【コラム】 |
●Windows 98発売日報道で大混乱
Windows 98はリリースキャンディデイト0が出たことで、いよいよ発表日がいつかを詮索するフェイズに入った。しかし、Microsoftは反トラスト法裁判を抱えているためもあってガードがかたいようで、Xデーの日付はあまり漏らしていないようだ。そのため、ニュースサイトでもWindows 98発売日に関しては、さまざまな憶測が飛び交っている。「Win98 May Be Spring Surprise」(Computer Retail Week,2/23)では、5月15日発表で6月25日発売という説を業界筋の情報として紹介。また、Microsoft筋の情報としてこれより遅くなるという話も伝えている。一方、「Windows 98, NT 5.0 launch dates tipped」(InfoWorld,2/25)では、Microsoft関係者からの情報として5月28日という日付を伝えている。いずれにせよ、裁判の判決が出る前にWindows 98をリリースする可能性がますます濃くなってきた。
しかし、今回は裁判というミソもついたことで、Windows 98は見事なまでに盛り上がっていない。たとえば、Windows 95の時は、この時期ならWindows 95に関するポジティブな記事が米国のメディアでも溢れていた。ところが、裁判のネガティブイメージの影響で、今回はWindows 98で浮かれると糾弾されかねない雰囲気だ。また、ハードウェアメーカーもここまでリリースが遅れたことで、待ちくたびれた気配があり、熱気があまり感じられない。それよりも、サブ1,000ドル時代に向けてのコスト削減の方が重要な問題といった風情だ。
一方、当初の予想よりペースが早くなりそうなWindows 98に対して、遅れが指摘され始めたのはWindows NT 5.0。「IntelliMirror, new directory may delay NT」(InfoWorld,2/27)によると、Active DirectoryやIntelliMirrorといった複雑なフィーチャのおかげで、Windows NT 5.0のリリースは'99年第2四半期にずれ込むという情報を伝えている。IntelliMirrorは、すんなりとデモが成功したところはほとんど見たことがないのでこれもうなずける話だ。もっとも、現在の時点でも、誰に聞いてもWindows NT 5.0が本当に年内に出荷されるとは信じていないので、これは何も影響を及ぼさないのではないだろうか。
さて、今週はいよいよゲイツ氏が上院の公聴会で証言を行う。日本時間では4日の水曜日になるが、その内容によっては、今週後半はこのネタでもちきりになるかも知れない。「At Gates' urging, new lineup at hearing」(The Seattle Times,2/27)は、今回の公聴会はMicrosoftをターゲットにしたものだが、ゲイツ氏は待ち伏せ攻撃を避けるためにいろいろな助力を集めていると報じている。この公聴会は、ゲイツ氏だけでなく、米Netscape Communications社のCEO,ジム・バーカスデール氏や米Sun Microsystems社のCEO、スコット・マクネリ氏も呼ばれている。しかし、この顔ぶれから予想されるのは、両社からMicrosoftのビジネスプラクティスに関する不利な証言を引き出してゲイツ氏を追い込むという図式。そこで、Microsoftは盟友Dell Computer社のマイケル・デル氏なども公聴会に呼ぶことを要請、成功したという。さらにこの記事によると、ワシントン州の連邦上院議員は、「この公聴会はソフトウェア産業を育成するためのものではなく、Microsoftを攻撃し、連邦政府が同社の将来をもっとコントロールできるようにするためのもの」とMicrosoftを援護射撃。公聴会でもゲイツ氏に付き添うと報道されている。Microsoftの政治力強化策も、さっそく効果が出てきたようだ。
先週は、IntelのPentium II進化型MPU「Katmai(カトマイ、コード名)」についての新ニュースも出てきた。これは、Microprocessor Reportのセミナーでのアナリストの分析をベースにしたもの。「Processor analyst sees an end to Pentium MMX」(InfoWorld,2/24)によると、Katmaiは'99年上半期に0.25ミクロン版の出荷が始まり、'99年後半には0.18ミクロンに移行、さらに2000年の第1四半期には2次キャッシュ統合版がローエンドPCやノートPC向けに登場するという。また、「Intel To Phase Out x86 In Favor Of IA-64」(COMPUTER RESELLER NEWS,2/24)は、0.25版Katmaiの動作周波数は450MHzから500MHzだと報じている。Pentium IIで、現在見えている最高速が450MHzなので、おそらくこれは妥当だろう。しかし、0.18ミクロンにシュリンクすると、動作周波数は750MHzにまで達するという。
また、2000年ごろにはIntelはもうひとつの32ビットMPU「Williamette(ウィラメット、コード名)」を投入するともMicroprocessor Reportの編集長はこの記事の中で予測している。Williametteは動作周波数が800MHzで、さらに次の製造プロセスの0.13ミクロンになると1.2GHzとなるそうだ。ちなみに、Williametteは64ビットMPU「Merced」のあとに開発が始まった新設計のMPUで、P6系と比べるとMPU内部のマイクロアーキテクチャがさらに進化していると見られる。
さて、ハイエンドをがんがん伸ばす一方、Intelは低コスト向けMPU「Covington(コヴィントン、コード名)」やノートパソコン向けPentium IIを来月発表すると報道されている。「Intel Chips In At The Low-End」(COMPUTER RESELLER NEWS,2/25)では、Covingtonの価格を、当初125から150ドル、すぐに100ドルに下落するというアナリストの意見を伝えている。このアナリストというのが、この業界きっての権威マイケル・スレイター氏だからこの分析は信頼性が高い。とすると、いきなりローエンドのMMX Pentiumと競る価格で登場するわけだ。
また、今月19日からドイツのハノーバーで開催されるコンピュータ関連ショウ「CeBIT」では、これらのMPUを搭載したシステムが早くも登場するらしい。「Taiwanese vendors ready sub-$1,000 Pentium II business PCs」(InfoWorld,2/26)によると、台湾メーカーがこぞってCovingtonを載せた「microATX」マザーボードやサブ1,000ドルPCを出展するという。CeBITというのは、米国と離れたヨーロッパでやるせいか、こうしたフライングがやたらと多いような気がする。
というわけで、どうやら4月以降はMPUラッシュとWindows 98でそれなりに業界は盛り上がることになりそうだ。
('98/3/3)
[Reported by 後藤 弘茂]