●'99年にはソフトモデムが市場の3割以上に?
PCでは、今後、ソフトモデムが急激に伸びて'99年には30から40%がソフトモデムになってしまう。こんなアナリストの予測を紹介しているのは「Audio spec bites into modem chip market」(Electronic Buyers' News,8/10)。この記事では、その証拠としてRockwell Semiconductor SystemsがV.90のソフトモデムを発表する予定で、他のベンダーもその方向に進んでいると報じている。いきなりソフトモデムがそんなに浸透すると言われてもにわかには信じがたいかも知れないが、じつは業界でこの展望に疑問を差し挟む声はあまりない。というのは、Intelがモデムのソフトウェア処理の方向を推進しているからだ。
記事によると、Intelはオーディオコーデックのスタンダード「Audio Codec '97version 2.0」を開発しており、その標準に準拠した「AC '97 link」というインターフェイスを、次世代のメインストリームデスクトップPC向けチップセット「Camino(カミーノ:コード名)」に入れるという。Caminoに関する詳細は、9月に開催されるIntelの開発者向けカンファレンス「Intel Developers' Forum」までおあずけということだが、この話はかなり流布しており間違いはないだろう。また、IntelとMicrosoftは1年以上前からローエンドPCではモデム処理をソフトウェアベースに移行させる計画を明らかにしており、すでに既定のラインとなっている。当然、Rockwellの動きもIntelと協調したものなのだろう。
●Intelの最新MPU価格表
Intelと言えば、先々週、攻撃的な価格引き下げ計画をベンダーに明かしたが、その最新のリビジョンアップ版の価格表をElectronic Buyers' Newsのサイトで見ることができる。「July Pricing for Intel microprocessors」がそれ。この表の問題は、これを見ると350MHz以上のPentium IIプロセッサ搭載マシンを今買う気がしなくなるというところだろうか。それにしても、Intelはやっぱりアグレッシブだ。
●Pentium II Xeonがまたまた遅れ
もっともこの表には、最新の情報が反映されていない。それは4 CPUサーバー向けの450MHzのPentium II Xeonプロセッサの出荷が'99年第1四半期まで伸びたことだ。このニュースは、「450-MHz Xeon delayed again」(NEWS.COM,8/10)など多くの記事がIntelのスポークスマンのコメント入りで報じている。せっかくハイエンドサーバー市場に切り込んだというのに、出だしでつまずいてしまったのは、Intelにとって、ちょっと痛手だ。
この問題は、4 CPUをサポートする450NXチップセットとの組み合わせで起きるという。そのため、「Intel Says Xeon Still Needs More Work」(Electronic Buyers'News, 8/11)によると、Intelでは2 CPUまでをサポートするローコスト版の450NXBasicチップセットをリリースする予定だと伝えている。
●CompaqがAlphaのメインアーキテクトを失う
さて、Pentium II XeonのつまずきやMercedの遅れと性能への懸念で、前途が明るくなってきたのはCompaq ComputerのAlphaプロセッサだ。ところが、そんな矢先に、Alphaの重要アーキテクトが辞めてしまったというニュースが飛び込んできた。「Compaq loses key Alpha designer」(Electronic Engineering Times,8/11)によると、Alphaアーキテクチャの創造者のひとりDan Dobberpuhl氏がCompaqを辞め、スタートアップ企業に移ってしまったという。Dobberpuhl氏は、次世代Alphaを開発しているPalo Alto Design Centerのディレクタだそうだから、Merced対抗チップの行方に、また暗雲がかかってしまったわけだ。
●Philipsが64ビット版メディアプロセッサを発表
半導体ネタをもうひとつ。Philipsはメディアプロセッサ「TriMedia」を大幅に拡張しようとしているらしい。「Philips plans 64-bit TriMedia processor」(Electronic Engineering Times,8/4)によると、同社は10月13日に開催されるMPU関連カンファレンス「Microprocessor Forum」で、64ビット版の次世代TriMediaを発表するという。また、来週8月18日に開催されるカンファレンス「Hot Chips」では、次々世代のTriMediaに搭載する予定のファイブスロットインストラクションアーキテクチャという技術を明らかにするという。これは、最大5つのオペレーションを超長命令のなかのスロットに組み込む技術だという。ディジタルTVで脚光を浴び始めたメディアプロセッサマーケットで、今や先頭ランナーになってしまったPhilipsは本気でやる気らしい。
●Microsoftはライバルが怖かったと主張
米Microsoftは9月からの反トラスト法裁判を前に、司法省と20州&特別区に対する反論のドキュメントを裁判所に提出した。88ページに及ぶという長大なこの文書が、またニュースサイトで話題を呼んでいる。「Microsoft Says Rival Is Unharmed」(Washington Post,8/11)によると、MicrosoftはNetscape Communicationsのブラウザの供給を阻害していないと主張、先週伝えられていた通り、連邦地方裁判所に訴えを棄却することを求めたという。もっとも、ジャクソン判事は先週のミーティングで棄却のつもりがないことを示しているそうだ。Microsoftにしても、よもや棄却されるとは思っていないだろうから、これも裁判へのカードのひとつなのだろう。
面白いのは、このドキュメントの中でMicrosoftが自分たちのことを、モノポリストではなく、ただパワフルな他の企業(Netscapeなど)にひっくりかえされることを恐れただけだ、と表現しているらしい点だ。これは「Microsoft's defense: `Wefeared rivals'」(San Jose Mercury News,8/10)が伝えている。それによると、司法省の訴状などで取り上げられていた、Microsoftの内部メールの「Netscapeの空気供給を止めてやれ」といった表現も、競争を鼓舞するためのおおげさな表現だと言っているらしい。これに対して司法省のスポークスマンは、「Microsoftは何も新しいことは言っていない」とバッサリ。
●裁判所はゲイツ氏の公判前証言を公開へ
また、Microsoft裁判では、公判前に判事が集める証言を公開すると火曜日に判事が発表したことで、大騒ぎになっている。というのは、その通りになると、近日中に行なわれる、Microsoftのビル・ゲイツ会長兼CEOに対する証言も公開されることになるからだ。「Microsoft pretrial testimony must be public」(San Jose MercuryNews,8/12)によると、通常はこうした証言は閉じたドアの向こうで行なわれるもので、珍しいらしい。
('98年8月12日)
[Reported by 後藤 弘茂]