●MicrosoftがMemphisとWindows NT 5.0の詳細を明らかに
米Microsoft社がMemphisとWindows NT 5.0の詳細を明らかにしたらしい。Microsoftは5月5日からソフトウェア開発者向けのカンファレンス「Tech Ed '97」を開催、その第1報が各ニュースサイトにポストされ始めた。それによると、次期OSの詳細やCOM/DCOMをベースとした分散コンピューティング戦略などが1万5000人のエンジニアの前に提示されたという。「MS details Memphis, NT 5.0」(CNET,5/5)によると、MemphisとWindows NT 5.0 Workstationにはこれまで報じられてきたWebViewなどのほかに、TV放送の映像とWebデータをWebブラウザ上で統合して表示する「Enhanced PC」という機能が搭載されるという。また、VBScriptかJavaScriptでデスクトップアプリをコントロールできる「Windows Scripting Host」なども新フィーチャとして加わるそうだ。詳細は、おそらく水曜日以降にMicrosoftのサイトやニュースサイトに続々とアップされてくるだろう。Windowsの動向という意味では、このTech Edが明らかにマイルストーンなので注意して見ている必要がある。それにしても、次期OSはどんどん巨大化するようだ。
また、「Gates' Tech Ed keynote sets the stage for the future of COM」(InfoWorld,5/5)では、Microsoft会長兼CEOのビル・ゲイツ氏がCOM/DCOMで分散コンピューティングをリードするとキーノートスピーチで宣言したと伝えている。報道によると、米DEC社がDigital UnixとOpenVMSで、米Hewlett-Packar社はHP/UXで、COMをサポートする予定という。また、Message Queue Server (MSQ)などOS上の新しいサービスもアナウンスされたそうだ。キーノートスピーチ自体を聞いていないのでなんとも言えないが、本当にDCOMを正面に押し出したスピーチだったとしたら、DCOM対CORBAという構図がますます鮮明になったと言えるだろう。「DCOMで分散コンピューティングなんて」とバカにしていると、じわじわとそれがデファクトになって行くというのがMicrosoftのパターン。今度はどうなるか。
さて、今週のサプライズは、米Compaq Computer社が米DEC社を買収しようとしていたという暴露記事。「Compaq Considered Takeover Of Digital, but Talks Failed」(The Wall Street Journal,5/5,有料)によると、'95年と'96年の2回、CompaqはDECと買収交渉を持っていたという。'95年遅くには一時、90億ドルから100億ドルで買収するという総合的な合意に達したが、結局DECがそれを流してしまったという。このところ買収(する)話が多いCompaqだが、この話がほんとなら、どうやらそれは今に始まったことではないらしい。しかし、CompaqがDECを、というのが、コンピュータ業界の覇者の移り変わりを映していてなかなか感慨深い。
買収劇と言えば、あっけないほど唐突に終わってしまった米Oracle社のラリー・エリソン会長兼CEOによる米Apple Computer社買収(未遂)事件。各ニュースサイトの報道によると、エリソン氏は、いまのところ買収はやめるが、将来、この話を復活させるかも知れないと言ったという。記事としては「Ellison abruptly drops bid to take control of Apple」(Mercury News,4/30)が突っ込んでいて面白い。それによると、そもそも、最初からエリソンの戦略は普通ではなかったという。というのは、エリソン氏が企てたような敵対的買収を行う場合、典型的には買収しようとする側がひそかに株を集めるか、大口の株主とプライベートな交渉を行うかのどちらかで開始される。ところがエリソン氏の場合はその前にマスコミに公表してしまったわけだ。そのため、多くのオブザーバーは真剣に捉えていなかったという。
米国ラスベガスでは、5/6からいよいよ「NetWorld+Interop(N+I)」が始まる。ニュースサイトでも予想記事が目白押しだ。目玉のひとつは、IPマルチキャスティングテクノロジで、「Video Multicast Demo Slated For N+I」(COMPUTER RESELLER NEWS,5/2)によると、ビデオのマルチキャストなどのデモが行われるらしい。もうひとつの目玉はギガビットイーサネットで、「Interop will be coming-out party for high-powered switching」(InfoWorld,4/29)は、N+Iを訪れた人は、コーナーを曲がるたびにギガビットイーサネット関連のブースを見つけるだろうと報じている。米Cisco社、米3Com社、米Bay Networks社といった大物が参入していよいよ本格化する気配だ。そのほかには、I/Oプロセッサを使ってPCのI/Oを高速化する新規格I2O関連の展示も。「I20 Networking Vendors To Step Forward Next Week」(InformationWeek,5/1)。
N+Iも盛り上がりそうだが、今週最大のイベントはなんと言っても米Intel社のPentium II発表らしい。米国のニュースサイトは、同社が5/7に発表を行うという直前ニュースで持ちきり。「Intel plans "Webcast" from China to roll out Pentium II」(Electronic Engineering Times)によると、Intelはこの発表を中国の上海でも行うという。IntelのCOO、Craig Barrett氏がWebキャストで上海から発表を行うそうだ。なぜ中国?
また、Intelは、Pentium IIを発表したら「非常に速いペース」で生産すると宣言している。「Intel Plans Quick Production Of New Pentium II Processor」(The Wall Street Journal,5/1,有料)は、Intelの幹部Albert Yu上級副社長自身の言葉として伝えている。300MHz版を繰り上げ発表することに決定したり(と報道されている)と、Intelがヤル気マンマンなことは確かだ。
えっ、Pentium IIの発表がまだだったなんて知らなかったって? 秋葉原にあれだけ実物があふれていればそれも当然か。
もっともいいニュースだけではなく、なかには辛口の記事も。5月4日CNETが先行して取り上げ、5月5日に一斉に各サイトが取り上げ始めたのは「Pentium IIにはバグがあるのでは?」という疑問。火付け役はIntelウォッチャの間では有名なWebサイト「Intel Secrets」が掲載している「Pentium II Math Bug?」というレポートだ。「Details emerge on Pentium Pro bug」(CNET,5/4)を読むと、Intel側もこのレポートが報告している不具合が本当であることをすぐに認めたそうだ。この浮動小数点演算の不具合の重要性についてはいまのところはまだ明らかではないが、よくあるマイナーなバグである可能性が高い(MPUに小さなバグは珍しくない)というトーンで報じている。
しかし、バグの重要度と世間での受け止め方には大きな差がしばしば生じる。IntelはかつてPentiumの時に、浮動小数点演算ユニットの不具合で痛い目にあっている。あの時は、一般ユーザーにはほぼ影響がない不具合だった(この時の不具合は科学技術などのシミュレーションでは重大な問題だった)にも関わらず、初期の対応がまずかったためにIntelが予想もしなかった大問題に発展してしまった。前回で教訓を得たはずのIntelが、この問題をどうさばくのかが注目される。
また、Pentium IIには重要な付属品が欠けていると指摘する記事もある。「Pentium II lacking key accessories」(Electronic Buyer's News)が取り上げているのは、前にもこのコラムで紹介した、Pentium II対応の次世代チップセット「440LX」。Accelerated Graphics Port (AGP)を初めとした新フィーチャを備えたこのチップセットは、記事によると第3四半期まで登場しないという。また、IntelがAGP対応のグラフィックスチップAuburnも年末まで登場しないと報じている。
最後に、Intel MPUの最新の価格と次の四半期の価格予想はこちら。「Analyst pinpoints MMX price cuts」(CNET,5/2)。
さて、ライバルMPUメーカーの動向だが、どうも最近Cyrixから毎週新しいニュースが小出しにリークされる傾向にある。今週の週刊CyrixはMediaGXノートとMMX版MediaGXの話題。「Cyrix to boost MediaGX performance」(InfoWorld,5/2)によると、Samsungから2500ドルのMediaGXノートが登場するという。MediaGXは実装面積や熱設計などの面で有利になる可能性が高いのでサブノート向けだと言われているが、ようやくそれが証明されるわけだ。また、同社は年末までに200MHzでMMXを搭載したMediaGXを投入するという。
('97/5/6)
[Reported by 後藤 弘茂]