ジョブズ氏=Apple CEO報道でニュースサイトは大混乱
米Apple Computer社にスティーブ・ジョブズCEOは誕生するのか?
先週から今週頭にかけての話題を独占したのは、このAppleゴシップだった。今回の火付け役は、San Francisco Chronicle紙。サンフランシスコ地区の2大新聞のひとつで、隣のサンノゼ市のSan Jose Mercury News紙とは、シリコンバレーネタのスクープを競い合うライバルだ。同紙は、「Apple Ready to Name Steve Jobs Chairman」(San Francisco Chronicle,7/30)で、Appleに近い情報筋から得た情報として、同社がジョブズ氏をCEOに据えることをMacworldで発表しようと計画中と報道。各サイトがこれを引用するカタチで、ジョブズCEOニュースが世界を駆けめぐった。しかし、この記事を読んでもらえばわかるのだが、ニュースソースはそれほど確実ではなく、また土壇場でどんでん返しがある可能性も指摘されている。また、ジョブズ氏がCEOになる可能性があるという報道は、これまでも何回かMac関係のニュースサイトではされていた。しかし、今回は、新聞がセンセーショナルに大きく扱ったということがあり、おもなニュースサイトのほとんどが、取り上げる話題になったようだ。
●ジョブズ氏がCEO就任を自ら否定するEメールが流出
こうして業界中がジョブズCEOの可能性に注目する中で、San Francisco Chronicleから第2報が出た。「Steve Jobs Snubs Apple's Offers to Run Troubled Firm」(San Francisco Chronicle,7/31)では、ジョブズ氏がPixar社(ジョブズ氏がCEOを務める)の社員にあてたEメールを入手したと報道。そのEメールによると、ジョブズ氏はAppleからCEOにならないかと誘いは受けたが断ったという。「3週間ほど前、Appleの役員会は、私にアメリオ氏がいなくなることを告げ、CEOにならないかと聞いた。だが、私は拒否した」のだそうだ。その後も、Appleの役員会は会長職に誘ったが、ジョブズ氏はまた拒否したという。話はまた一転したわけだ。もちろん、メールの真偽は確実ではないし、ジョブズ氏がApple役員会の要請を断ったとしても、それは戦略という可能性もある。つまり、困難必至のApple CEO職をすんなり受け入れるよりも、無理に頼まれて、渋々受け入れたというカタチにした方がラクだからだ。だから、この報道だけでは火は収まらなかった。
●エリソン氏がApple役員になりジョブス氏を後援?
しかし、それで終わればまだよかった。第3の衝撃はフランスから来た。フランスの大手経済新聞La Tribuneが、米Oracle社のラリー・エリソン会長兼CEOの発言として、同氏がApple Computerの役員会に加わり、ジョブズがエグゼクティブチームのヘッドになると伝えたのだ。業界は、これでまた大騒ぎになった。エリソン氏と言えば、今年初めに、Appleを買収しようとした“前科”持ち。米国の主要コンピュータ系ニュースサイトは、いずれもこのニュースを報道。たとえば、「Ellison Says He's JoiningApple's Board」(San Francisco Chronicle,8/2)では、月曜にはAppleの新しいマネージメントチームが発表されるという、エリソン氏の発言を引用している。ただし、月曜に、エリソン氏がApple役員に加わるという発表は行われなかった。また、Appleのスポークスマンはこうした動きを否定しているという。
というわけで、何を信じてよいのやら大騒ぎのApple。いずれにせよ、今週のMacworldでは一連のウワサに一応の決着がつく。米国で水曜、日本で木曜には、ジョブズ氏がほんとうにCEOになるのかどうか、真偽のほどがはっきりするだろう。
しかし、この手の話題でここまで盛り上がるところが、やはりApple!?
●Windows 98はβ3がある?
Appleニュースの陰に隠れてしまったが、先週はMicrosoftがWindows 98のβ2の配布を開始したのも重要ニュースだった。以前、このコーナーでMicrosoftが7月23日にβ2を配布するという情報を伝えたが、実際にはそれより1週間程度の遅れで登場したことになる。β1から1ヶ月足らず。あきれるほどのスピードだ。しかし、β1とβ2の間に、MicrosoftはWindows 98の発売を来年第1四半期にすると公式に発表してしまった。となると、いくらなんでも今β2というのは、製品までに間がありすぎるのでは? と思っていたら、どうやらWindows 98ではβテストを1回増やしてβ3が出るらしい。
「Microsoft Delivers Windows 98 Beta 2」(COMPUTER RESELLER NEWS,8/1)によると、β3は今年の後半のどこかの時点でリリースされると、MicrosoftのWindowsProduct GroupのプロダクトマネージャのPhil Holden氏が語ったという。β3では、Windows 98の売り物のひとつであるBroadcast Architecture(放送ネットワークを通じて配信するデータを受信する機能)のサポートが拡大され、衛星デジタルTVの受信カードなどもサポートされるという。ちなみに、β1では一部機能しか搭載されていなかったこのBroadcast Architectureは、β2ではTVチューナーカード「All-In-Wonder」がサポートされるなど、まともに動くようになったと報じられている。
●Windows 98の発売日は?
さて、こうなるとWindows 98のより正確な発売日がどうなるのかが気になってくる。「Win 98 seeds hope, fear of Q4 quandary」(Computer Retail Week,8/1)によると、業界ではWindows 98のリテール版をOEMより先に出すのではというウワサもあったそうだ。しかし、Holden氏はそれを否定、リテール版をOEM版出荷ぼほぼ同じくらいの時に市場に出せるようにすると言ったという。また、1月の発売はビジネス的に適していないので、それを配慮してWindows 98のリリーススケジュールを立てると言っている。ということは、2~3月に絞られたということか? となると、日本では4月あたりという予想が成り立つ。また、年末までには、もっと大規模なWindows 98のプレビューも行われるらしい。
また、「Microsoft Puts A Kink In Windows 98 Rollout Plans」(COMPUTER RESELLER NEWS,8/1)でもHolden氏の発言として、Windows 98の最初のバージョンはWindows 95からの移行しかサポートしないことを伝えている。Windows 3.xからアップグレードできるようになるのは第2四半期以降に出荷されるWindows 98から。そのため、第2四半期にはダウンロードできるWindows 98用サービスパックを出すそうだ。
●MicrosoftはサーチエンジンYukonを開発中
珍しいことに、Time Magazineがコンピュータネタでスクープを飛ばした。「SEARCH AND YE SHALL FIND, THE MICROSOFT WAY」(Time Magazine,8/11)によると、Microsoftは自社独自のサーチエンジンを過去6ヶ月以上開発しているという。これは、コード名「Yukon」というプロジェクトで、10月にβ版を発表、1月には正式公開の予定という。Microsoftは、これまでサーチエンジンを買収するとか技術を購入するというウワサもあったが、このスクープが本当なら、自社開発もしているわけだ。このニュースは、「Microsoft: Yukon ho?」(CNET NEWS.COM,8/4)などが補足する後追い記事を提供している。
●NetscapeがCommunicatorからNavigatorを分離か
米Netscape Communications社がCommunicatorと分離したNavigatorだけのバージョンを提供する可能性があるというニュースも流れてきた。「Netscape May Slim Down Communicator」(PC World,8/4)によると、NetscapeはNavigatorだけを分離して欲しいという圧力を、周囲の提携企業からこれまでかなり受けてきたらしい。そのため、Navigatorを分離する方向で検討もしているという。この背景には、先週のLotus寝返り事件がある。Lotusが、Lotus NotesにバンドルするWebブラウザとしてInternetExplorerを選ぶと発表したのだ。「Lotus to bundle Microsoft Internet Explorer4.0 with Notes」(InfoWorld,7/29)によると、過去数ヶ月間、LotusはNetscapeがNavigatorをCommunicatorから分離すれば、Notesへのバンドルを続けると主張し続けてきたらしい。Notesと競合するグループウェア機能が入ったCommunicatorはいらないというわけだ。NotesのIEバンドルは、COMオブジェクト化してIEと融合させるという話だけに、Netscapeも見過ごすわけには行かない?
●IntelのMercedをノックアウトできる特許がオークションに
さて、先週はIntel関連ニュースは静かなものだった。440LXとかTillamookとか、すでにこのコーナーで報じたニュースばかり。そんななかで1点だけ目を引いたのが「Auction of Chip Patents May Ignite War for Edge Over Intel」(The Wall StreetJournal ,8/1、 http://www.wsj.com/ から検索、有料)だった。この記事によると、PowerPC互換MPU戦略で失敗した米Exponential Technology社が、持っているMPU関連の特許をオークションに出すという。そして、Intelがその特許を買う可能性があるという。というのは、IntelがMercedのために出願したある特許と類似の特許を、Exponentialがその半年前に出願しているのだそうだ。そのため、もし、Exponentialの特許をライバル企業が握れば、Mercedに対して特許抗争をしかけることができるかも知れないというわけだ。これが本当かどうかはわからないが、この記事によると、IntelのスポークスマンはExponentialの特許を買い取ることを検討していることを認めたそうだ。ここでDECがカネに糸目をつけずにこの特許を買い取るというのが、やはり盛り上がる展開かな。
('97/8/5)
[Reported by 後藤 弘茂]