【コラム】 |
超小型リムーバブルドライブ
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コンピュータ系ライターの“普通の仕事”とは、例えば新型マシンのレビューをやったり、注目ソフトの解説をやったり、あるいはガジェット系特集記事を書いたりするものが多い。具体的には、雑誌編集部などからリリースなどの情報や、そのモノを借り、それを読んだり使ったりして、情報密度の高い記事を書いたりなんかする。それから、それまで蓄積した知識や資料を使って、『ウィンドウズで4096億倍トクする○○テクニック』とか『最近話題のオンラインソフト1024選』とか『'98年の注目モバイルグッズ256種』みたいな、資料性の高い記事を書いたりなんかする。
ところが最近の俺には、そういう記事の注文が全然来ない。来るのは……来るのは、えーと、ん~、文章では表現しづらいような注文だ。
「もしもしスタパさんスか、なんか小さい感じのデバイスとか買ったり使ったりしてなんか書いてくださいよお願いしますガチャ」
とか
「もしもし齋藤さんですか、イイ感じのモノとかをちょっと紹介したりしつつ燃え上がったり怒ったりして書いてくださいよ基本的には何でもアリですからガチャ」
みたいな感じで、考えれば考えるほど何を書いていいのかわからなくなるような注文ばかりだ。が、逆に、浅はかに考えれば、何を書いても良いというような注文が多いので、俺としては比較的嬉しいわけなのだが、コンピュータ系ライターとして際物的存在であるといういうことを考えるとやや寂しい気がしなくもない。たまーには、マジメでマットウな記事も書きたいかな~、なんて。
と思っていたら、けっこうマジメな雑誌編集部からの仕事で、あるリムーバブルドライブの紹介と評価をやって欲しいという仕事が来た。
おお久々に襟元を正して正座して眉間に皺を寄せつつ書くようなレビュー記事の仕事!! なんかDOS/V登場以前の時代の地道な俺を思い出すゼ!! 気合を入れて調べるぜ試すぜ書くゼーッ!! と本腰を入れてShark250に取り組んだ。
勢いづいて猛スピードかつ速攻でマニュアルを斜め読みしてShark250のセットアップをしたら、ななな、何と、愛機バイオノートPCG-715の調子が極端に悪くなった。希にみる調子の悪さである。でもどうにかなるさと、さらにShark250に取り組み続けたところ、愛機内にあるあらゆるエグゼキューティブなアプリケーションプログラムが一切起動しなくなってしまった。
凄まじい!! 凄まじ過ぎる!! アプリが使えないコンピュータというのは、ガソリンが空のクルマなんかより全然凄まじい!! ガソリンが空でタイヤがパンクしているクルマをいったん炎上させて鎮火したほどまるで使いモノにならない装置だ!! これはもう極度の凄まじさであって、その凄まじさがかえって心地よいほどだ!!
やべえ!! 困った!! Shark250の記事を書くどころか、記事を書くための装置がズタズタだ!! 全身から悪い汗が噴き出している!! この汗の噴出を止めるためにはバーボンとかウオッカを一気に飲るしかない!! そうだ飲酒だ飲酒なんだよアニキ!! だが飲酒のためにはShark250の記事をうっちゃらかす必要がある!!
でも今からその編集部に電話して
「えーと、パソコンがクラッシュしたので記事が書けません」
などと言えない!! 仕事を引き受けた時に
「ええ大丈夫っスよ楽勝っスよ任せてくださいよオッケーっスよ」
とか豪語してしまったし、締め切りが翌日だったし、少数精鋭を誇るその編集部の内情もしっかり聞いていたからだーッ!!
というわけで、たった1ページの記事を書くために、コンピュータをゼロからセットアップし、各種ソフトウェアをインストールして今までと同じ環境を構築し、再度Shark250をインストールし、十数時間もかけて仕事を終わらせた。時給に換算すると100円くらいであった。日頃からシステムのバックアップを取っておくことがいかに大切なことか、改めて思い知った。それと、年寄りの冷や水というか何と言うか、慣れないことに手を出すとロクなことがないということも十分思い知った。
Shark250は、小型のリムーバブルハードディスクドライブで、メディアサイズは2.5インチ、メディアの容量はアンフォーマット時で250MBだ。コンピュータとは、PCカード経由もしくはパラレルポート経由で接続する(PCカード接続タイプと、パラレルポート接続タイプの2種類が存在する)。
で、このドライブのどこがグレートでナイスかと言えば、まずその容量とサイズ。250MBというと、640MBのMOやJAZやPDなんかに負けまくっている容量だ。が、Shark250のメディアやドライブの小ささは、敗者復活戦モノの、というか、勝者が後の検査でドーピングだとわかったほど、勝ちのフィーリングがある。具体的には、ドライブ本体は約139×89×26(mm)で、約81×70×6(mm)。ポケットに入るほどの本体にMDサイズのメディア、そこに250MB。これはイイ感じである。また、使い勝手は他のリムーバブルメディアと同様だが、ハードディスクに近い読み書きスピード(PCカード接続タイプ)は魅力だ。
そのサイズとスピードで、俺は一気にShark250が気に入った。しかもコイツにはACアダプタが不要だ。PCカードスロットやパラレルポートから直接電源を取っているので、単にコンピュータに接続しただけで使える。このことは、文章で読むと大したことではないような感じだが、実際使ってみると、繋げて即動作するので非常に快適である。もちろんモバイル用途にもうってつけだ。
ということで、俺はさらに猛烈にShark250を気に入ってしまって、その日中にTWOTOPの通販サイトにアクセスして購入してしまった。購入価格29,800円也。
まず、その存在がサイバーだ。パワーザウルス程度の本体にPCカード一体型のケーブルをつなげてコンピュータに挿すだけで使えるとは何事か!! しかも胸ポケットに3枚は余裕で入るメディアサイズとは何事かッ!! ついでにカリカリカリっと小さくてかわいくてかつ精密そうなヘッドシーク音を出すとは何事かーッ!! みたいに逆切れしてしまうほど簡単かつ素敵で良い。何かと面倒だし高くつくし邪魔だし案外不快だ、と考えられているリムーバブルドライブの常識を覆しているところがサイバーだと言えよう。
それから、メディアそのものもギラギラ光って堅くて比較的ズッシリくる重量があり、これは密度感溢れるサイバーさと言える。まったくの感覚的私見だが、他のメディアと比べると、Sharkのメディアは価値がある感じがする。さらに伝わりづらい私見に例えると、サイズや価値や重量を度外視して、他のメディアが100円玉5枚という存在だとすれば、Shark250のメディアは500円玉という感じがする。いかにも精密で物的価値がありそうだという雰囲気を醸し出しているメディアということで、やはりサイバーだ。
あと、本体はShark250の名の通り、サメをイメージした黒とグレーの模様で、これはある意味ダサいと言えるのだが、そのダサくてダサくてしょうがねえ本体にカッコ良いメディアが挿入された途端にかなりハイテクで先進的なデバイスとして動作するということが、サイバーだと言える。これは、サイバー感を出そうとして失敗した状況すなわち“ダサイバー”とは違う。外見的にまるでダサいと思っていたデバイスがサイバーに動作してショックを受けるという点は、ある種のリアルなサイバーさだと言える。
ていうかサイバーとか何とか書いてねえで具体的な使い勝手を述べれよタコ、という声が聞こえた気がするので、リムーバブルハードディスクとしての使い勝手なんぞを。
このフォルダをShark250にコピーしたら、約21秒かかった。つまり約0.9MB/s。マニュアルには最大2MB/sの転送速度(パラレル接続タイプは最大1.25MB/s)とあるが、まあファイル数も多いのでこんなモンかもしれない。でも体感的には非常に速い。ZipやMOより全然速いという感じ。もしかしたら愛機のディスクより速いかも、と思って、バイオノートPCG-715のディスクに同じファイルをコピーしてみたら、ななな、何と約25秒かかってしまって約0.76MB/s!! ガーン!! ガーンガーンガーン!! どうしましょ。ヘンだな。ヘンだよ。これってヘンだ!! と思って再度試したが、やはり結果はほとんど同じ。なんでかしら。まあいいや。
Shark250は恐らくモバイルな人々に多用されると思うのだが、モバイルと言えば振動!! 振動と言えばディスククラッシュなので、心を鬼にしてディスクアクセス中に10センチくらいの高さから落としてみたのだが、何ともなかった。さらに心を鬼にして20センチくらいの高さから3回くらい落とそうとも思ったが、一度心を鬼にしてしまうと、再度鬼にするまで約3週間かかる俺なので、それ以上の実験はできなかった。ぜひ皆さんがやっていただきたい。なお、それから、前述のサイバーなメディアは、専用のゴム(シリコン!?)ケース(各メディアに付属)に入るので、安心して持ち歩ける。
それと、メディアも本体も小さくて良いのだが、PCカード接続タイプのケーブルがイマイチ、アレだ。というのは、PCカード部分とケーブル部分を分離できないので、持ち運ぶときややケーブルがかさばる。あとはACアダプタレスということで全然問題なく快適なのだが、カードとケーブルが合体しちゃってるのは、モバイル用途にはほんのちょっとだけ不都合かもしれないような気がする。
順序が逆になるが、インストールは簡単だった。マシンに接続して、プラグ&プレイで認識されたらディスクを入れるだけ。俺がトラブったのは、付属のボーナスソフトウェアのインストールを中断したからだ(と思う)。ともあれ、Shark250本体は、これまでだいたい10時間くらい使っているが、問題は起きていない。
それにしても、改めて思ったのだが、リムーバブルメディアというのはマジメに使うとおもしろい。データやシステムのバックアップを取ったりするのにイイ、というのはもちろん、それまでにためてきたデータをひとつのメディアに統一して遊んだり、あるいはメディア主体に使い勝手を導き出して遊んだり(つまりメディアが目的で用途が手段になるマニア的試み)するのが楽しい。Shark250を使っていたら、なーんか新たなリムーバブルメディアに対する欲望が出てきたぞ出てきたぞ出てきたぞ~。
□AVATAR社周辺機器ホームページ(英文)
http://www.goavatar.com/
□Shark250製品紹介(英文)
http://www.goavatar.com/products/
[Text by スタパ齋藤]