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ようやくMemphisベータ版登場の見込み


Memphisベータ版がついに登場

 今週か、遅くとも来週には、いよいよ次期Windows 95「Memphis」のベータ版が登場する。これは、先週、Microsoftの地元ワシントン州で開催されたカンファレンス「Internet Explorer 4.0 reviewers' workshop」で明らかにされた情報だという。「Memphis to hit beta testing next week」(CNET,6/26)によると、フルスケールのベータテストに入り、“close to feature complete”版を、約1万のテストサイトに配布するという。ちなみに、Memphisは、これまで開発者向けのプリベータ版しか提供されておらず、大規模なベータテストはまだ行われていなかった。このベータ版が正式なお披露目となるわけだ。今のところ、ベータ版公開の正確な日時はまだわかっていない。ほとんどのニュースサイトは来週と報じているが、「Beta Version of Memphis Is Expected Next Month(The Wall Street Journal,6/27)のように、2~3週間以内で7月に入ってからと報道しているサイトもある。まあ、何か突発的なトラブルがない限り、遅くとも、米国の独立記念日7月4日の週末が終わるころには公開されるのでは。


●Memphis正式版の出荷時期はいまだ不明

 それから、Memphis正式版の出荷時期や正式名称も、今回はまだ明確にされなかったようだ。Microsoftの公式なスケジュールは今年後半だが、それを額面通りに受け取っている業界関係者はいない。「Microsoft To Begin Beta Testing Memphis」(InformationWeek,6/27)は、Windows 98になると信じられていると報じている。また、「Will business go to Memphis?」(CNET,6/27)のように、MemphisとWindows NT 5.0からは、両OSの分担が変わることを伝えるニュースもある。Microsoftは、Windows 95を企業向けにも押した時とは打って変わり、ビジネス向けにはMemphisよりWindows NT 5.0をプッシュしており、Windows 95-Memphisラインは企業ユースからは消えて行くと見ている。実際、最近のMicrosoft幹部の発言は、MemphisのスーパーセットとなるWindows NT 5.0についてばかりだから、これは妥当な分析だろう。でも、出てくる前に「消えゆく」と言われると、ちょっと立つ瀬がないような。


●IE 4.0ベータの正式版は9月15日?

 さて、Memphisのベータ版が出てくるなら、Internet Explorer(IE) 4.0はどうなったという話に当然なる。こちらも、先週はベータテストの情報があふれた。

 「Microsoft `marketing season' starts up with Internet upgrade」(Seattle Times,6/25)によると、MicrosoftはIE 4.0のベータ版を2週間以内に出し、正式版はベータ版から90日以内に出すと言ったそうだ。とすると、IE4.0は、IE3.0からちょうど1年ぐらい、夏の終わりか秋の初めに出ることになりそうだ。

 「IE 4.0: See You In September?」(COMPUTER RESELLER NEWS,6/27)は、関係者の証言をもとに、もう少し詳細に詰めている。それによると、Microsoftは6月の初めまでは、IE4.0のデビューイベントを、とりあえず8月に予定していたという。しかし、最近になってこの予定を変更、パートナー企業には9月15日から、コンシューマフォーカスのマーケティングキャンペーンを開始すると伝え始めたらしい。パートナー企業の証言によると、Microsoftがファイナルベータを配布するのが8月の半ばか遅くになるらしい。


●まだまだオマケが増えるIE 4.0

 また、IE 4.0には現在伝えられているさまざまな機能の他に、まだ機能が付加されるという。「Microsoft Conjures Java-Based Software Distribution」(PC World,6/26)によると、これはJavaソフトウェアを自動配布する技術「Package Management」で、MicrosoftのJava Virtual Machine (JVM)の新フィーチャとして、IE4.0の32ビットWindows版ベータなどと一緒に登場するという。

 Javaについてちょっと知っている人ならわかる通り、これは米Marimba社(Java開発者達の一部が米Sun Microsystems社から分かれて設立した会社)のJavaベースのプッシュ技術「Castanet」や、それをベースにした米Netscape Communications社のプッシュ技術「Netcaster」に対抗するものだ。どうも、MicrosoftはとことんJava/Netscape陣営に対抗しないと気が済まないらしい。

 また、「Microsoft's IE 4.0 Offers VAR Options」(COMPUTER RESELLER NEWS,6/25)によると、このほかにVARやISVがIE 4.0をカスタマイズできる「The Internet Explorer Administration Kit (IEAK)」も、IE 4.0の正式版と同時に登場するという。


●CDA違憲判決でインターネット規制派は敗北

 というわけで、先週はMemphisとIE 4.0のベータ版情報が飛び交ったが、ニュースがそれだけしかなかったというわけではない。むしろ、流れたニュースの量で言えば圧倒的だったのはCDA(Communications Decency Act、通信品位法)関連だ。すでに新聞などでもガンガン報道されているので、今さらとは思うが、簡単に解説しておこう。

 CDAは、昨年改正された米国の電気通信法の一部で、ネットワーク上でのわいせつ画像などの流布を禁じるものだ。しかし、当初から過剰規制となりインターネット上の言論が圧殺される恐れや、規制の実効性の問題が指摘され、言論の自由を保証する米国憲法に対する合憲性が裁判で争われていた。そして、先週、ついに米連邦最高裁判所で判決が下され、その結果、CDAは違憲とされたというわけだ。大半のニュースサイトが、この問題に関してはコーナーなどを設けて大きく扱っている。わりと読みやすかったのは、「Decency ruling 'historic day' for Internet」(USA TODAY,6/27)などで、USA TODAYには裁判所の決定のドキュメント「Text of the Supreme Court decision」(USA TODAY,6/26)も掲載されている。


●CDAの続編がある?

 さて、これでインターネットの自由が守られて一件落着と言いたいところだが、話はそれほど簡単ではない。CDAは破れたけれど、インターネット規制派が、もう少し範囲を狭くした新しい規制法案などを提出する可能性が高いと見る「CDA Foes Celebrate, Prepare For Round II」(TechWire ,6/26)「CDA Ruling: Will Other Net Censorship Laws Follow?」(PC World,6/27)のような観測記事が、あちこちのニュースサイトに上がっている。また、ホワイトハウスも声明を発表「Statement on Communications Decency Act Ruling」(Press Release,6/26)、インターネット上で子供たちを守ることは必要で、別な手段を検討することを明らかにした。まだまだインターネット自由派は気を抜くわけにはいかないようだ。


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('97/6/30)

[Reported by 後藤 弘茂]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp