4日間集中連載(全4回)

OCN接続してみました
~私はいかにしてNTTを愛するようになったか~

TEXT:塩田紳二


 筆者は、フリーで原稿などを書くことを生業としているが、インターネットが常時必要なこともあって、自宅にOCNエコノミーを引くことにした。これはその顛末である。


第4回:OCNのための環境設定とOCNの使い心地

●OCNのための環境設定

 OCNにはいくつかの運営形態がある。大きくは、インターネット側で名前(ホスト名)とIPアドレスの対応を調べるためのDNS(Domain Name System)を自分で運営するか、OCN側に任せるかの2つに分けられる。

 インターネット内では、IPアドレスを使って接続が行なわれるが、これは数字の羅列で、人間が憶えるのは難しい。このIPアドレスの代わりにwww.impress.co.jpなどという名前(ホスト名)を使うと便利だが、このためには、どこかでwww.impress.co.jpとIPアドレスの対応を憶えていなければならない。
 インターネットは広大で、すべてのホスト名とIPアドレスの対応を表にして管理することはできないため、このDNSという仕組みを使う。自分のところにDNSサーバーをおき、自分のネットワークのホスト名とIPアドレスの対応をインターネット側から検索できるようにしておくと、インターネット内のどこからでもこの対応を調べることが可能になるのである(これについての詳細は、専門書を参照されたい)。

 DNSサーバーを設置するには、それなりの設備(マシン)が必要である。というのは、これはいつでもインターネット側からアクセスできるようになっている必要があるからだ。しかし、自分でDNSサーバーを立てると独自のドメイン名(impress.co.jpというのがドメイン名)を持つことができるのである。これをOCN側に任せるとOCNのサブドメインを使った名前となる(たとえば○○.ocn.ne.jp)。どちらでもインターネットをアクセスする分には、変わらないが、やはり独自ドメイン名というのは魅力がある。

 また、DNSを自分で持つとIPアドレスの割り当てが16個になる。OCN側に任せた場合には8個しかもらえない。しかも、このアドレスは、マシンに割り振れないアドレスが2つ、ルーターで1つ必要になるので、8つのIPアドレスでは5つしかマシンに割り振ることができない。特別な機能(IP Masqueradeと呼ばれる機能)を持つルータを使うと、割り当てられた台数以上のマシンがインターネットにアクセスすることが可能になるが、インターネットで使われるプロトコルと両立しないことがある。

 うちは、現在、家庭内にLANを引いているし、できれば家中どこからでもWWWにアクセスする環境を作りたいので、ここはがんばってDNSサーバーを立てて、アドレスを16個もらうことにした。

 なお、自分でDNSサーバーを立てるとメールサーバーも自分で持つ必要がある。メールの配信にもこのDNSが絡んでいて、このDNSサーバーがメールを受け取るサーバーを教えるようになっているからだ。自分でメールサーバーを立てるのもちょっと大変(わかってしまえばそんなに難しくもないのだが、知る必要のあることが多く、普通の人向けではない)だが、メールサーバーを持つと自分でメーリングリストを主催できるなどのメリットもある。

 DNSサーバーやメールサーバーを動かすにはどうするのが一番簡単かつ安上がりか?
 それにはUNIX、しかもPCで動く、俗にPC UNIXと呼ばれるやつだ。うちは、すでにNetBSDと呼ばれるものが動いていたので、これでサーバーを動かすことにした。UNIXに造詣の深い方にはなんの不思議もないことなのだが、どうやって動かすかを解説しはじめるといくらページがあっても(いやディスク容量があってもか……)足りないので、ここでは解説しない。もう少し詳しく知りたいという方は、SuperASCII 1997年8~10月号に連載しているNetLifeという記事に書いたので、そちらの方を見ていただけるとありがたい(ただし、これとて雑誌記事なので、完全というわけではない)。

 なお、このサーバーは、1日24時間、1年365日、1世紀100年動かし続ける必要があるので、なるべくなら信頼性のあるハードウェアを選ぶほうがいいと思う。すくなくとも電源やファンなどちゃんとしたものを選ぶべき。少なくともPC UNIXでは、そんなにCPUパワーが必要ないので、古いマシンでもかまわない。

 筆者は、CompaqのDESKPRO(486SX-16MHz)を使ってサーバーを構築した。これでも速度的に問題になることはない。根拠はないが、フルスクラッチで高性能マシンを組むより、秋葉でたたき売りされているメーカー製のパソコンを使ったほうがいいのではないかと思う(単なる気休めかもしれないが……)。だいたい、匡体の中の放熱など部品の配置から空気の流れ込み具合をみて総合的に設計する必要があるのに、どんなボードが入るかわからない汎用の匡体では、通常状態ではよくとも、長時間の利用では問題がでる可能性がないとはいいきれない。夏の暑いときに1週間留守にして部屋を閉め切ったときにケース内が何度まで上昇するのか?
 なんて、ちょっと怖い。これで火事になったとき、フルスクラッチのマシンは、誰に製造物責任があるんだ?
 組み立てた俺はメーカー側だったのかッ。てなことになるかもしれない。

 必要な機材としては、

  1. ルーター(128kbpsの専用線モードに対応したもの)
  2. ローカルネットワーク用機材(ケーブルやイーサーネットカードなど)
  3. DNSサーバー
  4. メールサーバー
となる。なお、3.と4.は実際には1台のマシンでかまわない。

●OCNの使い心地

 まだ、2ヶ月ちょっとしか使っていないが、使い心地はそんなに悪くない。田舎なもので、NTT側のとりまとめルーター内にヘビーユーザーが少ないからと思われる。都内などでは、昼間かなり転送速度が落ちることがあるという話を聞くが、こちらではサーバー側の混雑以外で転送速度が落ちるようなことはない。これから先いつまでもこういう状態という保証はないが、メールやWebアクセスであれば、特に問題はないだろう。ただ、現在は、Webサーバーを立てて公開するようなことはしていないので、混雑が気にならないのかもしれない。Webサーバーを立てた人の話だと10人の同時ダウンロードで限界が見えるという。

 38,000円に見合うのかといわれると、評価対象がないので難しいのだが、少なくとも、常時接続という環境で、プロバイダと専用線を使った契約をするに比べると38,000円は十分安いし、パフォーマンスもそこそこあるという感じだ(少なくともテレホーダイ開始直後のBekkoameよりは速い)。質という面では、ダイアルアップIP接続より高いと思われる(プロバイダによるだろうが……)。

 なお、新電電系の日本テレコムやDDIがODNDIONという似たサービスを行なっている。これらはOCNのアクセス系(利用者宅から収容ビルまでの市内の電話線)を使うもので、対応地区は原則としてOCN対応地域となる(ただし、現時点ですべてのOCN対応地域をカバーしてはいない)。これらはOCNに比べると4,000円程安い。どちらもホームページ(http://www.dion.ne.jp/http://www.odn.ne.jp/)などを参照されたい。

[Text by 塩田紳二]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp