後藤弘茂のWeekly海外ニュース
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Intelは'99年に2つの新世代MPUをリリース
Microsoft、またも独占禁止法の調査を受ける


●Intelはノート用Pentium IIのサンプルを出荷か?

 先週は、Intel関連ニュースが比較的多かった。「Raft of desktops on the way」(InfoWorld,8/22)など、新チップセット440LX関連のニュースと、「IBM And Gateway 2000 To Bolster Notebooks」(InformationWeek,8/18)などノートパソコン向け200/233MHz MMX Pentium(Tillamook)関連のニュースが目立ったが、なかには「Notebook makers wrestle with hot, bulky CPU」(Electronic Engineering Times,8/25)のように、ノートパソコン向けPentium IIの記事も登場。それによると、Intelは9月の早い時期に0.25ミクロン版Pentium II「Deschutes(コード名)」(現在のPentium IIは0.35ミクロン版)の、ノートパソコン版サンプルを出荷するという。これは、Mobile Module(Intelのノート向けCPUモジュール)と、それよりもさらに薄いミニカートリッジの2パッケージが用意されるとか。量産は来年前半で、動作周波数は233MHz、266MHz、300MHzらしい。ただし、熱設計はやはりかなりハードルが高いようだ。サブノートではちょっと無理か?


●Slot 2は'98年後半に登場?

 また、同じく次世代Pentium II(Deschutes)でデスクトップ版の記事も、相変わらず続報が流れている。「Servers to lag behind desktops in getting latest Intel processors」(InfoWorld,8/22)によると、Intelは来年の3月か4月にPentium II 333MHz版を投入するという。これは、現在のPentium II用スロットであるSlot 1ベースだが、'98年後半にはSlot 2も登場。「Intel done with non-MMX Pentiums」(Electronic Engineering Times,8/25)によると、Slot 2用Pentium IIではMPUコアが高速化するだけでなく、2次キャッシュメモリがMPUコアと同速度になるらしい。ちなみに、Intelは来年出すチップセットでは、システムバスのクロックで現在の66MHzに加えて高速な100MHzもサポートするが、SLOT 2では100MHzだけのサポートになるそうだ。しかし、Slot 2をサーバーとワークステーション用として差別化するらしいから、Slot 2用MPUは当面はかなり高いのでは?


●Intelは'99年に2つの新世代MPUをリリース

 Intelは、この0.25版Pentium II以降もさらに製品を用意しているのだが、そのあたりの詳細を知りたければ「Intel's Two-Track Strategy Rerouted」(Microprocessor Report,8/4)がいちばん。これは、先々週うっかり紹介し忘れてしまったのだが、'99年までのIntelのMPU戦略をかなり突っ込んで分析している強力な記事。なんと言ってもMPU業界では権威あるニュースレターなので、なかなか濃厚な内容だ。簡単に紹介すると、IntelにはMPU設計チームがサンタクララとオレゴンの2チームがあり、2年サイクルでMPUを登場させるペースでオーバーラップして開発をしていたという。ところが、サンタクララチームが97年の予定で開発していたP7(Pentium II後継)は米Hewlett Packerd社の次世代VLIW型MPU開発計画と融合してMercedプロジェクトになった。その結果、スケジュールは最終的に0.18ミクロンの製造技術が手に入る'99年までずれ込んだという。一方、オレゴンチームはその間もポストPentium IIのIA-32 MPU「Willamette(コード名)」を'99年デビューの予定で開発、その結果、'99年にはこの2つのMPUがデビューすることになるそうだ。ただ、同誌の予測では、Mercedの当初の価格は1,500~2,000ドルで、非常に高い(メインストリームPC用MPUは100~400ドル程度)。それに対してWillametteは800ドル程度で、明確に棲み分けるらしい。Intelは、Willametteの前にもKatmaiというMMX2を搭載したPentium IIを計画しており、Mercedを前にしても、当面はIA-32系の発展は続くらしい。


●SunはJava端末簡単キットを発表?

 今週は、Java関連でもいくつか新発表がありそうだ。「Is Java Enterprise-Ready?」(TechWire,8/24)によると、今週ニューヨークで開催されるJava Internet Business Expo (JIBE)で、Sun Microsystemsは「JavaEngine 1リファレンスプラットフォーム」を発表するという。これは、企業向けThin-clientシステム(Network Computerとほぼ同義)を簡単に開発できるOEMメーカー向けのキットだそうだ。マザーボードかデザインキット、JavaOS、テクニカルトレーニング、アプリケーションリファレンス、サーバー技術など、必要なハードウェアとソフトウェアをすべてセットにしたものらしい。「Sun platform lights fire under tepid NC」(Electronic Engineering Times,8/25)によると、CPUには100MHz版MicroSPARC-IIepを採用するそうだ。Sunも本格的に自社規格のThin-client陣営づくりに乗り出すか? また、「Java takes another step toward maturity」(InfoWorld,8/18)では、最近買収した情報家電メーカー米Diba社をベースにした、コンシューマ市場向け製品のロードマップも発表すると予測している。


●Sunが分散OS開発へ

 このほか、「Sun's JavaSpaces is foundation for future distributed systems」(InfoWorld,8/19)では、Sunが画期的な分散コンピューティングのモデル「Java Spaces(コード名)」を開発していると報じている。これは、本格的な分散OSをJavaベースで実現するための技術で、ネットワーク上のコンピューティングパワーをユーザーが意識することなく利用できるような技術になるようだ。SunのJava構想は、ますますスケールアップしつつある。


●Microsoft、またも独占禁止法違反の疑いで調査を受ける

 Microsoftがらみで先週話題をさらったのは、同社が動画配信ソフトに関して、司法省からまたまた独占禁止法の疑いで調査を受けているというニュース。あれだけハデに動けば当然と言えるかも知れない。今回は、大事にはならないというのが一般的な見方だが、「Policing Redmond's rise」(NEWS.COM,8/22)では、Microsoftの独占禁止法がらみの最近の動向をまとめて、かなり長い記事をポストしている。今回の調査の背景には、メディアにまでMicrosoftの支配が及ぶことを恐れた勢力が圧力をかけたことがあると分析。Microsoftにとって今やいちばんの敵は司法省だということを改めて浮き彫りにしたようだ。


●米国ディジタルTVでは折衷案が浮上

 そのMicrosoftのメデャア分野進出のもうひとつの重要戦略であるディジタルTVに関しても進展があったようだ。来年から始まる米国地上波ディジタルTV放送では、Microsoftなどコンピュータ業界がコンピュータ寄りの画像フォーマットと、映像と同時にデータもユーザーにマルチキャストで送信する方式を提案していた。それに対して、放送業界側の多くは、高解像度でインタレースのHDTV方式を支持、両者の間でにらみ合いが続いていた。しかし、「Broadcasters consider multicasting as DTV standard」(Computer Retail Week,8/19)によると、コンピュータ業界が提案している、マルチキャスティングが支持を集め始めたという。先々週開催された「Digital TV Summit」では、放送業者はプライムタイムはHDTVで、それ以外の時間はチャンネル分割で、マルチキャストもやるという2段構えの方式を口にし始めたらしい。もともとコンピュータ業界寄りだったABCだけでなく、CBSも同調の気配を見せ始めたという。さて、どうなることやら。

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('97/8/25)

[Reported by 後藤 弘茂]


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