●128KbpsでMP対応もいいけど……ここのところ、猛烈に忙しく、物欲をかますチャンスがない。お目当てのモノ(最初から買うつもりだったモノ)の手配はさっさと済ませたけど、秋葉原をBrowseしてヘンなものを探すヒマがない。おまけに、COMDEXにも行けなかった。今年は56kbpsモデムやUSB関連製品、WindowsCEマシンなど、見たいものがたくさんあったのに……。てなわけで、今回紹介するのはシリアルカードだ。ちょっとPCをバラしたことのある人ならご存じのように、現在、ほとんどのパソコンのシリアルポートには16550互換チップが使われている。この16550が何なのか……なんてことは説明しないけど、要するにWindows 95環境ではDTE速度(パソコン~モデムやTA間の速度)が最大115.2Kbpsまでしか設定できない。なぜ「……しか」と書いてしまうかと言えば、今や115.2Kbpsごときでは足りないからだ。 これまた読者のみなさんもご存じのように、最近のISDNターミナルアダプタはBチャンネルを2本束ねて128Kbpsで通信をするMP(Multilink Protocol)が流行っている。今年の秋に発売された製品はすべてと言ってもいいほど、MPをサポートしている。ところが、128Kbps接続でフルにパフォーマンスを引き出すには、DTE速度を230.4Kbpsに設定しなければならない。つまり、現在のパソコンのシリアルポートは力不足というわけだ。「128KbpsはMPに対応!!」「28.8Kbpsモデムの5~6倍の高速通信が可能」なんてコピーで売り出してくれるのはいいんだけど、どこのメーカーもシリアルポートの話は置き去りにしている。 まあ、将来的にはUSBやIEEE 1394といった高速なシリアルデバイスを主流になるんだろうけど、とにかくモデムやTAが搭載しないことには使うことができない。第一、本体以上に価格競争が激しいと言われるモデムやTAにおいて、価格を引き上げてまで新しいデバイスを搭載してくるかどうか……。
●機種別に見る高速シリアルカードさて、グチはこれくらいにして(笑)、本題に入ろう。まず、機種別に見る高速シリアルカードだけど、国内市場に限って言えば、NECのPC-9800シリーズ用が圧倒的に多い。ざっと見たところでも、メルコ、アイ・オー・データ機器、メディアインテリジェント、マイクロ総合研究所、緑電子 などが販売しており、価格も2ポート版で1万円程度と手頃なレベル(ホントはもっと安い方がいいけど)。旧機種の対応だけでなく、プライベートBBS(最近は少なくなりましたねぇ)などでの利用も多いことが原因かもしれない。 これに対し、シェアの割に種類が少ないのがIBM PC/AT互換機用だ。16550互換チップを搭載した拡張I/Oカードはあるが、230.4Kbps以上の速度に対応したシリアルカードということになると、数えるほどしかない。詳しいことはあとで紹介しよう。 これがMacintoshになると、さらに少ない。ボクの友人は、アメリカのCreative Solution製のHUSTLERというNuBus用シリアルカードを使っているが、これ以外となるとMEGAWOLF製のFenrisという製品があるくらいだ。ちなみに、FenrisはMacintoshのPCIバス用シリアルカードだが、8~64ポート版まで販売されているそうだ。今年3月に2ポート版の発売もアナウンスされたが、まだ製品は出荷されていないようだ。もっともMacintoshの場合、GeoPortアダプターもあるし、Serial Boosterのようなツールもあるので、高速シリアルカードが不要という見方もできる。
●921.6Kbpsなら安心?では、IBM PC/AT互換機用の高速シリアルカードにどんなものがあるのだろうか。まず、通信機器メーカーがカタログやサポート情報などで紹介するのがアメリカのHayes Microcomputer製のESP Communication Accelerator(通称:ESPカード)だ。
ESPカードは1ポート版と2ポート版が存在し、国内では緑電子が両方の製品を販売している。しかし、すでにアメリカでは2ポート版の製造が中止になっているため、国内在庫がなくなると、2ポート版は入手できなくなるかもしれない。 スペック的には申し分のないESPカードだが、実際に使うとなると少々面倒だ。というのも、製品が設計された当時はまだPlug&Play機能がなかったため、IRQやI/Oポートアドレスをユーザー自身がソフトウェアで設定しなければならないからだ。Windows95用ドライバのインストールも希にうまくいかないことがあり、初心者にはあまりお勧めできないというのが本音だ。 ボクは1ポート版と2ポート版のESPカードをアメリカから輸入し、3年以上愛用していた。Windows3.1時代は随分と活躍し、Windows95環境もドライバが配布されたため、まだまだ長く付き合えそうだなと考えていた。しかし、ひょんなことから我が家ではESPカードがお蔵入りになってしまった。 今年のはじめ、TAで64Kbps同期通信のテストをしていたとき、妙なことに気づいた。パソコン本体のシリアルポートに接続したときと、ESPカードに接続したときで、64Kbps同期通信の速度が明らかに違うのだ。Windows95用ドライバの関係なのか、ESPカードに接続したときの方が10%ほど遅くなってしまうのだ。実用上は何ら問題ないが、MP接続時の転送テストには使えないため、シリアルカード探しを始めた。
●シリアルカードを集めるぞまず、最初に目についたのがプラネットコミュニケーションズのFast Serial460という製品だ。「あなたのPCは本当に128Kbpsで使えますか?」というキャッチコピーがなかなかイカしてる。
ただ、2ポート版のためか、価格が1万2800円と高め(しかもほとんどのショップで値引きがない!!)の上、IRQが3,4,5,9しか選べないのが難点。Plug&Playにも対応していないため、初心者にはちょっと面倒かな? とりあえず試用した範囲では、パフォーマンスは可もなく不可もなくといったところ。
次に見つけたのがちょっとあやしいノーブランドの台湾製シリアルカードだ。秋葉原の某ショップで6800円で購入した。
製品名通り、Plug&Playは機能し、IRQ(IRQは3,4,5,6,7,9,10,11,12,15に対応)やI/Oポートアドレスは自動的に割り当てられる。ただ、230.4Kbps以上の通信速度は16550に与えるクロック周波数を2倍、4倍、12倍にすることで実現しており、その変更はMS-DOS上でしかできない。まあ、2倍モードに設定しておけば、モデムのプロパティで指定する速度を115.2Kbpsにするだけで、勝手に230.4Kbpsになるのだが、その他の通信速度への対応が面倒なので、あっさり利用をあきらめた。
この他にも、数枚のシリアルカードを購入し、最近ではシリアルカード探しがちょっとした趣味になりつつある(笑)。本来なら、ちゃんとした形でシリアルカードをレビューしたいところだが、アイ・オー・データ機器からも新製品が登場し、新たに入手したカードもいくつかあるため、今回は見送ることにする。もし、希望があれば、非同期通信レポートで紹介しよう。でも、その前に大仕事を片付けないと……。 [Text by 法林岳之]
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