今回使用したAGP対応Permedia2搭載ビデオカード
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[参考URL]
□VIA Technologiesホームページ
http://www.via.com.tw/
□Apollo VP3情報ページ
http://www.via.com.tw/vp3.htm
□Silicon Integrated Systemホームページ
http://www.sis.com.tw/
□5591情報ページ (Silicon Integrated System)
http://www.sis.com.tw/html/5591.html
□Acer Laboratoriesホームページ
http://www.ali.com.tw/
□Aladdin-V情報ページ (Acer Laboratories)
http://www.ali.com.tw/av.htm
EPoX Computer社 P-55VP3は、1つのAGPスロット、4つのPCIバススロット、3つのISAバススロット(1つはPCIバスと共有)を搭載しているATXマザーボードだ。メモリは、SIMMとDIMMに対応している。DIMMソケットは3つ、SIMMソケットが2つ用意されていて、SIMMとDIMMの混在も可能になっている。採用されているチップセットVP3はセカンドキャッシュとして2MBまでサポートしているが、今回テストしたP-55VP3には512KB搭載されている。
この製品にはマニュアル、AGPドライバFD、Ultra_DMAドライバFD、IDEケーブル、FDDケーブルが付属している。装備しているインターフェイスは、シリアルポートが2つ、パラレルポートが1つ、USBポートが2つ、それにキーボードとPS/2マウスのコネクタがひとつずつ用意されている。
P-55VP3の特徴は、シンプルなところだ。ジャンパピンの数も少なく、通常はCPUの動作クロックは、通常ベースクロックとCPUの内部動作の倍率との組み合わせで指定することが多いが、P-55VP3は1本のジャンパピンで設定することができる。
残念なことに、無理なオーバークロックを指定する設定はない。BIOSセットアップの項目も、メモリ周りの細かな設定はなく、必要十分な項目に絞られている。これらは、結果的にトラブルの起こりにくさにつながっているといえるだろう。
ベースクロックが66MHzの場合、CPU内部動作の倍率は1.5倍から5倍まで選択できる。同様に60MHzの場合には1.5~2.5倍、75MHzの場合には2~3倍が選択可能だ。ベースクロックが、これら以外の83MHzや100MHzといった設定はできない。
EpoxのWebページ上に登録されているBIOSのバージョンだと、IRQ9が必ず消費されるといった問題があったが、'98年の日付になっているBIOSでは、このあたりの問題が解決されている。
このほか、P-55VP3には、シリアルポートやキーボードでPCの電源を入れることができるという機能がある。キーボードのキーを数秒押していると、PCが起動するのだ。ただ、接続するキーボードによっては、この機能が使えないこともある。今回使用した日本IBMのトラックポイント2付き日本語キーボード(5576-C01)では、キーボードでの電源投入はできなかった。
VP3搭載マザーボードとしてP-55VP3は、低価格で販売されているために、どこかしらコストダウンされ、動作にも影響しているのではないかと心配する人もいると、聞いたことがある。しかし実際に動作させてみると、動作は安定しており、現在発売されているVP3搭載マザーボードと比べても、遜色の無いデキに仕上がっている。
ただ、一部のマザーボードに採用されているLM78を使ったCPU/ケースのファンやマザーボードに供給されている電圧、温度などの監視などはできない。
P-55VP3で唯一気になった点は、電源コネクタの位置である。マザーボードを見て、右上についているのだ。使用するケースよっては、納めたときに、拡張ベイに干渉することもあるのではないだろうか。少なくとも幅の狭いミッドタワーやミニタワーと呼ばれるケースで、ナカミチの多連装ドライブのような奥行きの長めドライブを使用した場合には、まず干渉してしまうだろう。
また、最近のマザーボードで問題になっているSDRAMのDIMMとの相性が気になるところだが、筆者の所有する3種類のDIMMについては、いずれとも正常に動作することが確認できた。NECの16Mbitチップを使ったASUSブランドの32MB DIMMとHYUNDAIの16Mbitチップを使った64MB DIMM、I/Oデータ機器のECCをサポートした64MB DIMM「ECC4100-64M」を試してみたが、どれも正常動作した。
今回は、この中からASUSブランドの32MB DIMMを2枚挿してテストした。ただ、NIFTY SERVEやインターネット上での情報によると、P-55VP3はSDRAMとの相性問題が存在するようだ。P-55VP3で使用するメモリを購入する際には、十分注意してほしい。
P-55VP3には、VIA Bus Master PCI IDE Controller Driverが付属している。このドライバをつかって、E-IDEのHDD、ATAPIのCD-ROMドライブは問題なく動作した。ただ、Epoxのホームページにある新しいバージョンのドライバだと、CD-ROMドライブがうまく認識しないなどのトラブルが発生する。その場合には、マザーボードに付属している97年8月のタイムスタンプのドライバを再インストールすれば回避できる。
このマザーボードのAGPを利用する場合にも、他のチップセットを採用したマザーボード同様に、OSR2.1以上のWindows 95と、Direct X 5が必要となる。VP3用のAGPドライバは、マザーボード付属のFDに入っていたものを利用した。今回はAGP対応ビデオカードとして、3DLabsのPERMEDIA2を搭載したビデオカードと、ASUSTek AGP-V3000を利用した。OSR2.1でUSBの追加サプリメントをインストールした環境で、AGP対応ビデオカードの正常動作を確認できた。P-55VP3で動作が確認されているAGP対応ビデオカードは、ASTERやEpoxブランドのマザーボードを取り扱うマスタードシード社のホームページで、知ることができる。ちなみに、同社は、ホームページやNIFTY SERVEのPCパーツメーカーフォーラム(FPCPARTS)で、積極的に情報提供を行なっている。このページは、P-55VP3ユーザは必見だ。
動作周波数設定はジャンパピン1本で行なう | 3つのDIMMソケットの他に、72pin SIMMソケットが2つ | 2次キャッシュメモリはWinbond製 |
VP3チップセット(1) | VP3チップセット(2) | 給電電圧設定ジャンパ |
FIC PA-2012は、1つのAGPスロット、4つのPCIバススロット、2つのISAバススロット(1つはPCIバスと共有)を搭載している。メモリはDIMMを使用し、DIMMソケットは3つ用意されている。採用されているチップセットVP3はセカンドキャッシュとして2MBまでサポートしているが、今回テストしたPA-2012には1MB搭載されている。PA-2012には、この他に512MB搭載のものが出荷されている。
このマザーボードのAGPを利用する場合にも、他のチップセットを採用したマザーボード同様に、OSR2.1以上のWindows 95が必要となる。今回はAGP対応ビデオカードとして、3DLabsのPERMEDIA2を搭載したビデオカードを利用した。OSR2.1をインストールした環境で、AGP対応ビデオカードは正常に動作した。
このマザーボードもSDRAMのDIMMとの相性が気になるところだが、筆者の所有する3種類のDIMMについては、いずれとも正常に動作することが確認できた。NIFTY SERVEやインターネット上の情報でも、PA-2012はメモリとの相性問題が発生する可能性は少なく、メモリに関しては安心して使用できるということだ。
実は、PA-2012をレポートするにあたって、Watch編集部から2枚を受け取り使用している。一つはPCB1.1で、もう一つはPCB1.2だ。
最初にPCB1.1のボードを受け取った当初は、AGPに装着したビデオカードがうまく動作せず苦労したが、BIOSの設定やPCIバスのビデオカードでWindows 95(OSR2.1)をインストールした後に、AGP対応のPERMEDIA2を搭載したビデオカードに交換するといった作業で、正常動作するにいたった。
PA-2012 PCB 1.1 全体 | PA-2012 Socket7内にLM75が装着されている | PA-2012 マザーボード上のLM78 |
定評のあるtm techの2次キャッシュメモリ | 給電電圧のシルク印刷 | PCB 1.1のパターン |
現在ショップに並んでいるPA-2012はPCB1.2になっている。1.1と1.2は、細かな部品の配置や日本語マニュアルの添付といった部分が違っている。ただ、PA-2012が市場に登場したときにはLM78が搭載されていたものの、現在ショップで販売されているものには、搭載されていない。アプリケーションから、マザーボードやCPUに供給されている電圧やCPU/ケースのファンの回転数、マザーボードの温度などをチェックできるLM78が廃止されたのは非常に残念である。
PA-2012 PCB 1.2 全体 | PCB1.2にはLM75のパターンだけ | LM78も搭載されていない |
PCB 1.2のパターン | きれいで読みやすいマニュアル類 | 付属するADVANTAGE CARD |
PA-2012は、Socket7対応マザーボードとしては、どちらかというと高価な部類に入る。付属するマニュアルも、通常のマザーボードに付属するものと違い、良質な紙を使った2色刷りのきれいなものだ。和文と英文の2冊が同梱され、内容もBIOSセットアップの項目まで説明している分かりやすいものに仕上がっている。また、Advantage Cardと印刷してあるクレジットカード大のプラスティック製のカードが付属している。このカードを使えば、日本FIC社のホームページで、ユーザー登録をしたり、さまざまな情報を得るとこができる。
付属のCD-ROMには、VIAチップセット対応ドライバのほかに、Intelチップセットのドライバも入っている。PA-2012専用ではなく、FIC製の他のマザーボードとも共通して使用されるものなのだろう。
PA-2012でCPUの設定は、給電電圧も動作倍速、クロック設定もすべてジャンパピンで行なう一般的なものだ。設定できる電圧は、3.3/3.2/2.9/2.8/2.1Vとなっている。マザーボード上のシルク印刷を見る限り、2.1Vは266MHz動作のAMD-K6用に用意されている電圧のようであるが、実際には266MHz AMD-K6は、2.2Vが給電電圧である。2.1Vの設定で動作するのかが、気になるところだ。実際には試していないものの、初期のPCB1.2では、266MHz版AMD-K6が動作しないトラブルが発生しているようだ。ベースクロックは、55/60/66/75MHzの設定が可能。CPUの倍速動作も、Intel P55C/AMD K6/Cyrix 6x86MXといったCPUでは、2倍速から5.5倍速まで、0.5ステップで設定することができる。
PA-2012は、BIOSセットアップでは、設定項目も細かな設定が可能だ。今回取り上げたEpox P-55VP3とは性格が違い、メモリ関連なども細かなセッティングを行なうことができる。設定をいじってチューニングを楽しむことも、PA-2012では可能だ。ちなみに、Cyrix CPUのリニアバーストモードには対応していない。
PA-2012を初めとするFIC製マザーボードに関しては、PCショップ「Happy Cat」やknosさんのホームページに、現状の問題点やドライバの不具合などが報告されている。
[参考URL]
□日本エフ・アイシー(株)のホームページ
http://www.bl.mmtr.or.jp/~fic1stmb/
□PCショップ『Happy Cat』FIC製マザーボード技術情報ページ
http://plaza18.mbn.or.jp/~happy_cat/fic.htm
□knos氏の「PCの部屋」ホームページ
http://www.hi-ho.ne.jp/knos/
現状では、他と比較して安定しているのは、Intel製のチップセットを搭載したマザーボードである。その他のチップセットを使ったマザーボードは、ある程度期間が経たないとまず安定しないといってもいいだろう。
今回、VIA VP3を使ったマザーボードを2製品使ったのだが、同じような傾向があった。まず、IDE用のBusMasterドライバが、現在も頻繁にバージョンアップを続けている。これは、さまざまなトラブルのBugFixを行なった結果なのであるが、最新のVIA BusMasterドライバ V.2.1.20(編集部注:4月2日現在の最新バージョンはV.2.1.21)を使ってもATAPIのCD-ROMドライブで、音楽CDをうまく再生できないといった問題が残っている。これまでのバージョンも、SCSIホストアダプタが正常に動作しない、パフォーマンスが出ないといった問題があり、まだまだ満足いくレベルには達していない。
その他にも、今回の機器構成では表れてこなかったものの、Epox P-55VP3では Videoカードとの相性問題も現状確認されている。また、Windows95 OSR2.0以降で、PCIバス対応拡張カード間でのIRQの共用なども、最新バージョンのBIOSでもうまく動作しない。
これらの問題は、各種ドライバやBIOSがバージョンアップを行なっていくうちに、そのほとんどが解消されていくはずなのだが、VP3を使ったマザーボードが登場してから、4カ月以上が過ぎているにも関わらず、現在も様々な問題が残っているのが気になるところだ。
ただ、細かな不安材料は残ったままになっているものの、VP3チップセットを搭載したマザーボードは、AGP対応ビデオカードを使用できるメリットは大きい。この記事で紹介したURLのページなどや、PCショップのからの情報で、現状起こっている問題を事前に知っておけば、特に大きな障害につながることもなく、安定した動作のシステムを組むことができる。
今回紹介したマザーボードは、拡張スロットの数といった外見だけでなく、ジャンパピンによる設定やBIOSセットアップの項目などの見えない部分で性格の違うものとなっている。どちらかというとP-55VP3は初心者向け、PA-2012は細かなチューニングを行なうマニア向けと位置づけられる。細かな項目までセッティングできるということは、ぎりぎりまでのチューンナップも可能な反面、不安定な動作の原因となってしまうことにもなりかねない。このあたりも、自作PCの楽しみの一つではあるが、自作PCを楽しむ人達の全てが、こうした楽しみを求めているとは言い難い。PCの自作が、知識豊富なマニアだけのものでなくなっている現状を考えると、無茶な設定を行なうことができない方向性もあってしかるべきで、細かな設定ができるPA-2012のほうが必ずしも優れているとはいえない。ジャンパピンの設定が単純な点、ISAバススロットが1つ多い、購入しやすい価格を考えるとP-55VP3も魅力的な製品である。
VIAからは、ベースクロック100MHz対応のSocket7用チップセットMVP3が、既に発表されている。このチップセットを使用したマザーボードも近日中に秋葉原などのPCショップに登場する予定になっている。ベースクロックをクロックアップして楽しむのであれば、このMVP3やAladdin-V、5591といったチップセットを搭載したマザーボードのほうが理屈の上では、安定動作するはずだ。ただ、新チップセットのため、実際に安定動作するかどうかはなんともいえないのが、この世界の難しいところ。
VP3を搭載したマザーボードは、現状では手放しにお勧めできるとは言い難いということになってしまうが、マスタードシード社のようなサポートを期待できる代理店や、情報を多くもっているPCショップでの購入であれば、トラブルに巻き込まれることなくPCシステムを自作することはできるはずだ。
[Text by 一ヶ谷兼乃]