、サーバー/ワークステーション分野では、SDRAMやDDR SDRAM、SLDRAMなど他のDRAMを支持する声も多い。さて、どうなるか。
●ChromaticがディジタルTV用メディアプロセッサを開発中
最後に、メディアプロセッサ「Mpact」の開発を取りやめてしまったChromatic Researchの話題をひとつ。「Chromatic revises technology and strategy」(Electronic Engineering Times,8/18)によると、同社は現在開発しているディジタルTVやADSLモデムなど向けの新プロセッサでは、VLIW(超長命令語)テクノロジの採用をやめて、比較的シンプルなプロセッサコアを2つ、ワンチップに集積する“SMPon a chip”というアプローチを取ることにするという。どうやら、VLIWでのプログラミングにこりたらしい。
('98年8月24日)
[Reported by 後藤 弘茂]