非同期通信レポート 第30回

「COMDEX/Spring'98」 Telecomレポート

TEXT:法林岳之

会場風景


通信機器メーカーもいない

 米国シカゴのマコーミックプレイスで20日から23日まで開催されていたCOMDEX/Spring'98。WindowsWorldとExpo COMM'98が同時開催されたが、会場レポートでも伝えられているように、内容は今ひとつと言わざるを得なかった。通信機器に関しては、56kbpsモデムの標準規格であるV.90が勧告されたため、新製品の登場を期待したが、これも空振り。中小のメーカーの新製品に、わずかに面白いものを見かけただけだった。


日本向けにISDNルータの新製品登場?

ARESCOM APEX1100
ARESCOM APEX1100

 昨年来、国内ではISDNダイヤルアップルータが人気を集めているが、ISDNよりもxDSLへの期待度が高いアメリカでは、あまりISDNダイヤルアップルータが出ていない。というより、出荷されているのはAscend CommunicationsCISCO Systemsといったネットワーク機器を専門的に扱うメーカーの製品ばかりだ。そんな中、今回のCOMDEX/Spring'98で新しい製品を見つけることができた。

 まず、アメリカのARESCOMは、APEX1100というISDNダイヤルアップルータを出品していた。APEX1100にはアナログポートのないモデル、1ポート付きモデル、2ポート付きモデルの3つがラインアップされており、日本のISDNのDSUに相当するNT-1も内蔵している。標準小売価格はいずれも600ドル台となっているが、Show Specialと題して、それぞれのモデルが199/214/229ドルで販売されていた。セットアップはWindows 95上で動作するウィザード形式のユーティリティを利用する。

 ARESCOMのInternational Business Managerにインタビューしたところ、日本向けには今夏、テレコムデバイスから販売する予定があるそうだ。テレコムデバイスと言えば、コストパフォーマンスの高いネットワーク機器で知られているが、早速、同社に確認したところ、筐体などのデザインやスペックはかなり変わるが、APEX1100をベースにした製品を開発中であることを認めている。

 ポイントはセットアップのしやすさや扱いやすさということになるが、アメリカでの販売価格から考えてもコストパフォーマンスが高い製品になりそうなことは期待できる。正式な発表を待つとしよう。



アナログ回線用ルータへの期待

VersaNET Commnications AccelNET
VersaNET Commnications AccelNET
 相変わらずアナログ回線の需要が高いアメリカでは、アナログ回線をターゲットにした製品が多い。VersaNET Communicationsが出展していたAccelNETもそんな製品のひとつだ。

 AccelNETはアナログ回線に接続するためのダイヤルアップルータで、V.90対応の56kbpsモデムを内蔵している。アナログ回線2本を束ねるM2、アナログ回線4本を束ねるM4という2つの製品がラインアップされている。価格はそれぞれ約800ドル、1,200ドルと高めに設定されているが、実際の販売価格はそれより安くなると担当者はコメントしている。

 同社はプロバイダ向けアクセスサーバやSOHO向けのルータを開発しているメーカーで、AccelNETシリーズは最もコンシューマに近い製品ということになる。アナログ回線用ダイヤルアップルータとは言え、NATやDHCPサーバといった機能はちゃんと搭載されており、セットアップはコンソールポートに接続したPCからTelnetで接続して行なうようになっている。

 COMDEX/Fall'97のレポートDiamond Multimedia SystemsTransendが出展していたアナログ回線を2本束ねるモデムを紹介したが、AccelNETも同じようにアナログ回線を2本以上利用する仕様では、日本での販売は難しいだろう。しかし、アナログ回線1本のみに限定したダイヤルアップルータにして、さらに低価格を実現できれば、日本でも十分需要はあるはずだ。6月に幕張メッセで開催されるNetWorld+Interop'98 TOKYOに出展するそうなので、興味のある人はブースに立ち寄ってみるといいだろう。

 アナログ回線向けのルータは、ISDNダイヤルアップルータに較べ、ダイヤル速度が遅かったり、接続に時間がかかる、回線品質によって速度が左右されるといった問題はあるが、複数のPCから同時にインターネット接続ができるというメリットは生きている。どうしてもISDNに移行できない環境や一時的に複数ユーザーが同時利用したい環境では有効な製品と言えるだろう。56kbpsモデムの国際標準規格が基本合意に達したことで、今年はこうした製品が増えてくるかもしれない。



アメリカ版ナンバー・ディスプレイ製品

CTI Interactive Call Commando Series
CTI Interactive Call Commandoシリーズ
CTI Interactive Call Commando Series
CTI Interactive Call Commando

 国内では2月にサービスが開始され、良くも悪くも話題となったナンバー・ディスプレイ。アメリカではすでに数年前からCallerIDという名称でサービスが提供されており、これを活かした製品も数多く販売されている。

 CTI Interactiveが出展していたCall Commandoシリーズは、このCallerIDを活かした製品だ。Call Commandoには3つの製品があり、1回線のみを対象とするCall Commando LITE、最大8回線をカバーするCall Commando、そして8回線以上やISDN、T1を対象とするCall Commando Enterpriseがラインアップされている。最もシンプルなCall Commando LITEのパッケージにはソフトウェアやケーブルなどしか含まれていないが、メインとなるCall Commandoには写真左下のディスプレイアダプタも同梱されている。

 これらの製品で驚かされるのはその価格だ。Call Commando LITEが99ドル、Call Commandoが295ドルとかなり安い。最上位のCall Commando Enterpriseは応談となっているが、その他の2製品はSOHOレベルでも十分手が届く範囲だ。

 ただ、ナンバー・ディスプレイの記事でもお伝えしたように、日本のナンバー・ディスプレイはアメリカのCallerIDとは異なる仕様になっているため、こうした製品を簡単に利用できないのが難点だ。以前、グローバルスタンダードにこだわる必要はないという話を書いたことがあるが、発信者番号通知サービスのように、すでにある資産を活かすという点では独自仕様がマイナスに働くこともあるわけだ。ちょっともったいないような気がするのは、筆者だけではないだろう。



PCエンスーのためのFanCard

T.S.MicroTech FcanCard
T.S.MicroTech FcanCard

 不況と言われるご時世だが、Pentium II 350/400MHz、Socket 7向けのベースクロック100MHzチップセットなど、PCエンスージアストの心をくすぐる製品が相次いで登場している。そんなPCエンスーな方々におすすめしたいのがコレ。

 T.S.MicroTechが出品していたFanCardは、その名前からも、写真を見てもわかるように、既存の拡張カードにクーリング用ファンをドッキングさせたものだ。写真上から順に、33.6kbpsモデム、マルチI/O、Ethernetを組み合わせているが、この他にもサウンドカードを組み合わせたもの、ISAバス用、PCIバス用、VLバス用などがラインアップされている。価格もほとんどの製品が30ドル以下と強烈に安い。

 ただ、まじめに考えてみると、この位置にファンがあると、何枚もカードを挿したときに隣のカードに邪魔をされて、あまり冷却されないような気もする(笑)。しかもカードが長いので、装着できるマシンも限られるだろう。とは言え、PC内部は常に熱がこもりがちなので、ちょっと使ってみたい気もしなくはない。ひょっとして、もう秋葉原に売ってたりする?



ラインアップ充実のMultiTech Systems

MultiTech Systems MT5600ZLX
MultiTech Systems MT5600ZLX
MultiTech Systems MTA128NTZLX
MultiTech Systems MTA128NTZLX

 通信機器メーカーの出展が少なかったCOMDEX/Spring'98だが、会場内の別室で製品を展示しているメーカーもいくつかあった。総合ネットワーク機器メーカーのMultiTech Systemsもそのひとつだ。

 同社はコンシューマ向けモデムからISDNターミナルアダプタ、プロバイダ向けアクセスサーバまで、幅広い製品を取りそろえている。今回も別室に製品をずらりと展示していたのが印象的だった。まず、モデムについてだが、同社はLucent Technology製チップを採用しているため、既存製品をV.90/K56flex両対応にアップグレードが可能だ。すでにPCカード製品は対応を済ませており、その他の製品も数週間で用意できるとしている。

MultiTech Systems MTA128NT
MultiTech Systems MTA128NT

 一方、昨年発表した外付けタイプのISDNターミナルアダプタ「IWay Hopper」は、日本の液晶ディスプレイ付きのものに較べると見劣りするが、DSUに相当するNT-1を内蔵しながら、かなりコンパクトにまとめているのが特徴的だ。PCMCIA ISDNカードも出荷しており、ラインアップに隙がない。

 気になる今後のV.90対応についてだが、クライアント製品については間もなく、すべて対応が終わるそうだ。アクセスサーバなどについても順次対応しているが、接続テストやユーザーの反響を見なければならないため、プロバイダの大半のアクセスポイントがV.90対応になるには年末くらいまで時間が掛かると見ているそうだ。

 ちなみに、Ascend CommunicationsのブースでもV.90対応に関する質問をしたが、残念ながら、この件について答えられる担当者が不在(なんで?)で、回答を得られなかった。なんとも頼りない話だが、Ascendのアクセスサーバを入れているプロバイダが多い現状では、プロバイダのV.90対応については先行き不透明と言わざるを得ないようだ。このあたりの話については、5月4日からラスベガスで開催されるNetWorld+Interopでも追加取材を試みる予定だ。


おまけ

 最後に、通信にはあまり関係のないおまけの製品を2つほど紹介しよう。

PalmPilot Keyboard
PalmPilot Keyboard

 これはTECHcessoriesというメーカーが出品していたPalmPilot Keyboardで、名称こそPalmPilotの名前が冠されているが、Palm-size PCなども接続できるように考えているそうだ。まあ、さしずめドッキングユニット型キーボードといったところだろうか。実際には、まだどう見てもモックアップでしかないんだけど、一応面白そうな製品であることは確か。でも、このサイズまで大きくなるんだったら、普通のWindows CEマシンとかミニノートを使う方が便利じゃない? まあ、あったらあったで買っちゃうんだろうけど(笑)。

ALADDIN USBHasp
ALADDIN USBHasp

 お次はALADDINが発表したUSBポート用HASP、つまりハードウェアプロテクトキーだ。通称、ドングルなんて呼ばれているアレね。一般ユーザーにはあまりご縁がない製品だけど、高価なDTPソフトやグラフィックソフトについていることが多い。キーホルダーになっているあたりは、現在のものに較べるとカッコいいんだけど、なんかこのためにUSBポートを1つ消費しちゃうのもねぇ。

[Text by 法林岳之]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp