清水理史のPC Utilities一刀両断

清水理史のPC Utilities一刀両断 第2回

1万円パワーアップ計画
~ハードディスクアクセラレータ「驚速95」を斬る~

TEXT:清水理史

今月のユーティリティ
製品名:驚速95
発売元:株式会社ソース
連絡先:03-3551-5900
標準価格:12,800円
実売価格: 8,450円(7月/LAOX The Computer館にて)
得点(満点:5つ星)
★★★☆☆


■いかにPCをパワーアップするか?

 今に始まったことではないが、PCの進歩って早すぎると思いません? 新製品が発表されるたびに、自分のPCが型遅れになっていく。1年ちょっと前まで全盛だったPentium 133MHz~166MHzなんて、今の最新機種と比べたらクロック数は何と半分。ついでに言えば、値段だって半額だ。
 確かに最新機種は欲しいけど、当時だって莫大な投資したんだからそんなに早く買い換えなんてできない人も多いだろう。そのせいか、今の流行りはパワーアップ。どの雑誌を見ても、RAMを増やすとか、ODPでMMX対応だ、というような記事を見かける。確かにパワーアップなら、費用も5万円前後で済むから出費も抑えられるし、効果も確実に期待できる。

 ユーティリティでも、現在アクセラレータソフトが売れている。1万円程度でパワーアップできるということで、ソフトの売り上げランキングでは常に上位をマークしている。
 そこで、今回の「一刀両断」で取り上げるのは、アクセラレータソフトの代名詞とも言える「驚速95」。果たして1万円でも幸せをつかめるのか、じっくりテストしてみた。


■なにがどうして速くなるのか

ショートカットが驚速ファイルに変更されている

 「驚速95」はハードディスクのアクセス速度を向上させるアクセラレータで、ソフト売り上げランキング1位の座を守り続けている売れ筋商品。そんな「驚速95」の一番のウリは「アプリケーション起動時間の高速化」。導入すれば、アプリケーションの起動は最適化され短時間で起動するようになる。WordやExcel、Netscape NavigaterやInternet Explororと、どんなに重いアプリケーションもスタートメニューやショートカットをクリックしてすぐに使えるようになる。いつまでもハードディスクにアクセスしてなかなか起動しないというイライラを解消してくれるユーティリティだ。

 それでは、なぜ「驚速95」でこのような高速化ができるのだろうか。「驚速95」はインストールされると、タスクトレイに常駐しアプリケーションの監視を始める。この状態からアプリケーションを起動すると、「驚速95」はアプリケーションの起動プロセスを追跡し、独自にアプリケーションの実行を最適化する。そして、最適化の結果「*.EXE」形式の実行ファイルを作成し、これを「驚速化ファイル」と称している。「驚速化」されたプログラムでは、ショートカットなどが「驚速化ファイル」に置き換えられ、次回以降、最適化された状態で通常より高速に起動されるという。

 では、この「驚速化」について、もう少し詳しく解説しよう。「驚速95」はアプリケーションの起動プロセスを監視するが、この監視の対象になるのは、「*.EXE」ファイルが呼び出す「*.DLL」ファイルや「*.DRV」ファイルなど。これら、プログラム内部から呼び出されるファイルの読み込みを効率化したものが「驚速化ファイル」の正体だ。

 わかりやすく例を出すと、Microsoft Word97の場合、スタートメニューやショートカットアイコンには「WINWORD.EXE」が実行ファイルとして登録されている。このEXEファイルが起動されると、「WINWORD.EXE」は自分自身の実行に必要なモジュールである「WWINTL32.DLL」や「IMESHARE.DLL」などを、プログラムで指定された通りに読み込んでいく。通常、アプリケーションのプログラムでは、このような実行モジュールはファイル名のみで指定されることが多い。よって、「WINWORD.EXE」は、実行に必要な「WWINTL32.DLL」や「IMESHARE.DLL」などを、環境変数に指定されているパスなどからサーチして読み込んでくることになる。

 一方、驚速が作成する「驚速化ファイル」では、最初の起動時に「WINWORD.EXE」が必要とする「WWINTL32.DLL」や「IMESHARE.DLL」などを解析済みなので、これらのファイルをフルパス指定で「驚速化ファイル」内に記述してある。よって、実行モジュールをサーチする手順を省き、アプリケーションの起動を高速化しているのだ。


■実際にどれだけ速くなるのか?

 では、「驚速95」の気になる効果のほどをベンチマークテストで測ってみよう。テストしたのは「驚速95」のウリである「アプリケーション起動時間の高速化」だ。そして、パッケージにも高速化できるとうたわれているので、一応ファイルの転送速度も計測してみた。ベンチマークテストの詳細は、以下のとおり。

 今回はネタがパワーアップだけに、ソフトウェアだけでパワーアップする「驚速95」の実力が、ハードのパワーアップにどれだけ迫れるかが気になるところ。そこで、テストのベースPCとなる、Pentium 133MHz、RAM 16MB、HDD 600MB(IDE)に、メモリを追加したときと、ハードディスクを交換したときで、「驚速95」とどれくらいの差があるのかを調べてみた。

  Word起動テスト(sec) 10MBファイル転送テスト(sec)
HDD/RAM 驚速 初回起動
(参考値)
起動1回目
(リブート直後)
2回目以降
(キャッシュヒット時)
複数ファイル 単一ファイル
600MB/16MB なし 14.13 13.99 10.34 33.12 24.82
あり 16.22 10.48 8.20 32.47 24.62
600MB/48MB なし 10.98 11.16 2.09 32.21 24.78
あり 12.45 6.15 2.47 29.55 21.71
2.1GB/16MB なし 8.91 8.80 6.76 13.89 8.98
あり 10.12 8.28 6.36 11.34 6.84
2.1GB/48MB なし 6.92 7.06 2.09 12.92 8.30
あり 8.36 4.46 2.30 11.30 5.96

 まず、注目したいのは初回の起動時間。ご覧の通り、「驚速95」を稼働させたほうが起動時間が1~2秒程度遅くなっているのがわかる。これは、「驚速95」が「驚速化ファイル」を作成するためにアプリケーションの実行を監視しているからだ。
 その代わり、一度「驚速化ファイル」を作成してしまえば、次回以降の起動時間は大幅に短縮される。これが表の「1回目の起動(リブート後)」にあたる。だいたい、どの環境でも「驚速95」のありなしで、3~5秒程度の時間が短縮できた。驚くほど速いというわけではないが、体感速度は十分速い。ただ、ファイル転送に関しては、1~2秒のわずかなスピードアップにすぎなかった。これはあまり意味のあるものとも思えない。

 では、ハードウェアのパワーアップと比較してみるとどうだろう。ノーマルの状態からそれぞれを比較すると、以下のようになる。

驚速95のみ        13.99→10.475 約3秒短縮 メモリ増設のみ      13.99→11.155 約3秒短縮 ハードディスク交換のみ  13.99→ 8.801 約5秒短縮 メモリ&ハードディスク   13.99→ 7.060 約7秒短縮  メモリの増設時は、キャッシュにヒットすれば2~3秒程度でも起動するので、ハードウェア増設の効果が大きいことがよくわかる。ハードディスクを交換すれば、全体的なパフォーマンスが上がるので、アプリケーションの起動も1回目から速くなる。しかも、両方増設すれば圧倒的な効果が得られる。

 また、「驚速95」の効果はPCのスペックにも大きく依存する。特にメモリは増設するほど、「驚速95」の実力をアップさせる効果がある。ここでは、16MBから48MBに増設しているが、ノーマルハードディスクのときで11秒→6秒に、2.1GBのハードディスクと合わせて増設すれば、7秒→4秒まで短縮できる。さすがに、ノーマルで13秒近くかかっていたWordの起動が4秒まで短縮されると気持ちがいい。


■「驚速95」のコストパフォーマンスは?

 ベンチマークの結果を見ても、やっぱりPCのパワーアップはハードウェアから行なったほうが効果が大きい。「驚速95」も確かに速くはなるが、メモリやハードディスクを交換すればシステム全体のパフォーマンスがアップするので、どんなケースでもPCを快適に使える。しかも、メモリやハードディスクの値段は日に日に安くなっている。メモリを32MB増設するなら、16MB SIMM×2でも15,000円もあれば手に入れられるし、ハードディスクだって2GBクラスで25,000円前後だろう。

 もし、ここでテストに使ったような遅いPCを使っているならば、ハードディスク、メモリ、「驚速95」のすべてに投資することが理想だ。しかし、これだと全部で5万円程度の出費になりそうなので、予算の関係からそこまで投資できない人もいるだろう。そこで、先ほどのベンチマーク結果からスピードアップの比率を換算し、投資費用と効果の関係を比較してみた。限られた予算でどれが一番効果があるか考えてみよう。

HDD/RAM 驚速 高速化率(%) 投資費用 1%速くするための費用
600MB/16MB なし 100 \0 \0
あり 130 \10,000 \333
600MB/48MB なし 184 \15,000 \179
あり 282 \25,000 \137
2.1GB/16MB なし 156 \25,000 \446
あり 166 \35,000 \530
2.1GB/48MB なし 266 \40,000 \241
あり 360 \50,000 \192

   結果を見ればわかると思うが、もっとも効率的なパワーアップ方法はメモリの増設と「驚速95」の組み合わせだ。メモリだけでもかなりコストパフォーマンスはいいが、メモリが豊富な状態で「驚速95」を導入すると、途端にパフォーマンスがアップする。この組み合わせなら、費用もトータルで25,000円以内なので、ハードディスクだけを交換するより絶対お得だ。

 つまり、「驚速95」の能力を最大限に発揮するためには、メモリが豊富なことが前提になる。特にメモリの搭載量が32MB以下なら、すぐにでもメモリを増設することをオススメしたい。そのうえで、さらにパフォーマンスアップを望むのであれば、「驚速95」のようなアクセラレータソフトを導入すればいいだろう。


■「驚速95」は買いか?

 このように、「驚速95」は直接的にPCの性能を上げるソフトではなく、システムを効率的に動作させることでパフォーマンスを向上させるアクセラレータソフトだ。よって、極端にロースペックなPC以外ではそれなりの効果が期待できる。もしPCのスペックが低いなら、まず最低限のハードウェアパワーアップをしてから導入したいところだ。やれることはやったけど、さらにもう一歩パワーアップしたいというユーザには、面白いソフトだ。
 というわけで、「驚速95」は値段のわりには効果のあるユーティリティと言える。ハードディスクアクセラレータと言っても、アプリケーションの起動時間以外は体感できないが、1万円という値段を考えれば、買って損をするというものでもないだろう。

 よって、今回のターゲット「驚速95」の評価は3つ星とさせて頂く。実際に効果はあるので、面白そうだと思ったら買って試してみるのも悪くないだろう。

[Text by 清水理史]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp