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Mercedの性能は期待はずれ?-MPU業界の専門誌が予測



●Mercedの性能は期待はずれ?-MPU業界の専門誌が予測

 「Merced(マーセド:コード名)」の性能は期待はずれに終わるかも知れない。MPU業界誌Microprocessor Reportが、こんなショッキングな記事「What's WrongWith Merced」(Microprocessor Report,8/3)を掲載した。米Intelが米HewlettPackardと共同開発した次世代アーキテクチャIA-64は、命令の並列実行度が高く、現在の最先端MPUが備えるような複雑なスケジューリング機構を持たないので動作周波数も向上させることができるといわれていた。しかし、この記事では、Mercedの最初の製品の動作周波数は800MHz程度で他のMPUと比べて飛び抜けて速いわけではなく、また、実際に並列実行できる命令数も意外と少ないだろうと推測している。この通りなら、Mercedは期待されているようなずば抜けた性能ではなく、同世代の最先端RISC MPUよりややいい程度の性能しか出せないことになる。

 この記事では、その証拠として、IntelやパートナーがMercedのパフォーマンスを控えめに言い始めていると指摘している。確かに、Mercedの出荷が2000年中盤にずれ込むという発表以降、こうした内容の記事はちらほら見かけるようになってきた。また、この記事では、問題は膨大なデザインチームを、Intelがトップダウン方式で管理しようとしているからだと言っている。要は、全体を見て、パフォーマンスやクロックをチューンすることがしにくい設計体制になっているということらしい。そして、面白いのは、もし、Mercedがさらに遅れて、しかもMerced後継のIA-64 MPU「McKinley(マッキンリー:コード名)」が、スケジュール通り2001年に出るなら、Mercedの出番はないかも知れないと示唆している点だ。どうなる、Merced?


●Intelは133MHzベースクロックへ

 また、先週はこれ以外にもIntelの次世代MPU絡みのニュースがあった。これは、IntelがOEMメーカーなどに配布するMPUロードマップ表の新版が、各社とも入手できたためだ。たとえば、「Intel covers all bases Chip maker offers OEMs adizzying array of choices」(Electronic Buyer's News,7/31)では、'99年後半に投入されるメインストリーム向け次々世代MPU「Coppermine(カッパーマイン:コード名)」やサーバー&ワークステーション向けチップセット「Carmel(カーメル:コード名)」について報じている。この記事はTechWire Japanヘッドラインでも「製品多様化を進めるIntel」(8月5日午前まで掲載、英文元記事はこちら)として翻訳が紹介されたので詳しくは書かないが、新しいポイントとして、Coppermineの動作周波数に触れられているところは注目に値する。

 それによると、Coppermineは533MHzでデビューして600MHzに高速化されるという。そう、500MHzではなく“533MHz”だ。このことが示しているのは、もしこの報道が正しければ、Coppermineのシステムクロックは100MHzではなく133MHzになるということだ。133MHzなら、533MHzで4倍速、600MHzで4.5倍速ということになる。また、この記事によると、Intelのサーバー&ワークステーション用の次々世代MPU「Cascades(カスケード:コード名)」とCarmelの組み合わせも、2 CPU構成の場合は133MHzシステムバスで、4 CPU構成では100MHzシステムバスになるという。じつは、IntelがシステムバスとSDRAMのインターフェイスの周波数を133MHzに上げるのでは、という話は今年のかなり早い段階から流れていた。問題はいつから、どのレベルのMPUファミリで採用するかということだった。現在のところは、450~500MHzと言われる次世代MPU「Katmai(カトマイ:コード名)」では、100MHzのシステムクロックであることが確実だと言われている。この報道の通りだとすれば、133MHz化は'99年後半からになるわけだ。


●新コード名Coloma登場

 また、Intelについては、新しいコード名も登場した。「Intel Speeds UpGraphics Pace」(Electronic Buyer's News,7/31)によると、Intelが'99年後半に投入するハイパフォーマンスのグラフィックスチップのコード名は「Coloma(コロマ?)」だそうだ。ちなみに、i740後継の「Portola(ポルトラ:コード名)」は、記事によると'99年早期の出荷だという。グラフィックスチップも、Intelはおそらく0.25ミクロンに製造プロセスを移行(i740は0.35ミクロンで製造)させて、本気で押してくるだろう。


●ARM10の登場で浮かび上がるStrongARMとの競合

 また、Intelは先週、StrongARM戦略を日本でも発表したわけだが、それに関係する面白い記事もあった。IntelにARMアーキテクチャをライセンスしている、英Advanced RISC Machines社(ARM)が、10月15日からの組み込みプロセッサ関連カンファレンス「Embedded Processor Forum」で、次世代の「ARM10」を発表するというニュースだ。「ARM to detail next core at forum」(Electronic Engineering Times,7/30)によると、ARMは過去のロードマップではARM9後継MPUコアは、0.18ミクロンで製造し、'99年に500MIPSで登場するとしていたという。この通りなら、ARM10は、StrongARMと完全にバッティングすることになる。また、ARM10は64ビットフルサポートにもなるという。となると、アーキテクチャ的にも、StrongARMと分岐してしまう可能性があるかも知れない。

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('98年8月4日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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