非同期通信レポート 第23回

「COMDEX/Fall'97」 Telecomレポート Part.2

TEXT:法林岳之


COMDEX/Fall'97で見つけた注目の通信関連機器

 アメリカやヨーロッパの通信機器メーカーは新しい展開もなく、今ひとつだったが、台湾をはじめとするアジア系メーカーは、製品の種類も豊富で勢いが感じられる。ただ、今年6月に開催されたComputex/Taipei'97と同じ製品が展示されているブースもいくつかあった。Part.2ではアジア系メーカーを中心に紹介しよう。


ISDNからモデムまで充実のAcer Netxus

Acer Netxus AIT-323U
Acer Netxus AIT-323U
 COMDEX/Fall'97には数多くのアジア系メーカーも出展していたが、個人的に最も印象に残ったのがAcer Netxusだ。

 まず、ISDNターミナルアダプタ『AIT-323U』という製品だが、DSU内蔵、アナログポート×3、RS-232C及びUSBポート装備、BOD機能搭載、液晶ディスプレイ装備という仕様になっている。写真を見ればわかる通り、国内のISDNターミナルアダプタで最大シェアを持つあのシリーズを狙った(似せた?)製品というわけだ。

 担当者の弁によれば、細かい仕様も日本のINSネット64に合わせてあり、すでに日本のあるメーカーと交渉を開始しているのだとか。他社製品に似ているのはちょっとナニだが、思い返せば、自動車産業でも外車のマネから始めて世界のトップシェアを得たアジアの国があったような……。形はどうであれ、品質が良く、優秀な製品であれば、市場には受け入れられるはず。日本での正式な発売を期待しよう。

 Acer Netxusのブースでもうひとつ驚いたのが56kbpsモデムだ。いつもPC Watchを読んでいる人ならご存じの通り、モデムの心臓部にはモデムチップやDSPを使う。56kbpsモデムを実現するためのチップにはいくつかの種類があるが、同社のブースではRockwell InternationalLucent TechnologiesIBM MwaveAnalog Devicesという4つの異なるチップを使った内蔵モデムが展示されていたのだ。おそらくOEM供給向けの製品だろうが、いきなり各チップ搭載の製品を揃えてしまうところがなかなか強烈だ。「どんなオーダーでも対応できますよ」という同社の意思表示ということだろうか。

Acer 56kbpsモデムその1
Acer 56kbpsモデム
Rockwell International製チップ搭載品(上)
IBM製Mwave搭載品(下)
Acer 56kbpsモデムその2
Acer 56kbpsモデム
Lucent Technologies製チップ搭載品(上)
Analog Devices製チップ搭載品(下)

 これらの4つの内蔵モデムの内、K56flex対応のRockwell International製チップ搭載品とLucent Technologies製チップ搭載品については、他社からも同様の製品が発売されているので特に珍しくない。しかし、IBM MwaveとAnalog Devices製チップは、まだ56kbps対応がアナウンスされていないはずだ。ところが、これらの製品のスペック表には『IBM Mwaveがx2 Technology方式、Analog DeviceはK56flex方式を採用』と書かれている。これはどういうことだろうか……。ちなみに、Analog Devices製チップ搭載品はサウンド機能も搭載しており、ローコストなコンボカードとして提供しているとのことだった。

Acer 56kbpsモデムその3
Acer 56kbpsモデム(外付けタイプ)
Acer ISDNダイヤルアップルータ
Acer ISDNダイヤルアップルータ

 同社のブースでは、この他にも外付けタイプの56kbpsモデムISDNダイヤルアップルータなども展示していた。外付けモデムはごく一般的になスタイルのものだが、Voice機能を搭載しており、留守番電話としても利用できるそうだ。一方のISDNダイヤルアップルータはスペックが公開されていないが、過去の実績から考えて、価格設定はかなり期待できそうだ。



日本でおなじみのZyXELとE-Tech

 台湾には日本のメーカーに製品をOEM供給するメーカーと、独自ブランドで販売しているメーカーがある。続いて、日本でもおなじみの他の台湾メーカーを見てみよう。

ZyXEL Comet3356
ZyXEL Comet3356

 玄人ウケする製品を開発することで知られるZyXEL。今回は『Comet3356』というK56flex対応モデムのラインアップを展示していた。このラインアップには外付けタイプPCカードタイプEthernetカードとのマルチファンクションPCカードがあるのだが、外付けタイプはいわゆるコスト重視で作られた製品のようで、いずれも同社の従来製品で見られるようなオリジナリティが感じられない。やはり、アイデアとブランドだけでは厳しい競争に勝ち残れないということだろうか。

 従来から販売しているモデム内蔵ISDNターミナルアダプタ『Elite 2864I』に関しても56kbps対応アップグレードをアナウンスをしていたが、期日などの具体的なことはハッキリしておらず、実際にはITU-Tの勧告待ちといった感が強い。ISDN化してしまえば、モデムに求めるのはFAX機能くらいなので、影響はほとんどないが、過去のZyXELの実績から考えれば、56kbpsモデムのホストモードくらいはいち早くサポートしてきそうな気もしたのだが……。

 ちなみに、同社はCOMDEX/Fall'97の直前に、ダイヤルアップルータの『Prestige』シリーズに新製品をいくつか追加している。おそらく今後はこのラインをさらに強化し、ビジネスの中軸に据えたいのではないだろうか。


E-Tech TA128E
E-Tech TA128E
 次に紹介したいのがE-Techだ。同社は日本の数多くのメーカーにモデムやISDNターミナルアダプタをOEM供給してきた実績がある。たとえば、ISDNブーム初期のTA777(日本テレマティーク/伊藤忠コミュニケーション)などもそのひとつだ。

 今回も新しい製品をOEM供給をターゲットにした製品をいくつか展示していた。まず、TA128E(写真が今イチで申し訳ない)は縦横どちらにでも置けるデザインを採用したISDNターミナルアダプタだ。日本のINSネット64仕様にも対応しており、PPP及びMP、BACPなどによる64/128kbps接続はもちろん、V.110/V.120などのプロトコルもサポートしている。アナログポートも2つ備え、フレックスホンに相当するサービスにも対応。停電対策のためにバッテリーバックアップ機能も備えている。スペック的には最初に紹介したAcer NetxusのISDNターミナルアダプタと同等だが、液晶ディスプレイがないのが残念なところだ。

E-Tech 56kbpsモデム
E-Tech 56kbpsモデム
 56kbpsモデムは外付け、内蔵、PCカードなどの製品を豊富に揃えている。やはり、主軸はRockwell International製チップを搭載した製品のようだが、他のチップを搭載したモデムも展示していた。おそらく日本向けにもOEM供給されることになるだろう。

 この他にもISDNカードラックマウントモデム(HDSL用)なども展示していた。ブースの規模はそれほど大きくないが、充実した製品ラインアップで幅広いニーズに対応できるように感じられた。自社ブランドを日本で展開するとは考えにくいが、過去のOEM供給の実績などから見ても今後の動向が気になる存在だ。



Creative LabsはPCIが苦手!?

Modem Blaster 56K
Creative Labs
Modem Blasterシリーズ
 PCのサウンドカードで圧倒的なシェアを持つCreative LabsSound Blasterシリーズ。数年前、同社はアメリカのDIGICOM SYSTEMSを買収し、モデム市場に進出した。国内でもModem BlasterPhone Blasterといった名称で製品を販売している。

 COMDEX/Fall'97でも大きなブースを構え、K56flex方式を採用した外付け、内蔵、PCカードモデムなどを展示していた。現状ではV.34/33.6kbpsまでの対応だが、ITU-Tによる国際標準規格の勧告時にソフトウェアのみでアップグレードできるという低価格製品『Modem Blaster/Flash 56 Value』もラインアップに加えていた。

 ただ、正直なところを言わせてもらえれば、Creative Labsの通信関連製品の展開は今ひとつだ。PC97/98準拠のパソコンが増えてくることを考えれば、モデムとサウンドの機能を1枚のPCIバス用カードに収めた製品でも出てきそうなものだが、PCIバス用のモデムすらない。

 それどころか、本命のSound Blasterですら、ようやくPCIバス対応のSound Blaster AWE64Dが発表された程度。目新しいPCIバス製品は10/100BASE-TのLANカード『Networtk Blaster』があるくらいだ。Creative Labsという会社はPCIバスが不得意なのではないかと疑いたくなるほどだ。会社としての戦略もあるのかもしれないが、こんなスローペースの製品展開では、ユーザーの興味を継続して引きつけるのは難しいような気もする。


 これに対し、積極的に新しい技術に対応した製品を投入しているのがAZTECHだ。日本ではあまりなじみのないブランドだが、サウンドカードではCreative Labsに次ぐシェアを持っている。

AZTECH 56kbpsモデム
AZTECH 56kbpsモデム(外付け及びISAバス用)
AZTECH USB用56kbpsモデム
AZTECH USB用56kbpsモデム

 まず、左側は他社同様のK56flex対応56kbpsモデムだ。外付けタイプとISAバス用内蔵タイプがある。ISAバス用は今年6月に発表されていたものだが、外付けタイプの方はおそらく今回追加発表になったものだろう(正式なリリースは未発見)。

AZTECH PCIバス用内蔵56kbpsモデム
AZTECH PCIバス用内蔵56kbpsモデム
 一方、右側はCOMDEX/Fall'97開催直前に発表された『USBポート搭載56kbpsモデム』だ。USBベースでは初の56kbpsモデムということになる。このUSBモデムはK56flex方式を採用しているが、Rockwell International製チップはUSBに対応していないという説もあり、内部がどうなっているのが非常に気になるところだ。ISDNターミナルアダプタと違い、USBモデムを使う明確なメリットが少ないため、先行投資の感は否めないが、新しい技術を積極的に取り込もうとする姿勢は歓迎できるものだ。

 また、内蔵用モデムではISAバス用に加え、発表されたばかりのPCIバス用56kbpsモデムもデモンストレーションされていた。K56flex方式を採用したシンプルな製品だが、IRQの設定などがラクになることを考えれば、十分利用する価値はあるだろう。

 ただ、残念ながら、日本国内ではAZTECHの通信関連製品はほとんど扱われていないため、今のところは利用できる可能性は低い。USBモデムなども興味あるが、サウンド機能も内包したPCIバス用カードを開発し、日本市場に乗込んできて欲しいところだ。


Part.3へ続く

[Text by 法林岳之]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp