同社の説明によると、LSIメモリーなど普通のCMOSと同じ工程で作成できるので大量生産が可能(そのため、同画素数のCCDより低価格化が可能で、高画素数化も比較的容易という)で、消費電力もCCDの1/10(!)という。さらに、従来のCMOSのように感度不足にならないよう、各素子にアンプを追加し、感度の低さやノイズ発生などを大幅に改善させているというので、これはかなり期待できそう。また、CMOSの場合、CCDのように全画素、または走査線ごとに画像を読み出すことなく、部分的にアクセスできることで、高画素化した際に負担のかかる液晶モニター表示用画像についても効率よく読み出すことができるのだという。
もっとも、この130万画素イメージセンサーは量産する予定は現在のところなく、汎用性の高い33万画素クラスのCMOSセンサーが量産されるようだ。
デジタルカメラの場合、単純に画素数が多ければいいというものではなく、色再現や明暗の再現域の広さといった様々な評価要素がある。このCMOSセンサーの場合、高画素化は比較的容易だが、色再現や階調性という面ではCCDのほうが勝っている。会場では25万画素CCDと130万画素CMOSという、完全な異種比較の実写例を掲載していたため、その実力を知ることができなかったのが残念だ。また、会場では試作機の130万画素CMOS採用のスタジオ用デジタルカメラでの実写デモも行われていたようだが、取材中にその結果を見ることができなかった。
しかし、CMOSの場合、周辺回路までをワンチップ化できるという大きなメリットがあるため、画質が実用レベルに向上すれば、ワンチップ・デジタルカメラも夢ではない。もしそれが量産されて低価格になれば、驚くほど安価なデジタルカメラを実現する可能性もある。こうした可能性から、これからの新世代CMOSの動きには目が離せない状況になりそうだ。
また、実際に作動するショーモデルとして、小型ノートパソコンをベースにCCDを液晶横に埋め込んだデジタルカメラ付きLibrettoも出品されていた。CCDの取り付け位置の関係で、液晶画面の正面にあるものしか撮影できないため、基本的にはテレビ会議用という感じで汎用性は乏しいが、デジタルカメラの様々な可能性の一端を感じさせるモデルに仕上がっていた。
いまや乱立状態となっているデジタルカメラ用メモリーカードだが、事実上、今後は「スマートメディア対コンパクトフラッシュ」となる感じだ。現時点の容量から見れば、コンパクトフラッシュの方が断然有利。一方、スマートメディアのほうは、ようやく4MBの出荷が始まったところで、夏から秋にかけて8MBが登場する(しかし実際には、既に報じている通り、8MBは動作電圧が3.3V仕様となっており、現在多くの機器が採用している5V仕様のスロットでは利用できない)。そして今回の技術展では32MBの計画を表明した。
スマートメディアにとって、「Flash Path」の登場でデスクトップ機との親和性がかなり高まったことは大きな意味を持つ。もっとも、読み書きの速度は遅く、35万画素デジタルカメラのJPEGデータでも若干待たされるレベルではあるが(もちろん、シリアル経由に比べると、数倍高速だが…)。もちろん、別途PCカードドライブを用意するよりも遥かに手軽に扱うことができる点で、コンパクトフラッシュ陣営は大きく水をあけられた感もある。大容量化スケジュールや仕様公開の不手際(少なくともユーザーからはそう見える)を一掃するだけのインパクトがあるアダプターだけに、これからのデジタルカメラ選びを大きく左右する可能性もある、注目アイテムといえそうだ。
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http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/article/970304/toshiba.htm
('97/3/5)
[Reporterd by 山田 久美夫]