今月のユーティリティ
|
製品名:Agent97 | 発売元:株式会社システムソフト 連絡先:Tel.092-752-5264 標準価格:9,800円 実売価格: 6,780円 (8月/LAOX THE COMPUTER館にて)
得点(満点:5つ星) | ★☆☆☆☆ |
こうした問題は、とくに大きなアプリケーションを複数起動する場合に起こりがちだ。そこで、大きなアプリケーションを複数使うことが多い場合、安心して使うためにシステムの状態を正確に把握しておきたいと思うユーザーも多いはず。そんなとき使ってみたいのが、今回取り上げる「Agent97」のようなメモリ管理ユーティリティだ。
唯一「Agent97」が直接問題解決できるのは、終了させたアプリケーションが正しくリソースを解放していないようなとき。この場合もアラートが表示されるが、「Agent97」から操作してこのリソースを解放できるようになっている。これなら、システム全体がハングアップする前に対策が打てる可能性もあるので、メモリ不足の時のアラートにくらべて効果があるだろう。
そこで、普段アプリケーションを使っていて、スワップが発生するような状況を再現して「Agent97」の効果をテストしてみた。
●画像読み込みテスト
まず最初にテストしたのはAdobe Photoshop。Photoshopでは、デジタルカメラの画像を連続して読み込ませたときや、大きな画像ファイルを開くときなどに、スワップが発生して読み込み速度が遅くなる。この速度が「Agent97」をインストールすることで改善されるかどうかテストしてみた。
テストは、複数ファイルリードテストでは、65KBのJPEGファイルを10/20/30個と連続読み込みさせ、これにかかった時間を計測した。単一ファイルリードテストでは、596KB/2.01MB/8.04MB/18.0MB/32.1MBのJPEGファイルそれぞれの読み込み時間を計測した。テストは以後のものも含め、3回計測して平均値を出している。
複数ファイルリードテスト(単位:秒) | |||
---|---|---|---|
10 files | 20 files | 30files | |
Photoshop ノーマル | 21.39 | 66.36 | 107.86 |
Photoshop Agent97 | 20.44 | 66.67 | 108.58 |
JPEG単一ファイルリードテスト(単位:秒) | |||||
---|---|---|---|---|---|
596KB | 2.01MB | 8.04MB | 18.0MB | 32.1MB | |
Photoshop ノーマル | 2.97 | 3.89 | 15.82 | 34.31 | 82.33 |
Photoshop Agent97 | 2.82 | 3.67 | 14.59 | 33.58 | 81.36 |
ところが、このテストでは「Agent97」をインストールしてもその効果は現れなかった。そこで、今度は、Windows 95付属のPAINTでテストしてみることにした。しかしPAINTでは、複数の画像ファイルを開くと、PAINT自体が複数起動してしまう上、JPEG画像は読み込めないので、ここでは同じサイズのファイルをBitmapに変換して、単一ファイルリードテストだけを計測した。
すると、やはりPAINTでは18MBファイルで約1.6倍、32MBファイルでは2.5倍ほど速くなることが確認できた。
BMP単一ファイルリードテスト(単位:秒) | |||||
---|---|---|---|---|---|
596KB | 2.01MB | 8.04MB | 18.0MB | 32.1MB | |
Photoshop ノーマル | 2.56 | 4.41 | 10.85 | 69.48 | 137.69 |
Photoshop Agent97 | 2.54 | 4.09 | 10.28 | 65.35 | 133.95 |
PAINT ノーマル | 1.43 | 1.76 | 21.20 | 162.28 | 550.07 |
PAINT Agent97 | 1.37 | 1.47 | 19.99 | 97.00 | 214.37 |
どうやら、Photoshopで効果の出ない原因は、Photoshop側で独自に作業用メモリ領域を確保してしまっていることにあるらしい。Photoshopがメモリの使い方を制御してしまうので、「Agent97」が効果を発揮する余地がなかったようだ。
●Excelテスト
次に、Microsoft Excel97を使ってテストをしてみた。Excelは普通に使っているぶんには、スワップが発生してパフォーマンスが落ちるということは滅多にない。では、なぜこのテストを行なったのかというと、「Agent97」パッケージにに「Excelのパフォーマンスを最大100%まで向上させることができます」とあるからだ。
ここでは、画像の時と同じくファイルの読み込みにかかる時間の計測と、シートを再計算したときにかかる時間を計測してみた。テストに使用したデータは20万セル(50列×4000行)/50万セル(50列×10000行)/60万セル(50列×12000行)の3つで、ファイルサイズはそれぞれ約5MB/約15MB/約20MB。すべてのセルに対して縦横の合計 と平均を計算しており、各セルの値はランダム関数を使用して自動的に発生させるようにした。
起動テスト(単位:秒) | |||
---|---|---|---|
20万セル/5MB | 50万セル/15MB | 60万セル/20MB | |
Excel ノーマル | 14.40 | 77.13 | 151.33 |
Excel Agent97 | 14.30 | 51.22 | 115.99 |
再計算テスト(単位:秒) | |||
20万セル/5MB | 50万セル/15MB | 60万セル/20MB | |
Excel ノーマル | 58.84 | 146.61 | 301.50 |
Excel Agent97 | 58.40 | 147.33 | 115.99 |
この結果、ファイルの読み込みテストでは、50万セル/15MBのファイルで1.5倍、再計算テストでは、60万セル/20MBファイルでは2.5倍までスピードアップしている。やはりスワップが発生するような大きなファイルを扱った場合には、ある程度のスピードアップはするようだ。
なお、テストはすべて、以下のPCで行なった。
富士通FM-V DeskPower D5133 CPU:Pentium 133MHz RAM:32MB HDD:1.2GB Video:ATI Mach64 |
つまり、普通に使っているかぎりは「Agent97」のパフォーマンス向上の恩恵にはなかなかありつけないということだ。それならば、むしろ物理メモリを増やすためにRAMを増設したほうがはるかに幸せだろう。RAMの増強は、システム全体のパフォーマンスアップになる。
「Agent97」は、大きなアプリケーションを複数使う場合、メモリの状態について把握しておきたいユーザーで、なおかつWindowsのメモリについてある程度の知識がある中級以上のユーザーなら、使ってみてもいいだろう。Windowsのメモリについての知識がないと、レポートされる情報の意味が読めないため、初心者にはおすすめできない。
以上のような理由で、今回の「Agent97」の評価は一つ星にしておく。やはり、パッケージに謳われているパフォーマンス向上の効果が、実用レベルで見られないのが残念だからだ。
[Text by 清水理史]