【ソフト】 |
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★ ゲームソフトインプレッション ★
神秘的な海の底を探検するアドベンチャーゲーム
Sub Culture
& 制作者スペシャルインタビュー付き
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【ゲームの内容】
ゲームの舞台は、海底に住む1cm程度の小さな人々の世界。何もかも大きく、人間が普段食べている魚たちも彼らにとってはモンスター級。プレイヤーはその世界の住人となり、潜水艦を操り、いくつかのミッションをこなしながらストーリーを進めていくことになる。海の底を美しく表現したグラフィックにも惹かれるが、ゲームの自由度の高さも魅力のひとつ。
【動作環境】
- CPU:Pentium 90Mhz以上(120Mhz以上推奨)
- RAM:16MB以上(32MB以上推奨)
- HDD:80MB(快適なプレイのためには200MB以上の空き容量が必要)
- CD-ROMドライブ:4倍速以上
- 3Dグラフィックカード:3Dfx、PowerVR、Rendition V1000/V2000対応
- DirectX3以上
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■イマジニアのホームページ
http://www.imagineer.co.jp/
■ニュースリリース
http://www.imagineer.co.jp/imagi_n/product/syokai/subcul/subcul.htm
■Criterion Studiosのホームページ(英文)
http://www.csl.com/studios/index.html
■「Sub Culture」のページ(英文)
flash site
http://www.csl.com/studios/flash/subculte/subtunel.htm
non-flash site
http://www.csl.com/studios/n-flash/subculte/subtunel.htm
■「Sub Culture」のページ(UBI SOFT)(英文)
http://www.ubisoft.com/subculture/subhome.html
■「Sub Culture」のスクリーンセーバー、デモ版(9MB)のダウンロードページ(英文)
http://www.ubisoft.com/subculture/download/download.html
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もちろん戦闘しなければならないときもある。 |
魚が群れて幻想的なシーン。美しい光景に、暫し見とれてしまう |
登場する魚はAIを搭載しており、独自の動きでを繰り広げる |
なにげなく泳いでいる魚のようだが、敵と味方が設定されている |
“サブカルチャー”。このソフトのタイトルを見て、思わずピクリと反応してしまった人も少なくないはず。思い出さないだろうか? 80年代後半から90年代前半にかけてのサブカルブーム。かくいう私も、サブカルチャーという単語を目にしただけで、月刊だった頃の「宝島」(もちろんバンドブーム以前)や、いきなりの廃刊でフリーライター生活を危うくしてくれた「iD Magazine日本版」などの記憶が蘇り、ついつい血糖値が上昇してしまう人間なのだ。
だが、ひと口にサブカルチャーと言っても、そこには様々な事象が含まれている。このゲームは、いったい何をテーマにしているのだろう。ロック? ドラッグ? それとも、コンピューターゲームだけにハッキング? いずれにせよ、いかにもという設定の作品がほとんどの国産ゲームとは違い、よくぞこんなマイナー志向の題材を選んだものだと感嘆させられるものが多い海外産ゲーム。いったいどんな切り口を見せてくれるのかと期待しつつ、プログラムを起動させたのだが……。
●海中を舞台にしたアクションアドベンチャー
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海底には洞窟なんかもあり、当然その中を探検することもできる
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この「SUB CULTURE」は、私が淡い期待を抱いた類いの作品ではなかった。そりゃそうだよね。よくよく冷静になって考えてみると、いわゆるサブカルチャーの場合、"SUB"と"CULTURE"の間にスペースは入らないもん。では、「SUB CULTURE」の"SUB"は、いったいなんのことを指すのかといえば、これが"SUBMARINE"の"SUB"だったのだ。つまりこのソフトは、潜水艦を題材にしたゲームで、オルタナティヴロックとか、前衛舞踏とかなんてものとは、まったくなんの関係も無いのでした。なんだかいきなり肩透かしを食らった気分。まあ、変な先入観を持った私が悪いと言えば、それまでなのだが……。
ともかく、気を取り直して実際にプレイしてみる。最初のうちこそ、紛らわしいタイトル付けるんじゃないよなどとブツブツ言いながらプレイしていたのだが、ふと気が付くと、外はすっかり暗くなっていた。そう、なんだかんだと文句を口にしながらも、いつの間にか数時間も経ってしまっていたのだ。プレイを重ねるうちに、いつの間にか、このソフトが持つ独特のリズムにすっかりハマッてしまったというわけ。
このゲームの舞台は、身長1cmほどの小さな人々が生活している海底世界。体と同じように小さな潜水艦で移動するこの世界の住人たちは、海の上に自分たちと同じような姿をしながら、もっと巨大な体を持つ生物=人類が生息していることなど知らず、日々の生活を送っていた。だがある日、ひとりの人間が船のデッキからジュースの空缶を海に投げ捨てたことにより、大きな事件が発生する。その空缶が、海底の小さな住人たちの世界に降ってきたのだ。なにしろ身長1cmの生物が住む家のこと、いくら空缶といえどもその衝撃は大きい。結局、ひとりの住人の家が直撃を受け、全壊してしまう。このとんでもない災難に見舞われたのが、ゲームの主人公=プレイヤーなのだ。
目の前で住居を潰された主人公は、海の上の世界には、なにか得体の知れない生命が存在することを確信する。家がなくなって帰るところがなくなったことだし、ここはひとつ、その生命の正体を探る冒険の旅に出るとするか。そう考えた主人公は、さっそく目標に向ってまっしぐらに進んでいく、といいたいところなのだが……。これがそうもいかないんですな。
なにしろゲームスタート時点には、これからどういう行動を取るべきかといった情報は、いっさい与えられていない。まさに、右も左もわからない世界に、いきなり放り込まれた感じなのだ。しかたなく、画面上部のウィンドウに表示されるマップを頼りに、移動を開始する。このマップは、まだ行ったところのない場所が、ブラックアウト処理により隠されている。その黒い部分を消すように、前後左右と移動して行くわけだ。
●イベントてんこもりのストーリー展開
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凶悪な民族も住んでいるため、気をつけて冒険を進めなければならない
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あちらこちらと進んで行くと、海底世界のところどころに、自分と同じ種族の住人が運営する施設を発見できるはず。それらの施設では、調査や採集、戦闘といったミッションが用意されている。それらのミッションの報酬により、自分の潜水艦をパワーアップしていくことが、当面の目標となる。だが、これがなかなか大変。たとえば、恐らく多くのプレイヤーが最初に選択することになるだろう、酸素を発生させる鉱物を採集するというミッションでは、"破壊して小さくしてからのほうが運びやすいよ"というヒントは与えられるが、具体的にそれがどの辺りにあるのかは明かされない。万事が万事こういう感じで、とても気軽にサクサク先に進むことはできないのだ。
これだけ聞くと、ただ単につらいゲームかと思う人も多いだろう。しかし、実際にプレイしている間は、先に進めないことによるイライラ感を感じることは少ない。というのも、このソフトの場合、当てどもなくたださまよっているだけでも、なかなか楽しい気分にさせてくれるのだ。
とにかくこのソフトのグラフィックは、素晴らしいのひとこと。青く澄んだ海中では、切り立ったガケや真っ白な砂地など、様々な自然の造形がプレイヤーを待っている。ときには、色取り取りの魚たちが目の前を横切ることもある。その感覚は、まさに海中散歩という感じ。スキューバダイビングを趣味にしている人などは、潜水艦のパワーアップなど放っといて、海中散策に熱中してしまうかも知れない。そうした、それぞれのプレイヤーごとに異なる楽しみ方ができるのも、ゲームの進行手順がガチガチに固定されていないソフトならではのポイントだろう。
もっとも、すべてのプレイヤーが、そうしたゆったりとした感覚を好きになれるとは限らないのも事実。特に、手に汗握る感動のイベントがこれでもかと連発される、コンシューマー機のアドベンチャーやRPGに慣れているユーザーだと、このゲームが持つやや間延びした感覚には我慢が出来ないのではないだろうか。いったんこのリズムに慣れてしまえば、長く楽しめるゲームであることは確かなのだが……。そう考えると、このソフトは心に余裕のある大人にこそプレイしてもらいたいゲームということができるだろう。
●やっぱり綺麗なグラフィックでゲームを楽しみたい
なお、「SUB CULTURE」をフルに堪能したいのなら、是非とも3DfxのVooDooチップを登載したビデオカードを用意しておきたいところ。一応、通常のDirect3Dにも対応しているので、ほとんどのマシンでプレイすることは可能なのだが、それではこのゲームの持つ魅力の大部分とは言わないまでも、少なくとも半分は失われてしまう。Virge DX登載ビデオカードを装着したサブマシンで確認してみたのだが、そちらでは水の透明感や光の揺らぎがあまり感じられなかったのだ。これだと、移動自体を楽しむことなど、とても不可能。ここはひとつ、VooDooチップ登載カード買っちゃいましょうよ、お父さん。最近の海外産ゲームのほとんどが対応していることだし、決して公開することにはならないはず。まあ、いまなら、VooDoo2チップ登載カードのリリースを待ってからゲットするという手もあるが。
Published by Imagineer Co., Ltd. under license from Criterion Studios
【筆者紹介】
- 名前:小笠原 誠
- プロフィール:
仕事と麻雀しかしない男。最近熱中しているゲームは、対戦ダンスゲームの「バスト・ア・ムーブ」(プレイステーション)。最初は偏見を持っていたのだが、実際やってみるとこれが超イカス感じで、ハマる、ハマる。でも、「パラッパ・ラッパー」と同じく、リズム感がない人間では全然先に進めないのでした。トホホ。
【総プレイ時間】
「Sub Culture」制作者スペシャルインタビュー
「本物の魚の動きを研究し尽くしたよ!」
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Criterion Studios副社長 MIKE KING氏 |
美しい海底を探索できることで注目を集めている「Sub Culture」を制作しているCriterion Studiosの副社長MIKE KING氏にお話を伺う機会を得た。この美しい海底世界を表現するのにどのような苦労があったのだろうか?
■ゲームデザインが完成すればグラフィックの制作は簡単!
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美しい海底を体験するためには、それなりのマシン環境が必要
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Criterion Studiosは、これまでRenderWareの3D graphics libraryなど3Dグラフィック関連の仕事をメインに活動してきた会社だが、ゲームの制作に参入するきっかけはどのようなものだったのだろうか?
KING氏 ふたつ理由があって、そのうちのひとつは、マルチメディア産業の中で一番儲かるのががとれるのがゲーム産業だったからだ。もうひとつは、Criterion Studiosに元ゲーム会社で働いていた社員がいて、彼を中心にゲーム部門を立ち上げやすかったという理由がある。
昨年のE3(Electronic Entertainment Expo:アメリカで毎年開催されるエンターテインメント・ソフトの見本市)でいきなりグランプリを受賞した「Sub Culture」。送り手として、このゲームのポイントとはどこなのだろうか?
KING氏 ひとつは、海底を舞台としたアドベンチャーゲームはありそうで、それほどなかったんだよ。「Sub Culture」は海底を舞台にしているという点でユニークだと思うんだ。もうひとつは、クオリティが高いグラフィックス処理だね。本当に、海底の美しさを表現できてると思うよ。ちなみに、E3以外にドイツでもふたつの最優秀ゲーム賞を受賞しているんだ。
「Sub Culture」は、ビジュアルが美しいことが特徴のひとつとなっているが、今回のゲーム制作にあたって、ビジュアルイメージが先行したのだろうか? 例えば、このグラフィックを表現したいから、ゲームを作るのか? それともゲームシステムが優先して作り上げられたのだろうか?
KING氏 もちろん、グラフィックは後から付随してくるもので、まず最初はどのような楽しみを提供できるのかというゲームデザインから制作にはいるんだ。そして、我々はグラフィック技術をすでに持っているので、そのゲームの雰囲気にあったグラフィックを作り出していくんだ。ゲームデザインがしっかりしていれば、グラフィックの制作は簡単なんだよ。
我々は2Dから3Dまで、グラフィックと名のつく技術はすべて押さえているし、最新のトレンドも調査して動向をチェックしている。ゲームを作る上でゲームデザインを固めれば、その題材を表現する上で最適のグラフィック技術を自社のライブラリから選択するんだ。だから、すべての技術を投入してゲームを作っているわけじゃない。我々はもっと余裕があるんだ。
「Sub Culture」には数多くの魚や海洋生物が登場する。これらの生物を模写するのにはかなりの苦労が伴うが、今回のゲームではどのようにして魚の動きを再現したのだろうか?
KING氏 登場する魚は、すべてAI(人工知能)を搭載していて独自の動きを再現している。このゲームの世界はひとつの規律があって、それに準じてAIも動いている。ある意味、現実と変わらないんだ。たとえば鰈(カレイ)やエイなどの鰭(ヒレ)の動きは難しいんだけど、そういった部分も含めて、魚のビデオを何度も見直してかなり研究したよ。
あと水の動きや、波の表現も苦労した点だね。テクスチャや波の動きのプログラムに関しては、膨大な時間がかかっているし、ソースコードもかなりの量になったよ(笑)。目に見える波の動きや水の流れも難しいけど、たとえば潜水艦が沈むときの水の抵抗を感じるような動きを表現することも重要だし、「Sub Culture」では現実的な物理法則に則った動きをきちんと実現している。
小さい人間が海の中に住んでいて海洋汚染の脅威に脅かされている……といった一風変わったアイディアはどこから出てきたのだろうか
KING氏 このゲームのアイディアを出したのは、ゲーム開発チームで「Sub Culture」のエンジンを作り上げたジョナサン・スモールというプログラマーなんだ。彼の一種のひらめきともいえるアイディアが元になっているんだけど、彼曰く「海底の中は地上の視点とはまた違った世界が広がっているというということに気がついた」んだそうだよ。
■これからもゲーム開発には力を入れていく
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潜水艦をパワーアップさせるのも楽しみのひとつ
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Criterion Studiosの次回作として控えているバイク・レース・ゲーム「Red line Racer」だが、かなりのスピード感が自慢だ。水の動き同様、風やスピード感の表現は難しいことで知られているが、どのような工夫がされたのだろうか?
KING氏 スピード感という点では「スプラッシュバトル」にも同じことがいえるんだけど、カメラアングルにかなり気を使ったね。キャラクタは小さくなってしまうんだけど、視野を広めにとって周りの風景が多めにはいるように設定するんだよ。そうすると、風景の流れでスピード感を表現できるというわけなんだ。このほかにもバイクなどで走ると道路にタイヤの跡がつくだろう? ほかのゲームでもそういった跡を表現しているゲームがあるし、それを注意深く見てみてほしいんだけど、その跡の動きによってはスピード感を感じるときがあるんだ。そういった点には気を使っているね。
あと、グラフィック関連の技術で言えば、例えばバイクひとつとっても、作るモデリングは1個だけとは限らないんだ。実際、「Red line Racer」では1台のバイクに3種類のモデリングがされている。遠くから見たとき、バイクは小さいだろう。この時はポリゴン数は少なくても十分表現できるんだ。テクスチャで誤魔化すこともできる。カメラがバイクに近づくと、キャラクターは大きくなるから多くのポリゴンを使って表現しなければならない。それぞれのシーンごとにモデリングデータを使い分けているんだ。
かなり密度の濃いゲームを作り出しているCriterion Studiosだが、これからの予定はどうなっているんだろうか?
KING氏'97年11月の時点でゲーム制作チームは5つあって、そのうち3つはもうすぐ終了する(「スプラッシュバトル」「Sub Culture」「Red line Racer」の3チーム)。だからこれら以外に今年は2作品を発表できるだろう。ただ、ゲームっていうものは、開発期間をはっきり言えるものじゃないからね(笑)。これまで発表した3作品にしても、作ってはテストして直し、作ってはテストしての繰り返しなんだ。だから、ここで約束はできないけど、楽しみにしていてほしいね。
日本マーケットはこれからも重要視していくよ。今はコンシューマー市場が大きいけど、PCの方がグラフィック表現力が優れているだろう。だから、2~3年後のコンシューマーとPCの比率はどうなっているかわからないよね。
インタビュア by PC Watch編集部
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ウォッチ編集部内PC Watch担当
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