【ソフト】 |
|
|
●世界のシミュレーション界をリードしてきた大戦略シリーズ
大戦略シリーズといえば、あまりにも有名なシミュレーションゲームの大ヒット作。世界的にもグラフィックを多用したシミュレーションゲームがなかった'85年11月に発売された「現代大戦略」をルーツとするシリーズだ。
現代大戦略は、プレイヤーは一司令官となって現代の陸・海・空の各部隊を指揮し、最終的には敵の首都を占領するというゲームだった。各部隊を移動→攻撃という手順(フェイズという)で動かし、プレイヤー側がすべて終わるとコンピュータ側が同じように行なっていく(これをターン制という)ゲームシステムを採用しており、そのわかりやすいシステムと当時としては画期的な画面の美しさで、パソコンにおけるウォーシミュレーションゲームの分野を築き上げた。その後「大戦略II」でマウスが使えるようになるなど、こまかな改良が行なわれ、「大戦略III」では、ターン制に変わりコンピュータとプレイヤーが同時にプレーを行なうリアルタイム制の採用など次々と進化していった。4月23日に発売された最新の「大戦略マスターコンバット2」では、キャラクターが成長するRPG的要素が付け加えられ、より広がりを感じさせるウォーシミュレーションゲームとなっている。
●セガの考える大戦略とは?
今回、セガから発売される「アドバンスド大戦略98」(以下「大戦略98」)は、舞台を第二次世界大戦当時のヨーロッパに設定し、ターン制というオーソドックスなシステムを採用したゲームだ。
この舞台設定と、ターン制を採用したことにより、「大戦略98」はウォーシミュレーションとして凄まじいまでのボリュームを持つゲームになった。
ひとつには第二次世界大戦という世界史上もっとも技術進化が激しかった歴史をテーマにすることで、ゲームに登場する兵器の数は1,500種類以上。そして参加国は30カ国以上という膨大なデータ量を実現している。また、シミュレーションゲームでいちばん大事なコンピュータの思考ルーチンもよく仕上げられており、コンピュータ側のおかしな動きもほとんどなく、激しくもシビアで熱い戦いが展開される。
セガの考える大戦略とは、圧倒的なデータ量で実感満点に肉づけし、鍛えに鍛え抜かれた思考ルーチンでプレイヤーに挑んでくるウォーシミュレーションとなっていた。この「大戦略98」に勝ち抜くためには、プレイヤーが戦略的な目で戦況を判断し、細心かつ大胆なプレーが要求されるのだ。以下は、ほんとうにシミュレーションが好きな人のために、細かくこのゲームを検証していこう。
●プレーモードはふたとおり
シナリオ名をみるだけで圧倒される。ノルウェー戦を扱った「ヴェーゼル演習作戦」までも入っていて、ビックリ |
'40年5月10日未明に始まったドイツ軍のフランス侵攻を扱った「ダンケルクへの突進」、'41年6月22日に始まる独ソ戦を扱った「バルバロッサ作戦」(北方、中央、南方と3つもある)、もちろんあのノルマンディ上陸作戦を扱った「史上最大の作戦」も用意されている。
しかし、「大戦略98」のシナリオで驚くべきは、スターリングラード攻防戦を扱った「ヴィンター・シュトゥルム(冬の嵐)作戦」やロンメル将軍が負けたことで有名な「エル・アラメインの戦い」までもが用意されていることだ。しかもそのどれもが史実どおりの部隊編成(注1)に設定されているのには驚くばかり。このため「大戦略98」では歴史のリアルな追体験が可能となっており、フランス戦におけるグデーリアン装甲部隊の電撃戦やノルマンディ戦のパットン第3軍の快進撃などがプレイヤーの戦略によっては再現できるようになっている。
もちろんその逆も可能で、実際にはドイツ軍が負けた史上最大の戦車戦「ツィタデレ作戦」で勝利することも不可能ではない。
もうひとつのモードは、プレイヤーがドイツ軍の司令官となって、つぎつぎとミッションをこなし、ヨーロッパを制圧していく「キャンペーンモード」。ドイツ軍同士が青軍と赤軍に分かれた軍事演習から始まり、ポーランド戦を経てヨーロッパ全土を席巻していく。
このキャンペーンモードではミッション間で部隊を引き継ぐことができ、自分の部隊を育てていくことができるようになっている。また、ミッションの結果によって次のミッションが決まるため、すばやく勝利をおさめればより有利な状況で次のミッションを始められる。最初のうちは、戦争準備を整えていたドイツ軍が勝利しやすいような設定だが、時代が進むにつれてアメリカ軍の参戦やソ連軍の巻き返しもあってヨーロッパを制圧するのは容易なことではない。ただそれだけに史実的状況を反映した、手ごたえのあるモードになっている。
●細部まで作り込まれたリアルなルール
シミュレーションゲームのリアリティを高める要素として、各種のルールがあげられる。「大戦略98」でもさまざまな実感あふれるルールが設定されており、これを理解することが戦いに勝利するためのポイントだ。
●「大戦略98」で勝利するためには
ついに新兵器としてエントリーされたⅥ号E型(タイガーI型)戦車(注2)。進化系統をみるとIV号H型から派生してきたのが分かる |
もちろん、敵が多いときにはスツーカなどの急降下爆撃機を使ったり、自国の部隊を空からの攻撃から守るために対空砲を備えたりしなければならないが、目的はいかにすばやく敵の都市を占領するかということだけだ。そのために、どの進路を進んでいけば目的の都市に早く到達できるのか、また効率よく進むことができるのかという戦略的判断が必要になってくる。
そのために、自分の部隊、敵の部隊、マップ、天候などの膨大な組み合わせの中から、なにがベストなのかを判断していく必要がある。プレイヤーがみごとに電撃戦を成功させたあかつきには、勝利の旗が敵陣に翻っているだろう。健闘を祈る!!
●ウォーシミュレーションゲームの醍醐味
キャンペーンモードで現われたすべての兵器が登録される兵器図鑑。1,500種以上登録できるのは、果たしていつの日か |
ただ勝つことだけが目標ではなく、知的興奮と歴史のif(なぜ?)を味あわせてくれる、それがほんもののシミュレーションゲームではないだろうか。セガの「大戦略98」は、本物を感じさせてくれる数少ないシミュレーションゲームだ。
[注1]
[注2]
制作者スペシャルインタビュー
参考文献:
協力:田宮模型
(C)SEGA ENTERPRISES,LTD. 1998 (C)System Soft 1988
部隊編成(オーダー・オブ・バトル):ヒストリカルウォーシミュレーションゲームでは、もっとも重要視されている項目。史実どおりの部隊編成を実現するためには、膨大な資料の見極めなどに多くの時間がかかる。60以上のシナリオでこれを実現したセガの努力にはあぜんとします。はい。
VI号E型(タイガーI型)戦車:泣く子もだまるドイツ軍の花形タイガーI戦車。88mm砲の破壊力は連合国にパニックを巻き起こした。最後のドイツ戦車らしい戦車といえる
制作者インタビューでは制作の背景から、戦闘シーンで使用された精密模型の公開など奥深い話題をお届けします。
「第二次世界大戦通史」加登川 幸太郎監修 原書房刊
「GERMAN TANKS 日本語版」ピーター・チェンバレン、ヒラリー・L・ドイル共著 翻訳監修 富岡吉勝 大日本絵画刊
インプレッションや記事に関するご意見・ご感想、とりあげて欲しいゲームソフトや企画などは、pc-watch-info@impress.co.jpまでお寄せください。