【法林岳之の非同期通信レポート】

法林岳之の非同期通信レポート 第4回

NTTドコモが来春から
移動パケット通信サービスを開始


docomo PPM  モービルコンピューティングという言葉を耳にするようになってから随分と時間が経つ。最近では携帯電話やPHSが爆発的に普及しているため、公衆電話以外からのモバイルコンピューティングが現実的なものになってきた。
 現在、携帯電話を使って通信をするには、市販のPCカードモデムを専用ケーブルで接続する方法とNTTドコモのデジタルムーバHyper用のデジタルモバイルカードを使う方法などが知られている。しかし、これらのカードを使っても、実際の通信速度は最大9600bpsまでで、通信開始から終了までの通信費も随分と高くなってしまう。

 NTTドコモではより高速なデジタル通信環境を実現するため、来春から移動パケット通信システムのサービスを開始する。このサービスは基地局とのデータのやり取りにパケット通信を採用することで、通信速度を最大3倍の28.8Kbpsまで引き上げられるというものだ(図参照)。

 パケット通信とは簡単に言ってしまえば、データを一定の大きさに区切って送受信するものだ。従来の非電話データ通信(回線交換)は通信中に回線を1ユーザーが完全に占有してしまうのに対し、パケット通信では通信中に回線を占有する必要がないため、回線を有効に活用することができる。つまり、携帯電話で言えば、一定の周波数帯域をより多くの利用者が使うことができるわけだ。
 最近、夕方以降に回線が混み合うため、携帯電話が使えないといったことが報じられているが、移動パケット通信ではこうしたトラブルも起きにくくなる。ただ、送受信するパケットを交換機に蓄積することになるため、若干の伝送遅延が生じることもある。伝送データの品質に関しては、エラー訂正プロトコルを組み込むことで対処することが可能だ。

 また、料金体系は非電話データ通信が距離と時間、速度に比例しているのに対し、移動パケット通信では伝送した情報量に見合った料金が課金されるパケット従量制になる予定。これにより、手軽にモービルコンピューティング環境が実現できそうだ。実際のパソコンとの接続は、現在と同じようにPCカードを使うことになるが、将来的にはパソコンに組み込むことができる携帯電話カードや携帯情報端末と一体化した製品も開発したいとしている。

 移動パケット通信システムについては、年内にも最終的な答申が発表され、来春からサービスが開始される予定となっている。サービスが行なわれるのは800MHzのデジタルのみで、1.5GHzでサービスする予定はない。移動パケット通信サービスは特定業務向けの利用からパソコン通信サービス、インターネット接続まで、幅広く活用できるサービスとして期待できそうだ。

 モービルコンピューティング環境については、PHSのデジタル通信サービスもアナウンスされているが、接続可能なエリアは携帯電話が圧倒的に有利であることは間違いない。あとは利用料金次第といったところだろうか。どこでもインターネットの環境はもう目の前まで来ているのかもしれない。

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[Reported by 法林岳之]


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