月1回連載:ショップの側から見た秋葉原事情
AMUAMUの「アキバの楽屋から」 第12回
'97年末商戦 冬の時代はまだ続く?
TEXT:AMUAMU
「アキバの楽屋から」は、秋葉原のパソコンショップ店員である「AMUAMU」が、ショップの側から見た秋葉原事情を、月1回お送りするコーナーです。(編集部)
■'97年12月は前半好調だったが後半に停滞
12月は年末ボーナス商戦。年間を通してもよく売れる月の一つです。'97年は4月以降にパソコン業界は景気が悪くなり、パソコンショップも冬の時代となりました。そんな中での年末ボーナス商戦はショップにとって期待の月でした。12月には、ある程度回復するのではないかと考えていました。そんな淡い期待も裏切られた気分です。
では実際のところどうだったかと言いますと、まず12月の前半は比較的調子が良かったのです。前半は'96年の年末と比べても遜色なく、お客さんの数も非常に多く売り上げも良かった。このまま12月末まで行けば、ショップ業界の不況も終わるか? と思ったのですが、そうは行きませんでした。12月後半になるとお客さんの数も購入する人も少なくなり、調子が悪くなってきました。ボーナスが思いのほか少なくて購買意識が弱くなったのでしょうか? やはりここにも日本全体の不景気による陰が降りています。ボーナスがたくさん出れば売れるんでしょうけどね……。
ということで、秋葉原界隈はいまいちの状態で年を越しました。やはりパソコン業界は不況です。単価の値下がりも大きな影響ではありますが、売り上げは'96年に比べて横這いもしくは減少。調子の良いショップでも微増程度では無いかと思います。
う~む、つらい。
この連載の第1回「'96年末商戦の秋葉原事情」で書いたことと全く同じ事の繰り返しになってしまいますが、牽引役となる商品も無いし、目玉商品も少なかったです。本当なら、Windows 98は年末商戦までに間に合うはずだったのですが……遅れるのはわかっていましたが、Windows 98が年末に発売されていてWindows 97として出ていれば……と思うところはあります。やはり第1回でも書いたことですが、Windows 95が発売されたときが懐かしい。
■'97年末商戦で売れた商品
- プリンタ、スキャナ:プリンタはPM-750Cの圧勝、スキャナもエプソンが一番人気
年末商戦といえばまず、年賀状作成のためにプリンタが一番売れる時期です。'97年年末も'96年末に引き続きエプソンの圧勝でした。'96年末の大ヒット商品PM-700Cの後継、PM-750Cがダントツでした。しかしながら'96年同様、品不足でした。'96年より良くなったとは言えますが、それでも品不足になりますから困ったもんです。
また、やはり年賀状の季節に売れるのがスキャナです。これまたエプソンのGT-5500WINシリーズが一番人気です。今年から年賀状にコート紙タイプが加わり、これに写真品質のプリンタで印刷すると写真がきれいに出るため、スキャナで家族の写真を取り込んで年賀状にしたいという人も多かったようです。
- ノートパソコン:根強い人気のLibrettoとVAIO PCG-505
ノートパソコンは相変わらずLibrettoの人気が高いです。値段も20万円以下で非常に買いやすいのが人気の一番の秘訣かもしれません。VAIO PCG-505もどこのお店でもよく売れたようです。VAIOは大きいノートの人気も非常に高かったのも印象的でした。私の周りでもVAIOノートを購入した人が結構います。VAIO PCG-505で筆者個人の周りで印象的な事は、12月の半ばに台湾のあるメーカーの技術者や営業の人たちが数人来たのですが、店頭でPCG-505を見て、揃ってみんなPCG-505を購入していったことです。中文Windows 95を使うのに日本語キーボードで良いのか聞いたら、それ以上にかっこいいし、台湾で自慢したいとの事でした。その気持ちよく分かります。(^^; そういえば店頭でも外国人がLibrettoやVAIO PCG-505等、サブノート・ミニノートタイプのノートパソコンをよく購入していきます。Librettoはアメリカでも販売されていますが、海外ではこの種のノートは少なくて日本が一番進んでいますから売れるのかもしれません。
- CPU単品:引き続きAMD K6が圧倒的な人気を誇る
パーツ系では、CPU単品売りはAMD K6が圧倒的な強さを見せています。12月はCPUの出荷量も多く、品不足という感じは受けませんでした。Pentium IIも売れていますが、伸びがあまり無いのはAMD K6の影響でしょうか。よく聞かれるのが「Socket7はまだ続くんですか? Pemtium IIとAMDどちらが良いですか?」という質問です。確かにCPUの状況は混沌としていて、これは答えが難しい質問です。このあたりは店員やショップによっていろいろな回答が返ってきます。ショップにとってはPentium IIのシステムを販売した方が価格が高くなるので、Pentium IIをすすめたいところですけどね。
筆者がお客さんに聞かれた場合は「AMD K6もしくはCyrix 6x86MXで安く済まして、様子を見てアップグレードしましょう」と勧めます。もっとも、最新の最速マシンが欲しいのであればPentium IIになるので、用途にもよります。
- HDD:4.3GBが主流に
ハードディスクドライブは4.3GBの容量を持つドライブが主流となってきました。もう2GB未満は店頭でもあまり見かけませんし、仕入れるのも非常に難しくなってきています。逆に8GBのタイプはまだまだ売れ線までは行きません。'97年の半ばから後半は3.2GBが主流でしたから、1ランク上になったという感じです。春過ぎには6.4GBが当たり前になるのかな?
- ビデオカード:カノープスのPower Window R128P、R128P/4VCが大ヒット
ビデオカードはnVIDIAのRIVA128 Chipを搭載したビデオカードが大人気です。特にカノープスのPower Window R128PとR128P/4VCは12月の大ヒット商品の一つと言えるかもしれません。海外でもRIVA128 Chip搭載のビデオカードは人気らしく、チップの生産が追いつかず、こちらも物不足でした。しかし、PowerWindow R128PはPCIなのにAGPの製品を凌駕する性能を叩き出すことに、ただ感心するのみです。
ビデオカードといえば、Voodoo Chipを搭載しているDIAMOND Monster3Dをはじめとするいくつかのカードもよく売れました。Voodoo対応のゲームも増えてきましたし値段も少し落ちて買いやすいのかもしれません。
そういう筆者もVoodooを搭載したSKYWELL TechnologyのMagic3D( http://www.skywell.com.tw/3dfx.htm )を購入してしまいました。id SoftwareのQUAKE IIをやるためだけに。はまっています。本当はカノープスのPure3Dが欲しかったのですが、QUAKE IIを買ったら衝動的にVoodoo搭載の3Dカードが欲しくなり店頭売りしているMagic3Dを買ったのです。通販ならPure3Dを買えますが、通販はちょっと時間がかかりますからね。市場にも流通させてくださいよ>カノープス様。Voodoo2にも期待がかかります。
- ドライブ:MOは640MBへの移行が進む。CD-RはYAMAHAが人気で品薄
ドライブ類の中で印象的な出来事は230MBのMOより640MBが売れるようになってきたという事でしょうか。だんだんと640MBのMOドライブに移行しつつあるような気がします。値段も前より安くなってきたのも一因だと思いますが、HDDの容量が大容量化していく中でMOだけ取り残されているのはおかしいかもしれません。まだ100MB程度のドライブでも十分足りるかもしれませんが。CD-Rの売れる数はどんどん増えてきています。メディア単価も下がる一方ですしドライブも安い物がたくさんある。人気の機種はYAMAHAのCD-Rドライブでしょうか。品不足で首が回らない状況ですが。(^^;
- ディスプレイ:急浮上したTOTOKU、飯山、三菱が三つ巴
ディスプレイは結構、混沌とした状況です。相変わらず飯山電機のディスプレイは人気なのですが、12月ぐらいから急浮上してきたのがTOTOKUのCV711Rです。元々ハイエンド向けのディスプレイばかり作っていたTOTOKUが満を持して発売した、一般向けのディスプレイですが見事大ヒット。'97年の10月にあったWorld PC Expo'97ででかいブースを構えていたところから、結構意気込みが感じられたのですが本当に見事と言えます。それと気になったのが三菱のディスプレイ。RD17G2 Clearの値段が新機種も出たこともあり一気に値段が下がってきました。値段が下がり、飯山電機などとの価格競争力が出てきたことから非常に売れる機種となりました。ディスプレイは飯山電機・TOTOKU・三菱の三つ巴の争いというのが印象的なところです。SONYは旧機種のCPD-17SF9が市場から消え、新製品を出したのですがまだまだ値段が高いこともあり、争いからちょっとはずれているところはあります。ですが、SONYディスプレイは安定した人気があるのが特徴で、ある程度の販売数は保っている印象があります。
- その他:PCカードの売れ行きが好調
その他の物で印象的な物ですと、PCカード(PCMCIAカード)関連の商品がよく売れるということでしょうか。PCカードのモデムやLANカードなどを中心に急に販売数が伸びてきました。これはノートパソコンがよく売れていることと、デジタルカメラの記憶媒体にコンパクトフラッシュカードやスマートメディアなどが搭載されることが多くなってきたことも一因ではないかと思います。デスクトップマシンにPCカードドライブを増設することが出来る商品も販売数が伸びているのも印象的でした。
■これからどうなる?
1月は停滞期となりますが2月・3月は決算前の時期となり、企業による購入が一気に増えてきます。特に今年度は不景気だったこともあり、設備投資をはじめとして出費を控えてきた会社が決算前にみたところ、「予算がちょっと余っているから何か買ってこい」という状況になるところが多くなるんじゃないかと淡い期待を持っています。
一方、商品の方も毎年これからの時期で話題になるのが特価放出品です。古い機種やあまり売れなかった機種などを中心とした不良在庫をメーカーも流通もショップも放出してきますから特価品が増えます。特に'97年がパソコン業界にも不景気が訪れていますから、不良在庫をたくさん持っているところは多いんじゃないかな? どんな特価品が出てくるかわかりませんが、いろいろなショップが出す特価品には要注意でしょう。皆さんもショップの情報や店頭に特価品探しに出かけると思わぬ掘り出し物を見つけることが出来るかもしれません。そればっかり期待されて通常商品が売れなくなるのも困りますけどね。(^^;
さてさて、年度末決算に向けてどうなることやら。先行き不透明なこの業界。ジャストシステムも赤字を予測しているし、不安な日々を送る筆者でありました。
[Text by AMUAMU]
ウォッチ編集部内PC Watch担当
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