インテルは、4月15日にベースクロック100MHzをサポートしたCPU「Pentium II 350/400MHz」と、それに対応するチップセット「440BX」を正式発表した。これと同時に低価格のベーシックPC用CPU「Celeron」の266MHz版と、対応するチップセット「440EX」も発表された。
Celeronは、これまでも様々なメディアで低価格Pentium IIとして情報が流されていたが、今回やっと正式発表となった。CeleronとPentium IIの大きな違いは、2次キャッシュが無いことと、カセットのようなカバーがなく基板がむき出しになっているところである。また、今回発表されたのは266MHz版で、ベースクロックが66MHzで、CPU内部は4倍速で動作する。プロセスは0.25ミクロンルール、CPUコア電圧は2.0V。マザーボードへの装着は、Pentium IIと同じSlot 1を使用する。
15日の発表では、量産出荷開始は2、3週間後といわれたCeleronだが、既に予約を受け付けているショップが登場している。今回、このCeleronを入手することができたので、使用レポートをお送りする。
□インテル株式会社のホームページ
http://www.intel.co.jp/
□プレスリリース
http://www.intel.co.jp/jp/intel/pr/press98/980415c.htm
□製品情報
http://www.intel.co.jp/jp/Celeron/index.htm
□参考記事
【4/15】インテル、Pentium II 350/400MHzと440BXチップセット正式発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980415/intel.htm
手に入ったCeleronは、インテルの発表どおり基板むきだしの形状で、台湾AAVID製ヒートシンクが装着されている。ファンを使用しないヒートシンクは大型で、CPUクーラーを装着したPentium IIと同程度の大きさとなっている。また、今回入手したCeleronには、Slot 1に装着するときに使用するガイドが付属している。
今回入手したCeleron Slot 1装着用ガイドが付属する |
ヒートシンク面 大型のヒートシンクが装着されている |
Celeronの背面 AAVIDの文字が見える |
このCeleronを見ると、シリアル番号らしきものと、sSpec Number「SL2SY」、動作周波数、ベースクロックが印字されている。
Celeronで最も気になるところは、やはり2次キャッシュが搭載されていないというところだ。つまり、現状では、Slot 1対応マザーボードを使用する限り、2次キャッシュなしのシステムとなってしまう。
さっそくCeleronを装着し電源を投入。まず最初に行なわなければならないのは動作周波数の設定だ。CPUのコア電圧の方は、BIOSで自動認識され2.0Vに設定される。とりあえず一番最初なので、規定のベースクロック66MHz、CPU内部4倍速に設定して、マシンを再起動してみる。当然のことながら、Celeronは266MHz動作し、システムが起動する。特に何が違うわけでもないし、いつものように各アプリケーションが動作する。予想としては、2次キャッシュがないので、極端に動作が遅くなると考えていたが、想像以上に快適である。しかし、π計算プログラム 「スーパーπ Ver 1.1」のようなプログラムを動作させ、結果を比べると明確に差が出てしまう。ただし、こういったプログラムで出された結果ほどの違いは、実際の操作上では感じられかった。
CPU IDについては、現在 筆者が使用しているPentium II(266MHz/ECC)がFamily 6、Model 3、Step 3と認識されるのに対して、CeleronはFamily 6、Model 5、Step 0と認識された。
次に関心が集まるのは、このCeleronがどのような設定で動作するかだ。ベースクロックは66MHzのまま、CPU内部4.5倍速に設定してみたが、その設定では起動しなかった。内部倍速の設定は、最近のPentium II同様に4.0倍速までしかできないようだ。
今度は、ベースクロックの方を上げてみる。66MHzから68MHz、75MHz、83MHzと設定してみたが、どれも問題なく起動した。さすがに、83MHzでの4倍速モード(333MHz動作)では、ヒートシンクが触ることができないほどの熱を持ったため、HDDやPC内部を冷やすためのファンを使って、風を当てながら動作確認を行なった。しかし、333MHz動作でも不安定なところは、まったくなく、極めて安定して動作した。
クロックアップの障害となりやすい2次キャッシュがないため、冷却さえできれば、ベースクロック83MHz以上で動作する可能性も高い。ただし、規定外の動作なので、当然それなりのリスクは承知の上で行なう必要がある。
Celeron | Pentium II 266MHz(ECC) | ||
---|---|---|---|
266MHz(66MHz×4) | 9分05秒 | 266MHz(66MHz×4) | 7分38秒 |
300MHz(75MHz×4) | 8分04秒 | 308MHz(68MHz×4.5) | 6分48秒 |
333MHz(83MHz×4) | 7分16秒 | ― | ― |
参考までに、Intel Media Benchmarkの結果も掲載する。このBenchmarkと実際に各アプリケーションを動作させた感覚とは似かよったものだった。このIntel Media Benchmarkの結果だけで判断すると、単純にPentium IIを266MHzで動作させた環境と、多少リスクはあるもののCeleronを300MHzで動作させた環境は、同程度の作業環境を得ることになる。
Celeron | Pentium II 266MHz(ECC) | ||||
---|---|---|---|---|---|
266MHz(66MHz×4) | Overall | 269.85 | 266MHz(66MHz×4) | Overall | 305.33 |
Video | 217.00 | Video | 237.17 | ||
Image | 1052.43 | Image | 1113.10 | ||
3D | 210.83 | 3D | 257.95 | ||
Audio | 391.77 | Audio | 432.37 | ||
300MHz(75MHz×4) | Overall | 308.77 | 308MHz(68MHz×4.5) | Overall | 342.99 |
Video | 247.75 | Video | 257.28 | ||
Image | 1182.85 | Image | 1266.73 | ||
3D | 239.43 | 3D | 294.90 | ||
Audio | 455.52 | Audio | 501.98 | ||
333MHz(83MHz×4) | Overall | 340.24 | ― | ||
Video | 272.30 | ||||
Image | 1329.39 | ||||
3D | 265.89 | ||||
Audio | 497.42 |
□ASUSTeK Computerのホームページ
http://www.asus.com.tw/indexold.html
□「P2L97」の製品情報
http://www.asus.com.tw/Products/Motherboard/Pentiumpro/P2l97/index.html
Celeronは、440EX搭載マザーボードの登場を待たなくても、安くなった440LXとの組み合わせで、十分過ぎるほどのパフォーマンスを持つWindowsマシンを組み上げることができる。また、440BXマザーボードを購入し、Pentium II 350/400MHzの価格が下がってくるタイミングや、Pentium II 450MHzの出荷を待つまでのあいだCeleronを使ってみるというのも、賢い方法だろう。また、対クロックアップ性能が優れているので、クロックアップの素材として使ってみるのという楽しみ方もある。
PCユーザにとっては、Celeronの登場によりハイエンドとローエンドの幅が広がり、選択肢が増えるのは、うれしい出来事であるに違いない。インテルも、Socket 7からSlot 1への移行を真剣に考えているのであれば、AMDやCyrixの戦略を完全に打ち砕くほどの価格でCeleronを提供して欲しいものだ。
[Text by 一ヶ谷兼乃]
なお、今回使用したCeleron 266MHzについては西早稲田の「高速電脳」の協力で借用させていただいた。同店では現在27,800円で販売中。また、同店ではCOOLER MASTER社が試作したというCeleron用のファン付きヒートシンクを入手しており、近日中に2,500円程度で販売する予定があるとのことだ。(編集部)
ショップ名 | 高速電脳 |
連絡先 | Tel 03-5272-5821 Fax 03-5272-5834 |
URL | http://www.dtinet.or.jp/~hako/ |
住所 | 東京都新宿区西早稲田1-4-20 |