スタパ齋藤

旧型激安VAIOコンポを速攻で買った理由



■欲しいけど……欲しくない

VAIO PCV-M300L5
VAIO PCV-M300L5
40万前後という価格から、ソニーでもどのくらい売れるか様子見という雰囲気があったM300L5のセットだが、結果的にはいちばん最初に売り切れたのがこのセット。液晶単体も好評だという。この製品あたりから、ソニーではディスプレイのデザインをテレビのデザインチームが担当。家電的というか、細かい配慮がなされている
 前回はかなり前に強力に欲しかったソニーのデスクトップ(ミドルタワー)のVAIOについて書いたが、今年の初めに凄まじい欲しさに襲われたマシンがあった。それは、コンピュータ好きなら記憶に新しいっていうかまだ同じ系統の現行機種が販売されている、VAIOコンポ、M300シリーズである。

 VAIOコンポは、その名のとおり、外見がまるでオーディオコンポのようなサイズと仕上げになっている、パーソナルコンピュータだ。マグネシウム合金ボディで話題をさらったVAIOノート505のすぐ後に発売されたのだが、こちらもそのパソコンらしからぬ美しい筐体と斬新な設計思想で、多くのユーザーの羨望の的となった。

 で、俺はと言うと、VAIOコンポが欲しくて欲しくてどうしようもねえ奴になっていた。カタログを見れば、まったく俺が希望していたとおりの機能(というかギミック)をいくつも持っていたし、俺はこういったコンパクトなコンピュータが根本的に好きだし、やっぱりその美しさに惹かれた。例えば、真夏の午後に汗の臭いでむせかえる男子校の教室に入ってきた美人女……あ、こういう例えはやめておこう。とにかく、内容も外見も、俺を簡単に魅了してしまうほどステキだったのである。

 が、買わなかった(←またかよ)。

 その理由は、単刀直入に言って、PCカードスロットがないからである。ノートパソコン野郎の俺は、今現在、PCカードスロット経由で接続する比較的多数のデバイスを所有している。デスクトップマシンもあるのだが、それにはかなり昔に買ったPCカードスロットを増設してある。なので、ノートパソコンでもデスクトップマシンでも、PCカード系デバイスを使いまくりなのだ。だからPCカードスロットがないし、それを増設するスペースもないM300シリーズは、欲しいけど欲しくないコンピュータちゃんなのであった。

 しかし、俺には自信があった。次のVAIOコンポには、絶対にどうしても必ずどう考えたってPCカードスロットが装備されるはずだ!! と確信していた。根拠はないが、何者かに取り憑かれたように、俺はそう確信し続けていた。

 なので、欲しいコンピュータがそこにあってまさに売られているのに、俺は決して買わなかった。吐けと言われても吐かず、これでもかと生爪をはがされようが吐かず、これならどうだと耳をナイフで削がれてもまだ吐かず、最後の手段だと高電圧をかけられた時にはニヒルな笑みを浮かべながら無言で感電死するソ連のスパイのように、俺は決してサイフの口を割らなかったのであった。



■出たぞ新型VAIOコンポ

 そのようにして次期機種を待っていたら、ついに新型VAIOコンポが発表された!!
 くぅ~ッ!! コレだぜコレを待ってたんだよコレですよコレ!! いやぁやっぱり待ってて良かった!!

 さて、PCカードスロットはどこに付……げっ!! ない!! どこにもねえ!! ていうかコレっていわゆるひとつのマイナーチェンジバージョンであり、CPUとかHDDとかそこらへんの性能がちょっと変わっただけであった。ガーン!! さらに次まで待たなくては!!

 ていうかよく考えたら、PCカードスロットが搭載されるなんて話は、どこにもなく、単に俺が希望しているだけで、恐らくきっと未来永劫PCカードスロットなんかつかないんだソニーのばかーっ!! と思った瞬間、俺は行動に移った。

 新型の発表で旧型となり、店頭から次々に姿を消しつつあったVAIOコンポM300シリーズを速攻で買うのである。しかも、新型が発表されたこともあり、M300シリーズの価格は底値!! チャ~ンス!! 買うぜ買うぜ買うぜ!! 店員が口を開く前に札を渡しちまうんだ!!

 というわけで、とりあえず液晶ディスプレイモデルのPCV-M300L5を買おうとしたが、もはやどこにもない。売り切れ。じゃあしょうがないってんで15インチディスプレイモデルのPCV-M300E5を買おうとしたらこれは展示品のみ在庫あり。くわッ!! 展示品なんざぁ買えるか!! 俺はコンピュータの箱のニオイと最初に電源入れた時の多少コゲるようなニオイが好きなんだーッ!! こうなったらしかたがない!! でっかくてジャマそうな17インチディスプレイ付きモデルのPCV-M300TV7を買うしかない!! くれそのM300TV7!! あっ、在庫アリ。というわけで購入。家に帰ってみて、よーく考えたら、17インチディスプレイ(CPD-17MS:テレビにもなるディスプレイで、単品で買うと標準価格128,000円だゾ!!)が付いて20万円弱って、なんかコレって超激安!? 崩壊価格と言えよう。



■けっこうイイすよ、VAIOコンポ

VAIO PCV-M300TV7
VAIO PCV-M300TV7
M300TV7のディスプレイは、TVチューナ・ステレオスピーカー・ウーファー内蔵。17インチディスプレイは当然それなりの大きさだが、「これがあれば別にテレビは不要」という場合には、部屋全体のスペース効率はかなり良くなるだろう
 そんな感じで、ここ2カ月、PCV-M300TV7を使っているので、使用感などをレポート。あ、ちなみに新型VAIOコンポは、M330シリーズで、コンピュータ本体の仕様上の変更点は、CPUがMMX Pentium 233MHzに、メモリが64MBに強化されただけである。外見などはM300シリーズもM330シリーズもまったく同じ。M300シリーズのCPUがMMX Pentium 200MHzで、メモリが32MBということを考えれば、まあマシンとしてはほとんどおんなじと言えよう。

 さて、VAIOコンポのナイスなところは、パソコンということを実にマジメに考えたマシンで、パソコンなどと略して呼びたくなくなるような工夫が多数加えられているところ。例えば、部屋の中に置いたときのモノとしての存在感。単純にキレイでカッコイイのである。が、聞いた話によれば、最初はこのVAIOコンポ、グレーだかブラックの筐体で発売される予定だったそうだ。が、VAIOのコンセプトが、AVとコンピュータの融合ということでもあって、ソニーの偉い人が「チミ、高いキカイなんだから前面パネルはアルミ仕上げにしなきゃイカンよ」との指示が入ったとかで、現在のような美しいマシンになったとか。いや、もしかしたらデマかもしれないが、そんな話を聞いた。

 外見もいいのだが、使い勝手もかなりいい。まず、小さいので、取り回しがいい。ブックタイプパソコンみたいなのを使った方なら話が早いが、マシンの配置換えがサッサと行なえる。デスクトップマシンでありながら、場所を取らない。と同時に、静粛性が非常に高い。ハードディスクユニットを消音ボックスに収めたり、CPUの冷却ファンを排除したり、電源部の発熱に応じて回転する電源用冷却ファンを採用したりで、トータルのノイズがググググッと減っている。フロントパネルのLEDを見ないと、電源が入っているのかどうかわからないほど静かである。まあ、耳を澄ませばファンの音は聞こえるし、ハードディスクのアクセス音も聞こえるけれど、従来のデスクトップマシンに比べたら、驚くほど静かである。

 また、昨年あたりのデスクトップマシンからは標準的な機能となってきたが、VAIOコンポもノートパソコン的挙動でレジュームする。時間などの設定もしくは操作により、瞬時にスリープ状態に入るのである。で、マウスやキーボードを動かせば、すぐにシステムが立ち上がる。コンピュータが必要な時に即使いたいという向きには、これはかなり便利な仕様である。
 が、スリープ時、マウスにちょっとでも触れるとすぐにシステムが立ち上がってしまうので、振動の多い家とか暴れがちなユーザーには不向きかもしれない(本当に)。

 それから、プリインストールソフトなどは相変わらずのバイオ節で、ホビー指向のものだらけ。ポストペット、各種Webブラウザ、地図CD-ROMビューワ、画像データ閲覧ソフトなど、VAIOコンポが目指す文字通りのパーソナルなコンピュータ然とした内容だ。

 ハードウェア構成もユニークで、トレイやキャディを使わないフロントローディングのCD-ROMドライブや、かなりしっかりした作りのワイヤレスキーボードは、思った以上に使いやすい。それと、デスクトップマシンなのにビープ音以外のサウンドも鳴らせるモノラルスピーカーが内蔵されていて、これもかなり便利、というかデスクトップマシンに必須だった外付けスピーカーが不要なので非常にコンパクトに扱える。

 また、ソニーのコンピュータコントローラブルなMDデッキであるMDS-PC1をはじめとするコントロールA1対応のAV機器と接続するためのコネクタやソフトがついているのも愉快。これに加えて、本体背面にはビデオ入出力端子があり、これを使うと、テレビにコンピュータ映像を映したり、ビデオ入力を静止画もしくは動画でキャプチャーできたりもする。ビデオ入出力に関しては、まあ比較的簡易的な性能だが、ホビーに使うには十分と言えば十分だ。



■もっとなんかやっていただきたい

 で、結局俺は、今年に入って3台もVAIOシリーズコンピュータを買ってしまったわけで、我ながらソニー製品に弱いというか、ソニーにしてやられたというか、ソニーとの戦いに連敗しているというか、ともかくソニーに支払いまくりである。

 だが、ソニーにはもっと支払いたいような気がする。というのは、前にも書いたが、さすが日本を代表する現代贅沢品メーカーであり、作るモノがユーザーの心を掴みがちなので、ソニーが参入した市場の多くはすげえ活性化している(ように思えてならない)。せっかくパーソナルコンピュータ市場に本腰を入れたのだから、もっともっとこの世界をおもしろおかしく愉快で楽しいものにしていただきたいのである。

 実際、VAIOシリーズコンピュータが発売されてから、あるいはサイバーショットが発売されてからというもの、それらのハードウェアの周辺が実におもしろくなっている。また、ソニーの製品は、例えばコンピュータの場合、コンピュータを発売すると同時に、他のジャンルの自社製品と非常にうまくかつおもしろく連携させていて、単純な話、ユーザーの夢が広がるのだ。夢が広がることは、欲望も増幅され、つまりはその世界がおもしろくなっちゃうのである。

 具体的には、VAIO→サイバーショットもしくはデジタルハンディカムとか、マビカ→マビキャップ→コンピュータとか、これまで別モンだと思われていた世界が緩やかに接合される状況だ。実際、最近のソニー製品を見ると、明らかにコンピュータとAV製品の融合が起きており、それはまた、ソニーがまさにやろうとしていることなのだ、と思う。ていうかもしかしたら、AV製品もゲーム機器も音楽市場もある程度イッちゃったので、今度はコンピュータ市場取ったろか、ということですか!?

 ともかく、こーゆー、ある意味市場実験大好きメーカーがコンピュータ市場をかき回してくれると、今までできそうでできなかったことがどんどんできるようになるし、ありそうでなかったものもどんどん出てくるので、俺としてはこのような状況を快く思っており、ソニーさんには今後もがんばっていただきたいということで、今回はキーボード押下を終了させていただくことにする。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□VAIOコンポ「PCV-M300シリーズ」製品情報
http://www.sony.co.jp/ProductsPark/Consumer/PCOM/VAIO/COMPO/index.html
□VAIOコンポ現行機種「PCV-M330シリーズ」製品情報
http://www.sony.co.jp/ProductsPark/Consumer/PCOM/COMPO330/index.html

[Text by スタパ齋藤]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp