今月のユーティリティ
製品名:超速95 (Windows版) | 発売元:株式会社ソース 連絡先:03-3551-5581 標準価格:12,800円 実売価格: 7,240円 (10月/LAOX THE COMPUTER館にて)
得点(満点:5つ星) | ★★★☆☆ |
実際に、地図ソフトを使用中、CD-ROMへのアクセスによって画面スクロールがもたついてしまったり、ゲームソフトなどでデータロードに時間がかかるといった例がある。どうにかCD-ROMを高速化して、このようなアプリケーションを快適に使いたい。そんなときに使ってみたいのが、今回取り上げた「超速95」。既に米国で発売されているCD-ROM高速化ユーティリティ「d-time95」( http://www.ballardsynergy.com/ )を日本語化したものだ。
「超速95」も基本的には同じようにキャッシュを利用してCD-ROMを高速化するユーティリティだ。しかし、Windows 95標準のキャッシュ機能とは、以下のような点が異なる。
つまり、Windows 95の機能ではせいぜい1~2MB程度のメモリしかCD-ROMキャッシュに割り当てられないのに対して、「超速95」ならハードディスクの空き容量にもよるが、数十MBから場合によっては数百MBもの容量をキャッシュに割り当てることができるようになっている。
ハードディスクにキャッシュするよりメモリにキャッシュしたほうが、読み出し速度は高速なのは当然だ。しかし、「超速95」ではハードディスクにキャッシュすることで、キャッシュに蓄えられるデータ量を多くし、キャッシュのヒット率を高めることで高速化するというわけだ。
また、「超速95」はCD-ROMアプリケーションの動作状況を監視して、使用中のアプリケーションがCD-ROMからどのファイルを読み込んだかという「タイムログ」を作成し、アプリケーションごとに最適なキャッシュ方法を学習する(左図参照)。
これにより、「超速95」は次回同じアプリケーションを起動した際に、タイムログをもとに前回読み込んだのと同じファイルをCD-ROMから自動的に先読みする。前回と全く同じ内容のキャッシュを再現できるので、いつでもそのアプリケーション用に最適化されたキャッシュを利用できるというわけだ。
ただし、このタイムログによるキャッシュ領域の再現機能は、アプリケーションの起動時間を遅くしてしまう場合もある。これは、アプリケーションの起動時に実行される先読みに時間がかかってしまうため発生する現象だ。少し残念だが、アプリケーション使用中の動作速度を速くするためのトレードオフと割り切るしかないだろう。
なお、「超速95」のデフォルト設定では、キャッシュに20MBが割り当てられている(HDD空き容量が少ないときは自動的に調整される)。この容量でキャッシュヒット率が高くなるアプリケーションもあれば、そうでないアプリケーションもあるので、デフォルト設定で効果が出ないようであれば、「超速95」でキャッシュヒット率を確認しながら70~80%のヒット率になるようにキャッシュ容量を増やしてみよう。逆に、ノートPCなどでハードディスクの空き容量が少ない場合には、デフォルトの20MBで十分効果が出るようなら、キャッシュ容量を調整してハードディスク容量を節約するといいだろう。
「MapFan II」は表示された地図をスクロールさせるとCD-ROMへのアクセスが発生し、地図の表示がもたつく場合がある。目的地への道順を調べる場合など、「どこの交差点を曲がるんだっけ?」と画面をスクロールさせて確認しなおすケースが多いので、キャッシュの恩恵は大きいはずだ。ここでは、6250分の1の地図で、筆者の自宅 の立川から秋葉原までのスクロールさせたときにかかる時間を計測し、「超速95」の効果を試した。
次に、「Diablo」だが、これは街からダンジョンに移動した時などにCD-ROMから大量のデータを読み込むため、結構長い待ち時間が発生してしまう。ここでは、このタイムが「超速95」のあるなしでどうのように変化するのか計測した。
また、テストには4倍速のCD-ROMドライブを使用したが、ここでは低速のドライブ+「超速95」の効果を比較する意味で、12倍速のCD-ROMドライブでも同じテストを実施した。低速CD-ROMドライブの買い換えを考えているユーザは参考にするといいだろう。
ちなみに、ベンチマーク時の「超速95」のキャッシュファイルサイズは19MBで、ベンチマークの値はストップウォッチで計測した値を小数点第二位で四捨五入した。テストに使用したPC及びCD-ROMの詳細スペックは以下の通り。
PC本体:UNiSYS AQUANTA DM/6 |
CPU:Pentium PRO 200MHz、RAM:32MB、HDD:2.5GB、VIDEO:NumberNine Imagine128II |
4倍速CD-ROM:XM-5302B |
転送速度:600KB/sec、I/F:Enhanced IDE、シークタイム:150ms、バッファ:256KB |
12倍速CD-ROM:XM-5702B |
転送速度:1,800KB/sec、I/F:Enhanced IDE、シークタイム:125ms、バッファ:256KB |
[単位:秒] | ノーマル | 超速1回目 | 超速2回目 | 超速3回目 | |
---|---|---|---|---|---|
MapFan II | 4倍速 | 26.7 | 23.0 | 20.3 | 20.0 |
12倍速 | 24.8 | 21.3 | 19.9 | 20.4 | |
Diablo | 4倍速 | 18.7 | 17.6 | 9.1 | 9.3 |
12倍速 | 13.8 | 13.3 | 9.3 | 9.1 |
また、どちらのアプリケーションも4倍速ドライブと「超速95」を併用したほうが、12倍速ドライブのノーマルより速くなるという結果になった。これなら、CD-ROMドライブを高速なものに買い換えるよりも「超速95」を導入したほうが良さそうだ。
さて、ここで注目したいのは、「超速95」をインストールした直後の1回目の計測から速くなっているという点。予想では、初回はキャッシュに何も蓄えられていないためノーマルと同じタイムか、キャッシュ情報をハードディスクに書き込む時間がオーバーヘッドとなりそれ以上のタイムになるかと思われた。しかし、予想に反して実際の結果では、初回の起動でもある程度速くなった。
これは、「超速95」は初めてアプリケーションを起動した時に、CD-ROMに収められたファイルを解析し、アプリケーションが使われるであろうと予測したファイルについて先読みを実行しているからだ。試しに、「超速95」の活動状態を確認できる「超速95統計」で確認してみた(左図参照)。すると、グラフにキャッシュにヒットしたことを表わす緑色の部分が確かに表示されている。これは、あくまでも予測に基づいた先読みキャッシュなので決してヒット率は高くないが、それでも初回から多少速くなるというのは評価できる。
さて、今回の「超速95」の評価はというと、3つ星ということにしておく。どんなCD-ROMでもドライブに挿入された時点で先読みが実行されてしまうため、起動時間が遅くなってしまう点を割り引いた。アプリケーションごとに「超速95」を機能させるかどうか設定できるようになれば、もう少し使い勝手が良くなりそうだ。
[Text by 清水理史]