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私はすこしウブだった。とゲイツ氏が告白!?


●ゲイツ氏がしゃべりまくる

 ともかく、しゃべりたくてしゃべりたくてイライラしていたに違いない。Microsoft会長兼CEOのビル・ゲイツ氏は、先週火曜日をPR活動日と決めたらしく、ほぼ丸一日をしゃべり通した。まず、サンノゼのスタンフォード大学での講演を皮切りに、3つのスピーチとQ&Aセッションを立て続けにこなした。これだけでもすごい量だが、さらに、その合間にどうやらメディアのインタビューもいくつかこなしたらしく、インタビュー記事も水曜日にはニュースサイトに登場している。そして、2日置いて金曜日には、米3大TVネット局のひとつABCの人気ニュース/インタビュー番組「20/20」にも出演。インタビュイーのバーバラ・ウォルタース女史の、インタビューに答えている。

 これだけ精力的に外向けに活動するのは、ゲイツ氏にしてはかなり珍しい。しかも、いたるところで司法省批判とMicrosoft弁護を展開しているのだから、これは先々週の「和解」(Microsoftが司法省と当面争っていた連邦地方裁判所の仮命令違反に関する裁判に関して和解したもの)と関係あるのではとかんぐりたくなる。Microsoftは、この和解で一手取ったと思っているわけで、ゲイツ氏はそれをスピーチやインタビューで声高に主張している。

 たとえば、「A Conversation with Bill Gates Hosted by the Tech Musuem」(Microsoftがポストしたスピーチのトランスクリプト)を見てみよう。ゲイツ氏は「政府は、見ろ、IEとWindowsは2つの別な製品じゃないか、あなたのしなければならないことは、そのファイルを取り去ることだ、それでノープロブレムだと言った」「ところが、それらのファイルを取り去ったらシステムがこわれた。そうしたら政府は、彼(Microsoftの証人)が悪いと言ったんだ」と裁判の経過を説明しながら司法省を攻撃。「彼ら(司法省)は、アイコンだけを削除するのはだめだと言っていた。彼らは、IEを削除することを望んでいたが、気を変えた。だから、われわれは、OK、われわれは隠すオプションを提供しましょうと言った」と、和解の経緯に関しても、あくまでも司法省が主張を変えたというスタンスで語っている。このスピーチは、先週のコラムでも紹介したが、かなり挑発的な態度を取っている。


●Windows 98はオンタイムと強調

 こうした政府批判は、その直前に行ったスタンフォード大学でのスピーチでも同じだ。「Bill Gates Keynote Stanford University」(Microsoftがポストしたスピーチのトランスクリプト)では、「この国での成功の特権のひとつは、政府から監視されることだ。われわれは非常にセクシーな業界だ。もし、あなたが司法省で働いていたら、パンとソフトウェアとどっちを調査したいかな?」と司法省を揶揄している。また、Windows 98の件に関しても「われわれはなにも変えない」と強く主張。「最悪の場合、彼らはわれわれにノーマル製品と一緒に役に立たない製品(IEを削除した)を作るように命令するだろうが、それはひどいすぎる」と言っている。ともかく、全面対決の姿勢はまだ変えた様子はない。

 Windows 98に関しては、「Gates: Antitrust case won't affect Windows 98」(San Jose Mercury News,1/27、リンクはすでに消滅)のインタビューでも「オンタイムで出す」と強調。Windows 98からIEを除いたバージョンを提供するようにと強制されたとしても、そうした製品はどのOEMメーカーも選択しないだろうと言っている。

 また、「Gates: We're not bad guys」(San Jose Mercury News,1/27)では裁判でのMicrosoft側の攻撃的な態度で、同社のイメージが落ちているという見方も強く否定。もし世論調査をしたら、Microsoftに対する評価はポジティブだと言ったという。このあたりは、Microsoftへの評価がネガティブなものになったと語ったと報道されているスティーブ・バルマー副社長と認識のズレがあるようだ。


●これは最悪の事態とゲイツ氏

 もっとも、ゲイツ氏にとって今回の裁判がかなり頭痛になっているのは確かなようだ。「A Conversation with Bill Gates Hosted by the Tech Musuem」では「これはこれまで起こったことで最悪のことだ」と漏らしている。また、「Barbara Walters Exclusive Interview with Bill Gates」(ABC,1/30放送)でも、Microsoftは悪の帝国で、傲慢でどん欲な悪魔と呼ばれているがといういじわるな質問に対して、多くの競争相手がいて成功すると、こういうことを言われるとあいまいな口調で説明。あまり真剣に受け取らないようにしているようなことを言っている。

 上の20/20のインタビューでも、競争相手に言及しているが、ゲイツ氏は、こうした事態になった原因はライバルたちの工作にあると考えているようだ。たとえば、「Gates Says Government Would Stifle Innovation Microsoft Chairman Regrets Not Lobbying More」(Washington Post,1/28)は、競争相手たちがワシンントン政治家を使って政府に行動を起こさせたとゲイツ氏が示唆したと報じている。そして、今後はもっと政治活動を活発にすると表明したという。そして、ゲイツ氏は、これまで政治に関わってこなかったことに関して、「たぶん、わたしはウブ(naive)だった」と発言したそうだ。このウブ発言、きっとまたMicrosoft叩きで引用されるに違いない。


●Intelが次々世代チップセットでのメモリサポートを再考?

 さて、ゲイツ氏遊説以外は、それほど大きなニュースがなかった先週。ちょっと目を引いたのは、Intelのチップセット関連の記事だった。Intelは、次のチップセット440BXでメモリインターフェイスを100MHz SDRAM対応にする。そして、その次の「Camino」というコード名でウワサされているチップセットでは、Direct Rambus DRAMへ移行させることになっていた。しかし、ここへ来て、Direct RDRAMの価格などへの疑問から移行したがらないユーザーのために、IntelがDirect RDRAMと133MHz SDRAMの両方をサポートするメモリインターフェイスを開発していると「Direct Rambus price tag raises questions」(Electronic Engineering Times,1/30)では報じている。「Intel reconsiders Rambus transition」(Electronic Engineering Times,1/27)によると、このインターフェイスの名前はP133Lというらしい。また、「Intel weighs alternative memory architectures」(InfoWorld,1/30)は、Synchronous Link DRAM (SLDRAM)などをサポートする可能性も示唆している。さて、どうなるだろう。


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('98/2/3)

[Reported by 後藤 弘茂]


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