【ソフト】 |
大戦略マスターコンバット2
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■【3/13】Weekend Summary:待望! 大戦略シリーズの最新作「大戦略マスターコンバット2」登場
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980116/game.htm
戦術級シミュレーションゲームの定番として人気の高い、システムソフトの「大戦略」シリーズ。MS-DOSの時代から根強いファンを持ち、現在は家庭用ゲーム機にまでその裾野を広げている。
今回登場したシリーズ最新作「大戦略マスターコンバット2」は、従来のシステムを継承しながらも、ストーリー性やRPG的な要素を取り入れた新しいタイプの「大戦略」だという。具体的に何がどのように変り、どんなゲームとして完成したのか、開発の中心となったシステムソフトのチーフディレクター石川氏にお話をうかがった。
軍団編成画面 |
■シナリオを取り入れ、RPG性をプラスした「大戦略」
グラフィックの質はさらに向上している |
石川 「「マスターコンバット2」では、いろいろ新しい試みを取り入れています。まずひとつは、シナリオのキャンペーン化ですね。これまでの「大戦略」シリーズはそれぞれの面を個別に楽しむゲームでしたが、「マスターコンバット」シリーズはゲーム中に一貫したシナリオを取り入れて、ストーリーのおもしろさを楽しめるようにしています。登場人物同士の会話や人間関係、成長など、かなりRPG的な要素が加わったと言ってよいでしょう。
今回発売した「マスターコンバット2」では、こうした部分をさらに膨らませてシナリオやキャラクターに厚みをつけました。ゲームには20人ほどのキャラクターが登場しますが、それぞれが目指す目的や個性、特技を持っています。プレイヤーがどのマップを選び、どう戦うかによって、少しずつシナリオは変り、最終面のマップも変ります。登場人物の裏切りや離反もあり、最初は敵として登場したキャラクターが後半、味方になることがあるかもしれません。単に戦闘シーンを楽しむのではなく、登場人物の絡みやシナリオの展開を楽しめるのが、「マスターコンバット2」の新しいところです」
各面のインターミッションやグラフィックにも、だいぶ力が入っているようですが?
石川 「そうです。ある意味「大戦略」らしからぬ演出と思われるかもしれませんが、ビジュアル的にも力を入れてみました。登場人物のキャラクターデザインをマンガ家の斎藤岬さんにお願いし、魅力的な女性キャラも多く登場します。戦闘中のグラフィックもこじんまりとまとまらないよう、あえて大胆なコマ割りや視点の切り替えを取り入れてみました。見易く、それでいて迫力のある画面になったと評価していただければうれしいんですが」
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軍団長選択画面 |
キャラデザにも力が入る |
石川 「ええ、前作との一番の違いはユニットの二次移動ですね。戦闘に勝利したユニットはその後さらに二次移動可能なシステムを取り入れましたから、うまく戦えば次々に相手のユニットを撃破して進むこともできるようになりました。
実をいうと二次移動の是非については製作スタッフの間でも意見が分かれたのですが、このシステムを取り入れたことによって戦術や「読み」の深さが求められ、結果的にゲーム全体のスピード感を高めることができたと思っています。結構恐いのが、コンピュータ側の攻撃と二次移動で、うっかり弱った部隊を並べているとたちどころに全滅……なんてこともありますから、気をつけてくださいね。この恐さは一度味わっていただかないとわかりません(笑)。
もうひとつ、「マスターコンバット2」では兵器の改造というシステムも取り入れました。シナリオが進むと新しい工場や技術が手に入り、より強力な兵器を生産できるようになっているのですが、これとは別に従来の兵器を部分的にパワーアップすることもできるのです。旧型の兵器を改造して寿命を延ばし、低いコストで戦力をアップさせるというわけですね。これは現実の世界でもよく使われている方法で、たとえば戦闘機のレーダーを強化して探査範囲を広げたり、戦闘車両のエンジンを改良して移動速度を増したりすることができます。こうして兵器に独自の改良を加えることによって、各自の戦い方に合わせた戦力を持つことが可能になりました」
こうした改造を続けると、現実には存在しない超兵器を作ることもできるというのは本当ですか?
石川 「現時点で存在する最高の兵器に改造を加えれば、ある意味でそれは超兵器ということになるかもしれません。プレイヤーがそれを目指すなら、「そういう戦い方も不可能ではない」ということですね。しかしだからといって無敵の兵器が出来上るわけではなく、あくまでも既存の兵器の改良型という位置づけになります」
■初心者でも楽しめる仕上がりを目指して
熱くお話しいただいた |
石川 「やはりなんといっても、コンピュータ側の思考です。これこそが「大戦略」シリーズ最大の魅力であり、買ってくださる皆さんが一番期待なさっている部分であると思うからです。型にはまった単純な戦闘しかできないようでは、ストラテジックなゲームとしておもしろくありません。「どこまでコンピュータ側の思考を人間に近づけるか」。それが「大戦略」シリーズに一貫したテーマでもあります。
しかしこれはとても難しい作業で、なかなか思うように進みませんでした。相手、つまりプレイヤーが正攻法で攻めてくれるなら結構強いアルゴリズムを組むことができるのですが、奇策で攻められると柔軟な対応がしにくいんです。コンピュータ側は囮を使った作戦や陽動作戦に弱く、つい釣られて動いてしまったりするんですね。囮部隊に引き寄せられ、その後ろから本体に叩かれるなんてことがよくありました。
「マスターコンバット2」ではこういう点を改めて見直し、コンピュータ側の思考をだいぶ練り直しています。そう簡単にだますことはできませんから、攻略にはいままでよりもずっと慎重な作戦が必要になります。こちら側のちょっとしたミスを見逃さずに付け入ることもあるので、うっかりするとひどい目に合うこともあるでしょう。作戦を練る楽しみを存分に味わっていただけると思います」
具体的には、CPUはどのような行動をとるのでしょう。
石川 「コンピュータ側の思考にムダがなく、とても上手に攻撃してきます。陽動作戦に引っ掛かりにくくなりましたから、裏をかくことが難しくなりました。多少人間らしくなったと言ってもいいかもしれせん。
こちらのユニットの移動範囲を調べた上で移動するので、ぎりぎり攻撃の届かない布陣を引いたり、逆に突出したユニットに集中攻撃を加えるなど、いやらしい戦い方をするようにもなりましたよ。ときどき、作った我々でさえ驚くような動きをすることもあります」
石川 「そうですね。私たちも、それが一番の問題だと思っています。'85年に最初の「現代大戦略」が販売されてから、既に13年が過ぎました。その間ずっとプレイしてくださっている方の多くはストラテジックゲームのエキスパートとして、兵器や戦術にとても豊富な知識を貯えています。こういう方は、より難易度の高い、複雑なゲームを期待なさるでしょう。しかしその一方で、今回初めてプレイするまったくの初心者もいます。あまり難易度が高いと、ゲームとして楽しんでいただけないかもしれません。この両方を満たすのはとても難しく、実際に今もよい解決策を見つけられずにいます。
ただ当社の「大戦略」シリーズには「現代大戦略」から「大戦略IV」に続くシリーズと、「スーパー大戦略」から「マスターコンバット」に続くシリーズの2系統があり、それぞれが別な方向で進んでいます。「マスターコンバット2」はマップもあまり広くせず、ストーリー重視のわかり易いゲームを目指しました。各面もあまり時間を掛けずにプレイできると思いますので、「大戦略は初めて」という方でも十分楽しんでいただけるはずです。「大戦略は難しい」という先入観を持っている方に、この点を上手にアピールしていかなければなりません」
CPU側のキャラクターによって、戦術に差が現れるようなことはあるのでしょうか?
石川 「うーん、それはちょっと難しいですね。本来はキャラクターによって戦い方が変るとおもしろいのですが……そう、たとえば包囲戦が得意な軍団長とか突撃戦が得意な軍団長とかね。実現するとなると、いろいろ大変なんです。変に個性を持たせようとすると、逆に思わぬ弱点が生まれたりして。あれこれ試しましたが、やはり正攻法で戦わせるのが一番強いという結論になりました。
ただキャラクターによって「電撃戦」や「人海戦術」などの特技がありますから、こうした違いは個々の戦闘に反映します。好みの兵器にも違いがあり、プレイヤーによっては微妙な差を感じるかもしれません。しかし基本的には同一のアルゴリズムを使っているので、戦術上極端な個性はありません」
■ネットワーク対戦型「大戦略」を開発?
石川 「「大戦略」シリーズの楽しみ方は人それぞれですが、私はやはりコンピュータとの対等な戦いにあると思っています。コンピュータ側を有利な設定にすればいくらでも難易度を上げることは可能ですが、それではおもしろくない。人間と対等な条件で対等に戦えることが大切だと思いますし、我々の開発のコンセプトもそこにあります。
もともと私はボード版のシミュレーションゲームが好きで、学生時代にずいぶん購入して遊んだのですが、いつも困るのが対戦相手を見つけることでした。人が揃わないと遊べないのが、ボード版シミュレーションゲームの最大の弱点です。だからパソコンを使って、一人でも遊べるシミュレーションを作ろうと思ったんです。システムソフトにはたまたま同じような趣味、同じような考えの人たちが多く、それが「大戦略」の生まれるきっかけになりました。だからこそ、プレイヤーとして対等であることが私にとっては重要なんです。
もうひとつは「勝ち方」ですね。同じ勝利でも、楽しい勝ち方、あまり楽しくない勝ち方があります。「マスターコンバット2」を含めて「大戦略」シリーズはゲームなのですから、プレイして楽しくなければしかたありません。気持ちよく遊べて、楽しく勝てる、そんなゲームになるよう考えながら作ってます」
「大戦略」シリーズは、今後どのような方向へ続いていくのですか?
石川 「いろいろ考えています。たとえば「大戦略」シリーズはターンとフェイズに別れたボードゲーム的なシステムですが、このところアメリカのゲームはマイクロソフトのシミュレーションゲーム「エイジ・オブ・エンパイヤ」のようなリアルタイムシミュレーションが主流になりつつありますから、そういう方向で考えてみるのもひとつの手段でしょう。
もうひとつは、ネットワークを利用した対戦型ですね。コンピュータ側の思考がどんなに高度になろうと、人間相手のおもしろさや作戦の奇抜さにはなかなか追いつくことができません。現在はインターネットの普及によってパソコン同士を安く結ぶことができるようになりつつありますから、いずれはネットワークを経由して戦う対戦型の「大戦略」を手がけてみたいと思っています。……これはまったくの企画段階ですが、とりあえず「大戦略IV」をベースに対戦可能なゲームを作ってみたいなと考えているところです。
いや、本当に実現するかどうかはまだわかりませんよ。ネットワーク対戦型のゲームは、いろいろと解決の難しい問題も多いですからね。たとえば「ウルティマ・オンライン」や「ディアブロ」のように専用のサーバーを持つべきか、それともポイント・トゥ・ポイント接続で遊ぶサーバーを使わないシステムにするかも考えなければなりませんし、仮に専用サーバーを置くとすればその規模や利用料金も考えなければなりません。いずれはネットワーク対戦可能なものにしたいと思っていますが、そのためには解決しなければならない問題がたくさんあることも事実です」
本日はどうもありがとうございました。
Interviewer & Text田中利昭
Interview Date at '98/1/21
(C)1998 SystemSoft Corporation
(C)1998斎藤岬/スコラ社
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