|
続々登場する記録メディア。しかも、各国で普及しているメディアが異なっていることもあり、この分野はかなり混迷している感がある。ヨーロッパを代表するイベントCeBITでも、各社各陣営が会場で積極的なデモンストレーションを繰り広げていた。
●「DVD+RW」vs「DVD-RAM」
CeBIT会場のあちらこちらで見かけるのがDVD。DVD-ROMドライブは、台湾や韓国メーカーから安価な製品が多く出品されており、それなりにお手頃な感じになってきたが、やはり今回の注目はリライタブルタイプの「DVD-RAM」と「DVD+RW」の動向といえる。
なかでも「DVD+RW」関係に熱心だったのが、ソニー、リコー、ヤマハのブースだった。
ソニーのブースでは、200MB容量のFDDであるHiFDと並んで「DVD+RW」の紹介を盛んに行っており、内蔵用ドライブも展示していた。機能的なメリットをアピールするのはもちろん、ヨーロッパ市場に強いHPやフィリップスもDVD+RW陣営であることを強調していたのが印象的だった。
リコーはCD-RWドライブ関係の展示が多く、デジタルカメラとCD-RWドライブのセットパッケージもあった。そのなかで、参考出品として、DVD-ROM互換で4.7GBの容量をもつリライタブルとライトワンス対応のディスクを展示していたのが目つにいた。もちろん、これはまだ規格の標準化ができていないもので、あくまでも技術展示という意味合いが強い。
ヤマハは今回、DVD+RW用の4倍速ドライブを出品。とはいっても、ブース前面にはなく、奥の商談ルームでアクリルケース越しで展示されていた。
また、CD-R/RW用でも、CD-R書き込みが4倍速、CD-RW書き込みが2倍速で、しかも16倍速のCD-ROMドライブとしても使える「DRW4216」や、8倍速書き込みで24倍速読み出しのCD-Rドライブも出品されていた。
一方、DVD陣営では、松下、東芝、日立などの各ブースで、発売直前のDVD-RAMドライブのデモを行っており、製品化という点では、やはりDVD-RAMが一歩リードしている感じだった。
もっとも、ヨーロッパはアメリカに次いでCD-Rドライブの普及率が高く、メディアの価格もこなれているので、そう簡単に高価なDVD系には移行しないという見方をする人もいる。なにしろ、小都市のデパートのPC売場でも、CD-Rメディアがフロッピーのような感覚でごく普通に販売されており、価格も1枚200円程度とお手頃。しかも、ドイツ人は合理的で経済観念が発達していることを考えると、普及までにはもう少し時間がかかりそうだ。
●ますます具体化してきた「HiFD」
200MBの大容量フロッピーとして注目を集めている「HiFD」。今回もSONYと富士フイルムのブースでデモが行われていた。デモの内容は、大容量な点とアクセススピードの速さをアピールするため、HiFDからの動画再生を実行してみせるのがメインだった。
さらに、SONYブースでは外付けドライブや内蔵用ドライブ、化粧箱入りの製品パッケージまで展示されており、あとは発売を待つばかりという印象を受けた。もっとも、価格や正確な発売時期などはまだ公開されていないが、どうやら今年後半には製品化されそうだ。
●新型のCFカードドライブを出品したSanDisk
デジタルカメラや携帯情報機器の台頭で需要が急速に広がっているメモリーカード市場。そのトップメーカーであるSanDiskは今回、コンパクトフラッシュ(CF)カード関係の新型ドライブを出品していた。
ひとつは同社ブランドのCFカード専用ドライブ「ImageMate」。これはパラレルポート接続専用の可愛らしいドライブで、プリンターなどのチェーン接続もできるという。
また、他社ブランドながら、CFカードドライブ内蔵のUSB対応キーボードも参考出品されていた。USB接続ならば転送速度も十分に確保でき、手軽に利用できる。
結局、今回の展示がドライブ類に重点が置かれていたということは、デスクトップマシンで気軽に利用できないという、メモリーカードの普及のネックを解決したいという同社の意思の表れなのだろう。とくに、スマートメディア対抗といわれる超小型MMCカードのリリースも間近な同社にとっては、急務な問題なわけだ。
このほか、ブースにはPCMCIA Type2で150MB容量をもつ大容量カードも展示されていたが、資料によれば、このほかにも60MBのCFカードや、PCMCIA Type2で280MBの容量を持つカードも準備しているという。
●新展開を見せたiomega Clik!
安価かつコンパクトなリムーバブル大容量メディアとして注目されている「Clik!」。これまで何度となくレポートしてきたが、ここに来て新しい展開が見られた。
同ブースでのデモでは、今回新たに松下とシチズンがCilk!のライセンスを取得したことを大きくアピールしていた。さらに、コダック、HP、ポラロイド、日立などにも認められた製品であることを強調していた。
ブースの説明員によると、次の世代の「Clik!」用ドライブには、CFカード用のスロットが付き、PCなしでCFカードのデータをClik!に転送できる機能が加わるという。しかも、デジタルカメラ系メーカーのいくつかがClik!の採用をほぼ決定しているという。
このClik!は40MBの容量があり、記録メディアも10ドル以下とアナウンスされている小型ディスクで、当初はデジタルカメラ組み込み型を想定していた。だが今後は、カメラ側ではCFカードで撮影し、それをClik!で最終的に保存したり、出張先での一時保存用として利用させるという方向に転換したようだ。
現時点は、携帯できる適価な大容量リムーバブルメディアが他に見あたらないことから、このほうがより現実的といえそうだ。
●次第に広がりつつあるスマートメディア
日本以外ではなかなかお目にかかることが少なかったスマートメディア。だが今回のCeBITではデジタルカメラ系メーカーはもちろん、ノートPC用のPCカード関係の展示ブースでもその姿を多く見ることができた。また、参入するメーカーも増えつつあるようで、日本では見られない「パナソニック」ブランドのスマートメディアや、PCMCIA Type2変換アダプターの姿をみることもできた。
また、町中のカメラ店のショーウインドウでも、デジタルカメラと一緒に展示されている例があり、スマートメディアはデジタルカメラとともに世界に広がりつつあることが実感できた。
□CeBIT 98のホームページ(英文)
http://www.messe.de/cb98/index_e.html
('98/3/26)
[Reported by 山田 久美夫]