●Microsoft、反省する!?
Microsoftは司法省との裁判でとり続けている強硬な姿勢を反省、今後は態度を改めるつもりらしい。先週はこのニュースがどのサイトでも取り上げられた。きっかけは、Microsoftナンバー2のスティーブ・バルマー氏が反省宣言をしたことだ。たとえば、「Fight fails, so Microsoft tries slice of humble pie」(San Francisco Examiner,1/8)のなかで、バルマー氏は顧客の認識がネガティブなものに変わったと認め、政府と司法手続きに深い敬意を払い、競争相手にも深い敬意を払うと語っている。もっとも、Microsoftの主張自体が間違えていると反省したわけではない。ようは、今のようにひたすら攻撃的に自己主張していると、どんどん悪役と見なされるようになってしまうのが問題というわけ。その結果、世論が政府側支持に傾くと、不利になるとようやく気がついたというところだろうか。
●アナリストはMicrosoftの宣言に否定的
「Microsoft seeks to tone down battle」(USA TODAY,1/8)では、別なMicrosoftの幹部が、今後はレトリックをトーンダウンする必要があると語っている。つまり、同じことを言うにも、これからはもっとやんわり言いますよというわけだ。でも、Microsoftのこの変化を評価する人は多くはない。「Fight fails, so Microsoft tries slice of humble pie」に登場するアナリストは「これはシチエーションをさらに悪くする」と酷評している。問題はその態度にあるのではなく本質にあり、本当に心証を変えたいなら、姿勢を変えないとならないという指摘だ。この意見には賛成する人が多そうだが、それをするとMicrosoftのアイデンティティ自体が揺らいでしまう気がする。なんと言ってもこの会社は、攻撃的に走り続けるからここまでこれたのだから。攻撃性というのは、Microsoftの本質、MicrosoftがMicrosoftである部分なのだろう。つまり、Microsoftは、Microsoftであることをやめて普通の企業になり穏当にやって行くか、それともMicrosoftであり続けて常に軋轢を生み出し続けるか、どちらかを選択しなければならないと思う。
また、このニュースに関連して「The Softer Side of Microsoft」(ZDNet AnchorDesk,1/9)では、どうやればMicrosoftのイメージを柔らかくできるかについて、7つの提案をしている。「解雇されたNetscape社員をディズニーワールドに連れて行くための基金を作る」とか「Windows 95のクラッシュの犠牲者のためにチャリティ番組をやる」といった楽しい提案が目白押しで、なかなか参考になりそうだ。
●Intelのコード名はまたまた地名シリーズ
Intelが今年中盤から後半にかけて、ローコスト版Pentium IIを出すというニュースは、ここで何度か取り上げた。今回は、そのコード名が報道されていたので紹介しよう。「Low-cost PCs get to work」(InfoWorld,1/5)によると、第3四半期に登場するキャッシュなし版の266MHz Pentium IIは「Covington(コヴィントン)」、第4四半期に登場するキャッシュ統合版の300MHz Pentium IIは「Mendocino(メンドシノ)」だそうだ。相変わらず地名シリーズ。ちなみに、このMendocinoという場所はカリフォルニア州北部の海岸近くの森林地帯で、他のIntelのMPUのコード名の由来地と同様にかなりシーニックな場所だった記憶がある。
●Intelのグラフィックスチップが呼ぶ波紋
また、Intelは比較的高性能でありながら低コストな3Dグラフィックスチップi740を近いうちに公開すると見られているが、それに関する記事も増えてきた。「Graphics chip vendors scatter as Intel readies mainstream offering」(InfoWorld,1/9)によると、グラフィックスチップメーカーは、Intelがボリューム市場を抑えてしまった場合に備え、ハイエンドへのシフトか、他の機能のインテグレートによる低コスト化の2つの方向に向かい始めたという。巨人Intelの参入に、中小半導体設計メーカーがほとんどのグラフィックス業界は激震といったところだ。
●なぜ、子どものマシンの方が高性能なの?
先週は、米Compaq Computer社を始め各社が一斉にサブ800ドルPCの新製品を発表、PCの低価格化にさらに拍車がかかることが明確になった州となった。振り返って見れば、サブ1,000ドル攻勢が始まってからこれでちょうど1年。この1年で、米国のコンシューマ向けPC市場の価格は大きくスライドしてしまった。その影響をもろに受けているのが、企業のCIOたち。「Low-Cost PCs To Impact Corporate Purchasing」(TechWire,1/9)によると、企業のPC導入の決定権を持つ彼らは、自社内のユーザーから詰め寄られて困っているという。ユーザーは、なぜ自分たちのこどもが彼らのデスクトップよりもパワフルなシステムを持っているのかと、疑問をぶつけてくるのだそうだ。米国でも、サブ1,000ドルの嵐が吹き荒れているのはもっぱらコンシューマ市場で、企業向けPCではハイスペックな機種はまだ高値のままな。これは、当然出てくる疑問だろう。さて、メーカーの方はどうするのだろう。
●ジョブズ氏へのCEOコールがわき起こる
先週のMacWorldでは、スティーブ・ジョブズ"暫定"CEOが黒字を発表、拍手喝采を浴びた。これで勢いづいたジョブズ期待派は、ついでにジョブズ氏をホンモノのCEOにしてしまおうとコールを送り始めたという。「We Want Steve, Cry Mac Loyalists」(San Francisco Chronicle,1/9)によると、Adobe SystemsのCEOのジョン・ワーノック氏は、Appleの“ホンモノ”CEOをやるのはジョブズ氏の義務だと、しきりに「Steve Jobs-for-CEO push」をしているという。また、MicrosoftのMacintoshビジネス部門の担当者もジョブズ氏を絶賛。金融アナリストにも、ジョブズ氏を評価する声が広がっているという。同社の株価も一気に22%もアップした。
まあ、でもこの手の話というのは話半分程度に聞いておくのがよさそうだ。ニュースサイトを眺めると、「Apple Sees 1Q Profit, Shares Soar」(TechInvestor,1/6)のように、Appleはまだまだ危機を抱えているという見方が一般的だからだ。ジョブズ氏も、それがわかっているからこそ、矢面に立ちたくなくて真正CEO就任を固辞しているのかも知れない。
●気が早すぎる!? Windows CE 3.0
先週開催された家電関連ショウ「Consumer Electronics Show (CES)」で、Windows CEベースの新デバイス、Palm PCとAuto PCを発表したMicrosoftだが、早くもWindows CE 3.0を用意しているらしい。「Windows CE 3.0 May Eclipse Traditional Notebooks」(InfoWorld,1/12)によると、これはコード名「Jupiter」と呼ばれるもので、夏にはリリースされ、この新OSを搭載したサブノートが年内に登場するという。記事では、Jupiterベースのマシンとして、640x480ドットの液晶ディスプレイ、16MBのRAMと16MBのROMを備え、1,000ドル以下のものが登場すると報じている。どこが作るかはまだ報じられていないが、この手のマシンの主役は日本メーカーと台湾メーカーになるのはほぼ間違いがない。
●ゲイツ氏とマクネリ氏、手玉に取られる?
また、CESでは米国CATV業界最大手のTCIの次世代STB(セットトップボックス)を巡って、Sun MicrosystemsとMicrosoftがまたまた激突した。いや、むしろTCIのジョン・マローン会長に、マクネリ氏とゲイツ氏が手玉に取られたと言った方が正しいのかも知れない。この話は「Microsoft Announces TCI Deal Only a Day After Sun's Pact」(The Wall Street Journal,1/11、有料サイト、 http://www.wsj.com/ から検索)などに詳しいが、直接2人のキーノートスピーチも聞いてきたので、16日掲載のこのコラムでぜひ取り上げてみたい。
('98/1/13)
[Reported by 後藤 弘茂]