【リレー連載 物欲道修行記】

リレー連載 物欲道修行記

第14講 業界通情報講座 講師:一ヶ谷兼乃

 今回の一ヶ谷講師のレクチャーは、キャッシュの効用についてである。キャッシュが効くとどのくらいパフォーマンスアップするかを知るために、安くなったとはいえ、32MBのSIMMを2本買い足すなど、講師の研究熱心にはいつもながら頭が下がる。

 こういう一ヶ谷講師のことだから、Pentium Proがまた安く市場に出回るタイミング次第で、マルチプロセッサ化やCHARP化などへ走られるのではないかと編集部では期待しているのである。(編集部)


メモリを生かすも殺すもキャッシュしだい

 久々にメインマシンのマザーボードを交換した。予定ではPentiumプロセッサのマシンは消えて、すべてPentium Proマシンに変わっているハズだったのだが、思いがけないPentium Proプロセッサの高騰。256KBキャッシュのPentium Pro 200MHzが7万円を切っていた時期が嘘のようである。高騰しているのは200MHz版だけという気もしないではないが、だんだん落ち着いてきているようだ。いまは価格の落ち着き先を見守るのが賢い選択だと判断して、いまあるPentiumマシンに手を入れることにした。
 いままでのシステムに特に不満があったわけでもないのだが、とりあえず手を入れたくなったので、マザーボードを交換することを決めた。少々高価な模型を組み立てる感覚とあまり変わりない(笑)。

 ちなみに、以前このコーナーで紹介したPentium ProのシステムはWindows NT 4.0β版を入れ、Macintoshとのファイルのやり取りや、CD-R作成に活用している。メインマシンとして使用しない一番の理由は、OSがβ版であるということだ。12月10日に正式版が発売になったとしても、β版からスムーズに環境移行ができることがハッキリしないと、β版をメインマシンにすることはできないのだ。


マザーボードの交換は楽しいな

 今回、購入で選んだマザーボードはASUSTek COMPUTERP/I-P55T2P4(rev.3)だ。選択理由はいくつかある。ちなみにrev.3はこれまでの同モデルと比べてもいくつもの細かな点が変更されており、別モノだと考えたほうがいいだろう。

ASUSTek P/I-P55T2P4P/I-P55T2P4
 そのASUSTekのP/I-P55T2P4(rev.3)を選んだ理由だが、まずはCPUのベースクロックを75MHzや83.3MHzに設定できることが挙げられる。これはIntelのCPUを使用する場合には50/60/66MHzといったベースクロックなのだが、75MHzはCyrixのCPUに対応するために設けられた設定で、Cyrix 6x86-P200+GPなどで利用する。83.3MHzはマニュアルには掲載されてない設定で、現在このベースクロックに正式に対応したCPUはないが、P5などが結果的に動作した場合には、高い処理能力を得ることができる。

 例えば、CPU内部は166MHzで動作していても、ベースクロックが66MHzでCPU内部ではその2.5倍で動作している場合と、ベースクロックが83.3MHzで内部で2倍で動作している場合では、CPU外部とのデータのやり取りの速度が後者のほうが1.26倍程度速いため、パソコンの計算能力も後者のほうが高いということになるのだ。ただ、83.3MHzについてはそういう設定が可能であるという話で、周辺の回路や拡張カード類がそのベースクロック設定で正常に動作するかどうかは別問題だ。動かない可能性もかなりあることは御理解いただきたい。

 私にとってパソコンは娯楽的な要素も多く含んでいるので、仕様のとおり使おうとは考えていない。そんなわけで、いま使っている166MHz版のPentiumをベースクロック75MHz、CPUの内部クロックは2.5倍の187.5MHzで動かしてみようと考えた。もちろん、リスクも大きいが、動けばラッキーだし、動かなかったら、最悪自分のシステムが壊れるだけで他人に迷惑をかけることもないわけで、個人的な興味の範囲でクロックアップを楽しもうというコトだ。

 次に、P/I-P55T2P4では「Triton2」 が最新版になっていることだ。Triotn2 チップセットはこれまでに数々のバグフィックスを行ってきており、最新版は82439HX(システムコントローラ)のほうはStep.A3でチップの表面に「SU115」の印字があるので、これで判別できる。82371SB(PCI I/O IDE Xcelerator)はStep.B0でチップ表面に「SU093」の印字がある。

 その他に、ASUSは頻繁にBIOSのアップデートを行っているとか、USBコネクタ接続の端子が設けられたことも若干ながらマザーボードを選択する場合に考慮した。

 マザーボードの交換作業はこれまでに何度も経験しているし、別段問題なく終了した。期待どおり166MHz版のCPUは187.5MHzで順調に動いている。パソコンシステム全体でも、特におかしな動きもない。


気になる空ソケット

 ここで気になったことがあった。このマザーボード上に1つICの空ソケットがあるのだ。マニュアルを読むと、64MBを超えるメモリを搭載し、そのメモリにキャッシュを効かすためのTAG SRAMを挿すためのものらしい。キャッシュが効かなけれは、メモリからのデータの読み書きが極端に遅くなるわけで、メモリを搭載すればシステムが快適になるという基本的な考え方が否定されることになる。

 この時点でシステムには16MBのEDO SIMM×4=64MBが搭載されていた。これを32MBのEDO SIMMを2枚、16MBのEDO SIMMを2枚の構成にして、96MB搭載することで、実際に処理能力が落ちるかどうかを確かめてみることにした。また、その場合にTAG SRAMアップグレードして、どうなるかも実験してみた。

 処理速度を調べるために、円周率を計算する「Super_PI」というプログラムをwindows95上で動かすことにした。円周率を少数点以下104万桁はじきだす計算を19回繰り返して、それにかかった時間を比べてみるのだ。もちろん、短いほうが処理速度が高いということになる。ここで結果をみると、見事にメモリを増設した場合のほうが悪くなってしまった。
 次にTAG SRAMを装着し、マザーボード上にあるジャンパピンをTAG SRAMを追加した場合の設定に変更し、再度Super_PIを動作させ時間を計測する。

 ASUSのTAG SRAMアップグレードなる製品を見つけることができなかったので(実際にそういう製品があるのかどうか知らないのだが)、マニュアルに記述のあった32Kbit×8構成で15ns以下のアクセス速度のSRAMを探すことにした。秋葉原の若松通商で「UM61256FK-16」と型番のSRAM(\600)があったので、これを1個調達した。一般的な2次キャッシュ用のメモリだ。
 ほぼ、キャッシュメモリが効いている64MB搭載時の状態と同じレベルまで、処理速度が戻っている。600円の投資で、ここまで処理速度が向上すると思うと、意味もなく嬉しくなってしまう。

【Super_PI 104万桁計算結果】
64MB 12分51秒
96MB 15分01秒
96MB+TAG SRAM 12分49秒

 当然のことながら、メモリはキャッシュが効いてはじめて、効率よく働くものだとことが確認できた。
 自分のパソコンに大量のメモリを載せている読者の方は、ちゃんと正常なパフォーマンスがでているかどうかチェックしてみてはどうだろうか。

注:「Super_PI」はniftyserveのFEXTなどで手に入れることができる

[Text by 一ヶ谷兼乃]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp