'99年のMPUとメモリの動向がMicroprocessor Forumでわかる
MPU業界の最新技術が一堂に会するイベント「Microprocessor Forum」。今年は10月13日からの開催だが、x86系PCプラットフォームにとってはかなり注目すべきイベントになりそうだ。少し前からカンファレンスの予定が「Microprocessor Forum 1997」にアップされているのだが、その内容がなかなかスゴイ。まず、目玉はIntel-Hewlett Packerdの次世代64ビットMPU技術「IA-64命令セットアーキテクチャ」の発表。さまざまな憶測を呼んできたこのポストRISC技術のベールがいよいよはがされる。もうひとつの目玉は、米Rambus社による次世代DRAM「Direct Rambus DRAM」の技術詳細の発表。これは、RambusがIntelの後押しを受けて開発している次世代高速DRAMで、IA-64プロセッサ時代のマシンのメインメモリの最有力候補のひとつと目されている。Intelは、将来のチップセットでこのDirect RDRAMをサポートすることを示唆している。つまり、この2つの技術の発表で、'99年のハイエンドマシンの基本技術が明らかになるというわけだ。ちなみに、「Phoenix To Develop Merced Firmware」(COMPUTER RESELLER NEWS,9/15)によると、米Phoenix Technologies社がすでにIA-64の最初のMPU「Merced」対応のBIOSの開発を表明したそうだ。
Microprocessor Forumでは、このほかx86系MPU関連ではIntelがPentium IIのデザインの拡張「Pentium II Design Enhancements」を明らかにするほか、米AMD社はK6を拡張した「The AMD-K6 Plus: An Enhanced K6 Microprocessor」を、米Cyrix社は新しいMPU「A New, High-Performance x86 Microprocessor」をそれぞれ発表する。Intelの発表内容はサーバー&ワークステーション向けPentium II用の「スロット2」に対応した拡張の可能性がある。一方、AMDは以前からK6を0.25ミクロンに移行させる際に1次キャッシュを大幅に拡大するとか2次キャッシュまで集積する、あるいは実行ユニットを拡張するといった可能性を示唆してきた。このあたりの技術のいずれかの可能性が高い。オンチップで256KBの2次キャッシュを持ちそれを専用の内部バスで接続すれば、2次キャッシュをカートリッジに載せて専用バスで接続したPentium IIに対抗できるというわけだ。また、CyrixはM3に当たる次世代MPUの開発を行っていることを明らかにしている。この会社は開発サイクルが18ヶ月と豪語していたので、このペースで次世代MPUの技術を発表したとしても不思議はない。Cyrixは3Dグラフィックス機能を組み込んだMediaGXらしいMPUに関しても発表する。これに関しては、先日来日したCyrixの開発担当上級副社長、ケビン・マクドナー氏が「3DのレンダリングエンジンやDVD再生機能を入れる」と語っていた。
このほか、IBMは64ビット版PowerPC、米Sun Microsystems社はmicroJavaと次世代SPARC、米Hewlett Packerd社はPA-8500、米Motorola社は組み込み用MPUコアを発表するという。かつてIBM/Motorolaは64ビット版のPowerPC 620をとりあえず出荷見送りにしてしまったわけだが、IBMはRS/6000用のMPUを開発しており、このラインの可能性は高い。Motorolaの製品は、「Motorola sets CPU core for low-cost, low-power applications」(InfoWorld Electric,9/9)などを見ると無線通信機器や車載など低消費電力が要求される用途向けの「MCore」らしい。なにはともあれ、10月13日からの週はMPU情報に注目。
技術発表の場と市場では激しくつばぜり合いを繰り広げるMPUメーカー各社だが、次世代製造技術の開発では手を結ぶつもりらしい。先週、IntelとMotorola、AMDというライバル同士が、政府設立の研究機関に資金を提供、共同開発を行うことを発表した。「Chip makers, U.S. aim to shrink microprocessors」(USA TODAY,9/11)によると、これは0.1ミクロンプロセスの製造技術の確立を目的としたもので、2011年までに10億トランジスタを経済的なチップ面積に集積することが可能になるとか。今のPentium IIが750万トランジスタなのだから、これは途方もない。
Microsoft関連ニュースで最大のトピックは、今週頭にアナウンスされたWindows 98の出荷が遅れるという話題。ついこの間、自信を持って第1四半期に出荷できると発表していたばかりなのに……。「Windows 98 delayed」(NEWS.COM,9/15)など多くが報じているのは、Windows 3.1からのアップグレードを可能にするためという理由。Microsoftは、当初、最初に出すWindows 98ではWindows 95からのアップグレードオンリーにして、Windows 3.1からのアップグレードが可能なバージョンを3~6ヶ月遅れで出すつもりだったという。しかし、もっとクリティカルな問題がいろいろ出てきたのではという憶測が出てくるのは避けられないだろう。
Microsoftは来週サンディエゴで開催するソフト開発者向けカンファレンス「Professional Developers Conference (PDC)」でWindows NT 5.0のβ版を発表する予定だが、それに先立ちWindows NT 5.0のプレリリース版を限られたパートナー企業に配布したという。だが、「Windows NT 5.0 Beta To Arrive Sans Hydra」(COMPUTER RESELLER NEWS,9/9)によると、これには、マルチユーザー機能HydraやMicrosoft Management Console、Active Directoryなどキーの機能が欠けていたそうだ。はたしてPDCベータの完成度は?
IBMが製品化を見送るなど揺れているNetPCだが、それでも一部のメーカーはいよいよ出荷を開始するらしい。「Compaq to unveil Net PCs」(NEWS.COM,9/11)によると、Compaq Computerは静かにNetPCを投入し始めたという。また、8月出荷を表明していたHewlett Packerdも、10月に出す見込みだとか。CompaqのDeskpro 4000NはMMX Pentium 166MHzに、1.6GB HDD、32MB メモリでWindows NT 4.0を搭載するという。価格は1,000ドル以下で、ディストリビュータにすでに出荷している。このように、一応出始めたわけだが、この記事に登場するアナリストのコメントによると、それほどメーカーが熱を入れている様子はなく、企業ユーザーの心も捉えていないという。これは、PCメーカー各社がすでにNetPCと同等の管理機能とソフト群を通常のデスクトップPCやノートPCにも入れ始めているためだ。こうなると、NetPCというのは、PCが管理コスト削減を目指しているということの象徴なのかも知れない。しかし、NC (Network Computer)をけん制してPCメーカーをつなぎ止めるのがNetPCの目的だとしたら、それでも十分役を果たしたことになる?
MicrosoftとケーブルTV業界が激しく対立しているという。「Microsoft Raises Stakes In Set-Top Box Battle」(The Wall Street Journal,9/16、http://www.wsj.com/から検索、有料サイト)によると、Microsoftが双方向デジタルCATVネットワークのためのセットトップボックス(STB、テレビに接続する機器)の標準化をもちかけているのだそうだ。MicrosoftがケーブルTV会社最大手のひとつ米Comcast社に投資したり、米WebTV Networks社を買収したのはそのための布石だという話は以前からあったが、すでにかなり具体的な話を持ちかけているらしい。ビジネスモデルとして、PC向けのソフトのダウンロードやPCのデータのバックアップ、さらに映画ファイルを夜のうちにダウンロードしてそれを利用者が好きな時に再生できるサービスなどを示しているのだそうだ。
しかし、「Companies Work to Head Off Microsoft's Cable-TV Plans」(The Wall Street Journal,9/11、http://www.wsj.com/から検索、有料サイト)によると、ケーブル業界のいくつかの企業は、同様にインターネット接続などが可能な次世代STBを開発している米WorldGate Communications社を支持しているという。STB大手のScientific-AtlantaやNextLevel SystemsがWorldGateに投資して、Microsoftと角を突き合わせるつもりらしい。
ジョブズCEO(暫定)誕生。またまたお騒がせ米Apple Computer社だが、「Steve Jobs named interim CEO of Apple」(InfoWorld,9/16)によると先週に決まっていたらしい。まだ各ニュースサイトとも速報を出すのが精一杯で、詳細なバックグラウンドはわからない。しかし、このInfoWorldにしろ「Jobs named interim Apple CEO」(NEWS.COM,9/16)、「Few Are Surprised as Apple Names Jobs Its Interim Chief」(The Wall Street Journal,9/16、http://www.wsj.com/から検索、有料サイト)にしろ、みんなニュースのアップが朝の6時(西海岸)になっている。もちろん、事前のリーク情報をもとに待ちかまえていたに違いないが、それにしてもこの業界は日米どちらも働きものだ。(編集部注:PC Watchの記事はこちら)。
さて、Appleでは、スティーブ・ジョブズ氏が実権を掌握して以降、互換機路線の変更などあわただしい動きが目立つが、今度は、Apple Computerは分社化するはずだったNewton部門を社内に止めておくことを決定した。「It's official: Apple keeps Newton」(NEWS.COM,9/9)によると、これはAppleのNC (Network Computer)に注力するという路線変更の結果だという。そうなると、いちばん喜ぶのはOracleのラリー・エリソン会長兼CEOかな。
('97/9/16)
[Reported by 後藤 弘茂]