【コラム】 |
月1回連載:スタパ齋藤のパソコン的衝動買い的日常コラム第4回:どっちもイイ!! バイオノート505 vs Let's note mini |
ThinkPadとかLibrettoとかQuaderno(Win/Vでしたけど)とか、小さいコンピュータには目のない俺だったが、よーく考えてみると、どのマシンも長時間使うような目的には使わなかった。たいてい、屋外でちょこっと通信するとか、出先でちびっと原稿を書くとか、あるいはデータをちろっと閲覧するとか、そういう短時間で済むような目的にしか使わなかった。
いや、本当はずーっと使っていてもいいという心意気は常々持っていたのだが、640×480の画面では、GUI OSの力強い太さを持ったメニューバーとか十二分にクリックしやすい巨大ボタンとか広大な面積を誇るアイコンなどが邪魔して、大切な情報を快適に見られなかった。狭かったのである。もちろん、デスクトップのプロパティで画面のデザインを変え、文字やウィンドウの枠などを視認可能ギリギリまで小さくしてたが、それでも狭かった。
が、800×600のマシンではそんな点が気にならず、よく使った。現在は米Compaqに買われちゃったDEC製のDigital HiNote Ultra II(800×600 TFT、Pentium120MHz)などは、キーボード(英語版)も使いやすかったので、かなり酷使したものだ。それから、NECのAile(PC9821La10)も画面のことは気にせず使えたし、PanasonicのLet's note(AL-N1)もそうだったし、AppleのPowerBook1400cも同様に使った。800×600のTFT液晶があれば、俺は俄然やる気が出て、机上においても野外においてもビシッと使うのである。800×600こそ室内・屋外で両用できる俺のベストディスプレイサイズなのだ。
ちなみに、1,024×768くらいになると、なーんか外に持ち出そうという気にならなくて、どういうわけだろうかと一瞬思ったが、そーゆーデカいディスプレイを持つノートは、現在では重装備ノートしかなく、つまり重いからだと、約16秒間で答えが出た。
さらにちなみに、640×480をVGA表示というのはまあ許せるとしても、800×600をSVGA、1,024×768をXGA、と呼ぶ雰囲気にはいつも違和感を感じる。だいたいSVGAやXGAは、特定の画素を表す略語ではなかったはずだ。SVGAはVGAの上位互換のビデオカードの規格で、XGAはMCAバスにしか入らない次世代VGA規格としてIBMが提唱したけどフェードアウトした規格だったはずだ。いつからひとつの画素をいうコトバに変貌したのだろうか!? 俺思うに、VGAをVideo Graphics Adpterの略語だとか雑誌に書いてあるのを見た頃から、そんな違和感のあるコトバの解釈がなされるようになったような気がする。なお、VGAはVideo Graphics Arrayの略語で、SVGAはSuper Video Graphics Arrayの略語で、XGAはeXtended Graphics Arrayの略語だ、と記憶しているのだが、でも最近では広告などでも800×600=SVGA、1,024×768=XGAとしているので、もしかしたら俺が思いっきり間違っている錯誤野郎なのかも~と自信がなくなってきている。
あれ、何の話だったっけ。あ、そうそう800×600。俺はサブノートにおけるこの画素数のディスプレイがかなり好きなのだ、と改めて知った。
俺の場合、明日は締め切りなので原稿を書こうかな~と思ってダラダラしているうちにいつの間にか夜明けとなってヤベえ書かなきゃということで速攻で原稿を書いてメールしたら午前中になっていたけど超眠いので爆睡して起きたら夕方だったということが度々ある。そーゆー不健康な事態が度々あると、夕方から翌日の午前中が活動時間になってしまう。で、夕方起きると、完璧に覚醒して物欲全開になるのがちょうど夜。すなわちPCBuyKingも全開の時間だ。こうなると俺はPCBuyKingに行かざるを得ず、PCBuyKingに行くと俺は買わざるを得ない(だって安いんだもーん)。つまりPCBuyKingはインプレスさんなどの出版社からいただいた俺の原稿料を狙って営業時間を決めているような気がするので、これは極悪だと言えよう。
まあ冗談はさておき、夜開いているショップというのは非常に便利だ。俺のような夜行性野郎にも便利だし、普通のサラリーマンのコンピュータユーザーにも便利だ。普通のユーザーは昼間は働いているのであって、コンピュータをいじくれるのは会社が終わってからだ。が、会社が終わると、やはり会社であるパソコンショップも終わってしまうわけで、これは不便だ。が、PCBuyKingなどの変則的開店時間ショップ(夕方5時開店・夜11時閉店)なら、普通のサラリーマンでもしっかりパソコン系ショッピングを楽しめる。だから不況だし冬だし人通りの少ない場所にあるというのに、このPCBuyKingは、いつも多くの客で賑わっていたりする。素晴らしくナイスな隙間産業を成功させているショップである。
で、このあいだ、このナイスな極悪ショップ(←まだ言うか>俺)に行った俺は、いとも簡単に新しいサブノートパソコンを買ってしまった。買ったのは、PanasonicのLet's note mini(AL-N4T512J5)。すなわち'97年末に出たLet's noteシリーズ新機種だ。PCBuyKingの人が「ここだけの話、今日から仕入れ値が変わったので表示価格より安くなって……えーと228,000円でいいッスよ~」と言ってくれたので、物欲をさらに加速させて即買いしてしまった。
まずそのコンパクトさが凄まじい。A5サイズでジャスト1kgでMMX Pentium 120MHzを搭載している。寸法的には幅225mm×奥行き172mm×厚さ36mm。このサイズでありながら、わりと使いやすいキーボードと俺の好きなトラックボールを搭載していて、何よりもイカスのが、こーんなサイズなのに800×600のTFTを搭載しているという点。率直なところ、俺はこの小ささで800×600という点だけで燃え上がってこのマシンを即買いしたのであった。重量やCPUやストレージサイズやメモリ容量なんかまるで考えないで買った。
で、精神的加速を伴って購入したこのマシンを持ち帰ったら、505も持っていたことに気が付いたので、とりあえず比較検討してみた。ていうか今更比較検討しても2台買っちゃってることには何の変わりもないのだが、皆様の人柱となっているコンピュータ野郎でもある俺は、バイオノート505とLet's note miniのどちらを買おうか迷っている方が多いのではないかと思ったりするので、その点について正直かつハッキリと感想を述べてみたい。
まず、携帯したときの重量感だが、これは圧倒的にLet's note miniの方が軽く感じる。Let's note miniは1kg、505は1.35kgで、両マシンの重量差はたったの350gである。が、Let's note miniの方は、なんか中身がスカスカのオモチャみたいに軽く感じる。505は超合金オモチャみたいにズッシリ。まあ両者ともオモチャみたいな感覚で軽いのだが、たった350gにこんな感触の差を感じるとは思わなかった。
サイズは前述のようにLet's note miniがA5、505はB5である。この辺は紙をチョキチョキして比べてみたり、店頭で見たりすればわかるが、505を一回り小さくしたのがLet's note miniという感じだ。だが、液晶パネルを閉じたときのイメージはそうでもなく、Let's note miniは505よりふたまわりくらい小さく見える。黒っぽいLet's note miniと銀色に光る505は、黒い服を着たスリムな人と白い服を着た大柄な人ほど、サイズ的な印象が異なる。厚さは、Let's note miniが約36mm、505が約24mmで、その差は約12mmなのだが、Let's note miniの方がずいぶん分厚く感じるのだから、人間の感覚というのはまったくいい加減なものである。
それから液晶。両者とも800×600のTFT液晶だが、ディスプレイそのもののサイズは違う。Let's note miniは8.4型、505は10.4型。幅にして約4cm、高さにして約3センチ、Let's note miniの方が小さい。映りは両者ともグレートなのだが、見た目の印象はかなり違う。どちらがどういいとか悪いということではなく、例えば505はキレイなTFTにWindows 95が映っているという感じで、Let's note miniはキレイなTFTに凝縮されたWindows 95が映っていてサイバーだぜぇ~という感じ。ちなみに、俺の視力は2.0であって近距離から遠距離まで見えまくりなので、どちらの画面も見やすい。ただ、目の悪い人にとっては、Let's note miniの画面表示はちょっと疲れるかもしれないような気がしなくもない。
気になる入力装置類だが、まずキーボードはやはり505の方が圧倒的に打ちやすい。けっこう以前から流行っているキーボードで、標準キーボードより一回り小さいミニキーボードというのがあるが、505はそのミニキーボードとほぼ同様のサイズなので、“小さい”とか“打ちづらい”などとはほとんど感じない。が、Let's note miniの方は、まあサイズがA5ということで、正直言って打ちづらい小ささだ。でも、このサイズにしてはずいぶん打ちやすいという言い方もある。Librettoより打ちやすいけど、モバイルギアよりは打ちづらい、とか言ったら混乱するだろうか!? ともあれ、俺の最強に太まった指でタッチタイピングするには、もうワンサイズ、キーの大きさとキー間隔が足りない。
ポインティングデバイスは、Let's note miniが光学式のトラックボールで、505がペン操作対応タッチパッド。正直な話、俺は両方ともそんなに好きではない、マウス大好き野郎である。が、ここで敢えて順列をつけるとしたら、1位がマウスで、2位がトラックボールで、3位がタッチパッドで、4位以下がThinkPadのアレとかLibrettoのアレなどである。で、Let's note miniのトラックボールは、カーソル移動もスムーズで(HiNote Ultra IIで慣れていたということもあって)軽快に使えたのだが、上下に分割された右ボタンと左ボタンに違和感を感じた。505のタッチパッドは、それまで使ったことのあるタッチパッドの中ではいちばんいい感触で、非常に素直に目的の位置をポイントしてくれた。まあ両方ともちょっと慣れれば使いやすいのだが、マウス野郎の俺としては正直言って両方ともかったるい。まあ、キーボードも同様に、こういった入力装置は、人それぞれ好き嫌いがあるし、逆に慣れればどうにかなるものでもあり、云々しても始まらないという類のものではある。
これら以外の大きな違いは、まずプレインストールソフトの違い。505には趣味性の強いアプリが30本程度インストールされているが、Let's note miniにはIE4.0が入っていてActive Desktopな感じになっている以外、これと言って変わったソフトは入っていない。そういう部分を含めて、505は1台目のWindowsマシンとしても買えるサブノート、Let's note miniは2台目として買った方が何かと都合のいいサブノートという感じがする。
機能面の違いもいくつかある。Let's note miniにはモデムが内蔵されていないが、505には33.6kbpsのモデムが内蔵されている。Let's note miniにはふたつのPCカードスロットがあるが、505はひとつ。Let's note miniには16MBのRAM(EDO/最大80MB)と約1.6GBのHDDが、505には32MBのRAM(EDO/最大64MB)と約1GBのHDDが内蔵されている。両者とも、シリアルやパラレルなどの各ポートは専用ポートリプリケータによって供給されるが、Let's note miniには同梱、505は別売りという違いもある。このうち、俺にとって最大の違いは、RAM。俺としては最低限32MB程度のメモリが欲しくて、できれば48MBくらいあってほしい。つまりどちらのマシンにもぜひメモリを増設したいのだが、505へのメモリ増設は、ユーザー自らはできないらしい。カタログに“精密な構造であるため、お客様ご自身での取り付けは行えません。ご購入後にソニー(株)にてPCG-505とともに預かりし、有料での取り付け作業となります”と書いてある。きっと気合を入れれば自分でどうにか取り付けられるのだろうが、ここまでキッパリとカタログに断り書きがしてあると、気合も出にくい。Let's note miniにはそういう制限もなく、サードパーティーのメモリを自分で増設できる。
という感じ。
で、俺はこの“バイオノート505 vs Let's note mini”の勝負に関して、どちらに軍配を上げるでもなく、両方のマシンを優勝としていきたい!! なぜなら両方とも気に入って買ったからだ!! 気に入らないモンなんざぁ最初から買わないのだ。くわッ!! ていうかマジな話、気に入ったからこそ、比較したのだ。最初から勝者を見込めるようなマシンを比較して記事にしてPanasonicとSONYの両方から嫌がられるほど、俺は好戦的ではない。
つないだり外したり、改造したり加工したり、チューンしたり強化したり、そういうことに対して強いおもしろみを感じなくなっている現在、買って即“使うことを堪能できる”というのがよい。今の俺には、コンピュータというハードウェアをどうこういじくることよりも、コンピュータを情報処理ツールとして利用することの方がおもしろい。これはまあいかにもコンピュータ野郎の理屈だが、さらにコンピュータ野郎としての理屈を言わせてもらえるなら、ようやくコンピュータが世話の焼けないツールとして洗練され始めたと言えよう、というか言いたい。
そんなわけで俺は、恐らくこれからしばらくは、近未来に発売されるであろうステキでユニークなノート型コンピュータを期待しつつ、やや過剰な台数のノート型コンピュータをこき使うつもりである。
[Text by スタパ齋藤]