【コラム】 |
会心の一撃的メガピクセルデジカメ!!
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爽やかに晴れ渡った朝のエギゾーストノートを聴いたら、目が覚めた。骨髄に響くようなその音は、俺の峠攻め魂を呼び起こしたのだ。
奥多摩が俺を呼んでいる!! 塩山も俺を呼んでいる!! それから甲府も俺を呼んでいるような気がする!! というわけで、ワインディングをハードに攻めるため、俺はガソリンを満タンにして朝っぱらからドライブに出かけた。
青梅→奥多摩→塩山→甲府。ずいぶん走って左足も疲れてきた。そろそろ引き返さないと……と、山梨の国道で帰途についた俺の目に入ったのは、地方都市の国道沿いと言えばおなじみの巨大で総合なショッピングモール。スーパーマーケット、リカーショップ、ジーパン屋、寿司屋にラーメン屋にマクドナルド、パソコンショップまであるような駐車場付き巨大商店街だ。そうだココでメシ食って一服しよう!! と立ち寄り、胃袋を満たした。で、食休みがてらモール内をウロウロしていたら、比較的デカいカメラ屋(カメラのあいはら一宮店)があったので、何となく入ってみた。
富士写真フイルム FinePix700 標準価格 99,800円 |
俺は、別にFinePix700を欲しいとは思っていなかった。メガピクセルデジカメとしては世界最小で、価格的に比較的安価であっても、俺は別に欲しいとは思わなかった。だってオリンパスのC-1400Lを持っていたし、次に買うのは250万画素とかのデジカメなのだ~とか思っていたからだ。
しかし、俺が奴すなわちFinePix700を手に取るなり、奴はこう言った。
「やあスタパちゃん。ボクってイカスでしょ。買わないの? 買いなよ。ね。買って。買ってよ買ってよ買ってよ~!! そしてイカシたボクを使ってよ~!! ね。ねねね。ね」
ううっ!! こ、こ、こ、これは!! 比類なき魅力だ!! 欲しい!! 欲し過ぎる!! 希に見る欲しさだ!! しかしツーリング帰りの食後の食休みの山梨における衝動買いとは、ちょっと分別がなさ過ぎる気もする!!
くわッ!! 気を静めるんだ!! 臨兵闘者皆陣列在前!! ふしゅるる~。ハアッ!!
よし、静まった。ハードウェアに語りかけられて、何度衝動買いをしたことか。ふぅ~、危ないところだった。精神錯乱には九字に限る。
とりあえず本日は純粋なツーリングということで、FinePix700のカタログだけ貰って帰ろう。で、カタログをゲット。その場でパラパラめくる。う~んさすが最新機種。なかなかヒキのある性能が詰まっている……ちょっとだけ、触ろうかな。そうだ、ちょっとだけ触ってから帰ろう。
でも、こういう人気機種はたいていバッテリーが切れてて電源が……おっ、入った……おおっ!! このサウンド!! し、しかもこのTFT液晶!! そして、このズッシリかつヌメッとくる触りごこち!! さらに、は、速い!! すっすっすっ、凄まじい魅力だ!! ぐぉおぉおぉ~ッ!! 欲しいぜ欲しいぜ欲しくて死ぬぜ~ッ!!
再度錯乱し始めた俺に向かって、奴はこう言った。
「ねえスタパちゃん。アタシってステキでしょ。セクシーでしょ。買わないの? 買ってぇ~。買えばぁ~。買いなさい。買え。お買い!! そしてアタシを思う存分堪能するがいいわ!! オーホホホホホ!! ウッフン」
くぅ~っ!! たまらねえ!! でも、こういう人気機種はやっぱココでも品切れなんだろうなぁと思って店員のおじさんに聞いたら、ななな、何と、あるとな!!
キャーッ!! 売ってくれ頼むお願いだ俺にその最後の1台をよこせれ~っ!!
そういうわけで、その魅力に押し倒され、FinePix700を買った。ちなみに、カメラ屋のおじさんの話によれば、このデジカメはフジフィルムの出荷予定台数を大きく上回る注文が来て、多くの店で在庫薄だけどウチには最後の1台があってよかったですねとのこと。いやマジでこの魅力を知ってから在庫切れなんてコトを言われた日にゃあ、その後かなり拷問的な日々を送ることになるので、買えて良かったと思う。
まず、ハードウェアとしての感触がいい。かつてはサイバーショットにウットリしちゃった俺であったが、FinePix700にはさらに強力なウットリ感を禁じ得ない。それは、サイバーショットよりFinePix700の方がカッコイイとかそーゆーコトではない。
FinePix700からは、サイズ、デザイン、触ったときの質感など、いろいろな角度で平均点以上の魅力を感じとれる。その“ふつーのよりイカス”という魅力的なハードウェアの中には、マニアックで強力な性能が秘められている。
例えば、150万画素のCCDの能力を発揮させまくる170本/mmの超高解像度フジノンレンズや、あらゆる光源下・条件下での撮影にマッチさせられるマニュアル撮影モードや、それから、ヤケに長持ちするバッテリー。そして、価格。デジカメのことばかり考えて、あの機種この機種と比較していた人間への強烈なパンチだ。
それから、フィルム式カメラとの比較を云々できる画像が得られる。“富士フィルムのデジカメの絵”は、以前からかなり評価が高かったが、FinePix700も“さすが”の画質。他のメーカーのデジカメとFinePix700を比べると、例えば人物写真などは明らかに美しさが違う。FinePix700だと、人の肌を非常に自然な色で撮れる。また、彩度の高い被写体も色鮮やかに撮れる。ハデ過ぎず、また、地味過ぎない色合いだ。奥行きがあるとか、深みがあるとか言うのだろうか、ともあれこの表現力は、ヘタな銀塩写真を凌駕しているように思える。
ふつーのよりイカス&高い性能。これらの、ハズレ感がなくてバランスが良くて先端的な内容が、このイカシた筐体の中に収まっているという事実は、ユーザーとしての満足感を思いっきり満たしてくれる。
FinePix700は、
「このデジカメって最高!!」
とか
「やっぱコレにしてよかった!!」
などと、使うたびにニンマリできるハードウェアなのだ。
構えた時の、手とカメラの位置関係はわりとよく、十分片手で撮影できる。が、最初、ちょっと注意しないと、ストロボ部などに指がかかるかもしれない。また、レンズ部や液晶部は固定されているので、デジカメならではの“簡単にセルフポートレイト”みたいなことはやりづらいが、セルフポートレートばっかりやってる人はそんなにいないので、まあ別にいいやと言えよう。
FinePix700 本体背面 |
ストロボは、ガイドナンバー8の自動調光型で、室内での撮影などには十分な光量がある。通常は被写体の明るさに合わせて自動的に発光するが、本体上部のスイッチで自由に発光モードを変えられる。赤目防止発光なども使える。光自体は、被写体にややソフトに当たる感じで、陰の出方も柔らかなので、違和感なくストロボ撮影ができる。それと、パシャパシャとストロボをたいて撮影しても、驚くほど電池がもつので、驚いた。
レンズは35ミリ相当の広角単焦点で、ズームではないが、画像中の一部分を拡大して記録するデジタル2倍ズームが使える。マクロモードなら最大9センチまで被写体に寄って撮影できる。それから、ひとつ気になったのが、レンズ部分はいつもむき出しだという点。レンズカバーにあたるものがないのだ。ポケットに入れて持ち歩けるサイズのFinePix700をポケットに入れる場合は、ポケット内に潜む謎のヘンな粉とか妙な糸くずを除去する必要がありそうだ。
それから、撮影モードなどは液晶画面でも確認できるが、本体上部にある小さなモノクロ液晶窓でも(ストロボモードや撮影可能枚数や撮影モード等が)確認でき、また、その窓の横にはストロボモード切替スイッチやマクロ切替スイッチがある。これはほんの小さなギミックだが、こういう“アナログカメラライク”な工夫は、非常に使い勝手がいい。FinePix700には、この他にもこういった小さな工夫が数多くあるのだが、そーゆーコトをいちいちカタログに書いたりしていないトコロに、“フジフィルムの有り余る余裕”みたいなモノを感じる。さすがって感じ。
起動時に矢印マークのLEDが赤く点滅する |
それから、起動時に液晶に表示されてすぐ消えちゃうフジフィルムのロゴは、ただただ“この装置はフジフィルムが作ったのダ”ということをアピールしているだけのギミックなのだが、このイマイチ意味がない味付けが、コンピュータデバイスっぽくて良い。
で、この光る十字キーは、とても役立つキーで、ハードウェアの細かな設定時および撮影・再生時のカーソルキーとしてコキ使うことになる。こういうキーは、まあたいていアイデア倒れで使いにくかったりする。例えば、キーとメニュー表示の連携がちぐはぐだったり、クリック感がなくて使いづらかったり。が、FinePix700の場合は、この辺がかなり良くできていて、表示との連携やクリック感も満足のいくものだった。
この十字キーの外側には、本体の動作モードを決めるモードダイヤルがある。本体の動作モードは、セットアップ、タイマー撮影、マニュアル撮影、オート撮影、再生、画像消去、画像プロテクト、PCモード(コンピュータとの接続モード)の8種類があり、このダイヤルをクルッと回すだけで切り替えられる。モード切替時に何も気にしないでダイヤルを回すだけ、という簡易さが非常に使いやすい。
本体横には、小さなスマートメディアソケットがあるのだが、これが実に使いやすい。スライドスイッチを押し下げるとパカッと開くフタと言い、バネ式(挿入時は押し入れ、取り出し時は再度押す)のメモリソケットはホントにスマートだ。なお、スマートメディアソケットの脇には、ACアダプタ端子とビデオ出力端子(テレビに映像を映し出すとき使用)とデジタル入出力端子(コンピュータとの接続時に使用)があるが、普段は単なる穴なので、なんかフタ的存在が欲しいと思ったが、使ってみたら全然気にならないしフタなんかあったら邪魔かもと思ったので、とりあえずこれでもOKである。
そうそう、肝心な撮影枚数や撮影時間など。
FinePix700で撮影できる画像の画素数は2種類で、1,280×1,024ピクセルと640×480ピクセルだ。画像フォーマットはJPEG準拠(Exif2.0)。撮影時には各ピクセルごとに、クオリティ(圧縮率)を設定できる。圧縮率は3種類で、FINE(1/4JPEG圧縮)、NORMAL(1/8JPEG圧縮)、BASIC(1/16JPEG圧縮)がある。合計6種類の画質を選べるわけだ。同時に、撮影時の画像のシャープネスも3種類設定できるので、18パターンのイメージを得られることになる。
写真のファイルサイズは、FINE(低圧縮)モード時で、1280×1024ピクセルが約650KB、640×480ピクセルが150KB。8MBのスマートメディアに、それぞれ11枚、47枚記録できる。BASIC(高圧縮)モード時だと、1280×1024ピクセルが約160KB、640×480ピクセルが38KB。8MBのスマートメディアに、それぞれ44枚、155枚記録できる。もちろん、FINEモードの1280×1024ピクセルで撮影するのが最強にキレイなわけだが、フツーに気楽にノホホンと撮影するなら、BASICモードの640×480ピクセルでも十分キレイだ。最高画質で撮影したときもそうだが、最低画質で撮影した時でも"さすがメガピクセル"ということを実感できる。
あと、バッテリーの持ちは、前述のように、意外なほどいい。俺の場合、フル充電のバッテリーを入れ、BASICモードの640×480で、ストロボをだいたい80%くらい使って、60枚以上撮影し、全画像を閲覧したが、全然バッテリーゲージが減らなかった。ホントかよコレ壊れてんじゃねえの、とか思うほど、バッテリーがよくもつ。約68枚撮影したところでも、ゲージは満タンだったのだが、何の気ナシに思わず充電してしまった。今考えれば、試しに何枚までイケるか試してみるべきであり、こちら系ライターとしてはウッカリ八兵衛だと言えよう。すまんす。ともあれ、俺が今まで使った機種の中では最もバッテリーがよくもつデジカメだと断言できる。
もうひとつ、マニュアル撮影モードがかなりイイ。このモードは、ホワイトバランスや明るさ(露出補正)やストロボの光量などを調節しながら撮影できるモードなのだが、“マニュアル”と言い切るだけあって、かなりこだわった絵作りができる。例えば、ホワイトバランス調整では、屋外(陽光)、屋外(日陰)、蛍光灯1、蛍光灯2、白熱電球の5種類の光源に合わせられるので、たいていの条件下で撮影できる。露出やストロボの発光量の微調整もできるので、逆光だろうがマクロ撮影だろうが、何でもイケる。また、16枚の連写ができるマルチREC機能なんてのもあったりする。俺としてはマルチRECはあまり使わないが、他の3つの機能はわりとよく使う。マジメに写真を撮るには必須で、ないと困る状況にもなる機能なのだが、他のデジカメではイマイチ見かけない。
ああ、まだあった。美肌モード。これは、撮影後の画像をワンタッチで加工するフィルタのような機能で、人間の肌のイメージを変える時に使う。例えば、より色白にしたり、色黒にしたり、肌のキメを細かくしたりできる。使ってみると、やや色黒の人が色白になったり、肌のアレが目立つ人がツルツル美肌になったりする。それも、人の肌に対してだけ、かなり自然な感じでフィルターがかかるから驚く。でも、欲がいて設定をマキシマムな色白&お肌超ツルツルとかにすると、やや蝋人形っぽくなったりもする。
それから、画像閲覧時に、その画像を最大4倍まで拡大する機能(ピント確認時などに非常に便利)や、画像ピクセルのリサイズ、画像ファイルのコピー、画像のサムネール表示(マルチ表示)など、たくさんご紹介したい機能があるが、誌面の都合上、無限に書いてもよいのだが、俺が記述能力及び指が最強に弱まってきたので、詳しくはフジフィルムのサイトやカタログを参照していただきたい。とにかく、デジカメでできることはだいたい全部できるという感じのナイスデジカメなので、これさえ持ってりゃバッチグーと言えよう。
まず、画質(解像度)が良かったり、フラッシュメモリカードに画像を記憶できたりするデジカメのだいたいが、バッテリーの持ちがイマイチだった。逆に、バッテリーがある程度もつデジカメは、画質(解像度)がいまひとつだったりコンピュータへのデータ転送がまどろっこしかった。
で、俺としては、高画質で撮りたいけど電池が持たないとか、電池はまあ持つけど画質的に遊び的スナップの範囲を超えないとか、デジカメにはいつも何らかの“イマイチ的不満足”が残った。もちろん、デジカメの手軽さや便利さが、その“イマイチ的不満足”をカバーし切る魅力となることも多かった。でも、そーゆーコトを突き詰めて考え始めると、なーんか多くのシチュエーションにはまだまだフィルム式カメラがナイスだという結論に達しがちだったのだ。つまり、フィルム式カメラのようにモバイルして使うには、デジカメとゆーもんは俺にとっていまひとつ物足りない存在ではあった。
もちろん、FinePix700だって、突き詰めて考えれば、まだいくつかの不満は残る。例えば、36枚フィルム10~20本相当枚数の画像が撮れるエナジー(バッテリーパワー)があって欲しいとか、スマートメディアが3枚くらい挿さって欲しいとか、やっぱりカメラ部の首振り機能も欲しいとか。が、それは俺の強欲というものであり、この強欲を野放しにして肥大させると、最終的には16ミリから1,000ミリまでのズームレンズを搭載したうえでサイズはこのままにして欲しいとかFinePix700を無料で配布して欲しいとかいうことになる。
要するに何なのかと言うと、現在あるデジタルカメラと比べると、FinePix700はかなりノープロブレム感の高いモバイルハードウェアだヨと。まあきっと、この先もっとスンバラシイ製品が出てくるのだと思うが、俺としては、'98年3月中旬現在のベストバイはFinePix700だと思う。
[Text by スタパ齋藤]