【リレー連載 物欲道修行記】


リレー連載 物欲道修行記

第7講  テレコム道 家元:法林岳之

 本講の講師、法林岳之氏は、通信関連ではこの人、というライター氏である。最近はパソコン専門誌・専門書のみならず、活躍の場をビジネス書まで広げてテレコム道の布教につとめている。通信についてたいへん詳しいのはもちろんだが、周辺機器にも詳しく、CPU載せ換え・クロックアップなどの濃いネタから、マウスやジョイスティックなどの小物までをカバーしている。
 そんな氏でも、ときには失敗もある、今回はそのお話から。
 なお、法林氏のホームページは、編集者から通信業界関係者までが利用しているという、通信関連情報の充実したページ。テレコム大好きの読者はぜひいちどアクセスしてみることをお勧めする。(編集部)

遅いけど便利なPD

前回のレポートの顛末

 各誌の原稿を書き終えて仕事も一段落したので、ナカミチMBR-7にケーブルをつないで使ってみることにした。しかし……。何と恐ろしいことに電源が入らない(笑)。電源ケーブルやコンセントを変えたが、さっぱり電源ランプがつかないのだ。

 ケースを開けて内部をチェックしたところ、電源部の基板にあるヒューズが切れていることがわかった。しかたなく秋葉原に出かけたついでに、ラジオセンターなどのパーツショップを回ってみたのだが、国内ではあまり使われない特殊なもの(220V仕様?)らしく、手に入らなかった。

 結局、購入したソフマップに持ち込み、修理を依頼することになった。ソフマップの修理依頼窓口をたずねると、カウンターの背後にある柵には同じ型のCD-ROMドライブが数台……。同じ目に遭った人がいるのかと思うと、ホッとしたような悲しいような複雑な気分だ。結局、無償修理で配送までしてくれることになったが、依頼から3週間経つ今もボクの手元にMBR-7はない。

教訓

買ったらすぐに動作を確認しよう。



●3.5インチMOは便利だけど……

 突然だけど、みなさんはハードディスクのバックアップ、どうしてます? 順当なところでは3.5インチMO、ちょっとマニアックなテープ、ぜいたくにCD-Rなんていう人もいるかな。ボクも3.5インチMOに必要なフォルダをコピーしてるんだけど、容量が230Mbytesと小さいのが難点。640Mbytesタイプはドライブもメディアも高いし、PC Watchのレポートにもあるように、まだ不安な面も残されている。もう少し大容量のリムーバブルメディアはないかと物色していたところ、見つけたのが今回紹介するPDだ。

●29,800円の内蔵PDドライブ

 秋葉原HotLineを毎週欠かさず読んでいる人ならご存じのはずだが、今年6月に新製品が出たこともあり、PDドライブの価格が急落している。秋葉原のブレスというショップでは、内蔵タイプのPDドライブが29,800円で販売されているという。バルク品のため、ドライバ類は一切添付されていないが、Windows 95環境ではリムーバブルディスクとして認識されるため、ドライバ類は必要としない。

 PDと言えば、松下電器産業WOODY PDだけでなく、コンパックのマシンなどにも採用されている。また、あまり知られていないが、NECPC-9800シリーズ用オプション品として、PC-ODXというPDドライブを販売している。98とその互換機(PC-486GR)も併用しているボクにとって、98でサポートされている点はうれしい。うまくすれば、MS-DOS上でもバックアップが取れるかもしれないからだ。

●汎用性を考えて外付けに

 9月のとある日、いつものように秋葉原へ向かい、目的のバルク品のPDドライブを購入した。松下電器産業製のLF-1000というPDドライブで、値段は予定通り29,800円。メディアは3,000円程度なので、念のため、2枚買っておく。

 自作のAT互換機に内蔵するのなら、このままでも構わないんだけど、AT互換機でも98でも使うことを考え、外付けSCSIケースを探す。意外にケース類が充実してるBuiltUpで、5.25インチドライブ用の外付けSCSIケースを9,800円で購入。合計39,600円となった。

PDドライブ  買ってきたPDドライブを早速、外付けSCSIケースに組み込む。前回の反省に基づき、すぐに動作確認だ。Windows 95環境については、何ごともなくPDドライブを認識する。AT互換機のMS-DOS環境については、AdaptecEZ-SCSIマイクロスタッフSCSI郎などのSCSIユーティリティがあれば大丈夫だ。

 さて、続いて98のMS-DOS環境だ。最も確実な方法として挙げられるのは、前述のSCSI郎を利用する方法だ。EZ-SCSIのように、自社製SCSIカードでしか使えないというわけではなく、多くのサードパーティ製SCSIカードにも対応したスグレモノだ。もちろん、PDドライブもサポートしており、ドライバも添付されている。実は、松下電器産業が販売するPDドライブ付属のドライバを開発しているのもマイクロスタッフだとか。98のMS-DOS環境に限った話ではないが、SCSI郎は1本持っておいて損のないツールだ。

 もっと手軽に済ませる方法もある。前述のように、NECはPC-9800シリーズのオプション品としてPC-ODXというPDドライブを販売している。このPC-ODX用に提供されているドライバを使えば、自作PDドライブでもMS-DOS上で使えてしまうのだ。ドライバはここで入手できるが、NEC及び編集部、ボクが動作の保証するわけじゃないので、各自の責任において試して欲しい。もちろん、NECにも問い合わせをしないように。PC Watch読者の秘密ってことにしておきましょう(笑)。


●PDはどれくらい遅いか?

 PDはリムーバブルメディアとしてはかなり大容量のものだが、とにかく書き込みが遅いことで敬遠されてきた。いい加減な店員が「PDもMOと同じですから、スピードは変わらないですよ」などという恐ろしい言葉でPDを勧めるシーンを何度も目撃してきたが、実際の速度はどうだろうか。Windows 95が動作するAT互換機に接続し、4MbytesほどのファイルをCD-ROMドライブからコピーしてみたところ、以下のような結果となった。

コピー先ドライブ掛かった時間
SCSI HDD 約11秒
3.5インチMO(4200r.p.m) 約43秒
PDドライブ(キャッシュOFF) 約74秒
PDドライブ(キャッシュON) 約36秒

 PDドライブは工場出荷値の状態でドライブ上のキャッシュがOFFになっている。これをONにすることにより、PDドライブの速度は格段に向上する。キャッシュ制御ツールは一部のパッケージ品のPDドライブに添付されているが、今回のようなバルク品には添付されていない。Windows 95上であれば、前述のEZ-SCSI付属のSCSIエクスプローラで変更することができる。また、ある読者からの情報によれば、NIFTY-Serveのパソコン工作フォーラム(FDEVICE)でASPIマネージャ上で動作するWCE.EXEというツール(アーカイブ名:WCE1.LZH LIB4 #106)が公開されており、MS-DOSでもキャッシュが制御できるそうだ。

 動作音は3.5インチMOがチリチリと静かなのに対し、PDドライブはガガッとうるさい。我が家のように、常時マシンの電源が入っている環境なら気にならないが、一般家庭だとうるさく感じるかもしれない。

 とは言うものの、600Mbytes以上を一気にバックアップできるメリットは捨て難い。風呂に入る前に、コピーしたいフォルダをまとめてドラッグ&ドロップ、MS-DOS上ならxcopyコマンドでBATファイルでも作って実行すれば、書き込みの遅さを気になることはない。遅いものはどう逆立ちしても遅いんだから、それがデメリットにならないように使うのがコツだ。

 ちなみに、PDドライブは今回購入した旧モデル(SCSI用でCD-ROM部が4倍速のもの)がアメリカなどでかなり余っているという噂もあり、今後、さらにバルク品が秋葉原に出回る可能性もある。秋葉原HotLineなどをまめにチェックしておこう。
※9/24に公開したデータに一部誤りがありましたので、訂正しました。


●複数のTAを接続するISDN用分岐ケーブル

 テレコム道家元なんて肩書きを頂戴してるのに、ちっともテレコム道らしい話を書かないと言われてしまったので、便利な小道具を紹介しておこう。

 昨年来、ISDN回線の普及が著しいが、秋から年末へ向けて、さらに魅力的なTAがいくつも発売されそうな気配だ。すでにISDN回線を使っている人ならご存じの通り、ISDN回線には最大8台までTAを接続することができる(INSネット64の場合)。ところが、複数台のTAを接続するにはDSUから伸びたケーブルを何らかの形で分岐しなければならない。

ISDN分岐ケーブル  こうした分岐ケーブルとしては、NTT-TE東京が販売する簡単ケーブルキットを流用する方法が知られているが、1.5メートルとケーブルが長い上、値段も2,000円とやや高い。そこでお勧めしたいのが秋葉原で見つけた分岐ケーブルだ。

 ケーブルの長さはわずか30センチほどでコネクタ部もコンパクトだし、価格も1,200円とお手頃。TAをテストすることが多いボクは、この分岐コネクタを数本購入し、数珠つなぎにして利用している。ただ、NTTが工事のときに取り付けてくれるコネクタのように終端抵抗が入っているわけではないので、終端抵抗を内蔵したTA(AtermIT45など)を最も末端に取り付ける必要がある。

 ちなみに、購入した場所は秋葉原のラジオセンター1Fにある山紘電線というショップで、秋葉原マップで言えば、ブロックA4のエリアにある。ラジオセンターの中央通り沿いの入り口の内、最も末広町寄りの入り口から入ってすぐ右側のお店だ。ヒゲがすてきな優しい店長さんが居るはずなので、「ISDN用の分岐ケーブルありますか?」と聞いてみよう。


[Text by 法林岳之]

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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp