後藤弘茂のWeekly海外ニュース


1,000ドルパソコンの時代が来る!?

元Compaqの幹部らが999ドルのパソコンを発売

 Monorailという米国のパソコンメーカーをご存じだろうか。知らなくても不思議はない。なぜなら、まだ最初のパソコンを発売したかしないかという(11月末発売予定)、まったくの新興メーカーだからだ。なのに、このメーカーはすでに米国のパソコン業界で大きな話題を呼んでいる。それは、1,000ドル以下で、ディスプレイまで備えた低価格マルチメディアパソコンを発表したからだ。

 同社のMonorail PCは、CPUにPentium 75MHz相当のAMD-K5-PR75を搭載、16MBメモリに1GBハードディスク、さらにサウンド機能と33.6Kbpsモデム、4倍速CD-ROMドライブ、ステレオスピーカを備えたフルスペックのマルチメディアパソコンだ。しかも、本体に10.4インチDSTNカラー液晶ディスプレイをはめ込む省スペース設計となっている。先々週のCOMDEX Fallの会場でも、AMDのブースなどに展示され、人だかりを集めていた。

 じつは、これまでも米国ではサブ1,000ドルパソコンと呼ばれる1,000ドル以下のパソコンが発売されたことは何回かあった。たとえば、昨年はAcer America社や米EverexSystems社などが発売している。しかし、これまでの1,000ドルパソコンは、キャンペーン商品だったり、販売店が限られていたりと、例外的な位置づけだった。また、デザイン的にも見栄えがしなかった。

 ところが、MonorailPCは省スペース一体型で、それほどあか抜けてはいないもののいちおう家電調のデザイン。販売店もCompUSAなど。しかも、設立者は元CompaqComputerの幹部と、揃っている。

 この元Compaqというところは、かなり意味深だ。というのは、じつはCompaqがサブ1,000ドルパソコンを開発しているというウワサは、かなり前から何度となく流れていたからだ。NCが今のように大きく盛り上がる前は、Compaqがトップランナーとなり、低価格パソコンの波が来るという記事が、海外の業界誌などではよく見かけられた。Monorailの設立者たちが、Compaq内でこのプロジェクトに関わっていたとしても不思議はない。

 さて、今はパソコンとはアーキテクチャの異なるNCで1,000ドル以下のコンピューティングデバイスを実現しようという話で盛り上がっているが、サブ1,000ドルパソコンという流れもMonorailでわかる通り、まだ健在だ。それどころが、今後、サブ1,000ドルパソコンが次々に登場する可能性がある。

 そのポイントのひとつは、MicrosoftIntelが10月末に打ち出した企業向け低価格パソコン構想「NetPC」だ。Microsoftの発表によると、NetPCの目的は管理コストの軽減であり、NetPC本体は従来のパソコンと比べて劇的に安くなるものではないとしている。しかし、NCに対抗せざるをえないPCメーカーにとってみれば、従来のパソコンよりは1ランク安い価格設定にしなければならないだろう。そのため、NetPCではアラウンド1,000ドルが主軸になると思われる。

 そして、それを助けるのが半導体メーカーや半導体デザインメーカーだ。彼らの一部は、すでにNetPC向けとうたった低価格の統合チップを出し始めた。システムロジックのチップセットとグラフィックスチップを融合させたUMA構成用のチップなどだ。今後、NetPC用ということで、これまであまり成功しなかったこうしたチップが浮上する可能性がある。また、MPUに周辺チップの機能を取り込んでしまったCyrixのGx86のような方向もありうる。

 半導体では、ロジック系チップの製造プロセスが0.35ミクロンとなり、集積度が飛躍的に高まった。そうなると、集積できる膨大なトランジスタを、機能向上に割り当てるか、他の機能の融合に使うかという二者択一が出てくる。これまでなら機能向上一辺倒だったわけだが、NetPCという流れで周辺チップの統合化という方向がのびる可能性が出てきたわけだ。また、半導体だけでなく、ほかのパーツでも機能より低コストという流れが出てくる可能性がある。

 そして、こうしたNetPC向けデバイスは、そっくりそのままホームパソコンにも使える。そうすると、今よりも簡単にサブ1,000ドルホームパソコンを作れるようになるわけだ。たとえば、MonorailはAMDのローエンドのK5(Intelへの対抗上価格を下げている)を使うことで最大の価格圧迫要因であるMPUの価格を切りつめ、DSTN(TFTへの対抗から価格を下げている)を採用することでモニタでも低コスト化を図っている。しかし、他のパーツのコストがさらに安くなれば、もっと簡単に1,000ドル以下を達成できる。

 ほんとうにNetPCが早期に立ち上がるかどうかはさておき、パソコン業界の潮流が低コスト機にも向かい始めたことで、フル機能でサブ1,000ドルを実現したパソコンが登場する可能性が高まってきた。

□参考記事
【11/11】Zero Administration Windowsでパソコンの管理コストを削減(後藤弘茂のWeekly海外ニュース)

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('96/12/2)

[Reported by 後藤 弘茂]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp