今月のユーティリティ
|
製品名:驚速95 | 発売元:株式会社ソース 連絡先:03-3551-5900 標準価格:12,800円 実売価格: 8,450円(7月/LAOX The Computer館にて)
得点(満点:5つ星) | ★★★☆☆ |
ユーティリティでも、現在アクセラレータソフトが売れている。1万円程度でパワーアップできるということで、ソフトの売り上げランキングでは常に上位をマークしている。
そこで、今回の「一刀両断」で取り上げるのは、アクセラレータソフトの代名詞とも言える「驚速95」。果たして1万円でも幸せをつかめるのか、じっくりテストしてみた。
ショートカットが驚速ファイルに変更されている |
それでは、なぜ「驚速95」でこのような高速化ができるのだろうか。「驚速95」はインストールされると、タスクトレイに常駐しアプリケーションの監視を始める。この状態からアプリケーションを起動すると、「驚速95」はアプリケーションの起動プロセスを追跡し、独自にアプリケーションの実行を最適化する。そして、最適化の結果「*.EXE」形式の実行ファイルを作成し、これを「驚速化ファイル」と称している。「驚速化」されたプログラムでは、ショートカットなどが「驚速化ファイル」に置き換えられ、次回以降、最適化された状態で通常より高速に起動されるという。
では、この「驚速化」について、もう少し詳しく解説しよう。「驚速95」はアプリケーションの起動プロセスを監視するが、この監視の対象になるのは、「*.EXE」ファイルが呼び出す「*.DLL」ファイルや「*.DRV」ファイルなど。これら、プログラム内部から呼び出されるファイルの読み込みを効率化したものが「驚速化ファイル」の正体だ。
わかりやすく例を出すと、Microsoft Word97の場合、スタートメニューやショートカットアイコンには「WINWORD.EXE」が実行ファイルとして登録されている。このEXEファイルが起動されると、「WINWORD.EXE」は自分自身の実行に必要なモジュールである「WWINTL32.DLL」や「IMESHARE.DLL」などを、プログラムで指定された通りに読み込んでいく。通常、アプリケーションのプログラムでは、このような実行モジュールはファイル名のみで指定されることが多い。よって、「WINWORD.EXE」は、実行に必要な「WWINTL32.DLL」や「IMESHARE.DLL」などを、環境変数に指定されているパスなどからサーチして読み込んでくることになる。
一方、驚速が作成する「驚速化ファイル」では、最初の起動時に「WINWORD.EXE」が必要とする「WWINTL32.DLL」や「IMESHARE.DLL」などを解析済みなので、これらのファイルをフルパス指定で「驚速化ファイル」内に記述してある。よって、実行モジュールをサーチする手順を省き、アプリケーションの起動を高速化しているのだ。
今回はネタがパワーアップだけに、ソフトウェアだけでパワーアップする「驚速95」の実力が、ハードのパワーアップにどれだけ迫れるかが気になるところ。そこで、テストのベースPCとなる、Pentium 133MHz、RAM 16MB、HDD 600MB(IDE)に、メモリを追加したときと、ハードディスクを交換したときで、「驚速95」とどれくらいの差があるのかを調べてみた。
Word起動テスト(sec) | 10MBファイル転送テスト(sec) | |||||
HDD/RAM | 驚速 | 初回起動 (参考値) | 起動1回目 (リブート直後) | 2回目以降 (キャッシュヒット時) | 複数ファイル | 単一ファイル |
600MB/16MB | なし | 14.13 | 13.99 | 10.34 | 33.12 | 24.82 |
あり | 16.22 | 10.48 | 8.20 | 32.47 | 24.62 | |
600MB/48MB | なし | 10.98 | 11.16 | 2.09 | 32.21 | 24.78 |
あり | 12.45 | 6.15 | 2.47 | 29.55 | 21.71 | |
2.1GB/16MB | なし | 8.91 | 8.80 | 6.76 | 13.89 | 8.98 |
あり | 10.12 | 8.28 | 6.36 | 11.34 | 6.84 | |
2.1GB/48MB | なし | 6.92 | 7.06 | 2.09 | 12.92 | 8.30 |
あり | 8.36 | 4.46 | 2.30 | 11.30 | 5.96 |
では、ハードウェアのパワーアップと比較してみるとどうだろう。ノーマルの状態からそれぞれを比較すると、以下のようになる。
驚速95のみ 13.99→10.475 約3秒短縮 メモリ増設のみ 13.99→11.155 約3秒短縮 ハードディスク交換のみ 13.99→ 8.801 約5秒短縮 メモリ&ハードディスク 13.99→ 7.060 約7秒短縮 メモリの増設時は、キャッシュにヒットすれば2~3秒程度でも起動するので、ハードウェア増設の効果が大きいことがよくわかる。ハードディスクを交換すれば、全体的なパフォーマンスが上がるので、アプリケーションの起動も1回目から速くなる。しかも、両方増設すれば圧倒的な効果が得られる。
また、「驚速95」の効果はPCのスペックにも大きく依存する。特にメモリは増設するほど、「驚速95」の実力をアップさせる効果がある。ここでは、16MBから48MBに増設しているが、ノーマルハードディスクのときで11秒→6秒に、2.1GBのハードディスクと合わせて増設すれば、7秒→4秒まで短縮できる。さすがに、ノーマルで13秒近くかかっていたWordの起動が4秒まで短縮されると気持ちがいい。
もし、ここでテストに使ったような遅いPCを使っているならば、ハードディスク、メモリ、「驚速95」のすべてに投資することが理想だ。しかし、これだと全部で5万円程度の出費になりそうなので、予算の関係からそこまで投資できない人もいるだろう。そこで、先ほどのベンチマーク結果からスピードアップの比率を換算し、投資費用と効果の関係を比較してみた。限られた予算でどれが一番効果があるか考えてみよう。
HDD/RAM | 驚速 | 高速化率(%) | 投資費用 | 1%速くするための費用 |
---|---|---|---|---|
600MB/16MB | なし | 100 | \0 | \0 |
あり | 130 | \10,000 | \333 | |
600MB/48MB | なし | 184 | \15,000 | \179 |
あり | 282 | \25,000 | \137 | |
2.1GB/16MB | なし | 156 | \25,000 | \446 |
あり | 166 | \35,000 | \530 | |
2.1GB/48MB | なし | 266 | \40,000 | \241 |
あり | 360 | \50,000 | \192 |
つまり、「驚速95」の能力を最大限に発揮するためには、メモリが豊富なことが前提になる。特にメモリの搭載量が32MB以下なら、すぐにでもメモリを増設することをオススメしたい。そのうえで、さらにパフォーマンスアップを望むのであれば、「驚速95」のようなアクセラレータソフトを導入すればいいだろう。
よって、今回のターゲット「驚速95」の評価は3つ星とさせて頂く。実際に効果はあるので、面白そうだと思ったら買って試してみるのも悪くないだろう。
[Text by 清水理史]