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Windows NT 5.0出荷が'99年中盤までずれ込む?


●Windows NT 5.0のベータ版が遅れる?

 年内出荷はムリだと言われ続けてきたWindows NT 5.0だが、いよいよ'99年半ば説が本格的に唱えられ始めた。これは、Windows NT 5.0ベータ2の遅れが確実になってきたかららしい。ベータ2は、7月始めと言われていたが「Microsoft planning third beta of NT 5.0」(InfoWorld,6/30)によると、Microsoft関係者がベータ2は「夏」で「多分7月か8月」ともらしたという。さらに、「Analysts Predict Delay in Launch Of Newest Windows NT Version」(Dow Jones Newswires,6/30)ではベータ2は、9月にまで遅れたと報じている。また、どちらの記事も、MicrosoftがWindows NT 5.0ではベータ3も出す予定だと述べている。そのため、製品の出荷は、Microsoftの財政年度の終わる6月くらいまでは出ないだろうという観測だ。

 もちろん、これはまだMicrosoftが正式に認めたスケジュールではない。しかし、業界ではかなり前から半年の遅れが予期されていたので、ほとんど影響はなさそうだ。問題は、これよりもスケジュールが遅れた場合だろう。それでも、Windows NT 5.0のメインターゲットである企業ユーザーは、どうせコードがある程度枯れるまではWindows NT 5.0に乗り換えようとはしないだろうから、すぐには大きな影響は見えないかも知れない。しかし、Microsoftの将来構想全体がまた後ろへずれてしまうというのは、痛手だろう。

●Windows 98、店頭での出だしは予想以上?

 さて、米国ではいよいよWindows 98が正式出荷された。Windows 95の時とは打って変わって静かな出だしだったようだが、「Win98 Sales May Hit 500,000 in First Weekend」(Computer Retail Week,6/30)によると、それでも出だしは予想よりもよく、最初の週末で50万本ははけたという。

●Microsoftに対して上院が新たな公聴会?

 しかし、Microsoftにとって不安材料は増える一方。「Hatch says he will hold new Microsoft hearings」(San Jose Mercury News,6/26)によると、上院司法委員会のオリン・ハッチ委員長は、Microsoftに対して、さらに公聴会を開くと発言したらしい。デジタルエイジの競争についての公聴会になるという話で、日程や証人の顔ぶれなどはあとで発表するという。この記事によると、ハッチ議員は、Microsoftが上院歳出委員会に働きかけて、司法省の反トラスト法部門への予算を削減しようというロビー活動をしていることに刺激されているという。つまり、Microsoftは司法省の兵糧を断つのを後援する動きに出ていて、ハッチ議員はそれに対抗して別な形でプレッシャーをかけようとしているということらしい。

 「Hatch takes on Microsoft, again」(CNET NEWS.COM,6/26)によると、この一連の動きを巡って、反Microsoft派とMicrosoft派の議員の間で、激しい応酬が行なわれているらしい。ワシントン州出身のSlade Gorton上院議員とPatty Murray上院議員がMicrosoft側に立っているという。

●NetscapeがJavaベースブラウザの開発断念を正式に認める?

 遅れる製品もあれば、出ない製品もある。「Andreessen: Netscape's Javagator is dead」(COMPUTER RESELLER NEWS,6/30)によると、米Netscape Communications社のマーク・アンドリーセン副社長は、同社が開発していたJavaベースのNavigator「Javagator」プロジェクトが「死んだ」ことを公式に認めたという。NetscapeのJavigator開発が滞っていることはすでに周知の事実となっていたが、正式に幹部から計画の取りやめが語られたのはこれが始めてだ。

 「Netscape's Andreessen outlines potential acquisition targets」(InfoWorld,6/30)では、アンドリーセン氏がJavigatorを中止した理由をSF映画/TVドラマ「宇宙家族ロビンソン」のロボット(フライディ)の口まねで表現している。「危険。ロビンソン、危険が近づいています」だそうだ。つまり、これ以上続けるのは危険だと判断したというわけだ。

 「Andreessen: Netscape's Javagator is dead」ではその理由について、もう少し突っ込んでいる。それによると、アンドリーセン氏は、問題は、クライアントサイドでのJavaアプリケーションが、うまく動かない点にあると指摘したようだ。その根本的な原因は、Javaランタイムが安定して高速に動作させることができていないからということのようだ。その結果、NetscapeのクライアントサイドのJavaアプリケーションの開発は「回れ右」をしたという。

 Netscapeと言えば、Javaを積極的に推進してきたパイオニア。それが、JavaベースのWebブラウザの開発の断念を明確にしたとすれば、Javaの前途にまたひとつ大きな暗雲が加わったことになる。しかし、これらの記事を読む限り、アンドリーセン氏も、Javaの可能性を完全に否定しているわけではない。サーバーサイドのJavaは今後も積極的に推進するし、クライアントサイドも、潜在的にはうまく行く可能性を持っていると指摘している。これは、各プラットフォームのJavaバーチャルマシンのインプリメンテーションがある程度の完成度に達してプラットフォームが安定するまでの産みの苦しみと考えることもできる。問題は、それが時間との戦いになっていることだろう。

●IntelがモバイルMPUを値下げ

 いよいよPentium II Xeonプロセッサを正式に発表したIntel。新MPU発売に合わせて、旧MPUの値下げもしたようだ。しかし、値を下げたのはXeonと同じサーバー用MPUではなく、なぜかモバイル用MPUだった。「Intel Drops Prices On Mobile Chips」(COMPUTER RESELLER NEWS,6/29)によると、IntelはMobile Pentium IIの価格を30%ほど引き下げたという。これで233MHz版は262ドルと、いよいよ200ドル台に入ったわけで、MPUの価格だけを見れば、PCメーカーがローエンドの価格帯に十分入れられるようになった。Intelはモバイル用MMX Pentiumの供給を絞って行くだろうから、今年後半は普及価格帯ノートPCのMobile Pentium II化が急速に進むことになる。

●新たなx86互換MPUが登場か

 MPU関連ではx86市場への新たな参入のニュースもあった。「Another start-up targets Intel's x86」(InfoWorld,6/26)では、Rise Technology社というファブレス(工場を持たない)メーカーが、今年10月のMPU関連学会「Microprocessor Forum」で、x86互換MPUの詳細を発表すると報じている。これは、サブ1,000ドルパソコン向けの「mP6」で、Socket 7互換でノートPCをとくに狙うほか、Cyrix/National SemiconductorやIDTのように統合化も進めるという。このニュースは唐突なように聞こえるかも知れないが、Rise Technologyというメーカーは、ずいぶん前からx86 MPUを開発中であることが報じられており、今回突然出てきたわけではない。PC Watchのスタッフも、ComputexでこのRise TechnologyのMPUと称する展示を見ている。もっとも、製造工場はまだ決まっていないというから、実際に登場するにはまだしばらくかかりそうだ。

 MPU開発は手間がかかるので、このように潜水艦のように静かに進んでいて、突然浮上するケースも珍しくはない。たとえば、386対抗MPUを開発し始めた米NexGen社は、「Nx586」でPentium対抗という形でようやく浮上した。同社の2番目のMPU「Nx686」の基本設計をベースに、AMDの「K6」が開発された(AMDがNexGenを買収した)という例もある。

●Motorolaがいよいよバイオチップに踏み出す

 チップ関連ではもうひとつ面白いニュースがあった。「Motorola enters venture to commercialize the bio-chip」(EE Times,6/29)によると、米Motorola社がついにバイオチップの商業化プロジェクトを始めるという。米Packard Instrument社という会社とともに、1,900万ドルを投資して、今後5年以内に商業化するという。来年にはプロトタイプを発表するそうだ。これまで、バイオチップは話題にはなっても、それは研究所レベルのシロモノで、大手半導体メーカーが商業化に、時期まで設定して本格的に取り組むことはなかった。しかし、Motorolaが一歩踏み出したことで、状況は変わってくるかも知れない。今の半導体技術が、0.10ミクロンプロセス前後でいよいよ行き詰まりになることは、以前から指摘されている。となると、半導体業界はあと10年から12年程度で何らかの代替技術を見つけなければならない。

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('98/7/1)

[Reported by 後藤 弘茂]


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