松下 「New COOLSHOT II(PalmCam)」 |
EPSON AMERICA 「PhotoPC 550」 |
今回は出発当日(11月17日)に国内発表された、松下「New COOLSHOT II」をCOMDEXが開催されるラスベガスに持参して実写した。とはいっても、日本で受け取ったのは出荷時期の関係もあって国内用の「COOLSHOT II」ではなく、アメリカ向けの「PalmCam(PV-DC1080)」だったのだが、中身と性能は全く同じということなので、今回はこのモデルでの実写レポートをお届けしよう。
このモデルは既報の通り、今春のPMAで発表された、松下寿設計・製造の「COOLSHOT II(LK-RQ035ZZ)」の後継機。名称は従来通り「COOLSHOT II」のままだが、大幅な改良が施されており、事実上のニューモデルだ。もちろん、型番も新しく「LK-RQ1Z」となっている(ここでは「New COOLSHOT II」と呼ぶ)。
●従来機譲りの感動的なコンパクトさ
主な改良点としては、従来機の不満点であった、液晶表示のレスポンスと記録速度の高速化、CFカードや光学式ファインダー、外付け式ストロボ(別売)の採用など、かなり広範囲に渡っている。さすがにこれだけ大幅な改良になると、サイズ的に大きくなっても不思議はない。
だが、ニューモデルではこれだけの機能を搭載しながらも、現時点でも液晶付きでクラス最小を誇る従来機と比較して、本体サイズがほとんど変わっていない点に驚かされる。CFカードを採用したためにグリップ部がごくわずかに厚くなってはいるが、ほとんど気にならないレベルだ。ちなみに、サイズはAPSカメラの、キヤノン「IXY」と同じサイズで、下手な35mmカメラ顔負けのコンパクトさといえる。
実際に手にしてみると、「よくこのサイズに収めたなあ」と感心するばかり。従来機も凄かったが、今回はそれを遥かに上回る感じだ。もちろん、サイズがこれだけ小さいと、シャツの胸ポケットに入れておいても、持っていることを忘れるほどのレベル。常時携帯用のメモ用機としてはかなり良い線をいっているし、なかなか高級感もあるので、背広姿で持ち歩いても似合うのが大きな魅力といえる。
もっとも、従来機はボディー全体が金属だったこともあって、今回のニューモデルよりも“精密感”があったような気がする。特に、ニューモデルは、CFカード挿入部となるグリップの素材がプラスチックで、妙に安っぽく見えるのが個人的にとても気になっているのだが……。
また、付属ケースは前回同様、単なる袋状の安っぽいものなのが残念。別売でも構わないから、カッコイイ本革製の専用ケースくらい用意して欲しいものだ。
外付け式のストロボも超小型で、しかもコンパクトカメラ用のリチウム電池を別に搭載しているので、ボディー側の撮影枚数への影響がない点もよく考えられている。もちろん、ストロボを装着した状態でもかなりコンパクトで、持ち歩きに不便を感じることは少なかった。
●約6秒の記録速度、液晶のレスポンスも実用レベル
さて、もっとも気になるのが、従来機で問題になっていた、液晶表示のレスポンスと記録速度だ。なにしろ従来機は、液晶のレスポンスが猛烈に遅く、シャッターチャンスを掴むどころか、正確なフレーミングさえも困難なほどだったし、記録速度もFINEモードで約20秒とのんびりとしたものだった。
だが今回は違う。内部処理用に専用のLSIと32bitのRISCチップを採用し、さらに高密度なセラミックの多重基板を搭載することで、ソフト的な処理ながらも、記録速度はVGAのFINEモードでも約6秒と、十分に実用的な速度を実現している。
また、液晶のレスポンスも従来より遥かに高速になり、リアルタイムとはいえないまでも、ごく普通のモデル並のレスポンスを実現している。もっとも、表示速度を向上させるためか、画面表示は従来機よりも粗くなっており、ピントなどはほとんど確認できないレベルで、微妙な表情の変化も掴みにくいのが残念だ。これは再生時の表示品質についても同様で、微妙なカメラブレなども液晶上で確認できない。さらに、TFTでありながら液晶上での色や階調の再現性に今一つクリアさが足りない点も、最新の他社モデルに比べると、やや気になる点といえる。もっとも、メモ用機としては、十分に実用レベルなのだが、せっかくここまでやったのだから、もう一頑張りして欲しい部分もある。
●かなり持つようになったバッテリー
本機はこれほどのコンパクトさを実現するために、電源は単三型電池2本という仕様になっており、基本的には専用の1000mAhのNi-Cd電池を推奨している。従来機のユーザーならば、このバッテリーの持ち時間の短さにはかなり泣かされた人も多いと思う。実際に、市販の単三型アルカリ電池で数枚しか撮影できなかったという例もあるほどだ。
しかし、今回はこの点にもかなりの改良が加えられていた。というのは、今回のCOMDEX取材では日本出発時に専用のNi-Cd電池をフル充電したのだが、液晶モニターを結構多用したにも関わらず、100枚を越えた時点でようやくバッテリーの警告が出て、結局電池を交換することなく帰国できたほど。これはかなり長足の進歩といえそうだ。
また、今回は液晶モニターのほかに光学ファインダーも搭載されている。若干のぞきにくいが、見え味は比較的良好。もちろん、LCDをOFFにすることもできるので、こちらを多用すれば、電池の寿命はさらに延びると思われる。しかも、動きの激しい被写体を撮影するときには、液晶モニターよりも光学式のほうがシャッターチャンスを掴みやすいというメリットもある。
さらに、前記のように、外部ストロボも本体とは別に電池を搭載しているため、ストロボ使用時でも撮影可能な枚数が変わらないという点も好ましい。
●やっぱり便利なCFカード
記録媒体は、従来機の内蔵式と違い、コンパクトフラッシュ(CF)カードが採用されている。実際に現物を見るまでは、このサイズでどうやってCFカードを収めるのか不思議だったが、グリップ部を数mm膨らませて、その部分に収納している。
やはりCFカードの採用による便利さは絶大。従来機はシリアル転送のみで、しかも、専用のドッキングステーション経由でしか転送できず、転送速度も遅かった。それに比べると、今回のモデルは格別の軽快さといえる。
撮影枚数もVGAのFINEモードでは、付属の2MBカードで約24枚、大容量の15MBカードなら約184枚も撮影できる。また、1/4VGAモードと、2倍のデジタルズーム(画像サイズは1/4VGA)ではその約4倍の枚数が撮影できるので、メモ用としても便利だ。
一方、撮影していて気になるのがマクロモード。従来機は名刺大の接写ができるマクロ機能を搭載していたが、本機ではマクロモードでの撮影距離が40cmと長く設定されている。これはテーブルの上にあるものなどの撮影に対応するためというが、やはりメモ用機として考えると物足りない部分も多い。また、本機は構造上、切り替えノブを通常モードとマクロモードの途中で止めて使うことで、その中間距離での撮影もできる(もちろん、カタログや取説には書いていないが……)ことを考えると、この点は退化した部分といえそうだ。
また、再生時の表示品質がいまひとつな点も気になる。ビジュアルメモとして使うケースを考えると、液晶上で画像を確認するというケースは結構多くなるため、表示品質をさらに向上させて欲しいし、表示時の拡大モードも欲しいところだ。
●色・階調ともきれいで、シャープ感も実用レベル
解像度は、メモ用機としては実用に十分なレベルともいえるが、若干シャープ感が足りない感じもある。もう少し切れ味が良いと、さらに好印象な写りになると思われる。なお、従来機に見られたような、画面周辺部の画質低下が感じられなくなっている点は十分に評価したい。
ホワイトバランスのレスポンスは十分で、蛍光灯下でも自然な色再現だったので、イベントの取材などでも便利だ。
だが、輝度の高い、白い建物などを撮影すると、ややスミアが発生しやすい傾向がある点は気になる。また、本機はストロボなしでも比較的暗いシーンを撮影できるが、もともとCCDが1/4インチタイプということもあって感度が不足気味なため、ソフト的な感度アップ(ゲインアップ)により対応している。そのため、シャドー部にかなりノイズが見られるようになる。もちろん、メモ用と割り切れば良いとも言えるし、近距離ならストロボを発光させれば良い(ストロボ使用時の仕上がりはなかなか良好だ)わけだが、夕景などストロボが届かない遠景撮影では、やや不満を感じるケースもあった。
●超小型で高級感のある、バランスの良い常用モデル!
従来機は確かに画期的に小さかったが、やはり同社の“初物”だけに、基本機能の点でかなり妥協を強いられた面があった。その意味ではかなり尖ったモデルだったわけだ。しかし、明確な目標があると、俄然、力を発揮する日本企業らしく、今回のモデルは、サイズを変えることなく、従来機の欠点を見事なほど解消している。その意味で本機は、小型軽量で、しかも高級感がある、バランスの良いモデルに仕上がっている。
価格も、本体のみなら54,800円となかなか手頃な点も好感が持てる。もっとも、充電器兼ビデオ出力、シリアル転送接続用のドッキングステーションや内蔵ストロボ、接続キットまでのオールインワンセットでは79,800円と、それなりに値が張る点はやや残念だ(ちなみにアメリカではほぼ同様のセットで499ドルだが……)。
小型軽量で、しかも使い勝手が良い、常用向きデジタルカメラを探している人にとって、本機はこの冬の選択肢の筆頭に位置するモデルと言えそうだ。
□ニュースリリース
http://www.panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn971117-1/jn971117-1.html
□関連記事
【10/17】松下、コンパクトフラッシュを積んだ新COOLSHOT II
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971117/coolshot.htm
アメリカを始めとした海外でも注目され始めたデジタルカメラ。しかし、各国それぞれ市場からの要望が微妙に異なることもあって、どの分野にも“専用モデル”というものが存在することも少なくない。ここではCOMDEX会場で、EPSON AMERICAが企画したアメリカ市場向けモデル「PhotoPC 550」を借り出し、実写できたので、その実力を簡単にレポートしよう。参考までに、現時点では日本国内での発売は予定されていないという。
●“写ルンです”感覚の超シンプルモデル
本機は、きわめて軽量でコンパクトでシンプルな、低価格帯のVGAモデルだ。基本的には35万画素の原色系・正方画素CCD採用機で、レンズは単焦点式(マクロモードあり)。記録媒体は内蔵式のほか、スマートメディアが利用でき、記録フォーマットはJPEG(Exifではない)。光学ファインダー専用機なので液晶モニターやビデオ出力機能はないが、アメリカで要望の高いボイスメモ機能が搭載されている。つまり、富士フイルムの「DS-10」(現地名“DX-5”)的なモデルだ。また、現地での価格は299ドルと、まずまず手頃なレベルだ(実は「DS-10」も同じ299ドルなのだが)。
基本的には、カメラ前部のバリアを開いて、シャッターを押すだけのシンプルなもので、感覚的にはほとんど“写ルンです”という感じ。とにかく、軽快にスイスイ撮影でき、記録時間も約5秒と実用に十分なレベル。また、シャッターを押してから写るまでの時間差(タイムラグ)が短い点も好感が持てる。
また、液晶がないぶん、光学ファインダーはとても良く設計されており、明るく見やすく、視野も正確で気持ちが良い。このあたりは、ライバル機となる、富士フイルム「DS-10」やコダック「DC-20」(現地では199ドル未満)と大きく異なる点だ。
記録メディアも1MBの内蔵式のほか、スマートメディアも利用できる(3.3V仕様のみ)ので、撮影枚数を気にしなくて済む点も良い。
●彩度が高めで明快な写り
写りは結構良好。ちょうど同社の「CP-200」のような、ちょっと派手目で彩度が高い色再現で、解像度も固定焦点式としてはなかなか良好。しかも、階調の再現性がよく、グラデーションがきれいな点が印象的だ。また、ストロボはないが、CCDの感度が高いため、普通の夜景や屋内など、比較的暗いシーンでも十分に撮影できる。
つまり、299ドルの小型サイズのモデルでありながら、VGAクラスの中でもトップクラスに近い、見栄えのする写りを実現しているわけだ。だが、接続キットやソフトまで込みとはいえ、299ドルという価格は微妙だ。なにしろ、昨今の円安状況では「1ドル=125円」になるので、日本円では35,000円以上になる。しかも、これはほぼ実販価格になるのだから、在庫処分品であれば、日本では20,000円台で液晶付きモデルが入手できる現状を考えると、まだ高い感じがする。
また、個人的には、日常的なメモ用機としてとても魅力的に思えたので、購入して帰ろうと思ったのだが、会場で最初に借りたボディーはシャドー部の階調再現性が悪く、交換したボディーにも同様のトラブルがあった。実写に使用できたモデルは3台目だったという点が気になり、郊外のPCスーパーマーケットで売っていたのだが、今回は購入を見合わせてしまった(ちなみに、ボディーには“Made in Japan”の文字が……)。
とはいえ、この軽快さでこの写りを実現したモデルは他に例がないこともあって、もし、このモデルが日本国内で20,000円以下(実販で14,800円くらい)で販売されれば、なかなか魅力的な存在になりそうな気もする。
また、とにかく気軽に撮れるメモ用サブカメラが欲しい人で、年末年始に海外に出かける方がいれば、おみやげに一台買ってくるのも良いかも……。
('97/11/26)
[Reported by 山田 久美夫]