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せっかくのゴールデンウィークだというのに、今年はPC業界関係者はのんびりできないかも知れない。もしかすると、米国で「Windows 98出荷停止」という爆弾が炸裂するかも知れないからだ。
なぜそんな不吉な(アンチMicrosoftにとっては喜ばしい)ことを言うかというと、それは司法省にとってのタイムリミットが迫っているからだ。司法省は、現在提訴している同意審決違反のケースでは、Windows 98の出荷を止めることができない。昨年12月に、ワシントンDCの連邦地方裁判所の出した仮命令があっても止めることができない。これは、今年1月に司法省がMicrosoftと結んだ「和解」のためだ。この和解で、結局司法省側は、MicrosoftがOEMメーカーに、Internet Explorer(IE)のファイルを取り除いたWindowsを実質的に提供しなくてもよいと事実上認めてしまった。WindowsからIEのアイコンだけを削除できればいいということで合意してしまったのだ。
この和解の件については以前このコラムで「Microsoftは判決前にWindows 98リリースを強行する」として書いたのでそちらを参考にして欲しいが、ともかく、司法省はこれまでの経緯から、当初の目標であったと思われるWindows 98の出荷阻止ができなくなってしまった……新しい提訴をしない限りは。
そう、司法省に残されたもうひとつの道は、新しく別件の提訴を行なうことだ。それも、より強力な嫌疑のものを、できる限り早く。とくに、今回は、この時間が問題だ。というのは、Windows 98の正式リリースは6月25日だが、OEMメーカーへの出荷は5月の中旬(15日と言われている)から始まってしまうからだ。それまでに少なくとも提訴はしないと、Windows 98出荷阻止はかなり難しくなってしまうだろう。つまり、司法省がしかけるなら、来週あたりになる可能性が非常に高いということだ。逆を言えば、それを越せば、司法省が新たな提訴をする可能性はぐっと低くなるだろう。
こうした事情を反映してか、このところMicrosoftに対して司法省が提訴を検討しているという記事がいくつも出てきた。これが観測気球か、あるいは勇んだ現場のスタッフからのリークか、そのあたりはわからないが、司法省周辺がなにやらくすぶっているらしいことだけはわかる。まさか、クリントン大統領を攻めあぐねているから、大統領に比べて攻めやすそうなMicrosoftにしかけるということはないだろうが、少なくとも司法省の一部はやる気がありそうだ。
もっとも、Wall Street Journalなどの報道では司法省の上層はあまり乗り気ではないというのもあった。そのため、実際に司法省が新たな提訴に踏み切るかどうかはわからない。そもそも、提訴に十分なだけの証拠を集めることができているのかどうかもわからない。しかし、これだけ煙が出てくると、司法省の動向にはかなり注意を払う必要がありそうだ。少なくともOEMメーカーにWindows 98が出荷されるまでは。
('98/4/30)
[Reported by 後藤 弘茂]