後藤弘茂のWeekly海外ニュース


Microsoftの存在が際だったCOMDEX

COMDEX取材特別リポート

Microsoft Netscape
【Microsoft】 【Netscape】

●取材を終えて その1

 ともかく、Microsoftの存在が大きいCOMDEXだった。Windows CEの発表会を直前にもってきた効果は大きく、Windows CE関連の展示はどこも人だかり。実際に、HPC (ハンドヘルドPC、Windows CEを搭載した携帯PC)や関連機器・ソフトを発表したメーカーは膨大なCOMDEX出展企業の中ではわずかなパーセンテージでしかなかったにも関わらず、その存在は非常に大きく感じられた。会場でもさっそくHPCを使って取材している米国メディアスタッフがそこここでみかけた。

 さらに、ビル・ゲイツ氏は初日の夜を「Office 97」の事実上の発表で飾り、翌朝は練りに練ったCOMDEXキーノートスピーチで盛り上げた。このキーノートが、なかなか見事。新しい要素はそれほどないのだが、演出が巧妙なので、つい説得させられてしまうというシロモノだった。とくに際だっていたのは、反Microsoft勢力を攻めるというオフェンシブなトーンは表だってはほとんどなく(実際は、ちょっとはあるのだが)、ユーモアをたっぷり交えながらポジティブに、しかもある程度具体的に未来を語った点だ。

 変なたとえだが、このあたりは今回の大統領選挙を思い出させる。ドール陣営が後半クリントン大統領の人格攻撃に転じて攻め立てたのに対し、それを余裕で受け流したクリントンがかえって大統領としての貫禄を浮き立たせたという、あの流れだ。つまり、COMDEX前に米Oracle社と米Sun Microsystems社は、ドール陣営よろしくMicrosoftのPC市場支配を激しく責め、自分たちがそれに代わるものを提供すると主張したわけだ。ところが、ゲイツ氏は、クリントン大統領同様に、その攻撃をさらっとかわしてしまった。そのため、反Microsoftのネガティブキャンペーンが、浮いてしまった。そんなイメージだ。これが選挙だったら、ゲイツ氏が当選していたのではないだろうか。

 このあたりの巧みさは、これまでのMicrosoftを思い返すと、同社の固有の資質とはあまり思えない。やり手の選挙コンサルタントでも雇ったのではと疑いたくなるくらいだが、どうだろう。また、ゲイツ氏のキーノートスピーチの巧妙さは、どことなく地味に見えてしまった前日の米Intel社のアンディ・グローブ会長のキーノートスピーチとも対照的だった。

 さて、悲惨なのは、3日目の米Netscape Communications社のジム・バークスデール社長兼CEOのスピーチだ。満員だったWintelのスピーチとは大違いで、会場の後ろの席はガラガラだったそうだ。"そうだ"というのは、じつは私もすっぽかしてしまったからで、COMDEXの現場にいるとNetscapeの存在感が本当に希薄に感じられてくるから不思議なものだ。あれだけNetscapeが「Constellation」を発表すると事前リークしたにも関わらずこれなのだから、COMDEXがWintelショーだという点を差し引いても、盛り上がりの差は大きい。

 というわけで、キーノートやイベントの様子や盛り上がりを見る限り、今回はMicrosoftが点数を取ったように見える。ただし、Microsoftも宿題をたくさん残しているわけで、「Zero-Administration Windows」など大物が本当に約束通りのスケジュールで達成できるのかどうかがこれからの問題になるだろう。

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('96/11/25)

[Reported by 後藤 弘茂]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp