【コラム】 |
液晶ケータイ2台の実力は!? |
DP-212は、J-PHONE端末の中でも異彩を放っているドデカいバックライト付き液晶が特徴のデジタル携帯電話(1.5GHz帯フルレート端末)。一方DoCoMoのPeterpanは、DoCoMoショップにもあんまり展示されてない、それ自体は異彩を放っているのだがいまひとつ認知度が高くない超ドデカ液晶が特徴のデジタル携帯電話(800MHz帯ハーフレート端末)である。
世間一般には、このふたつの機種、まるで関係ない別モンの端末として扱われているようだが、俺にとっては非常に色合いの近い存在。両方ともでっかい液晶があって液晶にタッチして使えるし、両方ともインターネットメールの送受信ができるし、両方ともスケジュール管理や手書きメモなどのPDA的機能を持つからである。
てなわけで1回にまとめてレビュー。
なんといっても全面液晶が目をひくJ-PHONE端末DP-212。パイオニア製。重量約122g、連続待受約150時間。スカイウォーカー対応 |
DP-212は、非常に多機能だ。携帯電話として普通に使うことはもちろん、Skywalker対応(もちろんEメールオプションで使えばインターネットメールの送受信も可能)だし、3つのメモ機能(ペンで自由にビットマップを描ける手書きフリーメモ、電話帳のサブデータとして漢字20文字までのデータを登録できる電話帳メモ、最長20秒×3件までの音声を録音できる音声メモ)があり、カレンダーが表示されて日々の予定を書き込めるスケジュール機能(1日5件までで全100件までで1件につき漢字10文字まで)があり、さらには相性占いや3種類のゲーム(落下型パズルゲームと五目並べとお花育てゲーム)までついているという、機能詰め込み型携帯電話なのだ。
もちろん最近の従来型携帯電話を上回る携帯電話的機能を備えている。ここまで多機能だと使うのが難しいのではと思っちゃいそうだが、そこは大型タッチパネルタイプ液晶搭載端末。付属のペンでピッピッとやるだけで、たいていの操作ができる。また、携帯電話につきまとう、設定のやりにくさも克服されている。というのは、従来のテンキータイプ携帯だと、携帯電話の各種機能を設定する際、ファンクションキーを使っての機能呼び出しとか、小さな液晶画面での機能選択とか、とにかくまどろっこしかった。呼び出し音を変えるだけなのに、携帯電話のボタンを十数回も押しまくった末やっと変えられたなんてのもザラ。特定機能の設定モードへたどり着くまでにかなりイライラがつのった。
ところが、DP-212は速攻で設定できる。機能設定ボタンにタッチすれば、液晶画面には各種機能設定用アイコンが表示されるから、それにタッチするだけ。アイコンとともに簡単なガイダンスメッセージが表示されるので、多少携帯電話の何たるかを心得たユーザーなら、マニュアルを見る必要がほぼない。俺などは自称にわか携帯電話マニアなので、DP-212に関してはまだ一度もマニュアルを読んだことがないのだーッ!!
どうだーッ!! ていうかマニュアル読めよRead The Fucking Manualsだっつーの>俺。ともかく、俺が今まで使った携帯電話の中で、もっとも短時間で最も深い部分まで使いこなせた、非常に使いやすい端末だと断言できる。
操作面すべてがこの調子なので、どの機能を使う時も、とくに迷うようなことはない。何となくいじくっているとできちゃう、みたいな。今時のPDAっぽい操作性の良さがあるというわけだ。
ただ、一部を除いたほとんどの機能が、液晶上のバーチャルなボタンに割り振られているので、一般のボタン式携帯のメリットはない。例えば、手探りでボタンを押すとか、目と手の感触を同時に使って素早くダイヤルするとか、そーゆー方面に劣る。些細なコトではあるが、電話機っちゅーモンはボタンの出っ張りがないと案外使いにくいものである。それに、タッチパネルだと、ふとした拍子に押し間違えがち。そーゆー見地でDP-212に触れていると、“この機能だけは物理的なボタンにして欲しかったなァ”という欲求が、イライラとともにわいたりする。でもまあ、タッチパネル液晶があってこそ、このわかりやすさと使いやすさがあるのだから、この辺の好き嫌いの線引きは微妙なトコロである。
ついでなのでもうちょっと、少々ネガティブな意見を言わせてもらえば、大雑把に言っ て、携帯電話としてはそれほど使いやすくない。前述のダイヤルボタンの押し間違えの件もそうだが、物理的なボタンが少ないので、操作上、“端末を目でよく見ないと”いけない。基本的な機能は液晶脇の3つのボタンに割り振られるシクミになっているのだが、ともかく画面モードがいろいろ変わるので、何が表示されているかをいちいち気にしないと、操作間違いをやる。それから、電話帳の機能などは、タッチパネル液晶の良さをまだまだ生かし切っていないような気がする。理想としては、電話帳の読みで検索するための五十音パネルが表示されたり、あかさたなのタグが表示されたりして、そこからどんどん名前を絞り込んだりできればいいと思うのだが、そういう効率的な検索ができない。これまでのボタン式携帯の方が検索速度が速い感じ。あと、DP-212は当然ながら漢字表示対応端末なのだが、日本語入力が単漢字変換というのが残念だ。例えばメールを書くときに“薔薇”とか“醤油”とか“魑魅魍魎”などと書くには相当の面倒臭さを強いられるし、小学生レベルの漢字を書くときも同じくかったるいのである。他には……他にはそれほど気になるトコロはないのだが、良くできている端末だけに、こういった細かな使いにくさについて諦め切れないのだ。
ところで、俺がDP-212を買ったわけは、一にも二にも電子メールを大画面で読めるということ。1画面に漢字で64文字表示できるJ-PHONE端末なんか、他にはない。電子メールの機能は全体的によくできていて、メールを保存したり、差出人メールアドレスを電話帳に登録したりするのも簡単なので、“携帯電話にしては”かなりこなれた作りの端末だと言える。
で、結論だが、些細なイマイチ点もいくつかあるが、俺としては現在最高に気に入っている端末である。J-PHONEショップの店頭では、このDP-212が最も高価な端末となるが、それでも買うだけの価値はあると思う。いや、もしかしたら安いかもしんない。
DoCoMoの端末「ピーターパン」。800MHzデジタル携帯電話とPDAが合体した情報携帯端末。サイズは、136×94×28mm(幅×奥行き×高さ)。重量約320g、連続待受約140時間。アドレス帳、スケジュール、インクメモ、世界時計、電卓のPIM機能のほか、6万7千語の辞書も内蔵。これまでのところ売れ行きはあまり芳しくないようで、在庫を置いていない店が多い |
DP-212は、携帯電話端末にPDA的機能が加わった、いわば携帯電話的アプローチの端末だ。携帯電話の機能を拡張していったらこうなった、みたいな。一方、PeterpanはPDAに携帯電話を加えたらこうなったという、PDA的アプローチの端末だ、と思う。
そう思う根拠はまずそのカタチ。DP-212は電話のカタチをしていて、電話ですヨほらネもしもし、と言って使っても自然に見える。が、Peterpanだって電話なんですヨほらネもしもし、とかやると、ちょっとアンタそんな電子手帳耳に当てて何やってんですか、と言われそうだ。実際、電話機としての使いやすさはDP-212の方が遙かに上で、俺思うに、Peterpanは耳に当てて使う装置だとは思えないほど、通話中のフィット感が悪い。さらに、前述のDP-212のタッチパネル式端末ならではの“電話としての使いにくさ”に輪をかけて、Peterpanは電話として使いにくい。フタを開けなきゃ発信できないし、バーチャルな電話用ボタンも何だか妙にデカくて間延びしてて、なんつーか調子が狂うのである。
その一方で、DP-212なんか出る幕がないほどしっかりしたPDA的機能を持つ。メール管理機能、アドレス帳機能、手書きメモ機能、スケジュール機能。どれもしっかり使えるマトモなPDAというイメージ。まあ、ザウルスやWizあるいはPalmPilotやHP200LXなどの、気合いが入ったPDAに比べれば、いまひとつの内容ではある。が、“デジタル携帯電話が内蔵されている”という点で、一般のPDAを凌ぐ魅力を醸し出しているのであった。
さて、Peterpanでできること。前述の携帯電話機能とPIM機能(メール管理機能、アドレス帳機能、手書きメモ機能、スケジュール機能)に加え、NTT DoCoMoのデジタル携帯電話系の各種サービス(10円メール、ショートメール、ポケベルメッセージ送信)が使え、さらにFAX送信ができる。文字入力は、シャープのザウルスにちょっと似た手書き文字認識や5種類のソフトウェアキーボードが使えるペン入力。イヤホンマイクが同梱されているところを見ると、やはり基本的にはPDAとして使いつつ、そのままシームレスに通信や通話ができるガジェットとして作られているようだ。
で、俺が気に入っている機能は、10円メール。本連載のPocketBoardの回では、 「PocketBoard本体と携帯を持ってりゃどこでもメールできてサイコーだゼ」とか書いたが、Peterpanはもっと凄い。コレだけ持ってれば携帯電話としてもメール端末としても使えるのだ。それに、ユーザーメモリが512KBあるので、10円メールなら(漢字1,000文字の内容でも)150件以上読み込める。しかもPIMも使える。ついでにポケベルな人にメッセージ送りまくることも、紙メディアな人にFAX送りまくることもできる。ある意味、ザウルス+携帯電話、みたいな性能。10円メール使用開始当初からけっこう長い間PocketBoardを使ってきた俺だが、Peterpanのオールマイティで一体型な魅力に押され、ここに来てPeterpan派になってしまった。
だがしかし、俺は完全にはPeterpanを気に入ってはいない。いや、Peterpanのハードウェアも、機能も、コンセプトも気に入っている。そのコンセプトに合わせてPDAをPeterpan1本に絞り込む気だってある。なのにPeterpanのスペックは、どうも俺の気迫を削ぐような内容になっているのだ。例えばデータ登録用のメモリが512KBであるということ。今時のPDAとしては少な過ぎる、けれど、Peterpanのメモリとしては十分だったりする。テキスト主体のPIMだからこのメモリ容量で十分だと言えばそうなのだが、俺としてはソレってPIMが貧弱なことの言い訳に聞こえる(っていうか俺が勝手に導き出した理屈なんですけどね)。さらに重箱の隅をつつけば、PIMの各機能に妙なちぐはぐさが見え隠れする。まだまだこなれていないという印象を受けるのだ。
ぐだぐだ言ってないでキッパリ言えば、PeterpanはPDAとして中途半端なのだ。携帯電話の機能を十分生かしているPIM構成は非常に有り難くまた使いやすいのだが、ここまで使えるならもっとPDAとして高機能であって欲しいと思うのが人情。逆に、この程度なら、ザウルスと携帯電話を買うとか、ザウルスみたいに“こなれたPDA”に携帯電話が搭載されるように祈るとか、そんなふうにするのがフツーの人の意識ではなかろうか。俺は10円メール多用野郎なのでPeterpanに飛びついたわけだが、PDAが欲しい人も、携帯電話が欲しい人も、Peterpanは選ばないと思う。PDAも携帯電話が欲しい人は、きっと別々に買うだろう。だから、Peterpanはいまいち認知度が高くないのだと思う。
あ、なんかけっこう退行的なコトばっかり書いちまったが、まあこれが正直な感想である。同時にある正直な感想として、10円メール端末として、あるいは小型のモバイルメール端末としては、非常に強まっている最強の内容だとも思う(だから使ってるのだが)。ともあれ、これからの通信ツールとしていろいろ考えさせられ、また、明るい展望を見せてくれた、革新的な端末であることは確かだ。
で、こういった電子メール機能搭載型携帯電話を使って感じるのはただひとつ、これからは携帯電話で電子メールできなきゃダメっすよ~、ということ。あっ、もうひとつ感じることがあった。それは、これからは電子メール端末に携帯電話が搭載されてなきゃダメっすよ~、ということ。どっちかが成立してればいい。だいたい、情報機器から電子メールを削除してしまったら、どれほどその機器の価値が下がるか。携帯電話があるのにデータ通信しないのは、どれほど残念で惜しいことか。
またあの野郎がなんか極論みてえのブッこいてるゼ、とか言われそうだが、ホントにそう思う。携帯電話に興味のない方には申し訳ないが、これまで本連載でけっこうしつこく携帯電話系の話をしてきた(まだちょっとそっち関係のブツ紹介するつもりですけど)。が、我ながら驚くのは、こんなにいっぱい携帯電話使いまくって、今の自分がこーんなことを感じてるなんて、ということ。
こーんなこと、とは、前述の、ケータイでメールじゃなきゃイヤンという件に加え、メール系機能を持たない携帯電話に全然おもしろみを感じなくなってしまったということ。にわか電話マニアへの入り口に立った頃は、何でもイイから電波で通話できる電話に興味があるゼ~という俺だったが、現在は通話だけできたってつまんねえ、とか思っている。ナイスでグレートな端末を使って目が肥えてしまったのか、それとも単にスレてしまって感覚が鈍ったのか? もっと刺激的で高度な通信機能を持った端末が出現するのを首を長くして待ちつつ、DP-212とPeterpanでおもしろおかしくモバイルメールしている俺なのであった。
□J-PHONE(東京デジタルホン)ホームページ
http://www.tdp.co.jp/
□DP-212製品情報
http://www.tdp.co.jp/p_and_s/products/be/htmls/dp212.htm
□NTT DoCoMoホームページ
http://www.nttdocomo.co.jp/
□ピーターパン製品情報(NTT中国移動通信網のページ)
http://www.docomo-chugoku.co.jp/new/new98_5/peter.html
[Text by スタパ齋藤]