【コラム】

後藤弘茂のWeekly海外ニュース
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上院までもゲイツ氏の敵に?


●ゲイツ氏、上院の公聴会に証人として出席

 ビル・ゲイツ氏をはじめMicrosoft幹部は、このところ、同社がこれまで政治に関わってこなかったことを後悔している、といった発言をいたるところでしている。それは、ワシントンからの大攻勢にさらされている状況が、政治力のなさにあると認識し始めたかららしい。とくに、先週は、みずからの政治影響力のなさを、つくづく感じさせられただろう。というのは、米上院の司法委員会が、ゲイツ氏に対して公聴会に証人として出席することを要請したからだ。

 この話は、「Gates asked to testify before Senate hearing」(InfoWorld Electric , Feb 12)など海外のニュースサイトだけでなく国内でも広く報じられているので、すでに知っている人も多いだろう。公聴会のテーマは、ソフトウェア市場に関するもので、名目としてはゲイツ氏に証言を求めることになっている。しかし、ゲイツ氏にとってこのヒヤリングは、かなりいやな展開になることが予想されると各サイトは報じている。というのは、米上院司法委員会の委員長を務めるオリン・ハッチ上院議員は、以前からMicrosoftの活動に疑問の声を上げていた、反Microsoftの急先鋒だからだ。

 たとえば、司法省のMicrosoftに対する提訴に関して、司法省を強力に支持するという声明「Statement on Department of Justice Charges」を発表している。また、米上院司法委員会ではインターネットと反トラスト法に関する公聴会で、Microsoftを徹底的にやりだまに上げたと、11月には報道されている。つまり、ゲイツ氏は慣れない議会というフィールドで、かなり厳しい質問攻勢に出会う可能性もあるわけだ。今回は、米Sun Microsystems社のスコット・マクネリ氏や米Netscape Communications社のジム・バークスデール氏にも上院から証人として出席の要請が行っているというが、標的になるのはゲイツ氏だろう。

 そうは言っても、これだけ話題になれば出席しないわけにもいかない。「Gates agrees to testify before Congress」(San Jose Mercury News,2/13)などの報道によると、ゲイツ氏は出席することにしたという。どうやら、今年はゲイツ氏にとってこれまで以上に多忙で悩みの多い年となりそうだ。


●IntelのDevelopers Forumでメモリインターフェイスがポイントに

 今週は、米Intel社の開発者向けカンファレンス「Intel Developers Forum」が開催される。昨年10月に開催された前回のIntel Developers Forumは、Intelの推進するさまざまなテクノロジの詳細が明らかにされ、一気に注目を集めた。そのため、ノーマークだった前回と比べて、今回は期待度が高い。そのため、Intel関連のホットな話題でニュースサイトはあふれかえった。

 今回もっとも注目されているのは、Intelの次々世代チップセットでのメモリサポートだ。Intelが'99年のチップセットで、Direct RDRAMだけでなくSDRAMも同時にサポートするというニュースは、すでに先々週紹介した。今週も、「Intel to detail the SDRAM detour on its Rambus route」(Electronic Engineering Times,2/13)では、この話題を扱っており、Intel Developers ForumでIntelが発表するのはほぼ間違いがないと思われる。ただし、この記事でも解説しているが、これはIntelのDirect RDRAMに対するサポートがゆらいだわけではなく、後ろへ少し移行の時期をずらした、つまり「detour(回り道)」ということらしい。Direct RDRAMは、高速インターフェイス時代のDRAMとしては技術的に優位点が多いことは誰もが認めている。ただし、コスト面も含めていつ離陸するのかという点については、まだクエスチョンが多い。そのあたりの事情が反映されているようだ。


●Intel、'99年にはIntel740の4倍の性能のチップを出す?

 Intel Developers Forumで搭載カードも紹介されると見られている、グラフィックチップIntel740関連のニュースも多かった。とくにすごいのは「Intel Displays 740 Graphics Chip」(Microprocessor Report,2/12、登録が必要、http://www.mdronline.com/から)。ありとあらゆる角度から740について分析している。この記事でもやはり、Intel740のアドバンテージは高い3Dグラフィックスのクオリティだとしている。また、Intel740のコストは、0.35ファブの減価償却がPentiumで終わっているなら30ドル程度との予測だ。ちなみに、このアナリストによると、Intelは'98年の3Dチップのマーケットシェアの10~20%を取るだろうという。IntelのMPU市場での実力を考えると、これは控えめな予測のようだが、それには理由があるらしい。Intel740はあくまでも「Version 1.0」製品で、マーケットのフィードバックを受けた次の世代からが本命だという。ちなみに、次世代チップは99年前半に登場。パフォーマンスは4倍にアップするという。

 「Intel Officially Launches Graphics Chip」(Electronic Buyer's News,2/12)は、Intelの次世代グラフィックスチップのコード名を「Portola(ポルトラ)」と伝えている。現在のIntel740が0.35ミクロンラインで製造されているのに対し、PortolaはPentium IIと同じ0.25ミクロンラインに移行するという。じつは、3Dグラフィックスチップのトップベンダーたちも、次のチップから0.25ミクロンに移行する予定だ。ますます、レースは熾烈になりそうだ。

 このほか、Intel740関連ではC-Cube MicrosystemsとZoranが、Intel Developers ForumでIntel740向けのMPEG2ドーターボードを発表するというニュース「DVD cards from C-Cube, Zoran snap onto i740 boards」(Electronic Engineering Times,2/13)も流れていた。また、USBに関してもバージョン1.1の詳細が説明されるらしい。「Drafters prepare 'cleaned up' spec for USB」(Electronic Engineering Times,2/11)


●IntelがMerced用に「Slot M」と中継ぎMPU「Tanner」を計画?

 このほかのIntel関連では、IntelがMercedまでの中継ぎのMPUを計画しているというスクープもあった。「Intel Readying 'Tanner' Chip As Bridge To Merced」(Electronic Buyer's News,2/13)によると、これは「Tanner」というコード名のチップで、Merced用の「Slot M」に搭載できる32ビットMPUだという。また、Slot Mは'99年のチップセット「460GX」でサポートされるという。


●Adaptec。IEEE 1394やめる報道を打ち消し

 最後に、これはニュースではなくてプレスリリースなのだが、米Adaptec社がIEEE 1394のサポートを再確認した「Adaptec Affirms Position In 1394 Market」(2/3)というリリースを出した。これは、先々週、ニュースサイトで同社がIEEE 1394のサポートをやめるという記事が流れたためで、その話は、このコラムでも少し触れた。ともかく、「煙(ニュース)が出た。火もあるはずだ」と見られると、すごくまずい状況なのだろう。

□参考URL
「Adaptec Affirms Position In 1394 Market」和訳
http://www.adaptec.co.jp/cgi-bin/merge/merge.cgi?/info/pr980205.html


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('98/2/17)

[Reported by 後藤 弘茂]


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