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WSJがスクープ、MicrosoftがAppleにWindowsマルチメディア市場撤退を提案


●上院公聴会でMicrosoftに対して各社が不満を爆発させる

 先週は、米国の上院の司法委員会で、Microsoftをターゲットにした2回目の公聴会が開かれた。前回は、ゲイツ会長も出席、親Microsoftと反Microsoftの激しい対決となり話題をさらったが、今回は、Microsoftのビル・ゲイツ会長兼CEOを始め、親Microsoft勢力は出席せず、各社幹部がMicrosoft批判を展開する場となった。

 なかでも話題となったのは、Microsoftからの出資を受け、同社と提携も結んでおり、Microsoftの勢力圏内だと思われていたRealNetworksの“反乱”だ。「A Former Microsoft Ally Joins The War Against Company」(The Wall Street Journal,7/24、有料サイト、 http://www.wsj.com/ から検索)によると、RealNetworksの会長兼CEOロバート・グレイサー氏が、Microsoftの「Windows Media Player」で、自社の「Real Player」が被害を受けることを実演したという。難しい立場にあるグレイサー氏が、このように、わざわざMicrosoftの神経を逆なでするようなことをしたのは、Microsoftがきちんと対応してくれないという不満があったようだ。記事によると、公聴会の前に、グレイサー氏は、ゲイツ氏に問題を解決してくれるように直接訴えたという。ところが、ゲイツ氏は彼に、「ワシントン訪問中には、ナショナルギャラリーとスミソニアン博物館を訪れるのがお薦め」と、観光を勧める電子メールを返事に送って寄越したそうだ。これならプッツンしても、しょうがない?

 また、公聴会ではお馴染みOracleのラリー・エリソン会長兼CEOのMicrosoft口撃も爆発したらしい。「RealNetworks Accuses Microsoft of Sabotage」(PC World Online,7/23)によると、エリソン氏は「もし革新的なソフトウェアが登場したら、Microsoftはそれをコピーして、Windowsの一部にするだろう」「ビルはこれをイノベーションと呼ぶ。これは逆だ。イノベーションの終わりだ」などと訴えたという。

●MicrosoftがAppleにWindowsマルチメディア市場からの撤退を提案とスクープ

 また公聴会の直前には、The Wall Street Journalに、反トラスト法違反裁判に関連する重要なスクープも載った。これは、The Wall Street Journalの「U.S. Is Probing Microsoft's Role In Multimedia-Software Market」(The Wall Street Journal,7/23)という記事で、内容はMicrosoftがApple Computerにマルチメディア市場での分割取引をもちかけた件で、政府が調査を始めているというもの。それによると、Appleに対してMicrosoft幹部が、Windowsマルチメディアマーケットへの計画を取りやめ、その市場をMicrosoftのフィールドとして残すようにと提案。その代わりに、MicrosoftがAppleのソフトウェアツールを支持するともちかけたという。もちろん、Appleはこの提案をはねのけたそうだ。また、この報道に対して、Microsoft側は疑惑を全面否定していおり、「Microsoft Says It Didn't Hold Multimedia Talks With Apple」(The Wall Street Journal,7/23、有料サイト、 http://www.wsj.com/ から検索)などが同社の言い分を伝えている。

●バルマー氏のMicrosoft社長就任で何が変わる?

 このほかMicrosoft関連記事では、長らく空席だったMicrosoft社長に、スティーブ・バルマー上級副社長が就任したニュースが目立った。もっとも、これを意外なニュースと受け止めるメディアはどこにもない。ゲイツ氏の大学時代からの親友で、実質的にナンバー2だったバルマー氏は、これまでも、事実上社長の役割に近いものを果たしてきたからだ。例えば、「Ballmer new president at Microsoft」(The Seattle Times,7/21)は、バルマーの新タイトルはたんに、彼がこれまでMicrosoftで演じてきた役割を正式に承認したものに過ぎないと評している。また、ゲイツ氏は製品の研究開発に専念するというが、ゲイツが反トラスト訴訟問題から完全に抜けるとは、ほとんどの記事が予想していない。

 バルマー氏は、日本では知名度はいまひとつだが、エネルギッシュで社交的でざっくばらんな性格のため、米国ではゲイツ氏と並ぶ、Microsoftのもうひとつの顔となっている。大学時代はフットボール部のマネージャをやっていたこともあってか、ガンガンとアジるというクセがあるらしい。以前、Microsoftの人から聞いた話で面白かったのは、バルマー氏は何でも3回繰り返すという話。たとえば、「Windows! Windows! Windows!」とか、机を叩きながら三連呼するという。こういう人物なので、「Microsoftのアグレッシブなビジネス習慣が、バルマーのもとで後退するはずはないだろう」「Ballmer Promotion Lets Gates Focus On Products」(COMPUTER RESELLER NEWS,7/21)というのが、一般的な見方。

●またまたIntelの新しいMPUコード名

 先週も、またIntelの次世代MPUに関するニュースが続いた。「Update: Intel Plans Early '99 Release Of Two 32-bit MPUs On 0.18-Micron」(Electronic Buyer's News,7/23)によると、Intelが'99年に投入する0.18ミクロンプロセスのMPUは、Katmai後継の「Coppermine(コード名:カッパーマイン)」のほかに、ワークステーション&サーバー向けの「Cascades(コード名:カスケード)」だという。ちなみに、一部のレポートではこの綴りが「Cascade」になっているが、アップデート版のニュースではCascadesが正確なのだと修正されていた。ところで、IntelはMPUのコード名に、これまで、国立公園内やリゾートの地名を採用してきた。さて、Cascadesは一体、どうなっているのだろう?

●IntelがいよいよStrongARM戦略を推進

 しかし、先週のIntel関連ニュースで注目は、次世代x86系MPUの話題ではない。Intelが、いよいよStrongARM戦略を明かし始めたという記事「Intel to reveal details on StrongARM chip」(Electronic Engineering Times,7/24)が重要だ。Intelは、DECの半導体部門を買収したため、DECが開発していた高性能なARM系の組み込み向けRISC MPU「StrongARM」部門も手に入れた。DECからの買収はすでに完了したため、IntelがStrongARMをどうするのかが大いに注目されていた。

 この記事によると、Intelは来月開催されるMPU関連のカンファレンス「Hot Chips」で、StrongARM関連の発表を行なうという。実際、「Hot Chips」のWebサイトには、すでにスケジュールがあり、Intelの発表のタイトルは「SA-1500: A 300 MHz RISC CPU with Attached Media Processor」となっている。EE Timesの記事によると、SA-1500あるいはStrongARM 1500と呼ばれるこのMPUは、StrongARM 110のコアにメディアプロセッサを加えた330万トランジスタのMPUで、最大300MHzで動作するという。ダイ(半導体本体)のサイズは60平方mmと小さく、消費電力も2.5W以下と小さい。それでいて、MPEG-2(MP@ML)ビデオのデコードとソフトモデムを同時に実行できるというから、このワンチップにあとはメモリとかA/Dコンバータとかをプラスすれば、それだけでディジタルSTBなどが可能になることになる。

 もっとも、StrongARM 1500の計画自体はDEC時代から始まっていたので、このチップ自体はそれほど驚きではない。重要なのは、これがIntelの計画として発表されるということ。これは、Intelが組み込み向けのMPUとして、StrongARMを積極的に推進する可能性が高い。EE Timesのこの記事によると、Intelはさらに同じコアから派生する3つのStrongARMチップを予定しているという。また、現状のStrongARMはDECから買収したハドソン工場でしか製造できないが、それも変わるだろうと予測している。組み込み市場では弱いIntelが、StrongARMでどう出るか、注目のマトだ。

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('98/7/28)

[Reported by 後藤 弘茂]


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