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ゲイツ氏のボディランゲージを分析


●ゲイツ氏は銀メダル?

 先週は、Microsoftのビル・ゲイツ会長兼CEOらが米上院の公聴会に出席したことが、やはり大きなニュースになった。予想通り、ゲイツ氏は標的になったわけだが、一方的にやりこめられたというわけではなさそうだ。

 ゲイツ氏が公聴会の前に行ったステートメントは「STATEMENT OF BILL GATES CHAIRMAN AND CEO MICROSOFT CORPORATION Before the Committee on the Judiciary United States Senate」だが、この中でゲイツ氏はMicrosoftはモノポリパワーを持っていないと断言。また、公聴会を開いた上院司法委員会のオーリン・ハッチ委員長(共和党、ユタ州)に対しても、あなたの選挙母体のNovellは。IntranetWareでNetscapeのWebブラウザ技術をインテグレートしようとしているとやんわりと反撃した。公聴会は、このあと、同様に証人として呼ばれた米Sun Microsystems社のスコット・マクネリ会長兼CEOや米Netscape Communications社のジム・バークスデール社長兼CEOのステートメントがあって、そのあと質疑応答になったらしい。そこでも、ハッチ議長を始めとするMicrosoft懐疑派の上院議員がゲイツ氏に激しい質問をしたり、マクネリ氏とバークスデール氏がMicrosoftを糾弾したりで、かなり白熱したようだ。で、結局、ゲイツ氏は勝ったのか負けたのか? 果たして上院議員たちを納得させることに成功したのか?

 そこで、今回の公聴会の採点をしているコラムが「Bill Gates Comes in 2nd in Senate Slugfest」(ZDNet AnchorDesk,3/4)。オリンピックのフィギアスケート方式で採点しているところが面白い。ゲイツ氏はテクニカルメリットがまあまあの5.7で、芸術点は5.8で銀メダルだそうだ。ちなみに、金メダルは、テクニカルメリットで5.9、芸術点で5.7を取った、マクネリ氏だそうだ。この採点が公平かどうかはわからないが、社交家でパフォーマーのマクネリ氏の方が、上院のような舞台は合っているような気がする。

 まあ、採点はともかくとして、ほとんどの記事が一致しているのは、ゲイツ氏が周囲を納得させることはやはりできなかったということだ。「Senators unswayed by Gates」(The Seattle Times,3/4)を見ると、ハッチ委員長だけでなく少なからぬ議員からMicrosoftに対する懐疑の質問が出ていることがわかる。反Microsoft企業も少なくないシリコンバレーが地盤のダイアン・ファインスタイン議員(民主党、カリフォルニア州)あたりが急先鋒というのも、うなずける話かもしれない。



●ゲイツ氏のボディランゲージを分析

 しかし、ゲイツ氏は敵対的な質問の嵐にも、とりあえず平静さを保って応答したらしい。「Mr. Gates Goes to Washington; Chairman Bill Keeps His Cool」(The Wall Street Journal,3/6、有料サイト、http://www.wsj.com/から検索)によると、ゲイツ氏はクールで、しかも、時には笑って見せて、レモンを食べさせられた男のように見えないようにしようとさえした(しかも時々それは成功した)のだそうだ。

 もっとも、ゲイツ氏のボディランゲージはその言葉よりも雄弁に彼の心情を語っていたという記事もある。「BODY LANGUAGE SPEAKS VOLUMES ABOUT BILL GATES」(New York Post)は、大企業のエグゼクティブたちにボディーランゲージのコーチをしているイメージコンサルタントに、ゲイツ氏のジェスチャーの分析をさせている。それによると、ゲイツ氏は言っていることと反対のことを身振りで漏らしていることがたびたびあったのだそうだ。たとえば、インターネットの急速な浸透は、技術革新のもっともエキサイティングな例だというような内容を語る時、ゲイツ氏の頭は「ノー」と振られ、そしていつわりの微笑を浮かべていた(!)という。これを信じるかどうかは別として、今回の公聴会の記事では、これがいちばん面白いような気がする。

 いずれにせよ、結局、ゲイツ氏の方にも失策はなく、とりあえず今回の公聴会は決定打は出ずに終わったようだ。



●Intelの業績悪化は、サブ1,000ドルPCのためか?

 先週のもうひとつの大きなニュースは、ハイテク株の大揺れだ。Intelを始め、業績不振を予告する企業が相次いだため、ハイテク株が急落。投資家にとってはなかなか大変な週だったらしい。「Intel shakes industry with sales outlook」(San Jose Mercury News,3/4)によると、Intelが不振に陥った原因は、アジアの経済危機と、AMDやCyrixを搭載する低価格PCの台頭が主原因だとか。この記事では、業界アナリストの見積もりとして、Intelはこの四半期に、当初予想していたよりも250万個も少ないチップ数しか売れなかったとしている。この結果は、米国のサブ1,000ドルPCブームを見ていればかなり納得が行く。まず、低コストPCのために低価格のMPUが求められてローエンドのシェアが食われて、出荷個数が減った。そして、需要が全体に低価格帯にシフトしてしまったために、結局、より廉価なMPUの出荷の割合が高まってしまっただろうことは容易に想像できる。明らかにIntelのMPUの価格の低下は急速になっているし、その分、利益は食われているはずだ。もっとも、Intelだってこれはわかっていて、その上でシェアを守るために肉を切らせて骨を断つ戦術をやっているのだから仕方がないだろう。

 Intelは、おそらくこれから先はサーバーやハイエンドワークステーション分野へ攻め込むことで、そこでより高マージンを確保するつもりなのだろう。Slot 2対応のPentium II「DS2P(Deschutes slot 2 processor)」を今年出すことは、すでにアナウンスしているが、その先には64ビットMPU「Merced(マーセド、コード名)」と、Mercedへの移行チップ「Tanner(タナー、コード名)」が待っているらしい。このTannerに関しては、ここへ来てニュースが次々に登場している。「Intel's Merced alters landscape」(CNET NEWS.COM,3/3)によると、TannerはPentium IIコアをベースとしているが、Merced用の新しい「Slot M」に対応したより大きなパッケージで登場するという。コアは32ビットで、バスをMercedに合わせたチップになるのだろうか?



●Compaqは、売れているのに利益はゼロ

 さて、先週の業績不振のニュースの中でIntel以上に、株式市場にショックだったのは米Compaq Computer社の業績予測下方修正だろう。売れているのに、利益はほぼゼロというCompaqの予想は、やはり厳しいサブ1,000ドルPC戦争を反映しているとしか思えない。「Compaq expects break-even Q1」(CNET NEWS.COM,3/6)でも、やはり北米市場の価格プレッシャが、予想よりも低い売れ行きとともに大きな原因になったとしている。結局、Compaqも自分がしかけたサブ1,000ドルPC戦争で、傷をおってしまったわけだ。結構、ローコスト化をしてサブ1,000ドル市場に進出してきたCompaqでさえこれなら、他のPCメーカーはどうなるのだろう。

 もっとも、これでCompaqが低価格化戦略を抑えるようになるかというと、とりあえずそうでもないらしい。「Sub-$800 corporate PCs in pipe」(CNET NEWS.COM,3/3)によると、CompaqとIBMは、これまではまだ比較的高価格を維持してきた企業市場向けモデルにも、サブ800ドルPCを1ヶ月以内のうちに投入するだろうと報じている。こうなったら、もう薄利でも量を売って行くしかないというわけか?


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('98/3/10)

[Reported by 後藤 弘茂]


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