AMUAMUの「アキバの楽屋から」第4回

秋葉原

月1回連載:ショップの側から見た秋葉原事情

AMUAMUの「アキバの楽屋から」 第4回

ショップ側からみた
最近のショップブランドパソコン事情

TEXT:AMUAMU


 「アキバの楽屋から」は、秋葉原のパソコンショップ店員である「AMUAMU」が、ショップの側から見た秋葉原事情を、月1回お送りするコーナーです。
 第4回はメール版では5月16日版に掲載、Web版ではメール版掲載から約1週間後に公開します。(編集部)


■ショップブランドパソコンとは

 DOS/Vパーツを扱うパソコンショップの多くはショップブランドパソコン、またはオリジナルブランドパソコンと言われるPC/AT互換機(DOS/Vパソコン)を扱っています。多くのショップが独自のブランド名を付けて販売しているのが一つの特徴で、「富士通=FMV」のように「会社名=ブランド名」というイメージ戦略を採っています。昔は「ショップブランドは安い」というイメージがあったのですが、最近のメーカー品の低価格化を見ると決して安いだけではなくなっています。さらにメーカー品とショップブランドとの違いもなくなってきており、ショップ側も安いだけではなくなんらかの特徴を付けて販売しているところも多いです。

 ショップブランドパソコンは汎用品の多いDOS/Vパーツを利用し、ショップ側で組み立てて完成品としてユーザーに提供します。組み立てて完成品となったパソコンはメーカー品のパソコンと変わりない、一つの立派なパソコンとなります。最近は非常に少なくなりましたが「ショップブランドパソコン=メーカー品より劣ったパソコン」というイメージが初心者ユーザーを中心にいまだに残っているようですが、そんな事は「絶対ありません」。逆に勝っている部分の方が多いのではないかと思いますが、これは先に触れたとおり、メーカー品とショップブランドの差が無くなってきたためです。

 さらにショップブランドパソコンを作っているパソコンショップの中にはメーカーへの脱却をはかっている所もあります。すでにメーカーと呼べる域に入っているショップもあります。アメリカのメーカーの中にはショップからメーカーになった所もあります。日本でも有名なGateway2000社がその筆頭で、Gateway2000は最初はそれほど有名ではなく、ショップブランドを作っている小さいメーカーだったのですが、今では世界展開をはかる有名メーカーの一つです。

 つまり、ショップブランドとメーカー品を完全に区別するのは難しいのです。ですが、ここではパソコンのシェアを握っている大手メーカー(富士通・IBM等)のパソコンと一般的なショップブランドパソコンを比較して利点・欠点をみたいと思います。


■ショップ側から見たメーカー品と比べての利点と欠点

 パソコンショップにとってショップブランドを扱う利点のひとつは「高い利益が得られる」ということです。ショップブランドも価格競争がありますが、メーカー品のパソコンほど激しくありません。
これは、パソコンショップで組み立てて保証を付けるため、その手間賃の見方がショップによってかなり違うことや、ショップブランドの多くは構成を非常に自由に変更できて、ユーザーの目的にあった好みのマシンを作ることが出来るため、全く同じスペックのマシンが違うショップで売られる事が少ないからです。定価も特にないですし、平均売価というものも存在しません。ショップによっては別な付加価値を付けて価格を上げている場合もあります。価格競争が少ない分、高い利益を取ることが可能です。
メーカーパソコンの価格競争が激しい現在、その少ない販売利益だけではショップの人間は毎日のご飯を食べていけないかもしれません(ちょっと大袈裟?(^^;)。

 ふたつめの利点は「ユーザーの定着」があります。ショップブランドの良さは汎用品を使っているため、増設や、マシンのアップグレードが用意できるということです。あるショップのパソコンを買った人なら、増設用のパーツなども同じショップで買おうとする人が多いのではないかと思います。

また、ユーザーは常にショップブランドのパソコンを見るたびに買ったパソコンショップを思い出すわけですから、どんなショップより印象が強くて、何かを買おうとする時に、まずそのショップを思い浮かべます。つまり「ショップブランドが売れる=将来パーツも売れる」という図式ができるわけです。パーツなどの購入では価格も重要ですが、それと同じぐらいに思い入れの強いショップで買おうという潜在的な意識ができあがると思います。

パーツのメーカーについても、個人個人で思い入れのあるメーカーがあることも多いでしょう。例えば、HDDはWestern Digitalが一番良いと思ったりするわけです。そんな時に自由に組み替えのきくショップブランドは有利です。これは2台目のパソコンの購入や、ユーザーの会社でパソコンを購入する時、かなり影響するところだと思 います。

 反面、欠点としてはやはりサポートを自社でやらなければいけないという一番の問題を抱えています。不良品が出てきたり相性問題が出てきて動かないなど、多種多様の問題が出てきます。台数を売ればそれだけサポートの人員も増やさなくてはいけません。これは非常に大変で、ショップにとっても軽視できない部分です。自社で全てをやらなければいけないショップブランドでは自社で全てを解決する必要が出てきます。また新しいパーツが出てきたときに、それがちゃんと動くか、日本語環境で問題が出ないか、など下調べをしなければいけないことがたくさんあります。メーカー品でしたらメーカーのサポートにお願いすれば非常に簡単に済みますし、決まったスペックでしか売りませんから問題が発生することは少ないという利点があるわけです。

 また、ショップブランドは汎用品を組み立てる分、個性という物に多少欠けている部分があります。ショップ毎に個性を出そうといろいろな工夫をしています。長い期間の保証や永久アップグレードの保証とかオンサイトサポートなど多種多様です。いろいろな個性を作るという手間のかかる事もする必要があります。広告費をかけてユーザーにショップブランドの名前も知ってもらわなくてはなりません。大きなメーカーがやっているようなことを、ショップでやるのは非常に大変です。ですが利点と欠点を比較したときにやはり、利点の方が大きいと思ってショップブランドを販売しているところが多いのだと思います。


■ユーザーにとってのショップブランド

 ショップ側がユーザーに提供するサービスのうち、一番良いのは何よりも「最新のパーツを使える」ということだと思います。ショップブランドの多くは構成を自由に変更できたり、超最新のパーツ等がすぐ組み込むことが出来るという事です。新製品のビデオカードが出れば、それを組み込んだマシンを組めますし、SCSIの構成を選ぶことも出来ます。また予算に合ったマシンを組むことも出来ます。メーカー品の決まった枠内で選ぶ必要はありません。このような自由度の高さが何よりもショップブランドの魅力だと思います。そしてすでに述べましたが、汎用品を使っていることによるアップグレードの容易さ&将来性です。パソコンの世界の移り変わりは非常に速く、最上位機種も、半年後には普通か、それ以下のパソコンに成り下がることも少なくありません。最新スペックに追いつくためにも、アップグレードの容易さは何よりも重要だと思います。この利点は汎用品を使っているメーカー品にも言えることですが、一般にメーカーは、そうした保証外となるアップグレードの相談にあまり乗ってくれない傾向があるようです。パーツを売っているパソコンショップなら、当然こうした相談に乗ってくれますし、店員も売るための努力ですから真意になってくれます。パソコンショップの店員も、自分のショップで売っているショップブランドなら良く分かっていますし、間違いも少ないでしょう。

 よく初心者や企業の人からショップブランドは敬遠されがちですが、これまでに述べたように、パソコンの質だけで見たら、メーカーが同じ部品を採用しているぐらいですから心配はありません。もっとも初心者の場合は、たくさんのソフトが最初から付いているメーカー品も良いかもしれません。しかし、メーカーの最大公約数的なスペックに満足できなかったり、一般にバンドルされているソフトの不要なユーザーなら、ショップブランドも良いのではないかと思います。

また企業の場合、添付ソフトはワープロなどの限られたソフトだけが必要な場合が多いため、Office製品1本を別に購入するだけで良いこともあるでしょう。そんな場合は、ショップブランドでも良いかもしれません。こうした企業導入の場合、ショップブランドで一番気になるのがサポートの質でしょう。

基本的に、売った後のサポートの質が後々のリピーターになるとショップでは考えています。ショップによっては下手なメーカーサポートより柔軟で高レベルな対応をしてくれるところもあると思います。大手メーカーのサポートがオペレーターをたくさん用意してマニュアルによるサポートをするのに比べて、ショップのサポートは少数精鋭型で、柔軟な応対が可能ですから良いところもあると思います。


■最近のスペックの傾向

 最近のショップブランドの傾向としはまず、「ハイエンド指向」ということが挙げられます。

メモリはEDO-DRAMの64MBがすでに標準です。メーカー品はまだ32MBのモデルが多いですが、Windows 95を快適に使うには64MBが必要だとユーザーも感じてきているのかもしれません。128MBを搭載する人や、SDRAMによって組む人も多くなってきました。

CPUは予想通り、MMX対応の、Pentium with MMX(P55C)の200MHzが一番人気です。4月に入って、K6もかなり聞かれますが、物が出てこないのでは何にもなりません(詳しくは後述)。また、Pentium Proは、Pentium IIの発表が近かったこともあり、人気はいまひとつです。

マザーボードは、ショップによってオススメ商品が違うので一概に言えませんが、おそらくASUSTeKのP/I-P55T2P4が一番人気だと思います。ただし、これも新しいTX97シリーズに人気が移りつつあります。また、最近の傾向として、ATX人気が高いことが挙げられます。ここにきて、やっとATXが定着したという感じです。このままATXが 標準として進んでいくでしょう。

HDDの容量はすでに2GBではなく、主流は2.5GBから3.2GBあたりです。どんどんハイスペック化しています。う~む、みんなお金持っているなぁ……。ショップブランドはハイエンド指向の人が多いのかな?

こうしてスペックをみていくと、ショップブランドユーザーには、やっぱり初心者は少ないのかもしれません。


■■4月のショップ動向■■

●K6空振り、Pentium II待ちか?

 ユーザーの期待を集めたK6の発表は、その期待を裏切ることもなく、更なるユーザーの支持を集めたのですが、4月は空振りと終わってしまいました。というのは、商品が全然無いのです。ユーザーは買う気たっぷりなのに、物が無いのではショップはどうすることも出来ません:-(

 さらにK6-233が早くても5月末か6月からの出荷開始に遅れたという話。何があったのか分かりませんが、出荷開始が遅れたということは、何らかのトラブルでも発生したのでしょう。う~む、残念の一言。ちゃんと物が出てくれば市場は今とは全然違う状況だったかもしれないと思う今日この頃です。
 それでもやっと、5月に入ってからK6の200MHzと166MHzが出回ってきたのですが、やっぱり数は少なめ。プレミア価格が付いてしまい、発表当時に予想されていたよりも、販売価格はずっと値上がりしてしまいました。海外の流通業者は儲けているのではないかと思います。
 K6との直接対決となるPentium with MMX(P55C)の233MHzの出荷も近いようですが、K6-233 とどちらが先に店先に並ぶのか?

 Pentium IIが5月7日に発表されて、市場はかなり動きが激しくなってきました。新しいマザーボードもたくさん出てくるだろうし、今一番CPUの世界がホットですね。

 そうそう、忘れちゃいけないCyrixのM2も出荷が間近? う~む、おもしろいぞこれは。
 次回はその後のCPUの状況を書きましょう。

●メモリの価格はじわじわ値下がり

 メモリの価格はじわじわ値下がりしてきました。この変化ではあまり面白味がありませんね。このまま非常にゆっくりと値下がりしていくだけのような気がします。と思ったら、これを校正していたときに急激な円高が起きました。輸入品のメモリ価格の変動に引っ張られて価格が大きく変動するかもしれません。メモリは先が全然読めない世界なのでどうなることやら。

 じわじわ値下がりしているだけなのに価格の競争は相変わらず。10円単位での争いになっている気がします。そんな中で隠れた価格競争になりつつあるのがSD-RAM。Intelの新チップセットの430TXが出てSD-RAM熱に一気が火がついたようで、とうとう品不足になりつつあります。価格の変動共々気になるところですね。

●4月の売り上げは予想通り低調、でも私は忙しかった(涙)

 予想通り消費税アップの影響もあり4月は低調。なんといっても秋葉原に来ている人たちの数が少ない気がしました。秋葉原駅の土曜日は大混雑するものなんですが、それほど混雑していなかったようですし、駅前駐車場に入るための車の列も非常に少なかったような気がします。どこのショップもちょっと暇そうでした。筆者は反対で先月の記事で「少しは休めるかな?」と書きましたけど、なんだかんだで非常に忙しくて、もうボロボロ。休みたいと思うのだが何とも……(単なる愚痴になりそうなので以下略。(^^;)

 しかしながら、4月末からのゴールデンウィークは結構な人手がありました。やはり4月の低調は一時的なもので、すぐ元の秋葉原に戻りそうです。この暇な時期を狙って店舗の改装などを行なっているお店もみかけます。5月は4月の反動や新製品ラッシュもあって、結構にぎわうのではないかと思います。このまま昇り調子で6・7月の 夏のボーナス商戦に突入しそうですね。低調だと逆に夏のボーナスでの反動が大きいのではないかと思います。楽しみです。

[Text by AMUAMU]

【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp