後藤弘茂のWeekly海外ニュース
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Windows CE 2.0搭載のPDAがCESで登場か


●静かなMacworld?

 今週の目玉は、何と言ってもサンフランシスコで開催されるMacworld Expo「Mac upgrades due at Macworld」(NEWS.COM,1/2)によると、米Apple Computer社はここでMac OSのマイナーバージョンアップ「Mac OS 8.1」を発表する予定だという。わずか半年ほどで登場したこの新バージョンでは、パフォーマンスの向上以外にDVDのサポートが加わるとか。また、「Apple readies its Mac OS 8 upgrade for Macworld show」(InfoWorld,12/31)によると、Internet ExplorerがデフォルトのWebブラウザとして搭載されるらしい。でも、Microsoftが嫌いだからMacintoshを使っている人も多いなかで、このデフォルトブラウザの利用率ってどうなるのだろう。また、今、司法省の提訴によりOSへのブラウザのバンドルが問題になっているわけだが、こちらはどう対策しているのだろう。ちなみに、Internet Explorer 4 for MacintoshもMacworldで正式にアナウンスされると見られているが、Mac OS 8.1にバンドルされるのはIE 3.Xだそうだ。今のMicrosoft製品の完成度を考えると、これは無難な選択だろう。

 さて、このように小ネタはあるものの、今年のMacworldはかなり静かなものだろうというのが「Quiet Macworld Expo Expected」(COMPUTER RESELLER NEWS,12/23)など大方のメディアの見方だ。昨年は、直前にスティーブ・ジョブズ元CEO復帰の大騒動があり、本番のMacworldではジョブズ氏がキーノートスピーチに登場したことで沸き返ったMacworldだったが、今年はコトもなく終わる可能性が高い。Appleのサプライズに毎回振り回されている業界メディア関係者には、静かな方がありがたいかも。


●Apple次期CEOは市井のコンピュータアナリスト?

 そんななかで、直前まで「もしかすると」と期待されていたのはApple次期正式CEO(ジョブズ氏は暫定CEOで、現在Appleは次期CEOを探している)の発表だった。しかし、それも今回は見送られる公算が高いと「New year's resolutions for Apple」(NEWS.COM,12/24)などほとんどのメディアが報道している。もっとも、クリスマス直前にはジョブズ氏はある人物をCEOにと心に決めて、打診の電子メールも出していたらしい!?

 これは「Apple Chief Executive Job Is No Joking Matter Jobs, Ellison pull prank, offer post to Bay Area man」(San Francisco Chronicle,12/31)がスクープしたものだ。同紙によると、AppleのCEOになりたいと以前から盛んに自分を売り込んでいたコンピュータコンサルタントのマイケル・マードック氏のところに、ラリー・エリソン氏(Oracle会長兼CEOでApple重役)とジョブズ氏からそれぞれEメールが届いたという。そのメールには「OK。君はその仕事につけるよ。ラリー」(エリソン氏)、「そうさマイク、みんな君のものだ。いつ取りかかるかい」(ジョブズ氏)とあったそうだ。しかし、喜んだマードック氏が1月5日にCEOの仕事を始められるといさんで返事すると、今度はジョブズ氏から「Appleに来ないでくれ。(もし来たら)立ち去るように言われるだろう、それに従わないと逮捕されるだろう」と返事が来たという。同紙によると、Appleの広報担当者は、これはマードック氏があまりにうるさくメールや電話や郵便で自分を売り込んだため、ジョブズのフラストレーションが高じてのいたずらだと答えたという。もちろんこれは報道であり、正確な事実関係は不明だが、ジョブズ氏やエリソン氏のこれまでの言動を考えれば本当だとしても不思議はない。また、大企業のCEOになっても、こういういたずらをしてしまう(または、してしまうように見られる)ところが、よくも悪くもこの2人の個性であり強味なのかも知れない。


●CESでWindows CE 2.0搭載のPDAが登場か

 さて、今週のもうひとつの目玉はラスベガスで開催される「Consumer Electronics Show(CES)」だ。このショウは名前の通り家電関連の展示会で、コンピュータ関連イベントではないのだが、今年は2つのポイントがある。それはWindows CE 2.0とDigital TVだ。

 まずWindows CE 2.0関連だが、MicrosoftがCES前日にマスコミ向け発表会を開くほか、Windows CEのパビリオンが設けられる。そして、「More Windows CE devices due」(NEWS.COM,12/19)によると、ここでMicrosoftとパートナー各社はいよいよウォレット(サイフ)サイズのWindows CEデバイスを発表するらしい。このデバイスは、そもそもWindows CE 1.0が登場する前からWallet/PCなどと呼ばれてその計画が知られており、コード名「Gryphon(グリフォン)」と呼ばるWindows CEのサブセットバージョンを搭載するとウワサされていた。ようは、キーボードがない、PIM(個人情報管理)ソフトなどを載せた、PDAだ。この記事によると、Casio、Philips、Lucky Goldstar、NECあたりがこのデバイスを出す予定だという。ページャ(ポケベル)機能を統合したものもあると言われている。これも、Windows CEのプロジェクト自体が、そもそもPDA用OSのプロジェクト「WinPad」(コード名)とページャなど無線通信端末向けOSプロジェクト「Pulsar(パルサー)」(コード名)を引き継いだものだという経緯を考えれば不思議はない。ただし、Windows CEではこのほかにもサブノート(富士通?)や自動車搭載PC(A/PC?)、ゲーム機(セガ・エンタープライゼス?)などのプロジェクトが進んでいると言われているが、それについてはどの程度までアナウンスされるかは定かではない。これだけ情報が出てこないところをみると、そのあたりの正式発表は希望薄かも知れない。


●CESではディジタルTVが多数登場

 今回のCESのもうひとつの(というか最大の)ポイントは、いよいよ放送開始まで1年を切った(FCCが98年中に放送を開始しなければならないと通達したため)地上波ディジタルTVだ。「It's clash of titans as DTV kickoff nears」(Electronic Engineering Times,1/1)などによると、CESではいくつかの家電メーカーがデジタルTVの出展をするほか、デバイスメーカーもディジタルTV用エンコーダなどを発表するらしい。これについては、放送業界とコンピュータ業界での放送フォーマットに関しての主導権争いにまだ最終的な決着はついていない。また一波乱あるかも知れない。


●サブ1,000ドルPCが40%シェア獲得

 最後に、米国でのサブ1,000ドルPCの嵐に関する新ニュースをひとつ。「Low-Cost PCs Account for 40% Of Holiday Season Computer Sales」(The Wall Street Journal,123/31、有料サイト http://www.wsj.com/ から検索)が、昨年のクリスマスシーズンの小売り市場のPC動向の速報を報じている。それによると、サブ1,000ドルPCは12月のコンシューマPCの40%以上を占めたという。これは米Channel Marketing社の調査によるものだそうだ。こうした調査結果は、調査会社ごとにある程度の違いは出るが、ともかく、サブ1,000ドルPCの嵐が98年はますます本格化することだけは確かだろう。その証拠に、「HP delivers $800 PC」(NEWS.COM,1/5)「New PCs coming from Compaq」(NEWS.COM,1/5)など、新年早々から、大手メーカーのサブ1000ドルの話題がニュースサイトをにぎわしている。そして、IntelのローコストPentium IIの登場で、その波は日本にも広がって来るかも知れない。


('98/1/5)

[Reported by 後藤 弘茂]


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